北上山地の名峰、早池峰山で花を愛でる

【早池峰山】2015.7.1(上田)
【年月日】2015年7月1日
【メンバー】上田

7月4日(土)に学生時代の同窓会が仙台であるので、3日間の休みを取ってその初日に北上山地の名峰、早池峰山への山行を計画した。早池峰山と言えばハヤチネウスユキソウ。この梅雨の時期に可憐な花を咲かせるこの山に初めて訪れた。
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6月30日 夕方新幹線で東京へ移動し、上野から22:25発の岩手行きの夜行バスに乗り込む。沿岸部の山田町まで行くという娘さんとしばし古里談義をする。

7月1日 5:10 新花巻駅下車、タクシーを予め呼んであったので、大迫(おおはさま)バスターミナルまで乗車。ここで岩手県交通バスに乗って岳部落から河原坊に6:45に到着。何とか雨粒が落ちる直前ということだが早池峰山が屏風のように正面に見えておりありがたい。
DSCN6952トイレとビジターセンターがあり不要物をロッカーにしまい、登山届を出して7:20に出発。すぐに左へ向かい河原ノ坊からの直登コースをめざす。樹林の中から次第に明瞭で浅いコメガモリ沢沿いに進む。
DSCN6960 DSCN6967何度か沢を渡るが、まだ降雨による増水は無く簡単な飛石伝いに進む。次第に沢らしくなり少し傾斜も出てきたころ視界も広がり、頭垢離(こうべごおり)を過ぎると沢の右側の小さな尾根上に上がる。
DSCN6972休憩し正面の急斜面から頂上までマーキングが多数あるルートを確認する。8:02 標高1420m、早くも蛇紋岩の森林限界。振り返ると早池峰の南側の薬師岳(1645m)には既に西からガスがかかっている。
ここら辺りからミヤマオダマキや綿毛になったチングルマなどが増え賑やかになる。

ミヤマオダマキの紫紺が瑞々しい
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中腹ではチングルマは早くも綿毛に
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これは(ただの)ウスユキソウ?
ミネ
アズマギク? エゾムカシヨモギ?
エゾムカシヨモギ
初めはゆるやかな尾根上をしばらく進むと標高1500m付近から、お待ちかね、蛇紋岩に咲く名花ハヤチネウスユキソウが姿を現す。中部山岳などのウスユキソウのツルッとした小さい花びらと違い、6cmはある花びら(実は茎の葉)と綿毛に水滴をつけた姿はとても可愛いらしく気品がある。

今や盛りと咲くハヤチネウスユキソウたち
DSCN7035DSCN6990DSCN7007見事な群落が続く
DSCN7059DSCN7063大きい!
DSCN7064DSCN7070DSCN7156ミヤマオダマキとハヤチネウスユキソウ
DSCN7025https://minhana.net/wiki/%E3%83%8F%E3%83%A4%E3%83%81%E3%83%8D%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%83%A6%E3%82%AD%E3%82%BD%E3%82%A6

こちらはミネウスユキソウ :ここではハヤチネウスユキソウより少ない
DSCN7034こちらもミネウスユキソウ?
ミネウスユキソウ
こちらも(ただの)ウスユキソウ?
ミネ
数が多いのはミヤマオダマキやハクサンチドリ、アズマギク、固有種のハヤチネウスユキソウ。同じく固有種のナンブトラノオやナンブイヌナズナ、エゾムカシヨモギ、も時折見受けられた。のんびりと次々と現れる花を見ながら登っていく。
ハクサンチドリが鮮やか
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固有種のナンブトラノオ
ナンブトラノオ
固有種のナンブイヌナズナ
ナンブイヌナズナアズマギクとハクサンチドリ
ハクサンチドリとアズマギク
ミヤマヤマブキショウマ
ミヤマヤマブキショウマハッコウダ・シオガマ?
DSCN7065ヨツバシオガマ
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ウラジロヨウラク
ウラジロヨウラクミヤマオダマキとまだ花が咲くチングルマ
DSCN7093ガンコウラン ブルーベリーのような実がつくのは秋
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※早池峰の地質と高山植物
https://www.gsj.jp/data/gcn/gsj_cn_vol4.no5_142-144.pdf

傾斜が増してきて御座走りや、岩塔の打石や千丈岩など気持ちのいい岩場の登高。
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御座走り
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目立つ岩塔(ピナクル) 「打石」
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ガスで視界が徐々になくなり5m/s位の風と小雨も降りだすが行動に問題は無い。
コーナーも登れるが、フェースを登る
DSCN7090今回は沢の増水もありかと思い沢靴で歩いた
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岩場のスリップに気をつけながら急登を登ると刀剣などが経つ頂上に到着。9:47
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すぐ下の避難小屋では指導員の方が2名ほどおられて、登山道や花の状況をお聞きする。近隣の方々がこのように目配りをしてくださり、また交流できるのがありがたい。DSCN7110
風雨も時折強まるようになってきたので、早めに小田越に向けスタートする。
9合目あたりには10m程の鉄ばしごが連続して2つあり傾斜は緩いが裏返って慎重に降りる。晴れると少し高度感のあるところだが霧の中で残念。
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このあたりもハヤチネウスユキソウはあるが、標高約1,700 m地点の7合目付近では蛇紋岩ではなく緑掛った色をした玄武岩や斑れい岩で一時ハヤチネウスユキソウは姿を消すがその下から1500m位は再び、ハヤチネウスユキソウがたくさん咲いて素晴らしい。

河原の坊からの登りのハヤチネウスユキソウの花の真ん中が黄色~濃い灰色だったのに比べ真ん中の黄色みが少なく白い綿の感じが更にたっぷりな感じ。
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最後のハヤチネウスユキソウに別れを告げ、傾斜が緩む中樹林の中を下ると小田越に着いた。(標高1250m)DSCN7179DSCN7177
霧の中車道を下る。道端には濃い茶色のオオヤマ・オダマキや白い花のキバナノ・ヤマオダマキがきれいだった。
http://hana-zukan.net/221kinpoge.html

オオヤマオダマキ
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キバナノヤマオダマキ
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賢治の詩碑
DSCN7190河原の坊、12:30着。
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河原の坊で身支度を整え、13:00のバスで大迫バスターミナルに向かい登山終了とする。

この日の宿泊地、遠野へのバスの待ち時間が1時間余りあるので、大迫町内の近くの「早池峰山と賢治の展示館」を訪れた。
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展示館にみえた早池峰の主、浅沼利一郎さんとしばし歓談。
DSCN7224この地のウスユキソウにもハヤチネウスユキソウとエゾウスユキソウなど非常に良く似た種類があること、この地の蛇紋岩は古生代の中でも最も古いオルドビス期のもので、それ自体が日本列島の成立よりもはるかに古い貴重な地層であることなど、興味深いお話を伺った。
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<天気状況>
東北地方南部、北部地方は例年より2週間程遅い梅雨入りの中、登山当日は梅雨前線が北上し前線上の低気圧が本州の日本海側沿岸を北東に進んで西日本、東日本雨模様となりました。岩手県地方は前線や低気圧から離れていたために本降りになる前に下山することができた。
2015年7月1日09時の地上天気図  西日本、東日本では梅雨真っ盛り
15070109 SPAS<感想>
学生時代の4年間、仙台で暮らしたというものの東北6県は広く、貧乏学生だった私は北東北の山は意外と少ししか歩けていない。派手さは無くても1つ1つが個性的な東北の山々。今度は山岳会のみんなや懐かしい東北の友と歩けたらと思った。

(記:上田)

 

この記事を書いた人

愛知県山岳連盟 豊川山岳会事務局
山岳上級指導員 気象予報士
NPO法人 ウェザーフロンティア東海会員

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