ちょっと予習クイズ
ユキがケンタに聞きました。




大丈夫。Step 2 を読み終わるころには、この答えがふつうに出るようになります。
しかも、コンパスを使わずに、目で見える景色だけで 整置ができるようになります。
それが Step 2 のゴールです。
Step 1 で、ケンタは地形図に山の形を見つけられるようになりました。等高線が立体に見える、ピーク・尾根・沢が分かる。地図の中の山が、ようやく見える。
でもまだ、地図と実際の山は別々の存在です。Step 2 では、その二つを重ねる練習をします。
このStepではまだコンパスを出しません。コンパスを使わずに、目で見える景色と地図だけで、自分がどこにいるかを掴む。それが Step 2 のゴールです。
地図、向きどっち?
山頂、奥宮の前で
本宮山の山頂、50丁目の砥鹿神社奥宮。今日は晴れて、南の方角に三河湾までうっすらと見えている。お賽銭をして、おにぎりを食べているケンタ。ユキは地図を広げて、遠くの景色と見比べていた。












ケンタは地図を、両手で持ち直す。



ケンタは言われた通り、地図をくるりと回す。三河湾を地図の上側(自分から見て外側)に、本宮山の山頂を地図の下側(自分から見て内側)に。すると ── 地図の左側が東、右側が西。






ケンタは地図を持ったまま、ぐるっと体ごと回って、もう一度三河湾を確認する。地図の向きと景色の向きが、ぴったり重なった。お弁当の包みをザックにしまって、地図を膝の上に置き直す。
地図の向きを、実際の地形と同じ方向に合わせること ── これを 整置(せいち) と言います。
整置をしないまま地図を見ると、こんなことが起きます。
「地図では右に曲がるはずなのに、目の前の道は左に曲がっている」
これ、初心者が地図を見て混乱する原因のかなりの割合を占めています。地図の北と現実の北が一致していないから、右と左が頭の中でひっくり返る。地図が読めないんじゃなくて、地図が回ってない(整置していない)だけ。
整置の正確なやり方は Step 3 でコンパスを使って覚えます。でも今日のように、晴れていて三河湾みたいに位置が分かりきっていて目印が見えているなら、目視だけで十分整置できます。
景色の中の何かを地図の中で見つけて、その方向が一致するように地図を回す。これだけ。




ちょっと確認
ユキとケンタが奥宮の前で、地図と三河湾を照らし合わせていました。これは何という作業?
答えは
整置(せいち)
地図の向きを、目の前の景色と一致させること。
ポイントは「地図を回す」だけじゃなく、「地図と体を一緒に回す」こと。地図だけ回しても、自分の体が違う方向を向いてたら意味がない。
歩きながら回し続ける3つの動作
21丁目、林道出合の東屋で
奥宮を後にして、表参道を下り始める。下山ペースで40分ほど歩いて、21丁目の林道出合に着いた。ここに古い東屋があり、何人かの登山者が水分補給をしている。
ユキは東屋のベンチに腰を下ろして、地図を出した。















ユキが地図の表参道を、指で先のほうへなぞっていく。






ユキはしばらく地図を眺めたあと、ぱたんと閉じてポケットに戻し、再び歩き出す。
5分後、たしかに右に分かれる枝道が現れた。ユキは立ち止まらず、ちらっと視線を落として「ここはまっすぐ」とだけ言って通過する。
ユキがやっていたのは、ナビゲーションサイクル と呼ばれる、登山中の地図の使い方の基本リズムです。
サイクルは3つの動作でできています。
- 先読み:これから進む先に、何が出てくるかを地図で確認する
- ルート維持:歩きながら、地形と地図がズレてないかチェックする
- 現在地把握:目印になる場所(分岐・ピーク・沢)を通過したら、地図の上で位置を確かめる
そしてまた 先読み に戻る。歩いている間、頭の中ではこの3つがぐるぐる回り続けています。
慣れた登山者は、地図を出すタイミングが上手いです。「分岐が来そうな数分前」「景色が変わったとき」「『あれっ?』と思ったとき」 ── 機械的に何分おきに出すんじゃなく、先読みが必要になりそうな少し前に、自然と地図に手が伸びる。
これは プロローグで渡した合言葉、地図は、山に入る前から使う道具です。山に入ってからも、次の特徴物に着く前から使う。後から答え合わせをするより、先に予習しておくほうがずっと楽。


ちょっと確認
ナビゲーションサイクルの3つの動作、何でしたっけ?
答えは
① 先読み → ② ルート維持 → ③ 現在地把握 → ① に戻る
「次に何が来るかを先読みして、歩きながらズレてないかチェックして、目印で現在地を確かめる」── これをずっと回し続けるのが、登山中の地図の使い方です。
「特徴物」── 地図と現実をつなぐ目印
「分岐・ピーク・沢」のような、地図と現実の両方で確認できる目印を、読図では 特徴物(とくちょうぶつ)と呼びます。ナビゲーションサイクルの「現在地把握」で使うのは、この特徴物です。
特徴物を使うコツは、大きな特徴物から、小さな特徴物へ。山頂・大きな沢・林道といった見落としにくい大きな目印で「だいたいこの辺」を確定してから、その中で小尾根の分岐や小さな道の曲がりといった細かい目印を拾っていく。いきなり細かい現在地を当てようとすると、すぐに迷います。
「だいたいこの辺」でいい
馬の背岩を下って
25丁目の馬の背岩を、慎重に下っているところ。岩場を過ぎて踏み跡に戻ったあたりで、ケンタが地図を取り出して尋ねる。












ケンタは地図を畳む手を、一瞬止めた。
初心者が現在地把握でつまずく一番の原因は、「ピンポイントで一点を当てなきゃいけない」と思い込んでしまうことです。
実際の登山中の現在地把握は、もっとふわっとしていて構いません。
- 「今、この尾根の中盤」
- 「この沢の右岸を下ってる途中」
- 「ピークAとピークBの間」
これくらいの幅で十分です。
なぜ「点」じゃなく「範囲」でいいのか。理由は二つ。
ひとつは、点で当てようとすると、ちょっとでも合わない情報が出てくるたびに不安になり、判断が遅れること。範囲で考えていれば、多少のズレは「まだ範囲内」で吸収できる。
もうひとつは、登山で本当に必要なのは「次の分岐や次の特徴物にたどり着くまで、間違った方向に進んでいないか」だからです。それを担保するには、範囲が分かっていれば足りる。点まで詰めなくても十分役に立つ。
Step 2 のまとめ
冒頭の問いに戻ります。
整置って、何をすること?
| 用語 | こう答えられればOK |
|---|---|
| 整置 | 地図の上下左右を、目の前の景色と一致させること |
| 目視整置のコツ | 知ってる目印(海・市街地・大きなピーク)を景色の中で見つけて、地図上のその目印が同じ方向に来るように地図ごと体ごと回す |
| ナビゲーションサイクル | 先読み → ルート維持 → 現在地把握 → 先読み… |
| 現在地は「範囲」で | 一点で当てなくていい。「だいたいこの辺」で十分 |
地図と現実の山が、頭の中で重なり始めたら、Step 2 はおしまいです。
次のStepへ
| Step | テーマ |
|---|---|
| プロローグ | 山の地図って、なんだろう? |
| Step 1 | 地図が立体にみえる |
| Step 2(今ここ) | 地図を山に重ねる |
| Step 3 | コンパスを相棒にする |
| Step 4 | 出発前にコースをなぞる |
| Step 5 | 体で動かして覚える |
| 応用編 Step 6 | なぜ人は道に迷うのか |
| 応用編 Step 7 | 迷ったその瞬間、何をするか |
樹林帯やガスで景色が見えないとき、整置はどうする? いよいよコンパスが登場します。
寄り道(読み物として)


ここまでの復習に短い動画を1本
「まずはこれだけ!読図の基本!」(山と渓谷ch)
縮尺・等高線・ピーク/尾根/谷・地図記号という、Step 1〜2 で扱った基本要素を、約10分でぎゅっとおさらいできます。整置の動作確認にも。


もっと深く学ぶ(中級者向け)
もっと深く学びたい方への、私の教材集です。初心者は飛ばしてOK、Step 3 へ進んでください。