初心者からの読図
予告:読図講習会の開催について(主催:愛知県山岳連盟)
読図講習会定員上限に達したため受付中止となりました。
申し込みありがとうございました。
令和5年5月28日(日) 場所:猿投神社周辺
講師:河合芳尚
国土地理院地形図を更に詳細に加工(縮尺1万分の1)した本格的な地図を用いて読図講習会を行います。コンパスの使い方をマスターし、等高線の曲がり方と地形を見比べて特徴物を確認します。半日のメニューですが、地図がよくわからないという方にお勧めです。地図の楽しさを一緒に学びましょう。
詳細は、愛知県山岳連盟のHPをご覧ください
イベント情報 | 愛知県山岳連盟 (aichi-sangaku.main.jp)
【国立登山研修所のテキスト】
下記をクリックすると、国立登山研修所で作成したテキストが閲覧できます。とても参考になります。
それぞれの分野のレジェンドの皆さんが書かれた素晴らしいものです。とても参考になります。(私も第3部の真ん中辺りで、概念図だけ書かせていただきました。)
「初心者からの読図」コーナーとしてリニューアルいたします。少しづつですが、今まで作成してきたものを更に初心者の方に分かりやすく説明していこうと思います。小さな写真をクリックすると拡大したり、スライド(パワーポイントで作成)が始まります。
(パワーポイントで作成のものは、一気に尾根や沢が出てきた場合、クリックのしすぎが考えられます。尾根や沢を見つけるためにアニメーションをゆっくり動かしています。)
目次
・道迷い遭難は山岳遭難の約4割
・PDCAサイクルで安全登山(国立登山研修所)
・登山装備の紹介(国立登山研修所)
・登山行動の留意点(国立登山研修所)
・読図とナビゲーション(国立登山研修所)
・山に関する名称
・地形図から読み取る危険な場所
・地形図について
・地形図の表現力
・現在の地形図から昔を偲ぶ
・地形図の印刷
・国土地理院の地形図はどのように修正するの?
・山に持参する地形図はこんなものを持っていこう!
・地図記号
・三角点
・等高線
・尾根と沢
・地形的特徴物
・特徴物を見つける時に大切なこと
・隠れ小ピーク、隠れ小コルとは
・ムカデ地図を作ろう
・概念図を書こう
・真北と磁北
・コンパスの使い方
・コンパス1・2・3(国立登山研修所)
・正置(整置)をしよう
・行動中の地図の持ち方
・ナビゲーションとは
・プランニングとは
・ルート維持
・現在地の把握
・スマホの地図アプリ
・3D地形図
・山座同定
・交会法
・あれ?おかしいと思ったら
・思い込み
・道迷い事例に学ぶ(遭難パターンとは)
・なぜ道迷いは起きるのか
・道を間違えやすい地形とは
・道迷い遭難をしないために
・リーダーの責任
・読図講習会資料の作成方法
・高校登山部の先生必見!生徒に興味を持ってもらう小ネタ集
・参考にさせていただいたHP・文献
道迷い遭難は山岳遭難の約4割 (目次へ)
警察庁のHPをみてみると、山岳遭難の約4割は「道迷い遭難」となっており、次いで、「転倒」、「滑落」の順に多くなっています。この「滑落」の数字の中には、道迷いから滑落に至った場合も「滑落」に含まれているため、「道迷い遭難」はもっと多くなります。
皆さんは、山に行くときに「地図とコンパス」を持って行くように言われ、また、数多くの本にもそのように書かれています。
では、地図を読むことはできるでしょうか?コンパスを使ったことはありますか?そんな質問をした時に「大丈夫!」と自信を持って言えるでしょうか?
あるとき、こんな質問を受けました。
「学生に紹介するのに、読図の本はどんな本が良いですか?」
「あの本もいいし、この本もいいし、・・・。でも、学生はお金がないからなぁ・・・・」
「そうだ、豊川山岳会のホームページで紹介しよう!」
こんな発想からこのコーナーが生まれました。
少しでも「地図」を見ることが楽しくなるように雑学を入れてみました。また、道迷い遭難が少しでも減少すれば・・・。という思いも込めて作成しています。
PDCAサイクルで安全登山(動画)(国立登山研修所) (目次へ)
登山は、特異な環境と運動の下で行われるスポーツです。変化する厳しい自然環境で独特な長時間の運動が登山の特徴です。これを「理解」し、「実感」し、「適応」することが必要です。これには、「PDCA」サイクルが有効です。では、登山における「PDCA」サイクルとはどのようなものでしょうか。
一緒に見てみましょう。「国立登山研修所HP(動画5:15)」
名古屋工業大学教授:北村 憲彦氏
※引き返す勇気が必要ではなく、引き返す計画を実行することが必要!
登山装備の紹介(国立登山研修所) (目次へ)
登山って長時間歩くし、登山道、岩場、砂場、雪渓等色々な場所を歩きますね。靴一つとってもどのような靴を履けばよいでしょうか?また、サイズはどのようなものを選ぶのが良いでしょうか?
日帰り登山でも必要最低限どのようなものを持っていく必要があるのでしょうか?また、その装備はなぜ必要なのでしょうか?この動画は、登山装備の紹介だけではなく、必要性やザックのパッキング方法も紹介されています。なにより、島田さんと増本さんの掛け合い紹介が絶品です。
一緒に見てみましょう。「国立登山研修所HP(動画8:51)」
日本プロガイド協会:島田 和昭氏 立教大学山岳部山友会:増本 さやか氏
※「必要最低限の装備はなぜ必要か」理解をすることが大切です!
登山行動の留意点(国立登山研修所) (目次へ)
登山行動は、出発前の体調チェックや装備点検が必要です。また、準備運動も大切です。天候に応じた服装も調節しましょう。
行動中のスピードが早すぎたりせず、チーム内で「暑くないか」「寒くないか」など声を掛け合い、体調の変化に注意しましょう。
天候にも注意して、安全登山をしましょう。
一緒に見てみましょう。「国立登山研修所HP(動画4:53)」
日本プロガイド協会:島田 和昭氏 立教大学山岳部山友会:増本 さやか氏
※チーム内で声を掛け合い、お互いの体調に注意しましょう!
読図とナビゲーション(国立登山研修所) (目次へ)
道迷いを防ぐためには、「読図」と「ナビゲーションスキル」が必要です。これには、「ナビゲーションサイクル」を理解、実行することが必要で、「①先読み(予測)」→「②ルート維持」→「③現在地把握」のサイクルを繰り返すことが重要です。
この動画では、地形図の特徴物はどのような場所を指すのか?地形図の約束事はどのようなものか?磁北線はなぜ引くのか?地形図の「整置」とはどのようなものなのか?
一緒に見てみましょう。「国立登山研修所HP(動画9:09)」
明治大学山岳部炉辺会:谷山 宏典氏
※ナビゲーションサイクルを理解することは道迷い防止の近道です!
山に関する名称 (目次へ)
基本中の基本。山に関する呼び名を説明します。
【山の名称】
山の主な山の名称は、「ピーク」「コル(鞍部)」「主稜」「支稜」「キレット」「岸壁」「岸壁の基部」「カール」等色々あります。「ピーク」「コル」「尾根」「沢」といっても実際の山では色々な呼び方がされています。
【ピーク】
~ノ頭…………………………例:ボーコン沢ノ頭、ウドノ頭、クリヤノ頭、一ノ沢ノ頭
~ノ峰…………………………例:逢ノ峰、一ノ峰、三ノ峰、西ノ峰、池ノ峰
~嶺……………………………例:大菩薩嶺、仙涯嶺、高嶺、雁坂嶺、八紘嶺
~丸……………………………例:しがきの丸、美濃俣丸、檜洞丸、本社ケ丸
~ドッケ………………………例:芋木ノドッケ、黒ドッケ(酉谷山)、三ツドッケ(天目山)
【コル(鞍部)】
~峠……………………………例:ザラ峠、しらびそ峠、すずらん峠、安房峠
~乗越…………………………例:スゴ乗越、常念乗越、千丈沢乗越、飛騨乗越
~キレット……………………例:大キレット、八ツ峰キレット、(鹿島槍ヶ岳)キレット
~タワ(ダワ)………………例:休乢(やすみだわ)、ウノタワ、善六のタワ
~タル…………………………例:国師のタル、北天のタル、水のタル
~クビレ………………………例:鞘口ノクビレ、~巳ノ戸ノ大(みのとのおお)クビレ
【尾根】
~尾根…………………………例:北鎌尾根、西尾根、東尾根、横尾尾根、源次郎尾根
~稜……………………………例:明神主稜、白馬主稜、北穂高岳東稜、ツルネ東稜
【沢】
~谷……………………………例:穴毛谷、左俣谷、右俣谷、九郎右衛門谷
~窪(クボ)…………………例:ムジナクボ
【右俣と左俣】
どっちの沢が右俣だっけ?と最初の頃は混乱していましたが、沢登をされる方には覚えておきたい名称です。下流から上流を見た場合、向かって右側の沢が「右俣」、左側の沢が「左俣」です。
【右岸と左岸】
上流から下流を見た場合、向かって右側の岸が「右岸」、左側の岸が「左岸」です。
切り立った大きな岩壁にはさまれた狭い谷を「ゴルジュ」と言います。語源は、フランス語の「のど」の意味と言われています。
【二重山稜】
2つの稜線が平行している場所を二重山稜(線状凹地、舟くぼ、雪くぼとも呼ばれます。)といいます。浸食や断層によりこのような形になるといわれています。稜線を歩いていると「あれっ」稜線が二つ平行に並んでいる。と思ったことがあると思いますが、地形図で見るとどのようになっているでしょうか?
地形図から読み取る危険な場所 (目次へ)
登山計画の段階で、地形図を見て危険な場所を予測することができれば、登山のリスクを少なくすることができます。
また、地形図には現れないけど、知っておいくと有効な場所もご紹介します。
地形図から危険な場所を読み取って安全登山に心がけましょう
地形図について (目次へ)
国土地理院で作成されている地形図を買われたことはありますか?今では簡単にインターネットで地形図を見ることも印刷することも可能になりました。国土地理院の地形図に触れ、読図の基本について説明したいと思います。
【地形図の折り方】
地形図を購入し、山行に携帯するときにどのような折り方をすると携帯しやすいでしょうか?まずは、地形図の折り方について触れてみたいと思います。
【地形図の投影法】
この地形図はどのような図法を用いて作成されているのかを『紙風船』バージョンと『スイカ』バージョンで説明します。
皆さんはどちらの説明の方が分かりやすいでしょうか?ちなにみ、2020年7月に中房温泉~燕山荘~大天井岳~水俣乗越~上高地に縦走した時、テントの中で、国土地理院の地形図の作成する図法を説明したら豊川山岳会の今年20歳になる彼は、『紙風船』の方が分かりやすいなぁと言っていました。(どうでもいい話ですが…)
【紙風船説明バージョン】
例えば、地球を紙風船に例えます。赤色の部分だけを見てみると、北半球では北の方に行くほど横幅(緯線)が狭く、赤道近くでは広くなります。このような図形を「ユニバーサル横メルカトル図法」と言います。
【スイカ説明バージョン】
例えば、地球をスイカに例えます。まん丸のスイカを半分に切ります。これをまた半分に切り4分の1にします。この4分の1のスイカを更に半分に切り、8分の1の大きさにします。このスイカの赤色の部分だけを食べると、白色の部分と緑色の皮になり、立体形を保ったままの形になります。これが、地球8分の1です。更にスイカの白色の部分をスプーンで削ると緑色の皮だけになります。こうなると、この緑色の皮だけでは、立体の形を保つことができず、まな板の上にぺたんと平面になります。緑色の真ん中は広く、両端に行くほど狭くなります。この形が、「ユニバーサル横メルカトル図法」です。
どうでしょうか?「どっちでもいい。あまり興味がない?」これが結論かもしれませんが、ここからほとんどの方が知らない地形図のうんちくが始まるのです。
【うんちく1】
地形図は、例えば、鹿児島の宮之浦岳の地形図と槍ヶ岳の地形図では横(緯線)の長さや面積の大きさが違います。宮之浦岳は槍ヶ岳よりも南に位置するため、「宮之浦岳」地形図の方が「槍ヶ岳」の地形図に比べ少し大きくなります。
(ちなみに、地図という呼び方は、一定の図法と縮尺で描かれたものの総称をいい、地形図は等高線を使って地形を描き、日本の場合25000分の1地形図が国土基本図となります。)
【うんちく2】
市販されている国土地理院の地形図の1枚だけを見てみましょう。実は、上辺と下辺の長さは同一(長方形)ではなく、上辺が少し短い台形になっています。(計算上0.6㎜ぐらい上辺が短いそうです。阿部亮樹著「イラスト読図」参照)
「ユニバーサル横メルカトル図法」に関する詳細は、国土地理院 を参照してください。
【うんちく3】
現在の紙の2万5千分1地形図では、隣接する地形図が重複しています。その理由は、国土地理院のHPを引用すると
『平成14年に測量法が改正され,座標系が日本測地系から世界測地系に切り替えられました.この結果,座標が従来より東南の方向に移動することになりました。地形図を順次世界測地系に移行するため、従来の図郭のままだと空白部が生じることになるため重複部を表示しています。重複部の範囲は、経度方向については緯度により異なりますが、緯度方向については,図郭の上辺と下辺に20秒の重複部を持たせています。』とあります。市販の国土地理院地図を購入された際には、この重複部分にも注目すると楽しいですね。
【うんちく4】
『国土地理院中部地方測量部』HPのQ&Aに
『Q:地図に日本測地系と世界測地系の座標を表示する場合どのように表示するのですか?
A:国土地理院の地形図等の場合は、日本測地系の座標を「黒色」で表示し、世界測地系の座標を「茶色」で表示しています。複数色で印刷する場合は色を変えることもできますが、単色で印刷する場合は「括弧書き」にするか、または、字体を変える方法などが考えられます。なお、どのような方法にするにしてもその書き方が世界測地系であるか日本測地系であるか明示しておく必要があります。』とありました。
【うんちく5】
昔の紙地図表示が改められ、『平成26年3月31日付け国地達第15号通達により、平成25年2万5千分1地形図図式( 表示基準) 』が定められました。この表示基準の総則の中に『電子国土基本図( 地図情報)( 以下「電子国土基本図」という。)』 と記載があるので電子地図に変わったのはこの時からになります。
が地形図作成の基準になります。例えば、「川を表す青色って、川幅何メートル以上を表すのだろう?」とか、「道幅って、徒歩道と軽車道の違いって何メートル以上で区切られているのだろう?」とか疑問がすべて載っています。ご一読いかがですか?。
突然ですが、ここで 地形図問題 です。
知っていましたか?私は、知りませんでした。
もう一つ 地形図問題 ですどうでした?「地形図問題」分かりましたか?
【うんちく番外編】
(問題)
三角形の内角の和は、270度になる?
(答え)
三角形の内角の和は、180度と学校で勉強しました。それが、270度とは?何を言っているのだろう?と、お思いの方もいらっしゃるでしょう?これは、昔、剱岳に行った時に豊川山岳会の仲間の方が私に質問された問題です。何故かテントの中で盛り上がりがり、あーでもない、こーでもないと・・・。
平面では、三角形の内角の和は、180度ですが、地球のような球体ではどうでしょう?
今、私は、北極点にいるとします。
①赤道上まで移動し、赤道上で90度東に進みます。
②次に、地球4分の1進んだところで、今度は、北極に90度進みます。
③北極点に到着すると、この三角形の内角の和は、270度になりませんか?
これを、テントの中で話していて、何故か盛り上がりました。
豊川山岳会のホームページのHOMEの一番上の写真の「We Love Climbing」のところで二人が手を広げて喜んでいます。実はこれ、万歳して喜んでいるのではなく、90度を表わしています。この写真を見て、剣で「三角形の内角の和は、270度!」って言ってたなぁ・・・。と思い出します。
地形図を見る時って、どこかこの「270度」の立体的なイメージって大事だなぁ・・・。と思います。
地形図の表現力 (目次へ)
国土地理院の地形図は見ていて飽きません。ここの表現力はさすがだなと感心もします。そんな地図好きには、ここの表現力って最高!っていう場面を切り抜いてお知らせしたいと思います。順次、見つけたらボリュームを上げていきたいと思います。
国土地理院!さすがでございます。
現在の地形図から昔を偲ぶ (目次へ)
国土地理院の地形図を眺めていると、ここって、どうしてこういう表現なんだろう?と疑問に思う時があります。そこには、隠された昔の古き良き時代の跡だったりします。
どんな地形の跡があるのでしょうか?
地形図の印刷 (目次へ)
地形図は、インターネットで無料で入手することができます。私は、カシミールを利用していますが、どれを使用するのかは好みだと思います。必ず防水対策を行って山に持参するようにしてください。
カシミール を利用する(私のおすすめ)
地図の勉強をする場合、縮尺が毎回違うものを持っていくのは距離の感覚が違ってくるので、避けたほうが良いと思います。その点、カシミールは、2,500分の1~20万分の1まで幅広く印刷設定ができるのが特徴。
老眼の私は、印刷設定を1万分の1にして愛用しています。印刷用紙の設定や縦、横設定も簡単にできます。また、磁北線の本数も自由に決めることができるので、コンパスの勉強をするときは、少し間隔を狭くすると便利です。縮尺も地図に印刷することができます。
カシミールは無料のソフトです。ダウンロード後は、カシミールの初期設定をお勧めします。
初期設定(地名・標高・山名表示を消す)
表示 → 表示の設定 → 地名表示(表示しない) → 山名の設定(表示しない) → 標高の設定(表示しない)
私は、山に持っていく地図はカシミールを使用し、印刷しています。私の印刷方法を紹介します。
ファイル → 用紙を指定して印刷 → 用紙サイズの確認 → 印刷の向き確認 → (次へ)
→ 縮尺設定(1:10,000を推奨) → (次へ)
→ 印刷場所を設定 → 印刷範囲の指定(通常はそのまま) → (次へ)
→ 緯線経線のチェックをはずす → 磁北線を印刷する(磁北線の間隔をここで決める → 5~8で設定) → (次へ)
印刷オプションの設定 →
(自動的に最適な海象殿地図に切り替えて印刷する → チェック) →
(文字やアイコンの大きさを、画面の表示と印刷結果で同じになるようにする → チェックしてもしなくても変化はあまりない)
(スケール(距離表示)を印刷する → チェック) → (印刷開始)
地図プリ (ヤマレコ)を利用する
ヤマレコの山行記録のホームページから、行きたい山行記録を見つけます。(このやり方が断然早いと思いますが、行きたい山行記録が見つけられないときは、地図プリのホームページから印刷できます。但し、登山ルートの記載はありません。)次に「地図/標高グラフ」のところにある「地図プリで印刷」をクリック。地図を拡大して分かりやすい自分の縮尺で印刷できます。ただし、〇万分の1という表現ではなく、縮尺が地図に印刷され50m、100m、300m、500m、1kmの縮尺になります。縮尺の設定方法は、パソコン画面の見たままが縮尺の大きさになります。磁北線も自動的に引いてくれますが、間隔の設定は3種類です。地図の勉強には、毎回同じ縮尺を使うようにしないと距離間隔が違ってきます。
YAMAP / ヤマップ YAMAPを利用する(ログインが必要です。)
ヤマレコ同様に人気の地図アプリですが、YAMAP一番の魅力は、登山ルートは赤字で記載され、登山のコースタイムも記載されます。YAMAPのホームページの上部の「地図」の文字をクリック。エリアを選択し、「登山ルートを見る」をクリック。印刷したい場所を拡大表示し、印刷を行います。なお、切り取り印刷ボタンを押して場所を選択した場合は、選択したエリア面積に応じて、縮尺が、30m、50m、100m、300m、500mと変化します。(ヤマレコ同様にパソコン画面の大きさがそのまま縮尺に反映されます。)ヤマレコ同様に地図の勉強には、毎回同じ縮尺を使うようにしないと距離間隔が違ってきます。
ヤマケイオンライン を利用する(ログインが必要です。)
山と渓谷社のホームページ。コースタイム、通行止め、水場、ビューポイント、注意個所等が記載された地図を印刷することが可能です。ただし、コースタイム、通行止め、水場、ビューポイント、注意個所等については、すべての山域で印刷できるわけではなく、人気の場所のみ印刷が可能です。その他の場所は、地形図のみ印刷が可能です。縮尺は表示されているものがそのまま印刷されます。磁北線は、「あり」「なし」のみ設定可能です。
国土地理院 を利用する
地図といえば本家本元の国土地理院。地図の印刷には便利に設計されていないので、印刷にはお勧めしません。磁北線の間隔は広く、自動で引かれた線を頼りに、自分で線を引いて間隔を狭くしないとコンパスは使えません。また、国土地理院のホームページで縦横設定をしても、更に、自分のパソコンに繋がっているプリンターの縦横設定をしないと使い物になりません。
国土地理院発行の2万5千分の1地形図は、大きな書店や 国土地理院のHP からも注文できます。
TrailNote (mac限定)を利用する
mac限定のため、私は、使用したことがありません。詳しいコメントはできませんが、HPを確認したところ、使いやすそうな気もします。
国土地理院の地形図はどのように修正するの? (目次へ)
昔は、10㎞×10㎞の航空写真を何枚も撮影し、修正していました。これでは、地図修正に時間もコストもかかります。
そこで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、2006年に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)、2014年に陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を高度700㎞の上空へ打ち上げました。この衛星「だいち」は、地球規模の環境観測を高精度で行うことを目標に、地図作成・地球観測・災害状況の把握・資源探査など、幅広い分野での利用を目的に開発されました。
現在は、この「だいち2号」を使用し、地形図の修正について、実証実験が行われ実際に地図修正にも利用されています。
また、今後「だいち3号」が打ち上げ予定で、広い観測幅(直下70km)を維持しつつ、さらに高い地上分解能(直下0.8m)を実現する予定です。
近い未来、人工知能を使用し「だいち3号」からの情報を処理し、リアルタイムで国土地理院地図の修正が行われる可能性も否定できませんね。(ちょっと私の願望)
興味のある方は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)HPの「2万5千分の1地形図の修正」をご覧ください。
【登山道の修正(国土地理院HP)】
現在、国土地理院では、登山道の修正は、民間企業と協力して、地形図の登山道情報の正確性の向上を図る取り組みを行っているそうです。
協力企業から登山者の移動経路情報などのビッグデータの提供を受け、それらのデータを活用して地形図の登山道情報を更新し、登山者の利用が多い主要な山域から登山道を修正していくそうです。
(「株式会社ヤマレコ」「株式会社ヤマップ」の2者と協力協定を締結してるそうです。)
(私の独り言・・・)
読図講習会の講師をしていた時の質問で、
「先ほどの河合さんの説明では、剱岳の登山道は正確のような説明がありましたが、国土地理院の登山道は信用できないって聞いたことがありますが本当でしょうか?」
というものをいただきました。
上記に説明したとおり、民間会社のビッグデータを活用し、登山者の利用が多い主要な山域(北・中・南アルプス、屋久島)から順次、精度の高い登山道が地形図上に表示されるようです。
しかしながら、地形図の登山道修正の方法に素人の私の考えは、
民間のビッグデータ × 人工知能(AI) = 瞬殺の登山道修正
という感じがするのですが、皆さんはどのよう思われますか?
「山岳遭難の約4割は道迷いが原因!」と言われています。国土地理院の地形図に表示されている登山道が廃道、若しくは、間違っている等による道迷いも発生しています。
少しでも早く、精度の高い登山道が国土地理院の地形図に表示され、道迷いによる山岳遭難が減少することを願っています。
山に持参する地形図はこんなものを持っていこう! (目次へ)
皆さんは、山に行くときどんな地形図を持っていきますか?
磁北線は引いてありますか?
目指す山までの登山道の特徴物を決めていますか?
コースタイムは把握していますか?
こんな地図を持っていくと「道迷い」はぐーんと少なくなると思いますが、如何でしょうか?
※防水対策のため「ジッパーの付いたビニール袋」に必ず入れて携帯してください。
※地形図は、最新のものを使用するようにしてください。(過去に古い地図を使用したため、記載されていた道がなかったという道迷い事例が発生しています。)
地図記号 (目次へ)
地図記号については、平成25年2万5千分1地形図図式( 表示基準)で決められています。
さて、「地図記号を覚えないと地図を読めるようになりません」
と言われても興味もないのに覚えれるわけがありません。地図記号にはそれぞれ意味があります。例えば滝の記号の●は水を表し、線は水の落ち口を表します。
線の下流に水があれば、滝。線の上流に●(正確には●ではなく0.4~0.5ミリの線)があればせき(堰堤)になります。せき(堰堤)は水が上流に溜まりますよね。
また、小さな滝は線と●2つ、大きな滝になると水しぶきが多くなるため、●の数も多く描かれています。滝の地図記号について少し触れてみたいと思います。
日本には大きな滝や特徴のある滝がありますが、地図記号ではどのように表現されているのでしょうか?
国土地理院作図者:「どう?私の表現力!」
私 :「さすがでございます。線も曲げちゃっていいんですね!」
国土地理院作図者:「曲げちゃっていいんです。イメージ湧くでしょう!●だって大きな滝にはいっぱい付けちゃえばいいんです!」
「国土地理院作図者」の方との会話が聞こえてくるようです。
国土地理院作図者:「ちなみに滝って、落差何メートル以上の滝を地図記号で表現するか知ってる?」
私 :「5mです。」
国土地理院作図者:「正解!」
滝の説明、いかがでしたか?他にも有名な、「称名の滝」「華厳の滝」「那智の滝」・・・色々ありますよね。皆さんの地元にも、このような国土地理院作図者の心意気が描かれている滝や特別な地形はありますか?探すのも面白いですよね。
それでは、他にも読図でよく使う地図記号を見てみましょう。
よく見かける地図記号に、「三角点」、「岩」、「土がけ」、「岩がけ」、「滝」、「せき(堰堤)」、「建物」、「記念碑」などがあります。三角点については、後ほど詳しく説明します。
地図記号2送電線の「鉄塔」は地図記号にはありませんが、送電線が屈曲しているところが「鉄塔」の位置になります。ちなみに、昔は送電線は2万ボルト以上の分かりやすいものを記載していたようですが、現在の国土地理院のHPでは、2万ボルトの文字が削除されています。
「凹地」の大小によっても地図記号は相違します。「池」「湿地」も滝と同じで、国土地理院作図者の心意気を感じられるでしょう。
国土地理院の平成25年2万5千分1地形図図式(表示基準)によれば、『「雨裂(うれつ)」とは、雨水の流れによって地表面にできる谷状の地形をいい、長さが概ね図上1mm以上のものを表示する。』とあります。
雑学を一つ
「墓地」の地図記号は「 ꓕ 」です。霊園など大きなエリアでは、この墓地の地図記号は定期的な間隔で配置され、エリアを示しますが、例えば「国定忠治の墓」というような狭い特定の場所を示す場合には、墓地の地図記号は真位置に記載されます。このような、広いエリアや特定の場所を表す地図記号は「墓地= ꓕ 」しかありません。
突然ですが、 地図記号問題 で
わかりましたか?
三角点 (目次へ)
三角点が、読図の現在位置確認にむちゃくちゃ役に立つかと言われると、そうでもないのですが、知っていると今度、山に行った時に「もっとよく見てみよう!」と思ってしまいます。少し説明をします。
以下、 『日本の測量史』 のHPから引用させていただきました。
三角点には一等から四等までの4種類あります。2015年(平成27)4月1日現在の点数はつぎのとおりです。
一等三角点 975点(うち補点約560点、現在は本点、補点の区別なし)
二等三角点 5,045点
三等三角点 31,927点
四等三角点 71,819点
合計 109,766点
このうち一~三等三角点はほとんど明治、大正時代に設置されています。三角点の最も多い府県は北海道で全国の13パーセント、約14,000点もあります。ついで岩手県になります。最も少ないのは大阪府で約500点です。一等~三等三角点は必要にして十分な点数が既に設置されているので新設は稀で、むしろ維持困難な場所など廃止の傾向にありますが四等三角点は近年、地籍調査などのため増えています。
一等三角点の36パーセントは標高500メートル以下の低地に設置されています。[志村迪吉:一等三角点ものがたり 「山と渓谷」468 山と渓谷社 1977.9 p114]
~まで引用
私が一番驚いたのは、「一~三等三角点はほとんど明治、大正時代」に設置されたことです。一等三角点は柱石が約90キロの重量があり、柱石の一辺は18cm、破壊や破損に備えて、柱石の直下には2枚の盤石も埋設されています。二等・三等三角点は柱石が約60キロの重量があり、柱石の一辺は15cm。四等三角点は、柱石の一辺は12cm、一等三角点と同じく破壊や破損に備えて、柱石の直下には盤石も埋設されています。
もう一つ驚いたのは、測量精度の高さです。隣の点までの距離が25㎞~45㎞もある一等三角点、二等三角点(8㎞間隔)、三等三角点(4㎞間隔)のいずれの三角点にも10㎝の位置精度、あるいは1秒(1秒は1度の1/3600)の角観測の誤差程度だそうです。三角測量の終了は1921年なので、当時の装備でここまでの精度は驚愕します。
話は変わり、90キロの柱石の記事を見たときに新田次郎の「強力伝」を思い出しました。この小説の主人公「小宮正作」は、当時富士山観測所の強力をしていた小宮山正がモデルと言われています。小説の中では、北アルプス白馬岳(2,933m)の山頂まで50貫(約187キロ)もの大岩(風景指示盤用)を背負い上げたことが書かれていて、描写がよかったことを思いだしました。
三角点の設置の構造、標石や大きさ等については、 『観石万歩』 や 『国土地理院中部測量部』 が参考になります。一度ご覧ください。
この設置の構造を見てみると、三角点の柱石が見える部分はほんの少しで、土の中に埋もれている部分は、三角点が風化・浸食等によって位置がずれないように、下部から下部万石、土、砂利、盤石、柱石と積まれており、柱石がたとえ崩壊しても土を掘り起こし、盤石の中心に柱石の中心を重ねるように設置すれば復元できるように設計されています。昔の方の知恵と思い入れには感心させられます。
【雑学1】
三角点測量では、観測する目標を作るため「櫓(やぐら)」の設置を行いました。この「櫓」の高さは、3m程度のものから、時には30mにもなることもあるそうです。また、1等三角測量では、三角点測量標石の真上などに櫓を築いても、相手方の櫓が遠すぎて望遠鏡でしっかり見ることはできないそうです。そこで、櫓の上に「ヘリオトロープ(回照器)」という太陽光を反射させる鏡を設置して、観測者側へ光を送ったそうです。
櫓の設置は 国土地理院HP が参考になります。
【雑学2】
⑴三角点の石柱頭部を上からみると、多くは「+」の刻印があります、この刻印がレアなケースで、「×」になっているものもあります。また、この「+」が大きいものも存在するそうです。
⑵石柱の頭部は角ばっているものが多い中、丸みを帯びているものもあります。
⑶国土地理院中部測量部のHPには石柱のプロフィールとして、『北面「6ケタの標石番号」、南面「四等三角点」、東面「基本」、西面「国地院」と刻字』とありますが、中には、南側に三角点の文字がなく、違う面を向いているものもあるそうです。(三等以上で原則どおりになっているのは70パーセント程度です。[古市進:三角点の向きについて 「山」755号 日本山岳会 2008.4 p10] 。三角点標石の文字はいずれも南に向けてあり、これは苔類の侵蝕から保護するためであることを聞かされました。 [柴崎芳博:一測量官の生涯 「ケルン」4 朋文堂 1959 p39])
⑷ 一等三角点は特別な存在で、平地部などには4つの 防護石(国土地理院参照) が置かれています。
⑸ 一等三角点の100名山(ウィキペディア参照) があります。
⑹三角点の石柱はほとんどが、香川県・小豆島産です。このため、地図作りの基準となる「一等三角点」を紹介した珍しい展示コーナーが香川県土庄町の道の駅「大坂城残石記念公園」内にあるそうです。
三角点だけをとっても色々な楽しみ方がありますね。
【雑学3】
現在では、約1300か所で、GNSSを利用した 電子基準点(国土地理院参照) と呼ばれる三角点と同じ役割のもので、測量を行っています。(GNSS(Global Navigation Satellite System / 全球測位衛星システム)は、米国のGPS、日本の準天頂衛星(QZSS)、ロシアのGLONASS、欧州連合のGalileo等の衛星測位システムの総称です。)
【雑学4】
地図記号って理にかなっているというか、なるほどと思います。
皆さんも、三角点をみたら、一辺の長さを確認し、土の中の構造について思いを巡らせるのも楽しいと思います。ちなみに、三角点の設置基準は、必ず頂上に設置しないといけないといものではなく、三角測量のためには先ほど述べた櫓の目標が遠くから見えなくてはいけません。このため、気象条件が厳しい(地形的に雲が発生しやすく観測に不向き)場所や、危険で櫓(やぐら)が設置できない場所も三角点の設置には向きません。
【三角点最後の雑学】
電子基準点が導入され、全国に約1300か所に設置されていることは先ほど述べました。この電子基準点の精度は数㎝(或いは数mm)だそうです。こうなると、昔行われていたような櫓を組んで三角測量を目測で行う必要はなくなります。しかも、短時間の観測で測量が可能になります。このため、従来の三角点に求められていた「基本測量、公共測量及び各種測量の基礎となる」という役割は、GNSS衛星と電子基準点に取って代わります。そして、高密度に三角点を設置する必要性も低下するので、国土地理院は整備済みの約10万点の三角点のうち、骨格的として定めた2400点と電子基準点1300点だけを維持管理する方針のようです。(「地図はどのようにしてつくられるのか」引用)
等高線 (目次へ)
地形図は、平面図ですが、地形図を見慣れてくるとこの平面図が3Dの立体的に見えてきます。初心者の方は、尾根と沢の区別がつきにくく、「等高線」って何?と言われる方が多いので、等高線について少し説明します。
実際の地形を標高10mごとに区切ったものを等高線と呼んでいます。標高50mごとの太い線を形曲線。標高10mごとの線を主曲線。平坦で標高10mごとでは地形を表現しにくい場合は、主曲線の半分の標高5mで補助曲線が引かれています。
等高線についてスライドで見てみましょう。
いかがでしょうか?少し立体的にスライドで見てみましょう。
イメージ湧きましたか?等高線を理解すると、次の「尾根と沢」の項目が分かりやすくなると思います。また、隠れ小ピークや、隠れ小コルも理解できるようになると、益々、読図が楽しくなります。
尾根と沢 (目次へ)
尾根と沢を地形図から見つける。始めの一歩です。この尾根と沢が理解できれば、地図読みも一気に楽しくなります。ちょっとだけ熱く語ってみたいと思います。
私が高校登山部の時の恩師の山田猛先生から教わった方法ですが、今でも十分使えます。今思えば原理原則の基本を色々教えていただきました。その一つは、等高線に色を塗ることです。では、スライドで見てみましょう。
いかがですか?人生に1度くらい、地図と向き合い、等高線に色を塗る。この地味な努力がきっと役立つときがきます。
もう一つ、尾根と沢のスライドを見てください。
昔、皆さんが子供の頃、砂場で富士山を作りませんでしたか?その富士山にじょうろで水をかけて遊びませんでしたか?次のアニメーションは、そんな砂山に水を掛け、尾根と沢ができる様子をイメージして作成しました。ご覧ください。
いかがでしたでしょうか。尾根と沢は、自然が作り出すもの、それを地形図で表現しています。
では、これから、実技編に移ります。実際に尾根と沢を探す練習をしましょう。練習方法をアニメーションで見てみましょう。
大きな尾根と大きな沢をまず見つけます。次に、なるべく小さな尾根や沢を見つける練習をします。
ここからは、日本100名山の尾根と沢を見つけてみましょう。画像が粗く見える場合は、ダウンロードしてから閲覧すると鮮明に見ることができます。(ただし、パワーポイントがパソコンにインストールされていないと見ることができません。)
【日本100名山】
【001 利尻岳(1,721m)尾根と沢】
★利尻岳 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【003 斜里岳(1,547m)】★斜里岳 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【005 大雪山(dss2,291m)】
★大雪山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
★トムラウシ山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【007 十勝岳(2,077m)】
★十勝岳 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【008 幌尻岳(2,052m)】
★幌尻岳 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【009 後方羊蹄山(1,898m)】
★後方羊蹄山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【010 岩木山(1,625m)】
★岩木山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【011 八甲田山(1,584m)】★八甲田山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【012 八幡平(1,614m)】
★八幡平 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
【013:岩手山(2,038m)】
★岩手山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
★魚沼(越後)駒ケ岳 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
★奥(日光)白根山 登山道の特徴物を見つけよう(ここをクリック)
いかがでしたでしょうか?何度も何度も繰り返すうちに、自然と尾根と沢が分かるようになります。地図が分からないのではなく、興味がないのです。このHPでは、少しでも地図に興味を持ってもらうために、色々なアニメーション(パワーポイント)をお届けしたり、聞かれてもいないのに雑学を放り込んでいきます。
3Dのコーナーでは、平面図が立体図として浮かび上がります。尾根と沢がより分かりやすくなるので、一度ご覧ください。
地形的特徴物 (目次へ)
地形的特徴物は、現在位置確認の重要なポイントです。色々な特徴物を知ることによって、読図能力が向上することは言うまでもありません。それでは、特徴物について説明します。
分かりやすい特徴物として、「ピーク」、「コル」、「道の分岐」、「尾根の分岐」、「沢の分岐」、「送電線」、「地図に表わされている建物」、「池」、「岩」、「岩がけ」、「土がけ」、「雨裂(うれつ)」等があげられます。
次に、「傾斜転換点」という概念も特徴物として考えられます。文字通り、傾斜が転換(変わっているところ)を指しますが、尾根上ではとても有効な特徴物になります。私が、普段使っていて、あまり本に紹介されていないようなテクニックも後ほど説明します。
「ピーク」と「コル」は最も大切で、分かりやすい地形です。スライドで特徴を見てみましょう。
雑学を1つ
「コル」という呼び名は、フランス語の「Col 首(頸部)」が語源と言われています。人が横に寝た時に首のところが低くなる。そんな姿から、尾根上の低い場所をコルと呼んだらしいです。ちなみに日本語では、スライドにもでてきましたが「鞍部」といい、馬の鞍からイメージしています。
普段は気づきにくい、こんなところも特徴物になります。
「水平」という考え方、とても使えます。実際の経験談ですが、誤差が少ないのも嬉しくなります。対象物を何に定めるか?後述する「山座同定」の技術が必要になりますが、私がよく使う方法は、大きな山を登るとき、自分の登っている反対側の尾根やピークを目標にします。
例として、自分の登っている反対側の尾根の肩(急な斜面から緩やかな尾根に傾斜が変わっている場所を「尾根の肩」と言っています。)を目標にしたのであれば、その尾根の肩の標高を地形図から読み取ります。後は、尾根の肩と同じ高さに、自分の登っている位置が反対側の尾根の肩と水平になったら、現在位置の標高が分かります。経験では、大きな山でも誤差は30m未満の範囲に収まるので、非常に役に立ちます。
意外と使える技術です。講習会で説明すると『「あ~そうか」こういう確認方法もあるんですね。』と感心されます。
稀ですが、こういった条件がそろった場合、分かりやすい現在位置確認ができます。しかし、この技術を使うためには、後述する「山座同定」を理解する必要があります。
斜面の途中から急に尾根が派生する場合があります。こういった場所は地図でも分かりやすいですし、実際の地形も分かりやすいので重要です。
傾斜転換点とは、尾根上で急な斜面を登っていたら、急に平らな斜面に変化する場合があります。この傾斜が変化する場所を「傾斜転換点」といいます。とても参考になる特徴物の一つです。(「傾斜変化点」という場合もあるようですが、このHPでは「傾斜転換点」で統一します)
⑼尾根と沢の分岐
尾根と沢の分岐は、比較的分かりやすい特徴物です。コンパスを使い、尾根や沢の走行方向を確認すれば、より確実な特徴物になります。
道の曲がりは、とても分かりやすく、非常によく使う技術です。大切なのは、次の項目でも述べますが、形容詞です。「東(右)に90度曲がる道」とか「左にターンするように曲がる道」とかどのような形状かをとらえることが重要です。
コンパスを利用すると、緩やかな道の曲がりも分かるようになります。コンパスは、分岐で使用するだけではなく、こんな使い方もできます。技術の一つに加えてみてはいかがでしょうか。
トラバース道(斜面を水平に横切っている登山道)は尾根や沢との交点が特徴物になります。特に、大きな山では、特徴的な大きな尾根や大きな沢との交点を見逃さないようにしたいものです。
⒀崖、雨裂、堰堤、送電線、凹地
地図記号の中でも、崖や雨裂などは少し慣れが必要かもしれません。大きな崖は分かりやすですが、小さなものだと分かりにくいものもあります。
【こんな地形はマニアにはたまらない】
よくまあ、こんな微地形が・・・。自然って面白いし、国土地理院作図者の腕の見せ所って感じが・・・。
【特徴物を見つける練習をしよう】
地形図の上で、特徴物はどんなところか知るために、読図コーナーでは 「特徴物をみつけよう」 というコーナーを設けています。パワーポイントで作成していて、日本100名山の登山道について、どんなところが特徴物になるのか現れます。一度、ご覧いただければ幸いです。
特徴物を見つける時に大切なこと (目次へ)
私が、特徴物を見つける時に大切にしていることは、「尖ったピーク」「丸いピーク」「広い尾根」「狭い尾根」「急な尾根」「緩やかな尾根」「道が90度右(東)に曲がる」といった、形容詞を大切にしています。どのような尾根なのか、どのようなピークなのか形状を地図から読み取りイメージすることが大切です。皆さんもこの形容詞を意識して、地形をイメージしながら読図をすると地図読みの上達がアップすると思います。
隠れ小ピーク、隠れ小コルとは (目次へ)
ピークは地形図の等高線は丸くなっています。(等高線が閉じている)しかし、等高線主曲線10mでは、表せないピークも中には存在しています。この、隠れ小ピークや隠れ小コルの存在を地形図を見てイメージできるようになると、さらに地図読みの楽しさが増えます。少し説明をいたします。
ムカデ地図を作ろう (目次へ)
「ムカデ地図」とは、地形図の登山道に特徴物を矢印で示した地図のことを言います。ムカデに似ていませんか?
このムカデ地図を作成する理由はルートプランニングをする際に何を特徴物にすればよいか?確認したり考えるためです。それでは、どのようなものを特徴物にするのか例題を見てみましょう。
この特徴物の見つけ方はとても基本的な内容です。この豊川山岳会の読図コーナーの「特徴物を見つけよう」では日本100名山すべての山についてムカデ地図(アニメーション)を作成しています。ご覧いただければ幸いです。
【ひとりごと】
私の若いころの国体は「踏査」という競技がありました。どのような競技かというとスタート直前に赤ラインで競技コースが示されている地形図をもらい、その赤ライン通りに歩いていくと、山中にオリエンテーリングのポストが出てきます。このポストの位置を正確に(実際には前後2mmの誤差まで正解)地図に書くという競技でした。(もちろんスピードも重要な要素でした。)
いきなり、地図を渡されても中々上手く行きません。そこで、事前に競技エリアが公開されるので、事前の練習は、地図に特徴物を示しカンニングペーパーを持参して大会に臨みました。このカンニングペーパーこそが「ムカデ地図」そのものでした。なつかしいなぁ。
(『ムカデ地図』という言葉は、幸田高校OB山本季生君が命名いたしました。)
概念図を書こう(説明は三河弁バージョン) (目次へ)
今日のジョギング中に、「ホームページの作成は疲れるなぁ。気分転換に何か良い方法はないかなぁ?」と思っていたら、「そうだ、自分の生まれ育った、三河弁で説明してみたらどうだろう?」と思いました。この項目は三河弁で説明したいと思います。(分からないと思いますがご容赦願います。)
【三河弁バージョン】
『あのさぁ~、今まで「概念図」って書いたことあるかん?』
『ないらぁ~。それなら、1回ぐらい「概念図」を書いてみりん。』
『書き方なら、スライドで教えてあげるに!書けるらぁ~。』
『じゃあ、下の「概念図の書き方(スライド)」押してみりん。』
『どうだん、分かったかん。どっか、難しいとこあったかん?』
『トレーシングペーパーって初めて聞いた?あっ、そう。そうだよねぇ。そんなん文房具屋にもめったに売ってないもんねぇ。透明なビニール系のものに油性マジックで書くのがいいんじゃない?なんだったら、サランラップとかでもいいかも?』
『あっ、ちょっと言いすぎたかもしれん、サランラップじゃあ薄すぎるわ。その辺に透明なビニール系のものなかったかん?えっ、あったかん。じゃあ、それ使って書いてみりん。約束だに。』
『えっ。尾根と沢がどれか分からん?だったら、前の項目の「尾根と沢」何度もよく見てみりん。きっと、分かるようになるに!』
『応援しとるで、ね。』
いかがでしたか?三河弁バージョン。記入中は自分でど笑えてしまった。三河弁は「じゃん、だら、りん」この三つの言葉と最上級の「ど」をつける表現力がいいんだわ・・・。難しかったかん?
真北と磁北 (目次へ)
地形図には磁北線を引いてから携帯するようにしましょう。と記載してある本はたくさんあります。磁北線の引き方を書いてある本もたくさんあります。しかしながら、「真北(地形図の北のこと)」と「磁北(コンパスの指す北のこと)」の関係を理解して磁北線を引いている方は少ないように思います。少し、この関係について説明をします。
真北とは、地形図の北のことで北極点を指します。磁北とは磁石、つまりコンパスが指し示す北のことです。実は、真北と磁北はイコールではありません。それは、地形図の北が北極点にあるのに対し、磁石の北は2020年現在はカナダのクイーンエリザベス諸島付近にあるからです。まずは、磁北について説明します。
ここで伝えたいことは、先ほども述べましたが、磁北は、北極点の方向にはないということです。そして、磁北と真北の角度の違いを偏角と呼びます。この偏角の角度は、日本中統一ではなく、地域によって違います。数値については、国土地理院のHPや地形図の凡例に記載されています。
【雑学1】
この磁北は、北磁極の移動に伴い、一定の方向を向いているのではなく、時間の経過とともに変化していますが知っていましたか?
北磁極の移動について、詳しくは、ウィキペディア参照
【雑学2】
国土地理院のHPには、1970年からの永年変化のアニメーションが掲載されています。
【雑学3】
国土地理院のHPには、「各都市の偏角変化量」が掲載されています。この表をみますと、1070年から2010年の40年間で、偏角は0.5~1.2度西に傾きました。現在でも、偏角は西に傾き続けています。
【雑学4】
現在でも、偏角は西に傾き続けていますが、ここで問題。タイムマシーンに乗って、過去に戻れるとしたら偏角0度。つまり、過去には磁北と真北が一致していた時代があります。それは、いつでしょう?
それは、伊能忠敬の「大日本沿海輿地(えんかいよち)全図)」(別名「伊能図」や「伊能大図」とも言われている。)と一致していると言われています。どうりで、伊能図には磁北線が引かれていないわけだ・・・。
【雑学5】
話しは少しそれますが、伊能図は、大図(縮尺 3万6000分の1)214枚、中図(縮尺21万6000分の1)8枚、小図(縮尺43万2000分の1)3枚からなっています。大体の大きさは、大図1枚がほぼ畳(たたみ)1枚程度。中・小図は横幅160cm、縦150~250cm程度の巨大図でした。大図はすべてを貼り合わせるととても大きなものになりますね。なお、伊能図の作成は17年かかったと言われています。地図に興味のある方は、伊能忠敬 について調べてみるのも楽しそうですね。
それでは、実際に地形図に磁北線を引いてみましょう。まず、地形図の凡例に偏角が載っているので確認してください。(分からない場合は、国土地理院HP参照)次に地図の真北から分度器で偏角を測り1本の磁北線を引いてください。後は、この磁北線と平行に磁北線を追加記載すればよいのですが、25000分の1地形図では、4㎝ごとに引くと間隔が実際の1㎞に相当するので分かりやすいとされています。
【雑学6】
オリエンテーリングの競技で使用する地図には磁北線が引かれていますが、この磁北線は西に傾いて引かれていません。磁北線は真北になるように修正され、真北の位置に磁北線が引かれています。
【雑学7】
読図の雑誌には、2万5千分の1地形図に磁北線を引く場合4cm間隔で引くと、実際の距離は1kmになるので丁度よいですね。とか記載されている場合が多いと思います。
私も4cm間隔で引くように上記で案内をしています。しかしながら、オリエンテーリングの大会では磁北線の間隔は3cm程度で引かれているものが多い(規則では間隔の幅は決まっていません。)ように感じます。
私が実際に使用する地図や、私が開催する読図講習会での地図の磁北線の間隔も3cm程度にしています。これぐらいの間隔の方がコンパスの使用には向いていると思います。
コンパスの使い方 (目次へ)
「地図とコンパス」を必ず持って、山に行きましょう。と書いてある本がほとんどです。では、コンパスを使える方は、どれぐらいみえるでしょうか?コンパスは、使い方を理解すれば、さほど難しいものではありません。実際、愛知県山岳連盟の講習会では、コンパスの使い方に特化した内容で(毎年大高緑地公園で開催。読図講習会資料コーナーにも資料が掲載してあります。)開催していますが、ほぼすべての初心者の方が、たった3時間でコンパスの使い方を理解し、満足されています。
それでは、コンパスの使い方を学ぶ前に、コンパスの名称をおさらいしましょう。(登山では、プレートコンパスが使いやすく信頼性があるので、プレートコンパスを説明いたします。)
【プレートコンパスの名称】
まずは、プレートコンパスの名称を確認しましょう。説明の中で、「ノースマークを磁北線に合わせて」とか名称を呼びます
登山で使うコンパスは「プレートコンパス」というタイプのものが使いやすく、初心者の方でも後述する「コンパスの使い方練習シート」を使って練習すれば自信がつくと思います。知識としてどんなコンパスがあるか知っておくのもためになると思います。
コンパス操作の練習は、この「コンパスの使い方練習シート」を使用するのが分かりやすいと思います。私が、高校山岳部時代にしっかり基礎を行った練習シートです。最初は、三角形で練習します。次に、四角形、五角形、六角形の図を使って難度を上げていきます。1辺は5歩進みましょう。5歩だと短い気もしますが、まずは元に戻れると嬉しくなるので短い方がやる気がでます。その後、慣れてくると歩数を増やしてもよいでしょう。
(PDFで閲覧できるようにしました。印刷が可能だと思います。ご利用いただければ、幸いです。)
それでは、実際の操作はどのように行うのでしょうか?スライドで説明します。
【コンパスの使い方(実写編)】
机上説明だけでは、中々分かりにくいので、実技の動画を見てみましょう。国立登山研修所HPに近く掲載される予定です。今しばらくお待ちください。
【コンパス使用時の注意】
コンパスは、磁気を帯びている場所や持っている携帯電話等に微妙に反応します。練習シートを使って練習した時に、上手く戻れない場合は、こんなところにも注意してみましょう。
【講習会で質問がありました(その1)】
例えば、登山の際、同じ道で往復する場合、往路A→Bが南→北となった場合、コンパスのNマークで合わせるのは判りましたが、復路B→Aは北→南になった場合もNマークで合わせるのでしょうか?それとも進行方向が南になる為、Sマークで合わせるのでしょうか??
【解答】
常に北Nにノースマークを合わせるという単純なルールを原則にすると,とっさの場合や焦っている場合にも混乱がありません。また、指導者として伝えるときも単純で確実なルールを使うことをお勧めします。応用の場面では,ご指摘のような裏技も使いますが、しっかり意識して使わないと混乱します。また、道が単調に南方向と言っても、部分的に東や西に振れます。その時の左右と東西との対応でも混乱しやくなります。余談)北半球での使用者人口が多く、そこでコンパス操作を行うことが多いため、ノースマークが基準として普及したと思われます。
いずれにせよ、とことん慣れた確実な基準をもつのがこころです。
【講習会で質問がありました(その2)】
コンパスの使い方を指導しています。受講生の中にコンパスの北と南を逆にリングを合わせてしまうエラーをする受講生がいます。どのように教えたらよいのですか?
【解答】
コンパスのノースマークを磁北線の北に合わせず、ノースマークを磁北線の南側に合わせてしまうエラーがあります。これを私は「コンパスの南北エラー」と勝手に呼んでいます。これは、「コンパスのリング内の線を磁北線に平行に合わせる」と指導する場合に多く発生するように思います。
私は、「コンパスのノースマークを磁北線の北に合わせる」という言葉のみ使うようにしています。「リング内の線を磁北線に平行に合わせる」という指導方法に対し、受講生の方は「平行」にしているので間違った動作をしているとは思っていません。
『平行』という言葉はあまり使わない方が南北エラーが起こらないような気がします。
【コンパスを信じることができるか?】
豊川山岳会で、コンパスの使い方の講習会を会員を対象に開催したことがあります。内容は、オリエンテーリングの地図を利用し、あらかじめオリエンテーリングのポストを山中に設置し(あまり遠い間隔にならないように設置)、ポスト1からポスト2を目指してコンパスで直進し、ポストを見つけるというものでした。(ポストとポストの間は山の中で、道はありません。)
一番、正確で速くポストを見つけることができたのは、会員のお子さん(小学生)でした。大人になると目から入った情報からコンパスの指す方向を無意識に修正していると思われ、あまりうまくいかない方も見えました。
また、先ほど触れました、コンパスに特化した大高緑地公園での講習会では、以前、地図にポストの位置を円で記載した地図と円の位置だけ正確に記載した白紙に円だけのものを用意し、コンパスの直進の練習をしたことがあります。この時も、白紙を使った円だけの地図だとうまくポストを見つけることができるのに、地形図の入った円だと見つけられない事例もありました。
私も、オリエンテーリングの競技でコンパスだけを頼りに真っ直ぐ何百メートルも走ることがありますが、不安との戦いです。コンパスを、信じないと直進できないので、信じて進むのですが、いつも「だいじょうぶかなぁ?」と思ってしまします。コンパスを信じることって大切だし、何度も繰り返し使うことが重要だと思います。
【道の分岐でコンパスを使う】
コンパスの使い方の基本は、道の分岐で、どちらの方向に進んだらよいのか確認することです。この基本ができるからこそ、初めてのコースでも安心して登山をすることができます。
コンパス1・2・3(国立登山研修所) (目次へ)
皆さんは、コンパスを使うことができるでしょうか?この「コンパス1・2・3」の練習は、基本中の基本です。練習された方は、皆さん「わー!戻れた!」とか「少し、ずれた」とか楽しそうに練習されます。なぜならば、正しいコンパスの使い方ができているのかできないのか、自分自身で分かるからです。それでは、「コンパス1・2・3」の練習はどのように行うのでしょうか?
一緒に見てみましょう。「国立登山研修所HP(動画3:09)」
豊川山岳会:河合 芳尚
※コンパスを使うことは、道迷い防止の近道です!
正置(整置)をしよう (目次へ)
地図を見る時に、皆さんはどのようなことに注意していますか?私が教えてもらった第一歩は、「地形図を整置する」でした。「地形図を整置する」とは地形図の磁北線とコンパスの北を合わせるとこです。こうすると、実際の地形と地形図が一致し、頭の中でこの先はどの方角に進むのか理解しやすくなります。本当に基本なんですが、実際に行っている方は少ないようにも思います。ぜひ、実践してください。
(整置)をしよう】
【雑学1】
オリエンテーリングの大会では、地図の整置は基本中の基本。この整置は進行方向を決めるためにとても重要です。
また、オリエンテーリングの上級者の方は、コンパスで地図を整置するまでは同じですが、コンパス1・2・3の手続き(①現在位置と目的の位置をコンパスの長辺で合わせる。②リングを回しNマークを磁北線の北に合わせる。③Nマークと磁針の北を一致させる。)は時間短縮のため行わず、地図の整置だけで思ったところに走っていくことができます。
【雑学2】
オリエンテーリングの競技用コンパスには回転させるリングがついていないものもあります。私もサムコンパスという形のコンバスで回すリングがついていないものを持っていますが、慣れてくるとこのコンパスの方が早く進行方向を決めることができるのでお気に入りになっています。
【雑学3】
オリエンテーリングの競技用サムコンパスには老眼の方のためにルーペ付きのコンパスがあります。林の中では薄暗くなるため、このルーペ付きのサムコンパスがとても有効になります。実は、私も愛用者の一人です。
行動中の地図の持ち方 (目次へ)
皆さんは、行動中は地図をどのように持っていますか?私は、オリエンテーリングが好きで、地図の持ち方をオリエンテーリングの上級者の方に聞いたことがあります。その方法は、地図の進行方向を常に上の方に持っていく(地図を体の前に水平に持ってきたとき、体側に現在いる位置。体から遠い方にこれから行く目的地となるように保持する。)ことでした。地図をグルグル回して持つイメージです。これは道間違いしないためにもとても大切な感覚です。試してみてはいかがでしょうか?
ナビゲーションとは (目次へ)
ナヴゲーションとは、目的の山まで迷わずに到達し、登山口まで戻ってくることですが、どうすればよいのでしょうか?まずは、ナヴゲーションサイクルについて国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
⑴【ナヴィゲーションサイクル】(ナヴィゲーションの3つのステップ)
ナヴィゲーションでは、
①目的地とそこへのルートを地図から読み取る。
②地図から決めたルートを維持する。
③決めたとおりの場所に来たかを確認する。
必要があります。
①を「先読み(予測)」
②を「ルート維持」
③を「現在地の把握」
と呼びます。(最も重要なのは、「先読み(予測)」です。)
これら3つのステップは 下記の図 のようにナヴィゲーションしている間、循環して行われています。この循環を「ナヴィゲーションサイクル」と言います。ナヴィゲーションサイクルは、実は、一種のPDCAサイクルです。
「先読み」、「ルート維持」、「現在地の把握」のどれをしているかを意識することで、効率的かつ効果的に読図が行えます。
「先読み」は、ルート維持や確認すべき地点の情報を地図から読み取ります。
「ルート維持」は、進路の特徴を読み取り、それに対応した場所(進路)を現地の中に見つけ出す必要があります。
「現在地の把握」は、予め読み取った地形的特徴を現地の中に探す場合と、現地の中で見つけた特徴的なものを地図の中に見つける場合がありますが、いずれも周囲の風景をよく見て、風景と地形図を一致させることが欠かせません。
(以下スライドの解説です)
ナビゲーションの基本となる、ナビゲーションサイクルについて説明します。山行前には、プランニングをしっかり行います。プランニングでは、
・目的地へのルートの決定
・ルート上の特徴物や注意箇所、危険箇所の把握
・想定される危険への対応策の検討
などを行います。山に入ったら、実際に動き始める前に、プランニングに基づいて、ルートの先読みをします。先読みとは、地形図からルートの特徴や、チェックポイントとなる特徴的な地形を、あらかじめ読み取っておくことです。
行動を開始したら、「ルート維持」に努めます。先読みで読み取ったルートの特徴やチェックポイントを頭に入れながら、周囲の地形を観察し、常に「正しい道を進んでいるか?」を判断しながら進みます。
「現在地把握」は、事前に先読みした特徴物が出てきたか? 今どこにいるか? などを確認することです。地形図から読み取った情報と、周囲の地形や風景を観察して、一致しているかどうかを確認して、現在地を確定させます。現在地が確認できたら、さらにその先のルート状況を先読みし、進んでいきます。
正確なナビゲーションを行うには、「先読み」「ルート維持」「現在地把握」という3つのサイクルを理解し、繰り返し行うことがポイントになります。もし「ルート維持」ができなくなると、道を間違えることになり、「現在地把握」ができない場合は、自分がどこにいるのかわからなくなり、道迷い遭難につながっていきます。
⑵【観る力、考える力、動く力】
ナヴィゲーション技術というと、地図から情報を読み取り判断する。という「考える」力。地図から重要な情報を素早く見抜いたり、風景の中で重要な特徴に気付く「観る力」。地図やコンパスをスムーズに使う「動く力」が必要です。
とりわけ景色を「観る力」は周囲のリスクに対する敏感さにもつながります。「登山中、何が観えているか」「そこから自分は何を考えているか」という観点で、自分の登山をふり返ってみるのもよいでしょう。
【小林亘(山岳ガイド)さんのお稽古帳】
岳兄の小林亘さんが国立登山研修所の講義で使用している練習帳です。地図と地形の成り立ちを分かりやすく解説する講義で、この「お稽古帳」に書きこみながら進めることでより理解を深められます。
プランニング(先読み)とは (目次へ)
私が若い時に、オリエンテーリングの大会で優勝者の方に「どうしてそんなに早いのですか?」と質問したことがあります。すると「オリエンテーリングは、プランニング(先読み)が大切です。」と教えてくれました。
プランニング(先読み)?私も一応はしているつもりだけど?何が違うのだろう?
オリエンテーリングはポイントオリエンテーリングの大会が主流です。どのルートを通っても次のポストに到達すればよいのですが、当時、体力のあった私は、真っすぐの道(実際には山の中なので道はないのですが・・・)を選び進むことが多くありました。しかし、真っすぐだと一旦、沢を下り、また尾根を登るといった起伏の激しいコースだったりすることもありました。大会後に反省の意味を込めて、もう一度、ルートの練り直しをします。すると、沢を下るよりも遠回りになるけど尾根を迂回した方が起伏が少なくスピードが上がるレッグ(レッグとはポストとポストの間のルートのことを言います。)が見つかることがありました。
オリエンテーリングは、最短ルートが速いのではなく、周り道でもスピードが上がる場合や度胸を決めコンパス頼りに直進した方が速かったり、自分の技術や体力に応じてルートを決める必要があります。
話しが少しそれましたが、一般登山道はルートが地形図に記載されています。(沢登り、冬山等を除く)このため地形図のルート通りに進めばよいのですが、実際は、道が不鮮明だったり、枝道があったり、地形図と実際のルートが違っていたり(昔は道があったが廃道になった等)と、道迷いの要素が色々あります。このため、目的地までの登山道の特徴物はどこだろう?とプランニング(先読み)する必要があります。このプランニング(先読み)は、先述した
・地形的特徴物
・特徴物を見つける時に大切なこと
・隠れ小ピーク、隠れ小コルとは
・ムカデ地図を作ろう
を参考にしてください。また、その特徴物までのおおよその距離や時間も大切な要素となるので、プランニング(先読み)をする時に頭の中に入れておくことも大切です。また、①大まかな特徴物を把握し、次に小さな特徴物を把握する順番も私は大切にしています。
【大きな特徴物から小さな特徴物へ】
劔沢から剱岳に登る場合を想定して例示します。
私は、こんな方法で先読みをしていますのでご紹介していきたいと思います。
①大きな特徴物を把握することがとても大切
【大門沢を下る場合1】
②小屋が見えなくてもおおよその位置を確認することができる
【小林亘(山岳ガイド)先読み・特徴物を見つけよう】
岳兄の小林亘さんが国立登山研修所の講義で使用した内容です。まずは、特徴物を大きくとらえ、次に細かな特徴物を見つけていきます。これが、先読みの第1歩です。(ムカデ地図で分かりやすくなっています。)
ルート維持 (目次へ)
ルート維持とは、目的の登山道から外れることなく目的の山に到達し、登山口まで戻ってくることですが、どうすればよいのでしょうか?ナヴゲーションサイクルについて国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
(1)ルート維持とは
地図上でルートをたどることは容易ですが、実際の登山道には道標のない分岐があったり、藪や川の渡渉で道が分かりにくくなっていることがあります。これらの場所ではルート維持の努力が必要になります。更には、道の無い藪こぎや雪山では積極的にルート維持の技術を使わないと動くことができません。移動するときには、自分はどのようなルート維持のための情報を使っているかを意識することが肝心です。
ウーと維持には基本的に二つの情報が使えます。一つは「方向」、もう一つは「地形」との関係です。
ア 方向によるルート維持
地形から読み取ったルートの方向を、コンパスを使うことで維持する方法です。日本のように地形が明瞭に発達している場所では、尾根・谷等の地形との関係と組み合わせることでベースプレートコンパスを有効に使えます。
方向を使ったルート維持には3つの方法があります。
(ア)地形図からルートの方向を読み取り、ルート維持する
道や尾根といったはっきりした線上の特徴に沿ってルートが進むときには、地図からその方向を8方位又は16方位で読み取り、コンパスでその方向であることを確認して進むことでルート維持ができます。
(イ)整置でルート維持する
(ア)の方法では、細か方向を読み取るのが難しく、また読み取った方向を頭に覚えておかなければなりません。線状の特徴物に沿って進むときには、整置を使うと地図上の方向と実際の方向が一致するので、簡単にルート維持ができます。
(ウ)ベースプレートコンパスを使う
線状特徴物がないなど、より精度が必要なルート維持の場合は、ベースプレートコンバスによる直進を使います。
イ 地形とルートの関係によるルート維持
登山道は闇雲についている訳ではなく、尾根道、谷道、巻き道(等高線に平行についている道・トラバース道)・尾根・谷を結んでいる等高線を横切る4パターンしかありません。しかも道と地形との関係(尾根筋、谷筋、等高線と平行、等高線を横切る)は、地形図と風景の両方から確実に読み取ることができます。これを読み取ることでルート維持が可能になります。
ウ その他のルート維持のテクニック
間近にはっきり分かる特徴がなくても、尾根のスカイラインを見ることで目指すべきコル(鞍部)やピークが分かれば、ルート維持に役立ちます。雪山や藪山では「高い方に登る」という単純な方法でもルート維持が可能になる場合があります。
(2)ルートファインディング
ルートファインディングはルート維持と同じ意味で使われることもありますが、ここでは「地形図から読み取れる情報を利用して正しいルートを進むことをルート維持」、「地形図からは読み取れない情報を利用して正しいルートを進むことをルートファインディング」と区分します。
沢を渡る部分や踏み跡のつきにくい高山帯、複線化してしまった登山道で地形が曖昧だと、地形図だけで進むべきルートを見つけることが難しいので、ルートファインディングが必要となります。どこを歩いたら効率よく進めるか、やぶの濃い場所でどこが通りやすいか、あるいはトレースが薄くなっている場所でどの方向に進めばいいか、その場その場の問題を解決しながら全体として進むべき方向や地形を外さないように注意しながら進みます。そのためには遠くを見ながら歩くことが有効です。
現在地の把握 (目次へ)
私は最近、現在地の把握は、スマホの地図アプリをポチルことが多くなってきました。「それでいいのか?」と言われてもスマホの地図アプリは、とても正確で何か楽しいんです。先生がスマホの中にいる感じで、自分のイメージと一致した場合「にやり」としてしまいます。(地図アプリのGPSの精度については、後述します。)
しかし、雪山ではスマホの地図アプリはあまり役には立たない場合が多いのも現実です。八ヶ岳の硫黄岳に冬山登山した時は、強風+低温でスマホの地図アプリは動きませんでした。(雪山でも使える機種があるとHPでは記載されているものもありますが、どのような条件で使えるのか真相は分かりません。)やはり「紙地図とコンパス技術」を使いこなせる事が重要になってきます。現在地の把握について国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
(1)現在地を把握する方法
①近くの特徴物を使う
②離れた場所に見える特徴を使う
③移動の履歴を使う:推測航
④ベースプレートコンパスを使ったクロスベアリング
(2)風景を読む
現在地を把握するためには、地図と風景の対応が必要なので、地図に加えて風景を読み取る必要があります。読み取るべき風景の鍵は、①地図に記載されていること、②ユニーク(唯一)であること、です。もうひとつの留意点は、地図の内容は常に変化する可能性があるということです。林道は目印になりやすいが、地図に記載されているよりはるか先に林道が伸びていることはよくあります。植生状態も、畑や水田が放置されて森に変わってしまうことは珍しくありません。風景読みにあたってはより変化しにくいものに着目することが肝心です。
(3)実践的な現在地把握
ア 常に現在地に疑いを持つ
自然の中では現在地には常に疑いの余地があります。この際、漠然と「間違っているかもしれない」と疑うだけではなく、思った場所にいないとしたらどこにいる可能性があるのかを具体的に考えことも大切です。これにより、正しく現在地を把握する可能性が高まります。
イ 複数の情報を使う
一つ一つの情報が不確実な場合、確実性を高めるために複数の情報を利用します。たとえば道の分岐だけで現在地を確認したら、別の分岐と間違えている可能性があります。それに分岐する道の方位が加われば確実性はより高まります。さらに、たとえばコル(鞍部)といった地形を加えれば確実性はさらに高まります。
ウ 論理的に考える
論理的に考えることで、情報の不足を補うことができます。特に「仮想によるロジック」は情報の不足を補う最大の武器ともなります。「もし**にいるとしたら、北に進めば××が見えるはず」といった論理的考え方も、見える範囲では十分でない情報を補うことにつながります。
エ 精度を変える(点,線,面)
一般の登山では、はっきりした登山道を歩くことが多いです。間違えるような分岐がなく、登り続ければ確実に山頂に到達する場合には、現在地の把握は線状、つまりその登山道のどこかにいると分かります。
現在地の把握は、この線から点にシフトする必要があります。下りの登山道では、地図にない枝道や踏み跡があるケースもあります。この場合、どちらを選ぶべきかは、道標がなければ自分で判断しなければなりません。そのためには、現在地を点で把握する必要があります。
雪山や藪こぎ登山、あるいは自由に移動可能な荒野では、方向維持の努力をしていても、現在地の曖昧さが二次元的に広がります。しかし、「この領域の中にいるはず」と言えれば十分なケースもあるのです。これが面による現在地の把握と言います。面または線に広がってしまった現在地を、面から線、そして線から点へと絞り込んでいくことが現在地把握のポイントです。
(4)GPS 受信機を使う
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、人工衛星からの電波を利用して自分の位置を知るシステムです。本来GPS はアメリカのシステムを指す固有名詞です。近年ロシアや中国、日本などでナヴィゲーションのための人工衛星が稼働していますが、これらを総称してGNSS(Global Navigation Satellite System)と呼ばれています。
GPS 受信機は、現在地を知りたいと思った瞬間に現在地を知ることができるので、もしもの場合の危機管理の道具として有用です。また,地点(ウェイポイント)を登録したり、これまで歩いてきた道筋の記録を残したり(ログ、またはトラックと呼ぶ)、ウェイポイントへ誘導する機能もあります。
ただし、カーナヴィゲーションのように分岐点で「こちらに進め」と言ってくれるわけではないので限界を踏まえた利用が必要です。
初歩的ですが、実用的なGPS 受信機の利用方法として、ログの活用があります。ほとんどの機種で、これまで歩いたルート(ログと呼ぶ)を地図上に表示する機能があります。登山と下山路が同じ場合、往路のログが下山すべきルートを表すことになるので、復路では常にログの上にいることになります。ログから大きくずれ始めたら、間違った道に入り込んだ可能性があります。これにより道間違いのダメージを最小限にできるのです。
(5) 高度計を使う
標高が高くなると気圧が低くなります。高度計はこれを利用して標高を知る道具です。標高の変化の大きい登山道では、現在地を知るための補助用具として利用価値が高くあります。単調に登り続ける尾根筋を進んでいるなら、高度を知ることで現在地を推定することができます。傾斜の急な斜面上の登山道上では、ほぼピンポイントで現在地が分かります。高度計は、天候による気圧の変化の影響や気温によっても誤差が生じるため、できるだけ頻繁に地図や標識などの情報を使って高度を補正する必要があります。
【現在位置確認のテクニック】
私が、普段行っている現在位置確認のテクニックを少しご紹介します。
(尾根の肩)
スマホの地図アプリ (目次へ)
私は、スマホの地図アプリを活用しています。先ほども述べましたが、「現在位置は、今この辺だろう?」と思ってから地図アプリを見ると純粋に楽しいのです。スマホ先生が「ここです。」って教えてくれます。
地図アプリはどれがいいの?と言われても、好みがあります。皆さんは何をお使いですか?
(以下説明は、「山と渓谷」2020年9月号を引用し、個人の意見も入れてあります。(値段等はネットから検索し引用。変更もあるので、必ず最新のものを確認してください。))
『山と高原地図』 →『シンプルで見やすい。スマホ地図初心者向け』
月額400円で無料版はなし。広域の範囲を見たいときには、非常に役に立ちます。59エリアの「山と高原地図」が使い放題。登山で定番の昭文社「山と高原地図」をスマホアプリにしたもの。表示されるのは紙地図と同じものなので、定評のある見やすさと正確な情報がスマホでも利用できます。現在地表示やナビゲーションもできるが、機能は最小限なのでむしろシンプルで分かりやすい。最大の難点は有料であることだが、月額使い放題もあり、お得感もある。なお、iphoneからAndroid(その逆も)に変えた場合は購入した地図データが使えなくなるので注意。
『YAMAP』 →『無料だけど機能は十分。とりあえず使ってみたい人向け』
無料の場合は、1か月にダウンロードできる地図は2つまで。(アプリからの支払いの場合:¥580/月、¥4,600/年 /ウェブサイトからの支払いの場合:¥480/月、¥3,480/年)で、無制限。(メジャーな一般登山道のコースタイム記載。)コースタイム地図の対象範囲が広く、「山と高原地図」にはないエリアでも使えるところが多い。表示される地図は国土地理院地図だが、独自に編集した登山道とコースタイムも表示される。「山と高原地図」に比べれば、情報量は少ないが、一般的な登山には十分といえる。利用コストと地図のクオリティ、機能の分かりやすさなどバランスに優れているので、とりあえずスマホ地図を使ってみたいという人には一番にお勧めできる。
『ヤマレコ』 →『唯一無二の「足あと」機能。山地図好きや登山中~上級者向け』
無料の場合は、同時に保存できる地図が2つまで。ただし、保存した地図を削除すれば、何度でもダウンロードが可能。(今後変更の可能性も否定できないが?)料金は、550円/月(クレジットカード払い)。3,400円/年(クレジットカード払い・銀行振込)で、無制限。無料で使える機能がYAMAPより狭いので、初心者にはYAMAPより取っつきづらいと感じられる。ただし「みんなの足あと」という、これにしかない素晴らしい機能がある。これは、過去にヤマレコを利用した他の登山者の行動軌跡が表示されるというもので、意外なところに誰かが通ったルートが発見できたりして、地図好き・探検好きにはたまらない。これはどんなガイドブックや地図でも得られなかった情報でもある。(一般登山道のコースタイム記載。登山コースの計画も作成可能。)
(注意)最近、ヤマレコの足あと軌跡機能を使ったために、道迷い遭難の事例が発生しています。
①足あとがついているから、その足跡を頼りに山を歩いた。
②その足跡は、誰かが道に迷って付けたものだった。
③知らず知らずに道に迷った。
④気づいたら遭難していた。
というものです。やはり、スマホ地図だけに頼るのではなく、自分の読図知識を充実させてほしいと思います。
『ジオグラフィカ』 →『プレーンな地形図を表示。マイナールートを歩く人向け』
無料で使用もできますが、一度「960円」を課金すれば、月額料金は発生せず、どれだけでも地図をダウンロードできます。表示されるのは地理院地図。登山道やコースタイムなどのオリジナルな表示がないことが他のアプリとの決定的な違いで、地形図の見方に慣れている人でないと使いづらいと思う。事前のルートセットなどもある程度手動でやらなくてはならないので、その点からも上級者向けといえる。一方で、登山地図にないマイナーな山やバリエーションルートを中心に歩いている人には使いやすい。ほとんどの機能が無料で使えるのもうれしい。
【講習会を開いた時の質問】
(質問)
どんな地図アプリが良いですか?
(回答)
初心者の方には、YAMAPかヤマレコをオススメします。 両方とも非常に優れたソフトです。両方とも登山計画ルートから外れた場合、忠告してくれます。またYAMAPは現在位置を随時家族に知らせる見守り機能があります。
さて、私は、個人的にヤマレコとYAMAPの両方を使っています。 理由は、無料の場合、地図のダウンロードが2件まで可能であることは、2社とも変わらないですが、YAMAPは月に2件まで可能。それ以上は有料になります。 ヤマレコは2件以上の地図のダウンロードについて、スマホ内のダウンロードした地図を削除すれば、更にダウンロードが可能です。(今後制限がかかる可能性も否定できませんが、、、) また、同じ山岳会の仲間で行くときは、誰かがヤマレコアプリで計画書を作ると、友達申請がしてあればその計画書を使うことも出来ます。 YAMAPも講習会で内容を聞かれることを想定して、月に2回までの無料版で体験しています。ヤマレコとYAMAP両方とも優れたソフトです。
(補足)
昨年(2020年)に三重県鈴鹿山系御池岳での遭難では、ヤマレコソフトに起因する新しいタイプの道迷いがあり、結局は遺体で見つかった例です。 当時遭難者はアプリに表示される道だけを頼りに移動していたようです。 この山はカルスト地形でなだらかな山容で、どこでも歩けるくらいであるため、無数の道がアプリの画面上で表示され、 それらをたどっているうちに、自分の行きたい道や方向が分からなくなって、体力を消耗して動けなくなったようで、結局はテントの近くで見つかっています。 アプリも上手に活用して、それだけに頼りすぎないように、基本を大事に行動したいものですね。
【スマホの地図アプリの有効活用】
私は、スマホの地図アプリを愛用しています。今では、多くの方が地図アプリを使用し、安全登山に心がけています。しかしながら、地図アプリは、現在位置が分からなくなった時や、ルートが不安になったときに見る方がほとんどではないでしょうか。それでは、道迷いになっていても気づかなかったり、読図の練習にはならない気がします。
そこで、私の地図アプリ活用方法をご紹介します。
私は、まず歩きだす前に、大きな特徴物を地図上で探します。〇〇山、〇〇mピーク、道の分岐、大きな道の曲がり・・・。なるべくわかりやすい特徴物がいいでしょう。
次に、大きな特徴物までの間にある小さな特徴物を見つけ頭に入れます。歩いていると頭の中(地形図上)の特徴物と実際の地形が一致したところで、スマホを「ポチ」ります。答え合わせをするのです。この繰り返しで山行中は自問自答を繰り返し、スキルアップに繋がるのです。
また、歩いていて急に緩やかな斜面から急な斜面に変化があったときなどは、すぐにスマホを「ポチ」ります。「この傾斜は、地形図ではこれぐらいの表現力になっているのか・・・」とか「この尾根の細さは、地形図上ではこの表現力になっているのか」とか・・・・。
実際に目から入った情報から、スマホを「ポチ」る場合もあります。こちらの場合は、「なるほど」と感心する場合が多くあります。
皆さんも一度お試しください。スキルアップになります。
【スマホの地図アプリ使用上の注意】
ところで、スマホの地図アプリですが、どのような点に注意して使用すればよいのでしょうか?また、そもそもとは「GPS」はどのような仕組みになっているのでしょうか?ウィキペディアから引用して説明します。GPSは、アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約30個のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムです。 元来は米軍の軍用システムであり、米国政府の支配下にあります。そのため、精度や可用性その他について、また他国や民間における利用に対して、種々の制限を受ける事が過去にもあり、また将来的にも有り得ます。そのため、米国のシステム依存からの独立や、自身の利益に適合させる目的で、各国でも独自のシステムを保有、運用しようとする動きがみられます。
各国でもGPSと同様、類似したシステムを運用開始している事から、従来GPSが独占してきた分野および用語は、「全地球衛星測位システム、全地球衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)」として一般化されました。
また、全地球にかぎらず日本の準天頂衛星システム(QZSS)などの地球的地域限定のシステムも構築されており、これらは全地球型システムと組み合わせて使用されます。現在準天頂衛星システム(みちびき)1~4号機の4機が打ち上げられており、2023年度をめどに7機体制とする計画です。その特徴は、測位できる位置の精度の高が使い方によっては、わずか数cmの誤差で位置を特定できるようです。
(2018年11月から、みちびきは4機体制で運用を開始しており、このうち3機はアジア・オセアニア地域の各地点では常時見ることができます。)
【ちょっと雑学】
準天頂衛星システム(QZSS)は、とってもユニークな軌道をしています。それは、日本上空とオーストラリア上空を8の字を描くような軌道をしています。どうやったらこんな軌道が取れるのかとても不思議です。
【スマホ地図アプリの電源について】
次の注意点は、消費電力の問題です。機内モードに設定し、消費電力を抑えて使用しましょう。実は、機内モードだけでは、十分な消費対策ではありません。私は、万歩計のアプリもスマホにインストールしていて、常にこの万歩計が動き続け、電源消費をしててたため、1日、地図アプリがもたなかったことがあります。また、スマホの設定で、バッテリーセーブ(画面の明るさ等)も有効だと思います。スマホの地図アプリは100%ではありません。紙地図は必ず持つようにしましょう。
他にも、必ずバックアップの充電池(1泊2日は10000mAh程度のものを推奨します。)とケーブルを持参するようにしてください。実際の道迷い遭難で、「バックアップの充電池は持ったけど、ケーブルを忘れてしまった。電池が無くなって現在位置が分からなくなった。」という記事を見たことがあります。注意しましょう。
3D地形図 (目次へ)
地形図は2次元の平面図。しかし、地図を見慣れてくると、地図の等高線が浮き出てきて3D地図に見えてきます。
オリエンテーリングの競技をしていると、走りながら、「ポストの設置位置はあの尾根の向こう側の沢だ!」とか、「この沢を下った沢と沢との分岐にをアタックポイントにして、右手の尾根を登った尾根上にある!」とか・・・。立体的にポストの位置をとらえながら走ります。皆さんも、平面の地形図が3D地形図に見えたとしたら、とても楽しいと思いませんか?
国土地理院のHPでは、簡単に3D地形図が作成できる優れものです。3D地形図の特徴や作成方法について説明します。
【鳳来寺山の巻】
3D地形図で見ると尾根と沢が分かりやすくなります。
【明神山の巻】
尾根が細くなっている等の危険な情報も3D地形図では分かりやすくなります。
【鞍掛山の巻】
斜面の傾斜の緩急が分かりやすくなります。
【寧比曽岳の巻】
下りの尾根分岐が分かりやすくなります。
【竜頭山の巻】
小尾根の一つ一つが分かりやすく、楽しくなります。
上記のものは、2020年9月号「山と渓谷」に掲載していただいたものを載せてあります。
【3D地形図の作り方】
国土地理院のHPでは、3D地形図が簡単に作成できます。作成手順をご紹介します。
いかがでしたか。オリエンテーリングの上級者や地図を読みなれている方は、地図が立体的にイメージできるようになります。しかしながら、初心者の方には立体的にイメージするのは難しい感覚ですよね。正直、私がこの3D地形図に出会ったときは衝撃を受けました。だって、イメージではなく立体的に見えるんですよ。楽しくなりませんか?
山座同定 (目次へ)
あの山は何ていうの?
あれは「富士山」だよ。
あの山は?
ピークが尖っているから「槍ヶ岳」だよ。
じゃあ、あの山は?
笠の形に似ているから「笠ケ岳」って名前がついたんだよ。
実際の山と地形図の山を一致させることを山座同定といいます。特徴のある有名な山は、山座同定は簡単ですね。しかし、里山では山頂が似たような形をしているため、山座同定は難しくなります。今では、山頂で「あれは○○山!あれは○○山!」と人ではなくスマホのアプリが教えてくれる時代になりました。豊川山岳会の代表は、「Google浅田」と異名があるぐらいに物知りで、山座同定のプロファッショナルです。皆さんも山座同定ができるようになると山頂での会話も弾みますよ!山座同定の方法について説明します。
山座同定をするためには、
①現在位置が分かっていること
②地図の整置ができること
③コンパスが使えること
この3つの技術が必要です。
【山座同定の方法】
①コンパスだけを体の正面に対し、垂直に持ち進行線(精度を上げるためには、コンパスを目の高さまで移動し、コンパスの左辺(右辺)で一直線になるように対象の山を狙います。)を対象の山に向けます。
②コンパスのノースマークを磁石の針の北に合わせるため、リングを回します。(この時、進行線が対象の山からずれないように注意します。)
③地形図を取り出し、整置をします。
④整置をした地図の上に、コンパスを置きますが、この時、コンパスのリング側が手前になるようにします。コンパスの置く位置ですが、現在位置がコンパスの左辺(右辺)上になるように置きます。
⑤地形図の現在位置とコンパスのリング側の左辺(右辺)が一致するように固定し、この固定した部分を中心に進行線側のコンパスを回転させて、ノースマーがク磁北線と一致するようにします。
⑥これで、実際の地形と地形図とコンパスが一致し、進行線の方向に目指す山が見えます。地形図からどの山が対象か読み取ります。
【実際の地形と地図を一致させよう(本宮山)】
今、一番のお勧め!写真のピーク、尾根、沢と地図を一致させるトレーニングに最適!このトレーニングを繰り返すことで読図能力が飛躍的にアップします。
交会法 (目次へ)
交会法は、現在位置を求める場合に用いますが、実際に「交会法」を使用して現在位置の確認をしている方を私は見たことがありません。高校時代には、基礎的な方法として勉強し、実際に使用したこともありました。今では、スマホの地図アプリをポチると現在位置がわかってしまいます。知っていて損はないので、少し説明します。
交会法をするためには、
①地図の整置ができること
②山座同定を行うことができること
③コンパスが使えること
この3つの技術が必要です。
【交会法の仕方】
コンパスを使った基本的な交会法の仕方をスライドを使って説明します。スライドでは、2地点から現在位置を求めていますが、3地点以上から現在位置を求めると、より正確な現在地を把握することができます。
【交会法で現在位置を知る】
交会法は、比較的難しい技術ですが、ぜひ、知識の一つに加えて下さい。
【雑学】
江戸時代に伊能図を作成した、伊能忠敬 もこの交会法を使って現在位置を求めていました。伊能忠敬、恐るべし。
あれ?おかしいと思ったら (目次へ)
登山コースを歩いていて「あれっ?おかしい」と感じたことはありますか?道迷いの第一歩です。しかし、多くの場合は「多分、大丈夫?」「何とかなる」という気持ちが現れ、そのまま進むことが多いのではないでしょうか?道迷いの心理について少し触れてみたいと思います。
Ⅰ-1-1 現在位置が確認できる場合
周りの地形をよく見て、特徴物を確認し、現在位置が確認できる場合は、戻るのか進むのか判断がしやすくなります。この場合、スマホの地図アプリを利用すると心強いですね。
Ⅰ-1-2 現在位置が分からない場合
地図を持っていない場合や地図を見たけど現在位置が分からない場合は、この時点で不安要素がとても大きく、心理的にも考え方がマイナス傾向になってしまいます。「あれっ!おかしい」と思った場合で、かつ現在位置が分からない場合は、「戻る以外に道はない!」と考えていただきたい。
Ⅰ-2-1 分かるところまで戻るのが基本
「冷静さ」と「地図のナビゲーション技術」があれば、現在位置の確認ができる場合が多い。また、現在位置が分からなければ、分かるところまで戻るといった「基本に忠実」な行動をとって欲しい。
Ⅰ-2-2 「やっぱり、さっきの道へ行こう」という気持ち
一旦は、冷静さが自分を支配し、戻る決断をしたが、「さっきの道でも、何とかなる?」という感情が高まり、「やっぱりさっきの道を進もう!」という気持ちが湧き上がってくることがあります。この感情により、先程の「おかしい」と思った道をもう一度進んでしまい、行ったり来たりを繰り返し、体力を消耗することもあります。
この「進め」という心理と「戻れ」という心理が自分の中で戦う場合は、無駄に体力が奪われ、また、不安が増長し、最悪のシナリオへ近づくことがあります。
Ⅰ-2-3 「分かるところまで戻ろう」と決めたら、とことん戻る事が大切
「進め」という気持ちと「戻れ」という気持ちが自分の中で戦うことがあります。一旦「戻れ」という気持ちが勝ち、戻ると判断した場合は、分かるところまで戻ることが大切です。この気持ちがぶれると、行ったり来たりを繰り返します。
Ⅰ-3-1 なぜ、そのまま進むのか?
冷静さに欠けている場合が殆どです。例えば、
・最終のバスに遅れたらどうしよう。
・朝、体調があまり良くなく、寝不足だった。
・なんとなく。あまり、考えていない。
・赤テープの目印があるから。
初期の心理は、気持ちの「あせり」、「不安」、「過信」などにより、進んでしまうことがあります。また、「何も考えていない」といった場合も多いようです。
Ⅰ-3-2 「何とかなるだろう」という気持ち
「あれっ!おかしい」という気持ちを打ち消す心理が働き「何とかなる」というプラス思考が芽生えてくることがあります。この感情は、道迷い初期の場合に多く、道を間違えているかもしれないが、とりあえず「進もう」という行動をとってしまいます。以下の気持ちがそのシグナルです。
・下りの登山口まで、あと少し。
・この不鮮明な道は、もう少し行けばよくなるだろう。
・まだ、時間がある。
・まだ、体力がある。
・必要な装備は持っている。
初期の心理は、目の前の「不安」を打ち消す感情や、行動を後押しする「励まし」の感情が生まれてきます。いわば、「不安」と「プラス思考」の感情が同居している状態と言えるでしょう。そして、「プラス思考」の感情が勝ち、行動を進めてしまいます。
Ⅰ-3-3 「この先に目標の道(特徴物)があるはずだ」
「思い込み」や「願望」が心を支配している状態です。この気持ちがある場合は、心の修正が難しくなります。なぜならば、「思い込み」や「願望」は、自分の不安を打ち消すための「目標」になっているからです。
第Ⅱ 「あぁ、どうしよう」と思ったら
あなたは、不安のまま進んだため、これ以上進むことができない滝が目の前に現れ、また、藪も濃くなり、右も左も分からず「あぁ、どうしよう。」という場所まで進んでしまいました。先ほどまでは「何とかなる」と思っていましたが、これ以上進めない現実を体験して初めて行動を止めることができました。逆にいうと、ここまで行動を制御できないのが道迷いなのです。
Ⅱ-1-1 これ以上進めない(現在位置が分かる場合)
実際には、GPSやスマホアプリ等を利用しないと現在位置を分かることは少ないですが、現在位置が分かっているので、「来た道を戻る」ことは比較的容易だと思われます。なぜならば、冷静さを保つことができ、自分の進んできた行動を反省し、問題解決の行動をとることができるからです。
ここで大切な心理は「冷静」です。この「冷静」がないと、滝を下ったり、急な斜面を下ったりしてしまいます。
Ⅱ-1-2 これ以上進めない(現在位置が分からない場合)
道迷いの殆どは、現在位置が分からない場合だと思います。「何とかなる」という心理から「困った」という心理に変化します。そして、現在位置が分からないため「どうしてよいのか分からない不安や戸惑い」や「現実が受け入れられない」感情が現れます。そして、持っている装備の不備、日没、風雨等の外的要素が更に「冷静さ」から遠ざけ、誤った判断をすることになります。
(1)どうしてよいのか分からない不安や戸惑い
一度でも道に迷ったことのある方は、「どうしてよいのか分からない」、「泣きたくなった」というような経験をされているのではないでしょうか?この段階では、まだ、解決方法が見つかっていないので、「冷静さ」を取り戻すかどうかによって、今後の行動が左右されます。私も、オリエンテーリングの大会で、この状況に陥ったことがあります。「落ち着け、落ち着け」と心の中で何度も叫び、来た道を戻るのか現在位置を推理(仮定)し、修正しながら進むのか判断が難しいため、少しパニック状態になりました。
私の経験では、推理(仮定)し、修正しながら進んむと成功の確率は少ないと思います。なぜならば、推理(仮定)はヤマ勘であり、根拠が乏しいからです。現在位置が分からない場所からの脱出は、推理(仮定)はヤマ勘ではなく、理論で脱出しなければいけません。このターニングポイントが、「道迷い」と「遭難」の境界線となり「来た道を戻る」のか「ヤマ勘で進む」のかの違いになります。
(2)現実が受け入れられない
突然、目の前に現れた現実が受け入れられず、パニックになっている状態です。例えば、交通事故を起こした場合、これは、「夢」だとか、「何かの間違い」だとか思い、現実から逃避してしまう感情が現れるそうです。
「冷静さ」が、目の前の現実を受け入れ、次の行動を理論で判断することになります。しかし、現実を受け入れられない心理状態で次の行動に移ったとしたら「夢の中での判断」に近く、更に状況を悪化させることになります。「何故、あの時、こんな判断をしたのだろう」と後悔しないために「現実を受け入れる」ことが大切です。
(3)何かにすがる気持ち
解決方法が見つからず、パニックになっている状態では、目の前のものや沢の音等に「すがる気持ち」が芽生えます。例えば、目の前に赤テープが現われるとその赤テープに誘導され、あらぬ方向に進んでしまいます。
理論がないのに「何かにすがる気持ち」があるため、更に道迷いの世界に引きずり込まれてしまいます。「何かにすがる気持ち」は「願望」であって、「現実」ではありません。
【ここまでのまとめ】
「何とかなる」と思って進んだ場合「これ以上進めない」という現実があります。まずは、この「現実」を受け入れることが大切です。次に「冷静さ」を取り戻し「進め」という感情を打ち消し「戻れ」という心理状態にすることです。
「進め」という感情が少しでも残っていれば、それは「冷静さ」が欠けている心理状態といえます。「進め」という感情は、現在位置が分かっていて初めて進めるのであって、現在位置が分からない状態では、「戻る以外に道はない!」と思ってください。
【登山で大切なこととは?】
登山をしていてバテた状態では地図を見ようともしないし、現在位置を確認する回数も減ってしまいます。一番重要な要素は、バテない「体力」です。日頃のトレーニングによって「体力」を養うことが重要で「体力」がないと集中してナビゲーションをすることができません。
次に重要なのは「冷静」です。この冷静さがないと、道に迷っていると分かっていても「何とかなる」という願望で進んでしまいます。
最後に重要なのは「技術」です。この技術は、コンパスの使い方、地図の見方、現在位置の把握の仕方等、様々な「技術」が必要となります。
【こんな行動が道迷い遭難につながります】
①ザックの中に「地図とコンパス」を入れてあるが現在位置を確認しなかった。
②雨が降っていたので地図を出して現在位置を確認しなかった。
③長時間歩いて体力が消耗し、地図を出して確認しなかった。
このような行動をとってしまう共通のキーワードは「面倒臭い」という言葉です。やはり、基本に忠実に行動したいですね。
【装備について】
日帰り山行。1泊2日の小屋泊り。テント泊。必要な装備は何でしょうか?必要な装備を持っていないため不安になり、道迷い遭難に至る場合も考えられます。
≪基本装備≫
・ヘッドランプ(LEDライトで、軽くて頭に装着できるタイプのもの。予備電池も必要)
・雨具(防水性が高く、汗を逃がすもの。風よけにも使用する。)
・防寒着(季節によっても違うが、保温性があり、軽くて小さくなるもの。)
・食糧(行動食、非常食(かさばらず、カロリーが高く、腐らないもの)、塩)
・水筒(無雪期はペットボトルでも良いが、冬期はテルモス(保温性の高いもの)
・地図(25000分の1地形図、山と高原地図)、コンパス
・ツエルト(1~2人用、軽量タイプ)
・マッチ、ライター(電子ライターは気温が低いと火がつかない場合がある。)
・携帯電話(地図アプリをインストール)
・計画書
装備が充実しているか否かで、道に迷ったときの「冷静さ」が違ってきます。できるだけ、軽く、小さくなる装備を選びたいですね。
【伝えたいこと】
「あれっ!おかしい」と思った最初の判断で、ほぼその後の行動が決まってしまいます。まずは、「冷静」でいるかどうか、自問自答をしてください。今来た道を戻ることに「面倒臭い」、「登り返しがえらい」、「登り返しに時間がかかる」という感情が少しでもあれば、それはもう冷静ではありません。
そして、最初に「おかしい」と思ったときが一番、体力もあり、冷静さもあり、装備(食糧等)も充実しています。最初の正しい判断と行動が、道迷い遭難を防止し、最小限の行動で問題解決に繋がります。
次のテキストは、2016年に作成したもので、道迷いの心理をまとめたものです。
思い込み (目次へ)
地形図を読むことが上達してくると、特徴物を探すのも楽しくなります。
しかしながら、上達してくると「ここの特徴物は〇〇のはずだ!そうに違いない!」といった、思い込みをするようになります。
この思い込みについて心理状態はどんな状況になっているのでしょうか?
主に中級者の方に多くみられる傾向がありますが、思い込みをなくすことによって道迷いを防ぐこともできるのではないでしょうか?
私も昔、思い込みから現在位置を間違って把握し、道迷いをしたことがあります。
この思い込みの素晴らしいところは、持っていた地形図やコンパスの進行方向さえ疑うこともあります。ひょっとして、「自分は正しいけど、コンパスの示す進行方向が違っているのでは?」「このピークの向こうに〇〇があるはずだ!」・・・。というように・・。
令和3年から15年ぶりにオリエンテーリングにはまっていて、多くの大会に参加するようにしています。ブランクがあるので自分の方向感覚を競技のレベルまで上げるのに現在必死になっています。コンパス頼りに直進を数百メートルもするようなレッグ(ポストとポストの間の地形(進む場所)のこと)では、「本当にこっちでいいのか?」「コンパスを信じろ!」「コンパス操作の制度を上げろ!」と自問自答しながら競技をしています。ばっちり進むことができ、ポストが現れることもあれば、左右にずれてしまうこともあります。この時も「思い込みだけはやめよう」と心に誓っています。目の前に現れた地形を地図とにらめっこして、現在位置を把握し、修正しながら走っています。楽しい時間です。
道迷い事例に学ぶ(道迷いパターンとは) (目次へ)
過去の道迷いによる遭難事例のコーナーを作成していて、道迷い遭難には「遭難パターン」があるなぁと思うようになりました。そのパターンを紹介します。
・行動の出発時間が遅い。
・事前の登山道(山域)の情報不足。
・スマホのバッテリーが無くなり、地図アプリが使えない。
・スマホの予備の充電器は持って行ったが、ケーブルを忘れ、地図アプリが使えない。
・パーティーがバラバラに行動した。
・道が不明瞭(落ち葉、藪等)になったが、何とかなると思いそのまま進んだ。
・天候が悪くなったため、あせり、地図も見ずに進んだ。
・バスや電車の時間に間に合わないと、あせり、地図も見ずに進んだ。
・夕暮れ間近になり、あせり、地図も見ずに進んだ。
・昼にお酒を飲んで下山し、道が分からなくなった。
・途中であった登山者の話しを聞いて急にルートを変更した。
・赤テープを目印に進んだが道が分からなくなった。
・地図とコンパスをザックに入れていたが、面倒くさいので見なかった。
・残雪期に足跡についていったら道が分からなくなった。
・現地で急に登山コースを変更したため道に迷った。
道迷いは、下りで多く発生します。また、夕暮れ間近の時間帯も道迷いの確率が高くなります。注意したいですね。それでは、実際の道迷い事例について少し触れてみたいと思います。
【道迷い遭難事例】
【道迷いのパターン】
道迷いのパターンを原因別に整理してみました。
なぜ道迷いは起きるのか (目次へ)
道迷いは、色々な要素が複雑に関連しその深みに・・・。
その要素を「登山前」「登山中」「道に迷いやすい地形」「現在地確認」「気象条件」「単独行」「グループ」「道迷いの心理」に分けて考えてみました。「やっぱり、道に迷わないためにはこの要素って大事だなぁ」と改めて認識しました。
道を間違えやすい地形とは (目次へ)
道を間違えやすい地形を事前に把握することで、道迷いを未然に防ぐ効果があります。では、どのような地形が道迷いに繋がるのでしょうか?
【道が急に曲がる】
道が急に曲がっているため、気づかずに直進してしまうパターン。落ち葉が多いルートではことさら迷う確率が高くなります。
【尾根の分岐】
下りで一番多い道迷いパターン。道の分岐は、予測する特徴物として行動前に把握し、現地で確認しましょう。
【道が分不明瞭で直進】
落ち葉や藪で道が不明瞭となり、まっすぐ進んでしまうパターン。下りでは特に注意が必要となります。
【ピークからの下り】
ピークからの下りは、方向を間違えやすく注意が必要です。ピークで昼食を食べて何も考えずに、下ると道迷いしやすい原因になります。
道迷い遭難をしないために (目次へ)
いかがでしたか?道迷い遭難をしないために必要な知識や心理について触れてみました。必要な知識を持っていても、体力がなくては山は登れません。また、必要な装備を持っていても「面倒くさい」といって使わなければ意味がありません。
「公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会」では、山岳遭難防止啓発ビデオ『そうよ そうなの 遭難よ!』というビデオを作成しています。見たことありますか。笑えます。しかし、なるほどと思うこともあります。
私も道迷いをします。しかし、頭のどこかで登山コースのことを考えていると「あれっ?おかしい」と初期の段階で気づきます。このとき、しっかり現在位置確認を行うことが大切です。携帯の地図アプリを使ってもいいと思います。(というか、私はいつもスマホを「ぽちっ」ています。)
雨が降っていたり、暗闇が迫っていたり、寒かったり、暑かったり・・・。現在位置確認を「面倒くさい」と思わないでください。特に単独行の方は、十分な注意が必要です。団体で歩いていても、リーダーだけが地図を見ていては、単独行と変わりありません。
安全登山には、読図技術や登山に関する知識が必要です。皆さんも、安全で楽しい登山をされますように・・・。
リーダーの責任 (目次へ)
山岳会の山行では、必ずリーダー、サブリーダーを決めます。登山でリーダーの役割は、非常に大切だと思います。例えば、リーダーは、グループの先頭か最後尾を歩くのが主流で、これは、グループ全体を見渡し、全員に指示を出せる位置にいることが必要だからです。
また、歩くスピードは、一番体力のない方を中心に考え、ペースを整える必要があります。他にもリーダーが注意することは、滑りやすい下り坂での「スリップ注意」や「落石注意」危ない場所では「滑落注意」、登り始めや休憩時に行うグループ全員の体調把握、雨や風に対する防寒指示。そして、タイムスケジュールの管理等を行い、時間が予定よりもかかっている場合は、無理をせず引き返すタイミングを考えることも必要です。ですから、グループがバラバラで歩くことは、最もやってはいけない「ご法度」だと思っています。
近年、インターネットで山行会員を募り、登山口で初めて知り合い、山行をするといったことも聞いたことがあります。この場合でも、リーダーは決めてから行動をすることが必要だと思っています。
昔、ある方から、「登山で物事を決める判断は全員できるが、決断はリーダーがするもの。だからリーダーは知識や決断した理由を理論的に説明する必要がある。」と聞いたことがあります。気の知れた山岳会の中では、「この人が言うのであれば、そうしよう。」といった暗黙のルールがあります。だから、決断の理由も聞かないことが多いと思います。
私は、多くの山行でリーダーをしています。例えば、2019年4月の五竜岳~鹿島槍ヶ岳の山行では、朝7時に五竜岳山頂に着いたにも関わらず、鹿島槍ヶ岳への行動を中止し、引き返す決断をしました。五竜岳山頂では、晴れていて、鹿島槍ヶ岳に突っ込んでも不思議ではない(なぜ、突っ込まないか?とグループから言われても不思議ではない。)状況でした。しかし、①昼頃から天候が急変し悪化する予報であったこと。②グループ内の個々の技術が低かったことが頭に浮かびました。(私は、このルートを春山の残雪期に歩いたことがあります。一旦、気象が悪化すると引き返すことが難しく、懸垂下降やザイルワークも悪天候の中でグループ全体ができる自信がなかったことが引き返す一番の理由だったかもしれません。)
五竜岳の頂上で、グループの皆に、①天候の悪化、②天候悪化の中での雪山技術の有無、③いったん突っ込んだ場合の引き返す難しさを説明し引き返しました。
結果は、下山途中でトップをしていた者がトラバース中に滑落し、片方のアイゼンを雪渓に落とし、流してしてしまう事案が発生しました。(ザイルをつけていたのでトップは大事に至りませんでした。)私は、滑落者の安全のための支点を作り、雪渓にアイゼンを拾いに行き、アイゼンを確保したため下山は無事でしたが、この事案からグループの中では、雪山技術を学ぶ姿勢が生まれていたように思います。
下山後、五竜スキー場から五竜岳を見上げると、すでに、山は雲に覆われて雪が降っていました。鹿島槍ヶ岳に突っ込まないでよかったとつくづく思い、ホッとしました。
このホームページの冒頭で、国立登山研修所の「PDCAサイクルで安全登山」のビデオを紹介しました。この中で、北村さんが一番伝えたかったことは、
「引き返す勇気が必要ではなく、引き返す計画を実行することが必要!」
と話されています。リーダーは、この言葉を常に心がけておきたいものですし、そもそも登山計画は重要で、十分に計画を練る必要があると思っています。
リーダーには、責任があり、行動を左右し決断する権利があります。「安全登山」をするために、リーダーは常に必要な技術・体力を身につける努力が必要だと思います。
豊川山岳会では、
「困難は克服し、危険は回避する」
という言葉があります。私は「しっかりトレーニングをした上で登山に行く(困難は克服)。川の増水、雷、台風、雪崩等、危険な場合は避ける(危険は回避)」と肝に銘じています。
リーダーの座右の銘としては、ピッタリだと思っています。皆さんも安全登山を心掛け山を楽しみましょう。
読図講習会資料の作成方法 (目次へ)
読図講習会を開催すると、「この資料ってどうやって作るのですか?」という質問を受けることがあります。私の資料の作成方法をご案内します。
①カシミール3Dを利用して地図をPDFファイルに保存
②PDFファイルをJPGファイルに変換
③登山ルートの線を描く方法
読図小ネタ集 (目次へ)
研修会で山を歩いた時の休憩時に、読図の小ネタを受講生の方に話すと、とても興味を持ってくれます。
高校登山部の先生方も小ネタを生徒に話すときっと生徒の顔が笑顔になりますよ!
参考にさせていただいたHP・文献 (目次へ)
・国立登山研修所
・安全で楽しい登山を目指して~高等学校登山指導者用テキスト~(国立登山研修所)
・公益社団法人日本山岳・スポーツクライミング協会
・国土地理院
・国土地理院中部地方測量部
・日本の測量史
・ウィキペディア
・観石万歩
・中信高校山岳部かわらばん
・警察庁
・内閣府宇宙開発戦略推進事務局
・山岳読図大全(村越真)
・地図に訊け!(山岡光治)
・地図はどのようにして作られるのか(山岡光治)
・地形図の楽しい読み方(今尾恵介)
・読図の基本がわかる本(水野隆信)
・るるぶDo!地図の読み方 地図アプリの使い方(JTBパブリッシング)
・イラスト読図(阿部亮樹)
・JAXA(宇宙航空研究開発機構)
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