春山合宿:月山、鳥海山(&観光編)

【月山、鳥海山】2017.05.11(上田)
【年月日】2017年04月30日/5月2日
【メンバー】上田、西村

昨年の春山合宿で東北山行、鳥海山と朝日連峰を計画したものの、北日本の悪天が続くことで南アルプス縦走に変更した。
今回はそのリベンジで、前半で関東メンバーとのジョイントで月山と鳥海山、後半は豊川メンバーの朝日連峰にジョイントするという贅沢なプランとなった。

◆月山登山
4月30日(日)
上田は前夜22:40 名鉄バスセンター発の夜行バスで早朝6時前に新潟到着。8時過ぎに上越新幹線で東京から到着した西村さんと合流し、レンタカーで日本海東北自動車道(所々国道7号線)で一路山形に向かう。前途を約束するかのような晴天の中、たくさんの雪をかぶった飯豊連峰、朝日連峰の西面からの眺めや、山形に入ると日本海の眺めを楽しみながら北上し一路鶴岡へ向かう。鶴岡で山形自動車道に入る頃には、北には鳥海山、南東には月山と白銀の山が姿を現しいよいよ今回の山旅が始まる思いが高まる。山形方面に向かい標高を上げるに連れ、新緑から残雪の山となりさすが東北の豪雪地帯に入ってきた感じがする。月山の南面にあたる月山ICで降りて、月山スキー場に向かう。既に正午を過ぎており、登山を開始するには遅い時間となったが好天でもあり行動時間が4~5時間ということで、リフト(570円)一本乗って上駅(1520m)で計画書を提出し、13:10に歩き始める。山の上の方は風が強まっているとのアナウンスで気を引き締めて出発する。
当初左側の姥ヶ岳から稜線伝いのルートを予定していたが、好天で雪は腐っているものの積雪も安定していることから、トレースのあるトラバースルートを登っていく。途中すれ違った下山者からは頂上付近の強風に気を付けて、などと言葉を交わす。北面が切れ落ちた牛首(1729m)の下の斜面を14時半に通過し、月山本峰に上がる西面の大きな斜面を登っていく。さほど急登では無いが徐々に風が10~12m/sと強まって歩きにくい。振り返ると眼下の牛首のやせ尾根や湯殿山の雪の稜線が美しい。 稜線直下の鍛冶月光(延命地蔵)で小休止し(15:30)、稜線に上がるが一気に風が20m/s位に強まりとても歩くことはできない。頂上と頂上小屋、月山神社の鳥居を300m先に確認して、残念ながらここで引き返した。私の中では登頂ということにした。(15:45)
行きと同じトラバースルートを下り上駅に17時に到着、リフトの西面の姥沢をひたすら下り17:35に駐車場に着く。 上部で風が強かったものの好天に恵まれて延びやかな月山の雪面を楽しむことができた。下山後、鶴岡の市内に出て定食屋さんで夕食を済ませ、庄内おばこの里こまぎの湯で汗を流し、庄内でのお宿「つるおかユースホステル」に向かった。

◆鳥海山登山
5月1日(月)
最上峡の船下りと酒田港近くの日和山公園を観光した後、翌日の鳥海山登山に向けて、酒田市の北隣の遊佐(ゆざ)町から鳥海ブルーラインで象潟口コースをめざす。この時期8:00~17:00のみの通過で、それ以外の時間はロックアウトされるため、早朝に出発したい我々は午後鉾立まで入った。 当初テント泊の予定ではあったが、西村さんがここの鉾立山荘の素泊まりが1800円と格安なことを見つけ利用させてもらうこととした。お値打ちで快適さを求める探求心、大したものでこれも女子力ですかね? 快適な畳部屋と地元秋田の気さくな叔父さん達とのお話は楽しく大事な情報も得ることができた。明日の外輪山コースは行者岳の先から新山への下降が厳しくまた時間がかかること、千蛇谷コースは七五三(しめ)掛から谷へのトラバースと下降が注意ポイントとのアドバイスを頂いた。我々もロープを使う装備で出かけることとする。
1160mの鉾立から日本海へ沈む夕日は幻想的で素晴らしかった。

5月2日(火)
3時過ぎに外へ出ると満天の星空だった。朝の支度をしてほぼ明るくなった4:40に出発。頂上付近はガスがかかり海岸沿いには低い雲が広がっている。このままでは影鳥海は見えない(*_*;  左側の稲倉岳(1554m)との間に奈曽谷が深く切れ込んで前方には雪解けを集めて白糸の滝が落ちている。 尾根上の道標高1550m位からはほぼ赤布に沿ってすり鉢状の斜面を登っていく。 冷たい風が強まり徐々に冬の様相となり7:10に御浜(おはま)小屋に着く。小屋の南面にテントが1張張ってある。また単独のスキーヤーが頂上をめざすということで追い越していく。ここから時々視界が悪くなり先行するスキーヤーの姿も見失いがちになる。御田ヶ原の分岐(コル)からは雪面も硬くなり、斜面を上がると外輪山ルートを分ける七五三掛に着く(8:02)。左側がすっぱり切れた斜面で、雪面も硬くトレースも無いため、8mmx30mロープで西村さんを確保しながらトラバース斜面を通過し、次は千蛇谷への急斜面もロープで確保をして8:45に谷に降りる。右側の外輪山からのデブリが少しあったが雪は安定しており、外輪山基部から左に離れながら登っていく。谷の中は風が弱まるがガスが濃くなる。徐々に左に方向を変えて高度を上げるが頂上の新山は見えない。いったん物忌神社をめざすが視界がほとんど無く5m位の岩陰でしばし休憩(10:10)。 現在地を確認し視界が出てきたところを左にトラバースして新山頂上に続く浅いルンゼ状の所を上がると岩峰がいくつも屹立する頂上であった(10:40)。 丁度ガスが一気に切れて七高山から右の方に冬の様相の外輪山が姿を現す。北東面の矢島口から登ってきた2人パーティと写真を撮り合い、互いに登頂を喜ぶ。ルートファインディングに苦労しただけにうれしい登頂となる。

11:05に雲が切れた素晴らしい眺めの中、千蛇谷を下っていく。振り返ると穂高の涸沢カールに似ている。

12時過ぎに再び七五三掛に上がる急斜面とトラバースをロープで通過する。

念のためロープを使った堅雪のトラバース

回り込むと七五三(しめ)掛の分岐点
あとは腐り始めたなだらかな雪面をひたすら下る。本峰の展望が素晴らしい御田ヶ原(13:10)や御浜小屋付近ではスキーヤーやボーダーが大勢滑降を楽しんでいた。

御浜小屋の南面 鳥海湖の周りの斜面はスキーヤー、ボーダーのメッカ

鳥の海御浜神社の鳥居 アイゼンを外して雪面をのんびり下り、15:15に鉾立に到着した。

上部はガスで、少し冬の厳しさと日本海に続く斜面を楽しませてくれた鳥海山。心に残る山行となった。

代掻きと田植えの準備が進む山麓と堂々とした山容の鳥海山

月山のきれいに姿を見せてくれた

◆観光編
庄内に滞在中、月山から下山した4/30と、鳥海山から下山した5/2は「つるおかユースホステル」に逗留した。http://www.jyh.or.jp/info.php?jyhno=1503
築後50年というコンクリートのユニークな建物で暖炉もある広い交流スペースで、男女別のドミトリーの入り口が階段状に配置されている。浴室は無くシャワーだけというのは生活面では?でしたが、ユースホステルに慣れた方には面白いと思います。管理人の菊池さんは農学部で林学を学び、環境教育(ユースホステルの近くで夜光虫が見れます)やマクロビオティックを実践し、自然エネルギー(主に風力発電)の技術支援をするというこだわりの方でした。管理人のお勧めはイベントをやっている酒田市美術館と羽黒神社でしたが、西村さんとの相談で却下で、私の希望で芭蕉の奥の細道をたどる名所巡りとさせてもらった。
5月1日(月)
朝はゆっくりで朝食後、最上峡の船下りに向かう。船下り観光は3社ほどあるようだが、一番メジャーで上流から1時間で船下りを楽しむ「最上芭蕉ライン観光(株)」を選んだ。鶴岡方面から北上し国道47号線沿いに走ると最上川の道となる。古口港(戸沢藩船番所)スタートで草薙港(川の駅・最上峡くさなぎ)までの約12kmを約1時間かけてゆったりと進む。

ケヤキなどの新緑、山桜やコブシの白い花、ブナの鮮やかな黄緑の新緑と天然杉の濃い緑のコントラストが素晴らしい。最上川は雪解け水で嵩を増してゆったりと、所々水しぶきを上げながら激しく流れている。芭蕉が梅雨時に船下りで詠んだのが「五月雨を 集めて早し 最上川」なら、今の時期は「雪解けを 集めて早し 最上川」といったところ。 船頭さんの語りも素晴らしく、素朴な中に笑いあり唄ありでとても良かった。真室川音頭、最上川舟歌、おしんの子守歌の唄声が心にしみた。

鳥海山ブルーラインに向かう途中、最上川河口と酒田港が望める日和公園に立ち寄る。http://www.sakata-kankou.com/spot/172 芭蕉の「暑き日を 海に入たり 最上川」の句碑があった。快晴で清々しい風が吹く中で最上川河口と日本海を見ながらゆったりとした時間を過ごせた。

ユースの菊池さんに紹介頂いた遊佐町にあるエメラルドグリーンの池 「丸池様」へ寄ろうとしたが、入り口が分からず、鳥海山ブルーラインへ直行した。
http://shounai.hateblo.jp/entry/2017/04/08/223537

5月3日(水)
鳥海山登山の翌日、夕方豊川からの遠征組と合流するため三日間滞在した庄内地方を離れ、再び山形自動車道で村山地方の山形市へ向かう。

月山

葉山

蔵王連峰(右)と二口山塊 めざすはこれも奥の細道ゆかりの地、宮城県境近くの臨済宗の名刹、山寺(立石寺)。奥の細道の中でも名句と言われる「閑さや 巖にしみ入る 蝉の声」を詠んだ場所。私にとっては学生時代、20年近く前、今回が3度目で思い出深い場所。
http://www.yamagatamoviemarket.jp/page/33
急な山の斜面や奇岩が次々と現れ、こんな所にと驚く場所にお堂などが建てられている。一番上の五大堂まで上がると山寺の町並みや学生時代にワンダーフォーゲル部で良く歩いた宮城県境の二口山塊(蔵王連峰と船形連峰の間の連山)も見えて懐かしかった。
山形県庁の近くの雰囲気のある定食屋さんで食事の後、西村さんの希望で天童市の将棋資料館へ。将棋は指さないがプロ棋士 渡辺竜王の奥さんの将棋漫画から入って昨今の将棋連盟のカンニング疑惑など、将棋談義に花が咲いた。
http://chinobouken.com/shogi/

観光も終了、レンタカーも返却し18時過ぎに山形市内で豊川メンバーとめでたく合流。ピックアップありがとうさん! 3つ目の山、いざ朝日連峰へ!

(記:上田歳彦)

この記事を書いた人

愛知県山岳連盟 豊川山岳会事務局
山岳上級指導員 気象予報士
NPO法人 ウェザーフロンティア東海会員

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