錫杖岳前衛フェース岩登り

★山行名【錫杖岳前衛フェース岩登り】
★年月日【2002年9月21日~22日】
★メンバー【宮尾、清水(渓稜会)】

9/21 快晴
3年程来ないうちに中尾温泉口の駐車場は半分がヘリポートになっていた。テント設営場
所が悪く登山者たちの準備が明け方からうるさく寝ていられなかった。8時10分発。1時
間半ほどでベースに到着。テン場を探すがクリヤ谷周辺はすべて先取りされており、少し
探したが錫杖沢岩小屋(ちょうど2~3人用テントが張れる)がたまたま忘れられて空い
ていたのでラッキーした。
清水さんが知っていた3ルンゼに直接あがる道を使ってみる。錫杖沢を上がるより早いと
のことだったが、踏跡がしっかりとしており一定のペースで登れる分、効率がいいのだろ
う。しかも大木のブナ林の中を進むのは一服するのも気持ちが良い。錫杖の紅葉が黄色く
美しいのはブナのためだろう。あと楓(かえで)や赤い実がついた木(ナナカマドではな
い)も多い、これらは赤く色づくのだろう。しかし、まだ葉は薄緑で紅葉までには2~3
週間ぐらいかかるのではないかと思う。前衛フェース3ルンゼ基部まで来るとトラバース
道で左稜線基部を超えて錫杖沢に出る。
今日は「注文の多い料理店」。取り付き11時、スタート11時20分。
すでに3パーティー取り付いている。1ピッチ目、ルートがよくわからないが適当に行く
とすぐに水平テラスに出る。2ピッチ目、清水さん。出始めのクラックのみわかり易いが
枯れ木テラス付近のルートが判然とせず文句を言っていた。実際クラックが終わると右の
フェースをテラスまで直上する方がロープの流れも良い。
3ピッチ目(核心ピッチ)、リードを行かせてもらった。右の這松ルートのボルトにランニ
ングビレーをかけてトラバースしハングしたクラックの少し下に出た。初登者(春日井・
佐原君)は、おそらくこのハングを真下から直登したのではないかと見たが、先行パーテ
ィーの派手な墜落と敗退をみて一応安全そうな方法にした(落ちたら所詮同く派手な墜落
になるのだが...)。トポにも、ボルトからランニングビレーをとるルートが書かれてある。
レイバックの体制になるがクラックのエッジにしっかり指が懸かり問題ない。キャメロッ
ト4番をかけて後はレイバックでグイグイ高度を稼いだ。すぐに、フェース状のハンドク
ラックでこれも手がよく効くので3番を噛まして難なく高度を稼ぐ。2つ目のハングから
はフェース(ボルトラダ-あり)だが5.8ぐらい。少しハンドクラックを登ると3つ目
のハングに出た。ロープがあと5メートル程しかなくピッチを切った。清水さんも上がっ
てきて3つ目のハングを右横から難なく超えて5m程でアンカー。4ピッチ目、清水さん
5.8のハンドクラックを15mほど行くとブッシュに突入した。ここから私が、左方カ
ンテの最終ピッチ下にトラバース気味で移り終了。トポにある5ピッチ目(最終ピッチ)
は、左方カンテと同じなので登らず下降した。14時40分完了(所要3時間20分)。時
間が余ったので3ピッチ目のみ2人ともリードで登りなおすことにした。第一ハングを下
から直登するルート。フレンズを噛ましてやってみたが細かい凹凸を足でしっかり拾えば
特に問題なかった。岩は滑りにくいし、割合堅くいい感じだ。今日は、実質3ピッチ。寝
不足の体にはちょうど良かった。
夜は、清水さん用意だった。キムチ、もろきゅう(きゅうりが丸ごと1本)他で酒を飲み、
カレーはルーを溶かして作る山では珍しいパターンだった。食後もろうそくの火で色々し
ゃべっていたが疲れていたので早い目に寝た。

9/22
5時起。コーヒーを飲み、清水さんがいつもはほとんどやらないというラーメンを頂く。
出発前には大量のガスが谷間を上がってきて天気が早く崩れそうだった。今日もおなじア
プロ-チだが霧のブナ林。昨日は明るく真夏の雰囲気、今日は幻想的だった。
汗でシャツがべとべとになる頃3ルンゼに到着。
「じーやの大冒険」の取り付きがわからず3ルンゼに入り込み探していたが、それらしきと
ころから清水さんに取り付いてもらう。3ルンゼ入り口の2つ目の小滝右の壁だった。凹
角の中にフレンズをセットし15mほど上がると斜上したチムニー。しばらくがんばって
いたが「キャメロットの4番が欲しい、カラビナが足りん」とか言って降りてきた。ザック
を置いて水と食料を私のザックに詰め替え空荷でリトライ。荷物があるとちょっと苦しい
かなぁ?チムニ-を超えるとひじが入るぐらいのワイドクラック。壁にも細かいホールド
があるので耐えることができれば十分活用できる。40mほどロープを伸ばすと「解除」の
コール。凹角は岩だが周りが土手でいやらしい。しかも結構垂直。怖かったのかフレンズ
が奥のほうに嵌まりこんでいる。斜上チムニ-はそれだけなら5.7か5.8ぐらいに感
じるがバック&ニ-で抜けてワイドクラックに移るところが難しい気がする。チムニ-の
ところもフレンズが奥のほうに入り込んでおりランニングも短め、回収は結構苦しかった
のでテンションをかけても不思議ではなかったが体制を切り替えたりしてノンテンで行け
た。ビレイ点に到着すると清水さん開口一番「もうおなか1杯になってしまったわぁ」と。
ねぎらいの言葉をかけるが、全体として5.10cならこんなもんだろうなぁと思う。
そのまま土手をあがり、フェースを左上気味に壁を横断してアンカーらしき松の木に向か
うが岩が脆く乗っかる岩を慎重に選んで進む。ルートが判然としないこともあってⅣ級の
割には時間がかかった。
アンカーの付近も脆く、清水さんが向かってくる途中に私が体重をかけた岩が丸ごと剥が
れ気が付いたときには3ルンゼ基部をめがけて飛んでいた。そして基部で粉々に砕け散っ
た。偶然誰もいないのが幸いだった。自分も落ちるかと思ったし、石もどうなるかでヒヤ
ヒヤだった。
3ピッチ目、側壁側に移り(アンカーも実は側壁側にある)直上するクラックだが、土が
詰まっているところが多い。清水さん、フレンズをバンバン噛まして進んでいる。ここで
もテントに置いてきた「キャメロットの4番がほしい」と言っている。当初は自分が行く予
定のピッチだったが、ビレイ点が狭く代われなかったので偶然清水さんのピッチになって
しまった。リードは大変だったろうと思う。30m程上がるとクラックが終わり土手を
10m上がると自らのフレンズでアンカーを造っている。ボルト類は一切残置されていない。
最近フリー化されたルートならでわのパターン。
フォローしたが、いくらフレンズがあるとはいえ岩が脆くランナウトぎみなので結構丁寧
に登らないと危険なピッチと感じた。
4ピッチ目、凹角左には直上するワイドクラックと10mほどの直上チムニーの2ルートが
とれる。ワイドクラックの方は、フレンズ(5番ぐらい)がなければ危険で取り付くことが
できないので直上チムニ-をルートとして選ぶ。チムニ-は5.7~5.8ぐらいで左壁
が脆いので力のかけ方に神経を使う。その後5.8のフェースに移るがペツルやリングボ
ルトなどの支点は全然ない。エイリアンで辛うじて支点を取り、右に移りたかったがトラ
バースが危なかったので左のブッシュ帯に入ってしまった。これが間違いだった。このピ
ッチはおそらく、ワイドクラックを上がり右に抜けるべきだったという気がする。安全を
確保する手段がなかったので登れなかったのだがワイドクラックも5.8ぐらいなのかも
しれない。ともかく、そのブッシュをひたすら直上するとP4の頭に出てしまった。2人分
かれて下降路を探しに行く。霧でどの方向もよく見えなかったが肩に降りるのはあきらめ、
少しでも視界の効いている3ルンゼに下ることにした。
P4の頭からは3ルンゼに向かって何回か広場になっているので懸垂かクライムダウンで少
しずつ下り、最後に懸垂50mで3ルンゼ終了点に降りた。あとは、3回ルンゼ内を懸垂し
取り付きに戻った。
P4の頭から霧雨だったがルート上では雨にやられず運があったのだと思う。唯一の心残り
は4ピッチ目から残りのピッチ(グレード的には大したことないのだが)が正確に辿れな
かったことだろう。
清水さん曰く「えらいしょっぱいルートだった」(もちろん満足感はあったのだと思うが)
と、私はグレード的に見てこんなもんと思うがやはり本ちゃんは脆い岩との戦い、安全性
をどこまで確保できるかがいつも課題であり難しいと感じた。
復帰戦ともいえるフリー化されたルートの登攀を清水さんとトライ出来てよかったと思う。

                                ―記・宮尾―








この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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