冬山山行・奥聖の滝沢遡行

★ 山行名【冬山山行・奥聖の滝沢遡行】
★ 年月日【2002年12月27日~12月31日】
★ メンバー【L.山岡人志(地球クラブ)、白井良岳(豊川山岳会)】

【行程】
《12/27日》
 21:30静岡駅:山岡と合流し白井の車で畑薙ダム0:15着
《12/28日》
 7:00起床 → 8:30聖岳登山口 → 10:30聖沢吊橋10:50 → 11:30→
1,750m付近11:44 → 16:テント場2,100m付近
《12/29日》
6:00起床 7:30出発 → 13:20滝見台
《12/30日》
4:00起床 6:00出発 → 7:30F1取り付 →9:15大滝10:10 
11:50F6より下降 → 12:45F1取り付 → 14:30滝見台
《12/31日》
 4:00起床 6:00出発 → 7:25 →2,000m付近 → 9:00聖沢吊橋
10:40聖岳登山口 → 15:15静岡駅

《12/27日》
 静岡駅で山岡さんを拾って、0時過ぎに畑薙第一ダムの林道ゲートに着く。しかし、ゲートは鍵
がしてあり、林道内には入ることが出来ない。しょうがないの空き地にでテントを張りすぐに寝て
しまった。
 
 
《12/28日》
 朝林道ゲートを開けに誰か来るかなと思ったが、そんなの待っていたら何時になるのか解らないの
で諦めて荷物をととのえ出発することにする。 山岡さんが以前東海フォレストに問い合わせた
時は「林道内での責任を自分達で取るのだったら入っていいです」、「ゲートは何時でも開けて入れ
ますよ」とのこと。最初から林道を歩く気が無かっただけに閉まっていてがっかりする。
 荷物を背負って先に歩き出していた山岡かさんがダイアル式のゲートの鍵を開かないかしょうこ
りも無くやっていると、なんと開いてしまった。これ幸いと車で聖岳登山口まで移動する。
 途中、静岡労山の方で聖岳東尾根を登る方を同乗させてあげる。林道は、殆ど積雪はないが、水
溜りなどは完璧に凍っていた。しかし、水量の多い枝沢などはあまり凍ってはいなかった。驚いた
のは、赤石ダムの湖面で、陽のあたらのような所は大きく凍っていたことだ。
 再び荷物を整え出発する。久々の肩にずっしりとかかる重荷も気持良くスギ林の中の急さかをゆ
っくり登って行く。
 避難小屋跡を過ぎた後、東尾根へ行く尾根と別れると、まったく踏み跡は無くなる。吊り橋まで
下りながらのトラバース道に入ると、膝下まで積雪があるのでスパッツを着ける。
 吊り橋を渡り、晴天の元、春山のような暖かさの中、順調に高度を稼いで行く。しかし1,80
0m過ぎからぐっと積雪が増え、膝上から腰までのラッセルになるとまったく進まなくなる。
 息絶え絶えになりながらも、16時半近くまで歩みを進め、とりあえず2,100m付近でテン
トを張ることにした。夕方より風が強くなる。
 
 
《12/29日》
 今日も朝から晴天だ。今日もラッセルかと思うと少々うんざりだが、気合を入れて歩きだす。こ
こから尾根上ではなくトラバースとなるのでルートを探しながらラッセルとなる。積雪期には歩か
ない道なので、目印がなく、途中迷いながらも、13時半頃、待望の滝見台に辿り着くことが出来
た。
 滝見台からは両沢筋が良く望めた。前聖ノ滝沢は殆ど積雪に覆われ顕著な滝は確認することは出
来なかった。
 またここまで来るときのラッセルのことと雪崩の危険性を考えて、前聖ノ滝沢は止めることにし
て、奥聖ノ沢一本に絞ることにする。奥聖ノ滝沢の下部には魅力的な大滝が良く見ることが出来た
こともあった。
 
 
《12/30日》
 4時に起床し、明るくなる6時まで待って出発した。
 天気は上々、東尾根のスカイラインがくっきり綺麗だ。滝見台よりひとつ下流側の谷を下降する
ことにし、腰までのラッセルしながら下る。
 前日ここで弱層テストをしたら80㎝ほど下に半分氷化した雪面があり、さらにその下10㎝ほ
どで地面となっていたことが解った。
 それによって雪崩が起きるとしたら80㎝ほど下の弱層から起きると予想されるが、4日以上新
雪は積ってなく雪が締まって来ているので概ね大丈夫であろうと判断する。懸垂下降二回で本流ま
で降りることが出来た。
 奥聖ノ滝沢出合いには、すぐ沢の右岸側にF1のⅢ級からⅣ級程度の氷爆があり、谷をラッセル
して登るのも、雪崩の危険と労力を考えてこの氷爆を登ることにした。
 各々荷を担いでソロで登ることにし、自分が先頭で登る。氷の具合はまずまずであったが氷の上
に40㎝ほどの雪が積もっており、これを落としながらのクライミングは荷を背負っていることも
あって、少々苦労させられた。
 F1を30mほどで抜けると、また谷底をラッセルすることになる。150mほど行くと、F2
(Ⅲ級)が現れる。
 F2を越えると本命の大滝が目の前に出現し思わず息をのむ。大きさはかなりあり、下が大きく
広がっていて中々の容姿である。しかし、良く見ると上部には陽が当り、水がかなり滴り落ちてい
る。
 嫌な気になるが、とにかく取り付きまで歩みを進める。大滝(F3)は下部の3分の2が傾斜は
寝ていて、残りの3分の1が、90度ほどある垂直の滝となっている。
 僕が最初に滝の左側から取り付き、スクリュウーを3本ほど決め、30メートルほどロープをの
ばす。
 垂直部分の下でピッチを切る。しかし、南面を向いている滝のせいもあって、滴り落ちてくる水
飛沫でどんどんウェアーが濡れてくる。
 次に山岡さんがリードの番となり、凹各状の氷壁を登る。3mほど登ったところで1本決めるが、
その後、アックスを振るうごとにボコボコト嫌な音を響かせている。どうやら上部は薄氷となって
いて空洞化しているみたいだ。
 山岡さんが落ちたら、真下でビレーしている僕は避けようもなく、ビレーしながら「落ちないで
くれー」と祈るしかなかった。もちろんランニングは取れようもなく一気になんとか山岡さんは登
りきる。フォローしたときに見た薄氷にかなりやばかったことが解りぞっとした。
 その後は、ラッセルと易しいⅣ級からⅢ級程度のクライミングの繰り返しでF6まで谷を詰める。
 F4後に、足元の雪が直径2mほど崩れ、右足を濡らし、F5リード中には薄氷が大きく崩れ、
氷の裏側へ落ち全身濡れてしまうなど、今回は濡れ三昧のクライミングとなった。幸なことにこの
日も天気はよく、暖かかったため(と言っても濡れたロープなどは凍りつき、堅くなる)へこむこ
ともなかった。
 F6より上部は、顕著な滝は無さそうであったため、沢の左岸側から大滝の下までロープを出さ
ずに下降し、本流まで無事下降する。しかし、滝見台までの登り返しの沢で、降りに懸垂下降した
場所がかなり厳しく、ドライツーリングで登るも、こらえきれず山岡さんにロープを出してもらう。
 ラッセルは思ったほど大変ではなく、1時間半ほどで登りきってしまった。
 

《12/31日》
 1日半かけて登ってきた道を、5時間ほどで下ってしまう。あの苦労はなんだったのか?
 下の方では風はなく、小春日和であった。登山道入り口まで車で入ってしまった私達は、その日
の午後3時ごろには静岡駅に着き山岡さんと別れ、午後6時過ぎには新城に帰ることが出来てしまっ
た。

 昨今では、未登攀の大きな氷爆は、みんな登られてしまい、重箱の隅をつつくような所しか残っ
ていないのが現状である。だが、少しの労力をいとはなければ、まだ幾つかは陽の目をみず、ひっ
そりと凍っている氷爆群はあるはずである。
 今回の山行はそんな初登攀を狙って入山した。南アルプスの南部とあって、氷結はあまり良くな
いと予想はされ、凍っていたらもうけ物と思って入山し、予想以上の積雪で苦労したが、なんとか
満足行く結果を残せたと思う。

―記・白井―







この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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