16年夏合宿_剱岳クライミング(先発隊)

【剱岳 源次郎Ⅰ峰側壁半蔵谷側 名古屋大ルート(?)】2016.8.160(山形)
【年月日】2016年8月10日~14日
【メンバー】L.白井、山形

今年の夏合宿は劔岳です。
自分にとっては一昨年、広島から始めて劔岳に挑戦しましたがとんでもないくらいに天気が悪く、結局ピークを踏めなかった苦い思い出のある山だ。不思議なものでさらっとピークを踏める山もあればそうでない山もある。
果たして今回は?!

10日晩に白井家に集合し扇沢駐車場を目指す。
翌0時半頃に駐車場に着くが既にかなりの数の車が停まっていた。

11日(木)

この日はベースの真砂沢ロッジまでの行程だが朝から大誤算。始発のトローリーバスに乗るつもりが切符売り場は大行列。さすが、山の日効果です。

大行列

大行列

ようやく黒部ダムに到着し重い荷物を背負ってベースまで目指す。

黒部ダムの放流を見ながら最初は楽しく歩くが昼あたりから暑い暑い、汗ダクダクです。
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まるで修行のようでした笑

途中で丸山東壁を見る。いつか登りたいなー。
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荷物は体感で25kg程度、バランスをちょっと崩すといちいち倒れそうになる。
普段は滑らないような岩の斜面でも荷物のせいで足が滑る。

極めつけは最後の渡渉、重い荷物を背負ったままキンキンの水に足を凍えさせながらなんとか渡渉する。
白井さんが渡渉する後ろ姿はまるで世捨て人のようでした笑
後続パーティーも尻からポチャンする人がいたりとかなり苦労していた。
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結局17時前頃に到着するがその日では一番乗り、ビール激うまです!!
鍋を作り、翌日に備えて早めの就寝とする。
こっから三日間のBCとなる真砂沢ロッジは静かで快適な場所だ。
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12日(金)

今日が今回の合宿の核心日!
気合いを入れて3時に起床、4時半出発で目指すは源次郎1峰側壁平蔵谷側の成城大ルートです。

源次郎尾根の取付きまで雪渓を詰めるが1500円の安さにつられて4本爪のアイゼンで挑んだ山形が雪渓を歩くのに苦労して足を引っ張ってしまう。
劔沢から降りてきたパーティと相まってかなりの渋滞となる。
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これが影響して成城大の取付きに着くもののしんがりとなり後々の山行に影響を与える事となる。
取り付きへはI峰までの途中のコルからハイマツ帯に入るがちょっと分かりにくい。

ここのコルが目印

ここのコルが目印

8:20に取付き点に到着するが先行パーティーの順番待ち。白井さんがポケモンを探すがさすがに居なかった笑
ポケモンもこんな急峻なところでは住めないのだろう…。伝説のポケモンが居てもおかしくないロケーションなのだが。
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2ピッチ目を終了したのが11時、まだまだ先行パーティが詰まっており、こりゃやっとれん!って事で名古屋大ルートに変更する。
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最初、ハイマツテラスを右に下る都合3ピッチ目までは良かった。

3ピッチ目をリードする白井さん

3ピッチ目をリードする白井さん

核心のV+、山形リードの4ピッチ目。

核心ピッチはじゃんけんで勝った山形がリード

核心ピッチはじゃんけんで勝った山形がリード

最初は細かいフェースをハング下まで左上する。高度感があるので毎回の体重移動に身震いする。ハーケンは連打されているがここでギアを全部消費する訳にはいかない。見た目の感覚でしかないが効いていそうなハーケンを選び、ヌンチャクをかける。出来るだけランアウトはさせたくないが先が見えないので徒にプロテクションは取れない、「やだー!」と心の叫び。
時間をかけてハング下まで到着する。遠くにハーケンが見えるが足元はスッポリ、落ちたら即死。幸いにクラックがあり、万一に備えてハーケンに加えてカムをセットする。慎重にトラバースするが実はこれが痛恨のルートミスで残置につられてより難しい方に入ってしまいました。終了点も設置されており合ってると思ったんやけどなー。
登攀中はお互いミスに気付きませんでした。

何とかトラバースしたものの足元は崩壊気味、全ての石が浮石に見えて足を置く位置が全く分からない。取りあえずプロテクションを取らねばとまたしてもクラックにカムをセット。左手でハンドジャムしながら右手でカムをセット、地上2500 mでこんなのやだー!とまたも心の叫び。V+のフリーに拘ったが後退も前進も出来ない状態では話にならない。幸いに頭上にハーケン残置+スリングがあり人工に切り替える。ルートを抜ける事が第一だ!いつ抜けてもおかしくないハーケン、いつ切れてもおかしくないスリングにアブミを掛けて自分の左足を掛けて全体重を乗せる。「頼むから抜けないでー!」。何とか上がるが先も厳しそう。逆にアブミを持ってきてなかったらとゾッとする。

小説風に書こうと思ったが鮮明に思い出しながら書いてると手汗が出てきましたのでこの辺にしておきます笑

4ピッチ目終了点の山形;落ちたら即死

4ピッチ目終了点の山形;落ちたら即死

ミスの詳細ですが以下の記録にあるようにハングを越すのが正解のようだ。

http://tokoukaikura.net/index-sankoureport/report1994/turugiheizoutan1994/

僕の分析によると今回入ってしまったルートは右カンテルートだと思います。
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従って核心を越えて一安心出来るはずのIII級のの白井さんリードの5ピッチ目もしょっぱい、しょっぱい。僕の体感では4、5ピッチ目共にV+でした。

5ピッチ目リードの白井さん

5ピッチ目リードの白井さん

直射日光をモロに受けて喉はカラカラ、水なんか飲める暇なしの必死の登攀でした。6ピッチ目山形、7ピッチ目白井で源次郎1峰に抜けるが時短のつもりで挑んだ名古屋大ルート(途中から右カンテルート)、結局抜けたのも我々が最後で時間はなんと16:30。Oh, my god!
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本峰はおろかヘッデン残業確定です。

今回も残念ながらピークを踏めず(・・;)

源次郎尾根を下りベースに戻ったのが20:30でした。待ち時間があったとはいえ、人生初の16時間行動です!!

帰った時には月が出て真っ暗

帰った時には月が出て真っ暗

上田さん、マッキーご心配おかけしました!
帰ってきた時に飲んだビール、冗談抜きで人生で一番美味しかったかも!!

翌日は八ツ峰でクライミング予定でしたが白井さんが風邪を引いてしまい山形も4本爪アイゼンでの雪渓下りに自信が持てなかったのでレスト日としました。何より前日のクライミングでお腹いっぱいでした笑
たまにはこういう山行もありでしょう(^^)

昼間っから酒を飲みまくり13日はゆったりと過ごし、14日に下山としました。
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今回の山行は思った通りにいかない事が色々とあって登攀中は暑さでバテ気味にも関わらず時間に追われるわで早く抜けたいー!厳しいー!という感情が多かったです。

でもこうやって文章を書いているとどこに自分がカムを決めたか、どういうムーブをしたかが鮮明に思い出されて良いルートだったなぁー、また挑戦したいなぁと思ってしまうのです。

普通に生活していたら自分の一挙手一投足を思い出せる場面はなかなかないと思います。
だからやめられないんでしょうねーアルパインってやつは。このやろー!
それともただのドMなのかしら♡

良い経験が出来たと思ってまたトレーニングしていきたいと思います。
フリーの強化はもちろんですがスピードを上げるという事も重要だと再認識しました。
スポーツルートをやる際はオンサイトグレードを上げる方向性は変わらないですが5.9や5.10aあたりのオンサイトを素早くやる事を心掛けたいと思います(^^)あと最近なんか自分のクライミングが悪い意味で慎重になってる気がしてちょっと自己嫌悪、半年前の方がガツガツしてたー!ま、楽しむのが一番ですが。

トマス・カーライル曰く「経験は最良の教師だ」
実践を重ねるのが最善策だと思いますのでこれからも相変わらず岩壁と向き合っていきたいと思います。

追記:白井

3年ぶりの真砂沢ロッジでした。
3年前はテント場からすぐ近くまで雪渓が残っていて、そこにいろいろ食料を冷やして置いたのを思い出します。
今年は全く雪渓は残っておらず。ハシゴ谷乗越からの渡渉も前回は雪渓が残っていて楽にわたれたのに今年は素足で渡渉。
水の冷たいのなんのって、もう足が切れそうでした。
気温は高くてアプローチは暑くてバテました。

二日目の「成城大ルート」は、数年前に浅田さんと1峰下部の「中央ルンゼ」を登った時に宿題として残ったルートでした。
結果3時起きでしたが剣沢PTの方が早いみたいのと思いのほか多くのPTが「成城大ルート」に取り付いたことでかなり待ち時間を過ごすことになった。
しかし、天気も良く景色もいいのであまりついらものではなかった。
核心のピッチで山形君がルートを間違えたのは残念だったが、その後テンショントラバースで「右カンテルート」の残置を追いかけながらなんとか切り抜ける事が出来た。
やはりアルパインの醍醐味はピンチを自分の持てる技術と技量で頭をフル回転しいかに切り抜けられるかにあると思う。
もちろんパートナーの連携やサポートがあってこそである。
そう言った意味でも終わってみれば充実した楽しい一日であった。
しかし翌日に疲れのせいか鼻水、頭痛、気だるさが襲い風邪と判断して休息日とした。
ロッジでは風邪薬を分けて貰ったりといろいろお世話になりました。
ロッジで淹れてもらったコーヒーが凄く美味しかった。
ロッジのオヤジは「水がいいから美味しい」と言ってはいたが、プラスこの辺境の景色とオヤジの腕も加味していると思う。
今年の夏も思い出に残るいい合宿が出来たと思う。
思い出と言えば、今回も食当をお願いした山形君ありがとう。
僕にはない発想のメニューで毎回楽しませてもらっています。
今回も毎朝パスタと言う僕のクライミング歴20年を振り返ってもあまりなかった朝食メニューでした。
水が豊富な場所であればこれもありですね。

最終日には体調も回復し、またここでクライミングをできる日を楽しみにして、真砂沢をあとにしました。
しかし、真砂沢は行き帰りのアプローチが核心です。
もう少し、涼しければいいのですがね。

 

この記事を書いた人

こいつノリで生きてるだろと思われがちな関西人ですが山に対しては真剣です。厳しいルートを登った後に絶景を見ながらテント泊にて赤ワインを嗜む、そんな登山が大好きです。

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