神室連峰縦走

★山行名 【神室連峰縦走】
★年月日 【2000年 11月 23日~24日】
★メンバー【上田】
東北には「かむろ」と名のつく山がいくつかあります。山形,秋田,岩手,宮城県境の栗駒
国定公園西部、山形県新庄郊外にある神室連峰(新庄神室)、同じ国定公園内宮城県にある
禿岳(鬼首おにこうべ・かむろ)、蔵王連峰と船形連峰の間、二口山塊にある山形神室山と
仙台神室山。神室とは神が住むということでこの新庄神室も信仰の山です。
11/23~26と4連休で、仙台で11/25夕方に大学の同窓会があるということで、昔から登り
たかった神室連峰を縦走することにした。

〈11月23日〉
11/22の夜、東京まで新幹線、東京駅から夜行バスで山形県北東部、最上地方の中心地、
新庄市の駅にまだ薄暗い6時に着く。20年も前に陸羽東線の乗り換えに立寄った鄙びた駅舎
とは違って山形新斡線の新庄延長とともにできた白を基調として雪と氷をイメージするよう
なガラス張りの駅舎。予約しておいた夕クシーで市の北北東の土内渓谷に向かう。田畑ー面
に降りた霜と,朝日でピンクに輝く鳥海山が好天を約束してくれる。北に偏った移動高にすっ
ぽりと入ったようである。火打新道入口の吊り橋の少し奥まで入ってもらう。(\4930)
気温-2℃、7:10に歩き出す。土内川右岸の登山道を行くと火打への旧道の砂利押沢口、
間もなく止まりの滝。落口は狭まって見えないがごうごうと鳴っている。対岸の斜面は急な
とゆ状で草木の無い岩盤で雪崩の走り道・アバランチシュートになっている。8:10に尾根を
回り込む。はきかえ峠である。ここからは神の領域ではきものをかえたとのこと。8:35,土内
渓谷中最大の滝雷滝に着く。落差15mの立派な滝が正面の上の方から眺められる。すぐに尾根
の取付きオクビレで小休止。神室山8!
.5km、土内5.5kmとある。立派なブナ林の斜面から標高差550mの真っすぐな痩せ尾根を登る。
800m位からはブナなどの高木も消え潅木になると台山尾根の1050m三角点、9:55着。ここは
昭和30年代の積雪研究の前進基地、権八小屋跡とのこと。先週の冬型で降った雪の残りが出て
きて、スパッツにストックで台山尾根を神室山に向け進む。笹と潅木をぬって11:10、1150mの
展望ピークに着く。行く手には神室山の立派な山容と直下に小屋も見える。振り返ると西には
出羽富士の鳥海山、南には雪をかぶったドーム月山が見える。無風快晴の小春日和でポカポカ
の陽気。いったん1050mのコルまで下り、300mの登りを少々汗ばみながら登ると神室山避難小屋、
12:40に到着する。積雪もほとんど問題にならない程度だったので無雪期のコースタイムで歩けた。
シャッタを開けて入らせてもらう。金山町と神室山の会が管理して下さっているとのこと。
新しくは無いがきれいに片付いている。上越あたりでもそうだが、東北の山はこういった快適
な避難小屋があるのがありがたい。
水場は小屋の南西面を距離にして150m下った所。土内川 銀次郎沢の源頭である。小屋に置
いてあった2lのペットボトル3つを使わせてもらう。急な砂地の斜面で登下降に結構苦労する。
のんびりした午後で時間もたっぷりあるので北方の稜線へ散歩に行く。神室山頂上からは、西
には雪をかぶった鳥海山、北には太平山、秋田駒,岩手山,和賀山塊、焼石岳、東には栗駒山、
虎毛山、禿岳、南には船形山,二口山塊、蔵王、葉山、朝日連峰、そして真白に雪を頂いた月山
のドームと、かつて登った山、いつかは登りたい山がぐるっと見渡せる。東北中部の山々が全て
見渡せるような素晴らしい天気。神室山から北はちょっとした岩尾根や雪も残っていて、栗駒国
定公園のレリーフのあるピークを通って金山町有屋口からの登山道の分岐点、八幡神まで行く。
ここからは前神室山の、東面が切れ落ちた勇姿とその左遠くに雪をかぶった鳥海山が素晴らしく
長い間見とれてしまう。往路を小屋に戻るが同宿者は現われそうにない。板間に陣取って、壁の
寄せ書を読んだり、小屋のノートを読んだり書いたりして過ごす。初めて来た人も、何度も来て
いる人もこの・u梹Rと自然を愛し、この小屋での一夜を楽しんでいる様子が伝わってくる。小屋
の1階からも2階からも明日歩く主稜線が全部見渡せる。一杯やりながら眺めを楽しむ。
結局この日の泊りは私だけ。登山中も誰にも遭わず人恋しくなってしまうが、ノートに書きつ
けをしたり、下手な句をひねってみたり、満天の星空と新庄の夜景を眺めたりして20時にはシュ
ラフにもぐる。

<11月24日>
6時過ぎには歩き始めようと4時半に起きるが、全くのガスの中。夜中に少しみぞれが降ったよ
うであたりが白い。朝食を取って明るくなるまで様子見でシュラフにまたもぐる。1人なので勝手
気ままである。風もおさまって大きく崩れそうにはないので7:25出発する。1100m以上では雪が
10cm位残っているし、痩せ尾根でスリップは避けたいのてアイゼンとストックで歩く。気温が上
昇して湿雪でなおかつ枯れ葉もあって、アイゼンがあっと言うまにダンゴになる。ストックでこ
まめにたたき落とすため、歩くのにスピードが出せない。9時に天狗森、10時に小又山に到着する。
相変わらずのガスで時おり小雨が降ってくる。風はそんなに強くないので寒くはないが、靴の中
はぐしゃぐしゃである。小又山から下降して1100m位までくると雪は消え雨は止んだ。 小又山と
火打岳の東面の大横川源頭のすっぱりと切れ落ちた様子がガスの合間に見え隠れしている。鞍部
の砂利口からは晴れていれば火打岳の尖峰が素晴らしいのにと、ちょっと恨めしい。火打北峰の
岩の急登を慎重に登り少し行くと火打岳である。12:20着。新しいプァw)€ともにセルフ
ポートレイト。雪の火打新道を土内渓谷に向けて下る。1070mのなだらかな所、道の西側に水場
の標識がある。最後は急降下でスリップに注意しながら下る。14:20、土内渓谷の吊り橋に着く。
ほっと一息である。
近くの銀次郎小屋は2階建ての立派な構えであるが開放はされていない。土内部落まで歩い
て出ていく。庭木を雪から守るためにあちこちで長い板を10数本円錐状に立てかけてある。
今日は平日なので山形交通のバスがあると思ってバス停まで行くと、16:30ということで1時間
半もある。近くのおばあちゃん2人がバスに乗るのかい?と声をかけてくれた。4km程歩くと
金山町方面に別れる三差路に別のバス停があるとのこと。バスの本数も多いの?、と聞くと
土内と同じバスだけだよとのこと。わあわあ言いながら会話を楽しんでいると1台のRVが村
から街に向けて出て行こうとする所。ばっちゃん2人が車を止めてくれて、街まで乗せてや
れや、と頼んでくれた。体格のいい若い女性で、これから仕事で新庄の町に出るということ
でありがたく便乗させてもらうことになった。道すがら山沿いの土内地区は市街地に較べ格
段に雪が多いこと、防雪柵のしくみについてなど話してくれた。駅まで送ってもらってお礼
を申し出たが受取られなかった。東北の人達の人情の温かみに触れてありがたかった。
雨に濡れているので旅館を探そうと、駅のコインロッカーの荷物を回収して、
コミュニティープラザの「ゆめりあ」で宿泊先をあたる。安くて近い所で「とまれ屋」という
面白い名の旅館がパンフレットで目についたので電話する。空いてます、ということでさっそく
宿へ向かう。駅から歩いて5分、近い。一番風呂に入って、食堂で他の泊り客(仕事で仙台や
郡山から来てる人がいた)と一緒に一杯やりながら歓談。少し書き物と読物をしてふかふかの
布団でありがたく熟睡した。

<11月25日>
10時まで市内観光。「ゆめりあ」で自転車の無料貸し出しがあって、それで防雪の研究施設
と最上公園を散策。
10:20の山形新幹線で山形まで。仙山線に乗りかえ、山寺(あの奥の細道の立石寺)に20年振り
に立寄って14:40に仙台駅着。駅では教養部の頃の旧友2人が待っていてくれた。仙台は8年ぶり
位だが今回会うメンバーはほとんどが20年ぶり。郊外の秋保温泉で旧交を温めることができた。
翌日は近くの秋保大滝と大学キャンパスツアー,助教授となった友人の研究室などを訪れる。
市内で名物の牛夕ンを食べて解散となった。

―記・上田―

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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