若手でGOGO前穂・北尾根

【前穂高北尾根】2015.10.17-10.18 山形
【年月日】2015年10月17日~18日
【メンバー】山形(L)、白木(ひ)

今季に行くには最後のチャンスと踏み、市民トレッキングを申し訳なくも辞退し、前穂北尾根に挑戦した。

クライミング熱は一向に止まないし、足の怪我で延期していた事も相まってどうしても今シーズンにやりたかった。
ひろ君をお酒の席でうまい事誘惑し、かくして若手二人で行く事となった。

自分が誘った以上、責任は自分にあるし今回は頼れる白井兄貴もいない。
もちろん例年のように死者が出るルートである事は知っていたが、それでも行きたい欲の方が圧倒的に勝っていた。

行くと決めた二週間ぐらいひたすら前穂北尾根について研究した。事故の多い4峰では落石が怖いので先行パーティがいた場合は距離を取ろう、ザイルは落石を誘発するので確実なルーファイをしてノーザイルで突破しよう等可能な限りシミュレーションした。自分がリーダーでない時でも本当はこれぐらい前準備をして臨むのが良いのだろう。

天気の動向も気になるところであった。
穂高岳山荘のFacebookページでは積雪情報も出ており、判断に迷ったが以下の二つの絶対的なルールを課してチャレンジする事にした。
①5,6のコルまで到達し、岩にがっつりと積雪があれば潔く撤退する
②行くか迷ったら撤退する
(出発の前日にカクタスで浅田さんに出会った際に頂いたアドバイスだ)

10月17日(土) 上高地バスセンター→横尾→涸沢→5,6のコル
金曜日の晩発で0時頃に沢渡に到着、翌日は沢渡からバスに乗り上高地に向かった。
何度来ても上高地の空気感、高揚感は好きだ。自分は豊川山岳会に入る前に来て以来だから1年以上ぶりだ。

今日の行程は5,6のコルまでだ。
のんびりと景色を見ながら進む。土曜日は雨予報だったが直近で晴れ予報に変わる。

2紅葉がキレイな箇所も

秋晴れで気持ちが良い!

5

今回はベースを張ったうえでのアタックではなく荷物を背負ったままのアタックとなる。Ⅲ級レベルの登攀だがお互い出来るだけ軽量化しようという話をしていたが何だかんだで55 Lパンパン、体感的には15キロオーバーだったかと思う。
ガチャやロープ、防寒着、食糧に加えて雪渓を歩けるようバイル、アイゼン等入れていたのでやむなしか…。

ほんのわずかな抵抗でもしてやろうという事で行動食は減らして涸沢ヒュッテで食べる事に決めていた。
6

あれ?そんな抵抗もむなしく気づいたら缶ビールの500 ml缶を嬉々として購入している自分がそこにいた笑。
ビバーク用の水 3L以上を各自積み、この時点で総重量は20 kg近くになってしまった。

事実、5,6のコルまでの急登はかなりしんどかった。
どうせアイゼンも付けるしバイルも手に持つし多少軽くなるだろうと期待したが残念、雪渓はほとんど消え去っており翌日もアイゼン、バイルの活躍機会は無しでただの歩荷トレ要員になった。

9

無事に5,6のコルに到着、テントを張り宴会スタートだ。この瞬間がたまらんぜー!ビール担いで良かったー!
10お気づきだろうか。写真を撮ってもらっているのだ。
こんな時期にもう1パーティーいました。

東京の山岳会の3人で聞くところによると今季のGWにお世話になった先輩が北尾根で亡くなり、弔い山行に来ているとの事。
死亡事故のない豊川山岳会では死はそこまで身近ではないがやはり山岳会によっては弔い山行と名の付く山行があるのだなと思った。

3人共40歳以下なのにヨセミテ遠征、中国遠征、谷川岳冬季登攀などかなり経験豊富でお話しを聞いて刺激になりました!!
(※田トリオ、ちゃんとブログ見てくれてますか?!)

岩に雪が付いていない事は確認したし、気合も十分、実際のかっこいいルートをこの目で見て1%も迷いは生じなかった。空を見上げると満点の星空だ。
「明日は必ず成功させてやる」
そんな強い気持ちで20時頃シュラフに入った。

10月18日(日)5,6のコル→5→4→3→2→本峰→岳沢ヒュッテ→上高地

朝は3時半に起床、うどん・鍋の残りをかきこむ。
5時半には出発、なんと言っても今日が本番だ。しかし寒い。

11

5峰を過ぎたあたりで日の出を見る。良い天気だ。日が射すとだいぶ暖かい。
富士山を遠方に確認出来た。市民トレッキングも良い天気になると良いなぁーとひろ君と話ながら通過する。
13ここから核心部に近づく。
まずは極めて浮石の多い4峰だ。核心の3峰よりも事故が多い場所と聞く。
落石が怖い為、ザイルを出さずに進む。浮石、落石に気をつけながら慎重にルーファイも出来た。
緊張感がたまらんぜー!でもその緊張感を楽しむ事が出来た。岩と真摯に向き合う。一般登山道ではなかなか味わえないスリルだ。これが醍醐味でもある!
14
8時には3,4のコルに到着するが後続がいない事もあり先行パーティが先を行くのをのんびりと待った。
山岳会Tシャツと3峰を写真に取ったりして遊ぶ^^
ここでフラットソールに履き替える。冬靴をザックに入れるとこれまたズシリときた。
16迷ったらピッチを切ろうという事でのんびり6ピッチもかけてしまった。
ピッチの切り方には改良点があったかもしれないが楽しく安全にやれたのでよしとしよう。
1,3,5ピッチ目 山形リード
2,4,6ピッチ目 白木リード

二人パーティーでロープを出しているとなかなか写真が残っていないのが悲しい点だ…。
でもでも景観も抜群で気分は最高潮!
荷物が重かった分、なかなかにしょっぱく感じた箇所もあったがアドレナリン放出でマリオで言うところのスター状態になっているので問題なし!
チムニーの間や日の当たらない箇所には新雪が見られたがROCK&SNOW状態でこれまた新鮮なクライミングであった。
17193峰を抜けるのに3時間以上費やしただろうか笑
時間を忘れて「楽しいねー」とひろ君と話して3峰直下。

2峰はザイルを出さなくても良さそうだったがこのままスタカットで懸垂下降ポイントまで行く。

ザイルをしまい、さぁ、ゴールはすぐそこ!お待ちかねの本峰だ。
本峰に抜けた先に運良く登山客がいらっしゃり、写真をお願いした。
こんなにも嬉しそうな顔をしてたんだなぁと写真を見返して思った。

20

21

この時点で予定時間を大幅にオーバーしてしまっていた。
連絡が遅くなり、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。

もう上高地発の最終バスにも間に合わなそうだし、ゆっくり帰るかーという事で本峰で達成感を味わいつつだいぶまったりする。

十分に堪能した後、再び冬靴に履き替え紀美子平、重太郎新道を下り上高地に18時10分に到着する。

なんと…勘違いで17時と思っていた最終バスは18時であった。
あれまー!ちょっとペース上げれば間に合ってたやん!

笑いながらタクシーに乗り込み、帰豊した。

今回、本当に貴重な成功体験をまた一つ積み重ねる事が出来た。
北尾根は去年のシルバーウィークに前穂山頂から目にした憧れのルートだ。
いつか自分も…と心に思った。

自分が行きたいと思った憧れのルートに自分の力で行ける。本当に達成感のある山行であった。
一緒に行こうと言って快諾してくれたひろ君、ありがとうございます。

もっともっとトレーニング、経験を積んで色々なルートにチャレンジしたい!

記;山形

 

 

 

この記事を書いた人

こいつノリで生きてるだろと思われがちな関西人ですが山に対しては真剣です。厳しいルートを登った後に絶景を見ながらテント泊にて赤ワインを嗜む、そんな登山が大好きです。

目次