Step 1 地図が立体にみえる

予習クイズ ちょっと予習クイズ

ユキがケンタに聞きました。

ケンタ、ここから4つだけ。等高線、ピーク、尾根、沢(谷)。これ、自分の言葉で説明できる?
……ぐっ。ピークは……山のてっぺんですよね
うん、それは合ってる。あと3つは?
えーと……(地図を見ながら口を閉じる)

大丈夫です。Step 1 を読み終わるころには、4つともふつうに答えられるようになります。

全部覚える必要はありません。むしろ、覚えるんじゃなく「地図を見たときに、自分の中で意味が立ち上がる」感覚が手に入ります。

それが Step 1 のゴールです。


プロローグで、ケンタは「読めなくていい」を受け取りました。ここからは、地形図の中に立体を見つける練習が始まります。

最初の道具は 等高線。地図にぐにゃぐにゃ走ってる、あの茶色い細い線です。これが読めるようになると、紙の地図が立体に見え始めます。

その前に、地図そのものについて1分だけ。山で使う地図には、大きく2種類あります。

  • 地形図(国土地理院)── 等高線が細かく描かれた、測量精度を重視した地図。読図の主役はこちら。
  • 山と高原地図(昭文社)── 登山道とコースタイムが書き込まれた、登山者向けの実用地図。
国土地理院の地形図の例
地形図の例
(出典:国土地理院 地理院地図)
山と高原地図(剱岳)の例
山と高原地図の例
(出典:昭文社『山と高原地図 剱岳』)

このコーナーで「地図」と言ったら、基本は地形図のことだと思ってください。
そして、地形図には縮尺があります。1/25,000(地図上の1cmが現実の250m)と1/50,000(1cmが500m)。読図の練習で使うのは1/25,000のほう。地形が細かく読み取れます。


等高線って、結局なに?

出発前のベンチで

ケンタは山岳会に入って3ヶ月、登山歴は1年。今日は本宮山、ユキとの初の同行山行。

朝、本宮山ウォーキングセンター(豊川市上長山町)の駐車場で集合。大鳥居をくぐって、表参道コースから登ります。山頂には砥鹿神社の奥宮(里宮は山麓の一宮町)があり、ここを目指す古くからの参詣道。1丁目から50丁目までの丁石(石の道しるべ)が並んでいます。

出発前、駐車場のベンチに地図を広げる。

ケンタ、これ何の線か言える?
えーっと、…道?
道はもっと太いよ
…川?
川は青

ケンタ、撃沈。

うう……
これ、等高線(とうこうせん)。同じ高さの場所をつないだ線

ユキはペットボトルの蓋を閉めて、ザックに戻す。ケンタは地図に顔を近づけたまま、線をひとつ目で追ってみる。

地図に顔を近づけて線を追うケンタ


子どもの頃、海や公園の砂場で、砂山を作って上から水をかけたことありませんか? 水は山の頂上から、低い方へ低い方へと流れていって、谷ができたり、尾根ができたりしました。

あの砂山を上から覗き込んで、「ここから上は10cm」「ここから上は20cm」と、同じ高さの場所をぐるっと輪っかで囲ってみる。それを次々に積み重ねたものが、等高線です。

地図に書いてある等高線も、原理はまったく同じ。山を真上から見て、海抜100mの場所、110mの場所、120mの場所…と、それぞれを輪っかでつないだものを並べてあるだけです。

国土地理院の地形図(縮尺1:25,000)では、この線が10メートルごとに引かれています。

砂山の輪切り立体イメージと地図上の等高線


線の密集 = 急斜面

登り始めて40分

大鳥居をくぐって表参道に入る。最初の階段、丁石を眺めながら登りはじめて、しばらく歩いたところでユキが立ち止まって地図を指差した。

ケンタ、25丁目あたり、ちょっとした急登が来るよ
え、なんで分かるんですか?
線がギチギチに詰まってるから。それに『馬の背岩』ってここの名物

ケンタは地図を覗き込む。さっきまでスカスカだった等高線が、25丁目あたり ──「馬の背岩」と呼ばれるあたりで、一気に密集していた。

しばらく登って、たしかに馬の背岩が現れる。岩を手で押さえながら、足元に気をつけて通過する短い岩場。等高線の混み具合と、目の前の地形が、ぴたっと一致した瞬間だった。


線がギチギチに詰まっている部分は、急斜面です。短い距離で高さを稼ぐから。
線がスカスカに離れている部分は、緩やかです。同じ高さを稼ぐのに長い距離をかけるから。

慣れないうちは、地図のコピーを取って 等高線に色を塗ってみる のがおすすめです。私が読図を学んだ恩師・山田猛先生から教わった方法で、10mごとに違う色を塗っていくと、急なところと緩いところが視覚的に「層」になって浮き上がってきます。

この色塗り練習、もっと詳しい教材も Step 1 末尾の「もっと深く学ぶ」にあります。


ピーク・尾根・沢の見分け方

山頂エリアで

汗をぬぐいながら山頂エリアに着く。50丁目、砥鹿神社の奥宮。古くから信仰を集めてきた本宮山の頂上です。

奥宮の脇のベンチに腰を下ろして、ユキはまた地図を広げた。ケンタはもう、自然と覗き込む癖がついている。

ここが本宮山の山頂。一番内側の線が一番高い
等高線って、山頂を中心に同心円みたいになるんですか?
丸みのある山ならね

ユキは地図上、別の線の塊を指す。

ここを見て。線が外に膨らんでる。これが尾根
外に膨らむ?
等高線が低い方に膨らんでたら、そこは尾根。逆に高い方に食い込んでたら、それは沢

さっきの砂山に上から水をかけると、勢いよく流れた水のあとが沢になり、水に削られず残った土地が尾根になりましたよね。

これを地図の言葉に置き換えるとこう:

  • ピーク(山頂):等高線が閉じた円
  • 尾根:等高線が低い方(数字が小さい方)に膨らんでいる
  • 沢(谷):等高線が高い方(数字が大きい方)に食い込んでいる

地形図には膨大な情報が詰め込まれていますが、まずこの3つ ── ピーク・尾根・沢 ── が見分けられるだけで、読図の見え方が変わります。


ちょっと確認 ちょっと確認

ユキが地図のある場所を指差してケンタに聞きました。

この線、低い方に膨らんでます。これって尾根ですか? 沢ですか?

答えは

尾根 です。

「低い側に膨らんでたら尾根、高い側に食い込んでたら沢」── これだけ覚えればOK。

迷ったときは、砂山に水をかけるイメージに戻ってください。水が流れていく道が「沢」、水に削られず残るのが「尾根」。

尾根と沢の見分け方


Step 1 のまとめ

冒頭の問いに戻ります。

「等高線、ピーク、尾根、沢(谷)。これ、自分の言葉で説明できる?」

もう一度、自分の言葉で口に出してみてください。

用語 こう答えられればOK
等高線 同じ高さの場所をつないだ輪っか。1本10m
ピーク 等高線が閉じた円になっている、山のてっぺん
尾根 等高線が低い方に膨らんでいる場所
沢(谷) 等高線が高い方に食い込んでいる場所
おまけ:急斜面 等高線がギチギチに詰まっているところ

ぜんぶ言えなくても、地図を見たときに「ここがピークで、こっちが尾根かな」とぼんやり見えれば十分です。


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Step テーマ
プロローグ 山の地図って、なんだろう?
Step 1(今ここ) 地図が立体にみえる
Step 2 地図を山に重ねる
Step 3 コンパスを相棒にする
Step 4 出発前にコースをなぞる
Step 5 体で動かして覚える
応用編 Step 6 なぜ人は道に迷うのか
応用編 Step 7 迷ったその瞬間、何をするか

次の章では、地図と実際の山を「目で重ねる」練習に入ります。コンパスはまだ出しません。

寄り道(読み物として)


もっと深く学ぶ もっと深く学ぶ(中級者向け)

もっと深く学びたい方への、私の教材集です。初心者は飛ばしてOK、Step 2 へ進んでください。

山田猛先生の色塗りメソッド
等高線に化粧を施す ── 写真測量の表現力
主曲線・計曲線・補助曲線の分類


戻り道