霧と幻想の黄蓮谷右俣

【黄蓮谷右俣】17.8.13(白井)
【2017年8月13日~15日】
【メンバー】L.白井、中村(冴)

今回、冬のアイスクライミングの下見も兼ねて黄蓮谷右俣を遡行することにした。
しかし、今年の盆休みは主だったメンバーがチリジリに分かれてしまい、一緒に泊りの沢へ行ってくれるメンバーがいるか心配でしたが、サエキ君が「行ってみたい」と言ってくれた。彼なら大丈夫だろうと判断し二人で行くこととなった。
サエキ君は昨年の秋過ぎに入会したばかりであるが、もともとクライミングはしていてボルダリング3段持ちである。今年の夏も日帰りではあるが沢登りも数本行っているので大丈夫だと思った。
自分自身、沢で2泊するのは初めてである、凄く楽しみにしていろいろ準備を進めて行った。
今年の夏は天気が一向に安定せず不安定である。雨が心配ではあったが行くことに決めた。

8月13日(日) 新城市(白井家)6時半—12:30尾白川林道ゲート12:45—14:20入渓—噴水の滝過ぎ17:30泊地
新城市を早朝の6時半に出発、飯田経由で中央高速道路を走る。八ヶ岳PAで最終判断をする。天気予報はいまいちだが、だからと言って岩登りに転身しても結局雨で岩が濡れて登れなさそうなので、黄蓮谷に行くことに決めた。本日瑞牆でクライミングを予定していた藤田君たちは松本城へ観光しに行ったみたいだ。

松本城をバックに自由な人(藤田君

ほんとに自由な奴だ。しかし松本城も相当混んでる見たいで1時間半待ちだとか…。お盆に観光地なんか行くもんじゃないと思っていたらこちらも20号の国道に合流したとたん、もの凄い渋滞にはまった。ここも観光地なのか?
そして黒戸尾根の登山口である竹宇駒ケ岳神社駐車場の駐車場は観光客で満車状態、急遽車を尾白川林道の日向山登山口のゲート前駐車場に変更する。
日向山登山口の駐車場も生憎の曇天だと言うのに登山客の車で一杯だったが、ちょうど1台出て行って空いたのでそこへ停める事が出来た。
荷造りを済ませほぼ満タンのザック背負って林道を終点に向かい歩いていく。いつでも雨が降り出しそうな空だがその分日差しが無くていい。しかし歩けば汗は出る。今年の冬に刃渡り沢などのアイスクライミングで訪れたこの林道だが、冬の景色とは当然ながら全く違っている。途中の「錦の滝」や「岩間ルンゼ」など通るが、周りが緑が茂り同じ沢や滝だと思えないぐらいだ。

日向山登山口

 

冬にアイスで登った岩間ルンゼもこんな感じに

トンネルを三回ほど抜けるとほどなく林道終点となり、トラロープのFIXを使って沢へ下っていく。
沢へ降りると写真で見たような黄色っぽい水が流れていた。花崗岩の沢だと青々とした綺麗な沢のイメージがあるが、ここ黄蓮谷は名前のとうりに黄色い水が流れている。まるで疲れたサラリーマンの小水が流れているようだ。なんとなく印象は良くない。淵や釜など深い所は真黒くなっていて不気味である。
ここはまだ尾白川の本流の位置づけである。水温は思ったほど冷たくなく、本日数回股間を深みで入水させたが、程よくヒンヤリとする位であった。
寒がりの自分やサエキ君にっとっては何とか許せる冷たさである。
普通にナメや小滝を越え鞍掛沢を左に別れる。噴水の滝を右岸から巻く。次から次へと滝が現れ飽きさせない。
時間も17時を回り暗くなる前に泊地を決めなくてはとちょっと気持ちが焦りだしたころ。なんとか岸からちょっと離れた場所に適地を見つけ今夜の泊地と決める。

 

水が黄色く淵は黒くなる

 

ワイヤーが掛かっている滝

同じくワイヤーの滝を登る中村

嬉しそうな中村

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

噴水の滝

樹林内なのでタープが張りやすい。タープを張ってその下にツエルトを張る。タープが広いので雨の心配はいらなかった。今晩は泊地に到着するのが遅かったのでお酒を飲みながら食事を作る。今晩は味噌ベースの鍋とした。沢では意外と体が冷えるので夏でも暖かい鍋物は嬉しい。御飯は生米を持ってきて炊いた。今回は焦げ付かずいい感じで出来たが82点。なかなか90点台は出ない。
ほろ酔いで22時ごろ寝たと思う。
雨は時折パラパラと降っていた。明日の天気の心配をする。天気が悪かったら五丈沢沿いに黒戸尾根の5合目に上がり下山しようかなどと考えながら眠りについた.

本日のディナー

タープの下にツエルトを張る

8月14日(月) 6:00起床8:00出発—10:00千丈の滝—右俣出合11:00—奥千丈の滝の上13:00—泊地16:00

朝方まで時折小雨が降っていて、なんとなく起きるのが遅くなってしまった。朝食を済ませ出発。
相変わらず次々と滝が現れる。獅子岩の下を通り、本流との出会いを過ぎ8mの滝。ここは左岸を巻くと有るがどう見ても立っていて怖そうだ。右岸から巻いてみる。降りるときに懸垂が一度行った。懸垂する場所にテープが木に巻いてある。

 

こんなナメもある

奥に獅子岩の岸壁が見える

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

釜のある滝を右岸よりFixを頼りに巻く

千丈の滝は左から巻く(右岸)。滝の上でこの後どうするか思案する。ここでなんと!携帯の電波が入る事に気づき、早速天気予報を見る。今のところ雨は降ってはないが、ガスが低く立ち込め上方の視界は悪い。だがしかし、予報では今日は雨は降らなさそうな予報。「せっかくここまで来たからには登りたいよね」と意見が一致して遡行を続けることに決める。
撤退するな五丈沢を上がり、黒戸尾根の5合目に出て登山道を下山するつもりでした。

千丈の滝を眺める白井

千丈の滝の上で

新たに気を引き締め登っていくと圧巻の坊主の滝が現れる。そそくさと右のルンゼを少し詰めたところから踏み跡を辿って滝上へ。
ガシガシ登っていくと黄蓮谷の左俣との分岐に到着。ここからが本日のハイライト部分に突入です。奥千丈の滝ってどれが一体そうなのかよく解らなかったですが、最初の滝は右寄りにフリーで抜ける。
その後はルンゼ状の部分もフリーで最初に白井が試みるが足が滑り、中村君のところまで滑り落ちた。少し尾てい骨を打ち、テンション下がったが再度突っ込む。今度は一応ロープを出しました。
最後の方は巻き道を使い滝上へ。この時我々と反対の右岸に滝を巻いて登っているパーティーを発見。お互い手を振り挨拶する。

ちょっと写真だと滝の大きさが解りにくいですね(坊主の滝)

黄蓮谷左俣と右俣

奥千丈の滝の入り口

 

ここも滝の右側を登る


グングンと高度を稼いで登っていきます。

 

 

 

奥千丈の滝の上部

 

フリーで登るが荷物が重い

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

その後左より烏帽子沢が合流する所で、だいぶ水量は減ってきたものの滝の直登は傾斜があり難しそうだったので、烏帽子沢寄りにフリーで登って行く。地味に悪かった。気分はアレックス・オノルドです。中村君はここのノーロープでのフリーが一番嫌だったと後で言っていた。
烏帽子沢の右岸寄りを登り、右俣の本流へ戻ろうとしたい。しかし踏み跡はそのままブッシュを登っていく感じである。なんかどんどん本流より遠ざかってしまいそうなので、ウロウロしながらなんとか烏帽子沢を横切り、本流へ戻る事が出来た。ここで1時間ほど時間ロスしたと思う。
少々辛い滝を登ると尾根上のテラスみたいな感じのいいテント場があった。もう少し登るとそこには更にテント最適な場所がある。
すぐ上には大き目な雪渓が残っていた。ちょうど16時頃でもあったので、にべもなくここに泊まることに決める。

樹林内にタープをはりごろ寝

飯を作りながら酒を飲む?と気持ちい時間を夕暮れまで過ごす。惜しむらく青空が全く見えないのが残念である。
夜の20時ごろタープの下にごろ寝して就寝。星空見えず残念。

15日(火) 4:30起床:泊地6:00出発—7:15三段の滝—8:00三段の滝上—9:30登山道—9:40甲斐駒ヶ岳山頂—11:00七丈の小屋—16:00竹宇駒ケ岳神社駐車場—16:40尾白川林道の日向山登山口

夜中に何度か雨がパラついてはいたが問題は無かった。4時半に起きる。辺りは薄明るくなってきていて、まだ雨は降っていない。即席のうどんを作り食べ、用意をして6時に出発する。
歩き出すとすぐに霧雨となる。すぐに雪渓のある滝を巻きゴーローを行くと三段の滝となる。
小雨が降っているし滝を登攀する気が無いので大きく右から巻くことにした。巻き道はしっかりしているが上部で調子に乗って歩いていたら、いつの間にやら獣道になってしまった。慌てず来た道を下り、修正する。

 

テン場からすぐ上の眺め

3段の滝の一段目

その後、小滝と傾斜の強いゴーローと言うかガレ場を登ると沢の水が無くなりそうだ。休憩して水を補給。二股に分かれている。ガスが立ち込めて視界が悪く良く見えないが左の奥に岩場となっていて、どうもあれが最後の滝らしい。GPSを利用して確認すると右の沢の方が良さそうだと判断。最後の滝が無い方の右の沢へ進路をとる。
狭いルンゼ上の涸れ沢となりブッシュとガレを登って行く。高山植物の花が最後の登りを応援してくれているようだ。中村君は「あの花はアジサイの仲間ですか?」とトンチンカンな質問をしてくる。

巻き道を登る

ウサギギクですか?

ヨツバシオガマとミヤマキンバイ?

最後はひょっこりと甲斐駒から鋸岳方面の登山道に出る事が出来た。最後の詰めは予想どうりに行くことができて満足だ。
頂上まで行き、記念撮影をする。雨の中靴を替え、食べ物を補給するが全く視界が無いし、気温は14度とじっとしていると寒くなるので煙草も吸わず下山する。
下山途中に大岩の陰でタバコが吸えるようなところが確かあったような気がしていた。すると大岩の下で複数人の人が煙草を吸っていたので自分達も休憩させてもらう。話を聞いているとどうやら最近七丈の小屋番となった花谷さん達らしい。ドローンを使って撮影しているみたいだ。
礼を言って雨の中黒戸尾根を下って行く。さすがに天気が悪いせいもあって8合目のテント場も誰も居なかった。

登山道は目の前

登山道に抜けて握手

甲斐駒ヶ岳の頂上です

5合目からは樹林内で視界が全くなくなる。傾斜は緩くなるがダラダラと長い。登山道脇にはキノコが大豊作であった。中村君はなれないザックの重みで肩が痛いらしく辛そうだ。
最後の方は樹林が広葉樹林となりガスが漂う中美しい林内となり、幻想的であった。
やっと竹宇駒ケ岳神社駐車場に到着する。しかし戦いはまだ終わっていない。我々の車は尾白川林道の日向山登山口に停めてあるので、そこまで行かなくてはならないのである。
若者の(と言っても30才は越えている)中村君が取りに行ってくれると思っていたが、どうやら使い物にならなくなっていたので、しょうがなく一人で30分のラストラン、日向山登山口まで登り返す(`・ω・´)。
車を運転して中村君を回収して温泉に向かいました。

振り返って
一つ一つの滝が大きく、登攀するか巻くかの判断はパーティーの力量と日程にどれだけ余裕があるかに変わると思う。今回は素のクライミング能力がある二人であったのでロープを出す回数も少なく済んだ。時間があれば直登してみたい滝はいくつかあった。
ロープ30m×1本だったが充分まにあった。
過去の記録を見ると烏帽子沢の合流点は何通りも登り方があるみたいだが、大きく左より巻いてしまうとつまらないと思う。本流沿いに登れればやはりそれがベストだと思う。
最後の詰めも左行く人と右行く人いるが、右の方が断然頂上に近く出れるし、ブッシュやハイマツ漕ぎもないのでいいと思う。

中村君の感想
初めての沢泊、甲斐駒ヶ岳、黒戸尾根と初めて尽くしの山行でした。
沢というか谷のスケールがとにかく大きく、滝を見て、渋いクライミングをし、雪渓を見て、山頂に立ち、つやつやのコケを見ながら尾根を歩き、大自然を満喫できました。
体力面で限界の山行でしたが、ホシガラスや謎の花、コケ、キノコに癒されながら無事やりきることができました。
白井さん、事前の準備や食事等色々とお世話になりました。ありがとうございました。

この記事を書いた人

クライミング全般大好きです。
仲間と楽しいクライミングを重ねて行きたいです。
一応現在チーフリーダーをやらせてもらっています。
愛犬、愛妻、愛娘と新城市で暮らしてますが、私が愛されているかは、解りません...

目次