2. 地図とナビゲーション

目次

登山計画書(コンパス)   

 登山計画書の作成は、安全登山を語る上では必要不可欠であり、いざというときの救助に役立ちます。また、出発時間や行動時間、行程や危険個所などの把握、必要装備の確認、「プランB」を考えることにより、より安全な登山を行うことができます。
 紙で作成することも大切ですが、今回初めて(2023.10.18)私は登山計画書を『コンパス(Compass)』を使用して作成し、提出しました。とても使い勝手がよく、安全を考えているなぁ・・・。と思ったので、概要を作成してみました。
 特に良い点は、下山予定時間を過ぎた場合、3,5,7時間経過後に本人の登録スマホに下山未提出のメールが届き、7時間経過後に緊急連絡先にメールが届くことです。
 実際の作成については、『Conpass  コンパス』のホームページをご覧ください。

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地形図について   

 国土地理院で作成されている地形図を買われたことはありますか?今では簡単にインターネットで地形図を見ることも印刷することも可能になりました。国土地理院の地形図に触れ、読図の基本について説明したいと思います。

【地形図の折り方】

地形図を購入し、山行に携帯するときにどのような折り方をすると携帯しやすいでしょうか?まずは、地形図の折り方について触れてみたいと思います。

【地形図の投影法】
 この地形図はどのような図法を用いて作成されているのかを『紙風船』バージョンと『スイカ』バージョンで説明します。
皆さんはどちらの説明の方が分かりやすいでしょうか?ちなにみ、2020年7月に中房温泉~燕山荘~大天井岳~水俣乗越~上高地に縦走した時、テントの中で、国土地理院の地形図の作成する図法を説明したら豊川山岳会の今年20歳になる彼は、『紙風船』の方が分かりやすいなぁと言っていました。(どうでもいい話ですが…)

【紙風船説明バージョン】
例えば、地球を紙風船に例えます。赤色の部分だけを見てみると、北半球では北の方に行くほど横幅(緯線)が狭く、赤道近くでは広くなります。このような図形を「ユニバーサル横メルカトル図法」と言います。

 

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【スイカ説明バージョン】
 例えば、地球をスイカに例えます。まん丸のスイカを半分に切ります。これをまた半分に切り4分の1にします。この4分の1のスイカを更に半分に切り、8分の1の大きさにします。このスイカの赤色の部分だけを食べると、白色の部分と緑色の皮になり、立体形を保ったままの形になります。これが、地球8分の1です。更にスイカの白色の部分をスプーンで削ると緑色の皮だけになります。こうなると、この緑色の皮だけでは、立体の形を保つことができず、まな板の上にぺたんと平面になります。緑色の真ん中は広く、両端に行くほど狭くなります。この形が、「ユニバーサル横メルカトル図法」です。(「ユニバーサル横メルカトル図法」に関する詳細は、国土地理院 を参照してください。)

説明バージョンはどうでしょうか?「どっちでもいい。あまり興味がない?」これが結論かもしれませんが、ここからほとんどの方が知らない地形図のうんちくが始まるのです。

【地形図の大きさ】
 地形図は、例えば、鹿児島の宮之浦岳の地形図と槍ヶ岳の地形図では横(緯線)の長さや面積の大きさが違います。宮之浦岳は槍ヶ岳よりも南に位置するため、「宮之浦岳」地形図の方が「槍ヶ岳」の地形図に比べ少し大きくなります。
(ちなみに、地図という呼び方は、一定の図法と縮尺で描かれたものの総称をいい、地形図は等高線を使って地形を描き、日本の場合25000分の1地形図が国土基本図となります。)

【地形図は台形】
 市販されている国土地理院の地形図の1枚だけを見てみましょう。実は、上辺と下辺の長さは同一(長方形)ではなく、上辺が少し短い台形になっています。(計算上0.6㎜ぐらい上辺が短いそうです。阿部亮樹著「イラスト読図」参照)

【隣接する地形図の重複】
 現在の紙の2万5千分1地形図では、隣接する地形図が重複しています。その理由は、国土地理院のHPを引用すると
『平成14年に測量法が改正され,座標系が日本測地系から世界測地系に切り替えられました.この結果,座標が従来より東南の方向に移動することになりました。地形図を順次世界測地系に移行するため、従来の図郭のままだと空白部が生じることになるため重複部を表示しています。重複部の範囲は、経度方向については緯度により異なりますが、緯度方向については,図郭の上辺と下辺に20秒の重複部を持たせています。』とあります。市販の国土地理院地図を購入された際には、この重複部分にも注目すると楽しいですね。

【日本測地系と世界測地系の座標表示】
『国土地理院中部地方測量部』HPのQ&Aに
『Q:地図に日本測地系と世界測地系の座標を表示する場合どのように表示するのですか?
A:国土地理院の地形図等の場合は、日本測地系の座標を「黒色」で表示し、世界測地系の座標を「茶色」で表示しています。複数色で印刷する場合は色を変えることもできますが、単色で印刷する場合は「括弧書き」にするか、または、字体を変える方法などが考えられます。なお、どのような方法にするにしてもその書き方が世界測地系であるか日本測地系であるか明示しておく必要があります。』とありました。

【電子国土基本図】
昔の紙地図表示が改められ、『平成26年3月31日付け国地達第15号通達により、平成25年2万5千分1地形図図式( 表示基準) 』が定められました。この表示基準の総則の中に『電子国土基本図( 地図情報)( 以下「電子国土基本図」という。)』 と記載があるので電子地図に変わったのはこの時からになります。

平成25年2万5千分1地形図図式( 表示基準)

が地形図作成の基準になります。例えば、「川を表す青色って、川幅何メートル以上を表すのだろう?」とか、「道幅って、徒歩道と軽車道の違いって何メートル以上で区切られているのだろう?」とか疑問がすべて載っています。ご一読いかがですか?。

【地形図クイズ】
 突然ですが、ここで 地形図問題 です。

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知っていましたか?私は、知りませんでした。

もう一つ 地形図問題 ですどうでした?「地形図問題」分かりましたか?

【三角形の内角の和は、270度】
(問題)
 三角形の内角の和は、270度になる?

(答え)
 三角形の内角の和は、180度と学校で勉強しました。それが、270度とは?何を言っているのだろう?と、お思いの方もいらっしゃるでしょう?これは、昔、剱岳に行った時に豊川山岳会の仲間の方が私に質問された問題です。何故かテントの中で盛り上がりがり、あーでもない、こーでもないと・・・。
 平面では、三角形の内角の和は、180度ですが、地球のような球体ではどうでしょう?
 今、私は、北極点にいるとします。
 ①赤道上まで移動し、赤道上で90度東に進みます。
 ②次に、地球4分の1進んだところで、今度は、北極に90度進みます。
 ③北極点に到着すると、この三角形の内角の和は、270度になりませんか?
 これを、テントの中で話していて、何故か盛り上がりました。
 豊川山岳会のホームページのHOMEの一番上の写真の「We Love Climbing」のところで二人が手を広げて喜んでいます。実はこれ、万歳して喜んでいるのではなく、90度を表わしています。この写真を見て、剱岳で「三角形の内角の和は、270度!」って言ってたなぁ・・・。と思い出します。
 地形図を見る時って、どこかこの「270度」の立体的なイメージって大事だなぁ・・・。と思います。

地図記号   

 地図記号については、平成25年2万5千分1地形図図式( 表示基準)で詳細に決められています。この図式については、「こんなに地図記号は詳細に決められているのか。」と思いました。例えば、「三角点の地図記号の△の一辺の長さは1.2㎜、△の中の点は0.3㎜」と決められています。まあ、これを覚えたからって威張れませんが…。
 また、地図記号については、何といっても「国土地理院」のHPに詳細に掲載されているので、一度、ご覧下さい。

【地図記号】

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よく見かける地図記号に、「三角点」、「岩」、「土がけ」、「岩がけ」、「滝」、「せき(堰堤)」、「建物」、「記念碑」などがあります。三角点については、後ほど詳しく説明します。 送電線の「鉄塔」は地図記号にはありませんが、送電線が屈曲しているところが「鉄塔」の位置になります。ちなみに、昔は送電線は2万ボルト以上の分かりやすいものを記載していたようですが、現在の国土地理院のHPでは、2万ボルトの文字が削除されています。
「凹地」の大小によっても地図記号は相違します。「池」「湿地」も滝と同じで、国土地理院作図者の心意気を感じられるでしょう。

国土地理院の平成25年2万5千分1地形図図式(表示基準)によれば、『「雨裂(うれつ)」とは、雨水の流れによって地表面にできる谷状の地形をいい、長さが概ね図上1mm以上のものを表示する。』とあります。

【地図記号(滝)】
 「地図記号を覚えないと地図を読めるようになりません」と言われても興味もないのに覚えれるわけがありません。地図記号にはそれぞれ意味があります。例えば滝の記号の●は水を表し、線は水の落ち口を表します。
 線の下流に水があれば、滝。線の上流に●(正確には●ではなく0.4~0.5ミリの線)があればせき(堰堤)になります。せき(堰堤)は水が上流に溜まりますよね。
 また、小さな滝は線と●2つ、大きな滝になると水しぶきが多くなるため、●の数も多く描かれています。滝の地図記号について少し触れてみたいと思います。

 日本には大きな滝や特徴のある滝がありますが、地図記号ではどのように表現されているのでしょうか?

地図記号「滝」の色々な表現スライド

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国土地理院作図者:「どう?私の表現力!」
私       :「さすがでございます。線も曲げちゃっていいんですね!」
国土地理院作図者:「曲げちゃっていいんです。イメージ湧くでしょう!●だって大きな滝にはいっぱい付けちゃえばいいんです!」

「国土地理院作図者」の方との会話が聞こえてくるようです。

国土地理院作図者:「ちなみに滝って、落差何メートル以上の滝を地図記号で表現するか知ってる?」
私       :「5mです。」
国土地理院作図者:「正解!」

滝の説明、いかがでしたか?他にも有名な、「称名の滝」「華厳の滝」「那智の滝」・・・色々ありますよね。皆さんの地元にも、このような国土地理院作図者の心意気が描かれている滝や特別な地形はありますか?探すのも面白いですよね。

【地図記号(墓)】

「墓地」の地図記号は「 ꓕ 」です。霊園など大きなエリアでは、この墓地の地図記号は定期的な間隔で配置され、エリアを示しますが、例えば「国定忠治の墓」というような狭い特定の場所を示す場合には、墓地の地図記号は真位置に記載されます。このような、広いエリアや特定の場所を表す地図記号は「墓地= ꓕ 」しかありません。

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【地図記号クイズ】

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わかりましたか?

地形図の印刷   

 地形図は、インターネットで無料で入手することができます。私は、カシミールを利用していますが、どれを使用するのかは好みだと思います。必ず防水対策を行って山に持参するようにしてください。

【カシミール3D】
 カシミール を利用する(私のおすすめ)
 地図の勉強をする場合、縮尺が毎回違うものを持っていくのは距離の感覚が違ってくるので、避けたほうが良いと思います。その点、カシミールは、2,500分の1~20万分の1まで幅広く印刷設定ができるのが特徴。
 老眼の私は、印刷設定を1万分の1にして愛用しています。印刷用紙の設定や縦、横設定も簡単にできます。また、磁北線の本数も自由に決めることができるので、コンパスの勉強をするときは、少し間隔を狭くすると便利です。縮尺も地図に印刷することができます。

カシミールは無料のソフトです。ダウンロード後は、カシミール初期設定をお勧めします。

初期設定(地名・標高・山名表示を消す)
表示 → 表示の設定 → 地名表示(表示しない) → 山名の設定(表示しない) → 標高の設定(表示しない)

私は、山に持っていく地図はカシミールを使用し、印刷しています。私の印刷方法を紹介します。
ファイル → 用紙を指定して印刷 → 用紙サイズの確認 → 印刷の向き確認 → (次へ)
→ 縮尺設定(1:10,000を推奨) → (次へ)
→ 印刷場所を設定 → 印刷範囲の指定(通常はそのまま) → (次へ)
→ 緯線経線のチェックをはずす → 磁北線を印刷する(磁北線の間隔をここで決める → 5(縦印刷)~8(横印刷)で設定) → (次へ)
印刷オプションの設定 →
(自動的に最適な海象殿地図に切り替えて印刷する → チェック) →
(文字やアイコンの大きさを、画面の表示と印刷結果で同じになるようにする → チェックしてもしなくても変化はあまりない)
(スケール(距離表示)を印刷する → チェック) → (印刷開始)

(質問)磁北線の色を赤色に変えたいのですが?
(答)カシミールのホームページの磁北線の項目をご覧ください。

【地図プリ】
 地図プリ (ヤマレコ)を利用する
 ヤマレコの山行記録のホームページから、行きたい山行記録を見つけます。(このやり方が断然早いと思いますが、行きたい山行記録が見つけられないときは、地図プリのホームページから印刷できます。但し、登山ルートの記載はありません。)次に「地図/標高グラフ」のところにある「地図プリで印刷」をクリック。地図を拡大して分かりやすい自分の縮尺で印刷できます。ただし、〇万分の1という表現ではなく、縮尺が地図に印刷され50m、100m、300m、500m、1kmの縮尺になります。縮尺の設定方法は、パソコン画面の見たままが縮尺の大きさになります。磁北線も自動的に引いてくれますが、間隔の設定は3種類です。地図の勉強には、毎回同じ縮尺を使うようにしないと距離間隔が違ってきます。

(質問)地図プリ(ヤマレコ) を使用して磁北線を引いた紙地図を印刷したいのですがどうすればよいですか?
(答) 地図プリ の印刷ホームページ内の磁北線の項目「あり、なし」を選択してください。

【YAMAP】
 YAMAP / ヤマップ YAMAPを利用する(ログインが必要です。)
 ヤマレコ同様に人気の地図アプリですが、YAMAP一番の魅力は、登山ルートは赤字で記載され、登山のコースタイムも記載されます。  YAMAPのホームページの上部の「地図」の文字をクリック。エリアを選択し、「登山ルートを見る」をクリック。印刷したい場所を拡大表示し、印刷を行います。なお、切り取り印刷ボタンを押して場所を選択した場合は、選択したエリア面積に応じて、縮尺が、30m、50m、100m、300m、500mと変化します。(ヤマレコ同様にパソコン画面の大きさがそのまま縮尺に反映されます。)ヤマレコ同様に地図の勉強には、毎回同じ縮尺を使うようにしないと距離間隔が違ってきます。

(質問)YAMAPを使用して磁北線を引いた紙地図を印刷したいのですがどうすればよいですか?
(答) YAMAPのホームページ をご覧ください。
   (磁北線が引けるのは、ウェブサイトの地図のみの機能です)

【ヤマケイオンライン】
 ヤマケイオンライン を利用する(ログインが必要です。)
 山と渓谷社のホームページ。コースタイム、通行止め、水場、ビューポイント、注意個所等が記載された地図を印刷することが可能です。ただし、コースタイム、通行止め、水場、ビューポイント、注意個所等については、すべての山域で印刷できるわけではなく、人気の場所のみ印刷が可能です。その他の場所は、地形図のみ印刷が可能です。縮尺は表示されているものがそのまま印刷されます。磁北線は、「あり」「なし」のみ設定可能です。

【国土地理院】
 国土地理院 を利用する
地図といえば本家本元の国土地理院。地図の印刷には便利に設計されていないので、印刷にはお勧めしません。磁北線の間隔は広く、自動で引かれた線を頼りに、自分で線を引いて間隔を狭くしないとコンパスは使えません。また、国土地理院のホームページで縦横設定をしても、更に、自分のパソコンに繋がっているプリンターの縦横設定をしないと使い物になりません。
国土地理院発行の2万5千分の1地形図は、大きな書店や 国土地理院のHP からも注文できます。

【TrailNote】
TrailNote (mac限定)を利用する
mac限定のため、私は、使用したことがありません。詳しいコメントはできませんが、HPを確認したところ、使いやすそうな気もします。

国土地理院の地形図はどのように修正するの?    

 昔は、10㎞×10㎞の航空写真を何枚も撮影し、修正していました。これでは、地図修正に時間もコストもかかります。
そこで、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が、2006年に陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)、2014年に陸域観測技術衛星2号「だいち2号」(ALOS-2)を高度700㎞の上空へ打ち上げました。この衛星「だいち」は、地球規模の環境観測を高精度で行うことを目標に、地図作成・地球観測・災害状況の把握・資源探査など、幅広い分野での利用を目的に開発されました。

 現在は、この「だいち2号」を使用し、地形図の修正について、実証実験が行われ実際に地図修正にも利用されています。
 また、今後「だいち3号」が打ち上げ予定で、広い観測幅(直下70km)を維持しつつ、さらに高い地上分解能(直下0.8m)を実現する予定です。
 近い未来、人工知能を使用し「だいち3号」からの情報を処理し、リアルタイムで国土地理院地図の修正が行われる可能性も否定できませんね。(ちょっと私の願望)
 興味のある方は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)HPの「2万5千分の1地形図の修正」をご覧ください。

【国土地理院地形図 登山道の修正】
 現在、国土地理院では、登山道の修正は、民間企業と協力して、地形図の登山道情報の正確性の向上を図る取り組みを行っているそうです。
協力企業から登山者の移動経路情報などのビッグデータの提供を受け、それらのデータを活用して地形図の登山道情報を更新し、登山者の利用が多い主要な山域から登山道を修正していくそうです。
(「株式会社ヤマレコ」「株式会社ヤマップ」の2者と協力協定を締結してるそうです。)

(私の独り言・・・)
読図講習会の講師をしていた時の質問で、
「先ほどの河合さんの説明では、剱岳の登山道は正確のような説明がありましたが、国土地理院の登山道は信用できないって聞いたことがありますが本当でしょうか?」
というものをいただきました。
上記に説明したとおり、民間会社のビッグデータを活用し、登山者の利用が多い主要な山域(北・中・南アルプス、屋久島)から順次、精度の高い登山道が地形図上に表示されるようです。
しかしながら、地形図の登山道修正の方法に素人の私の考えは、

民間のビッグデータ × 人工知能(AI) = 瞬殺の登山道修正

という感じがするのですが、皆さんはどのよう思われますか?
「山岳遭難の約4割は道迷いが原因!」と言われています。国土地理院の地形図に表示されている登山道が廃道、若しくは、間違っている等による道迷いも発生しています。
少しでも早く、精度の高い登山道が国土地理院の地形図に表示され、道迷いによる山岳遭難が減少することを願っています。

山に持参する地形図はこんなものを持っていこう!    

皆さんは、山に行くときどんな地形図を持っていきますか?
磁北線は引いてありますか?
目指す山までの登山道の特徴物を決めていますか?
コースタイムは把握していますか?
こんな地図を持っていくと「道迷い」はぐーんと少なくなると思いますが、如何でしょうか?

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※防水対策のため「ジッパーの付いたビニール袋」に必ず入れて携帯してください。
※地形図は、最新のものを使用するようにしてください。(過去に古い地図を使用したため、記載されていた道がなかったという道迷い事例が発生しています。)

3D地形図    

 地形図は2次元の平面図。しかし、地図を見慣れてくると、地図の等高線が浮き出てきて3D地図に見えてきます。
オリエンテーリングの競技をしていると、走りながら、「ポストの設置位置はあの尾根の向こう側の沢だ!」とか、「この沢を下った沢と沢との分岐にをアタックポイントにして、右手の尾根を登った尾根上にある!」とか・・・。立体的にポストの位置をとらえながら走ります。皆さんも、平面の地形図が3D地形図に見えたとしたら、とても楽しいと思いませんか?
 国土地理院のHPでは、簡単に3D地形図が作成できる優れものです。3D地形図の特徴や作成方法について説明します。

【鳳来寺山の巻】
3D地形図で見ると尾根と沢が分かりやすくなります。

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【明神山の巻】
尾根が細くなっている等の危険な情報も3D地形図では分かりやすくなります。

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【鞍掛山の巻】
斜面の傾斜の緩急が分かりやすくなります。

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【寧比曽岳の巻】
下りの尾根分岐が分かりやすくなります。

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【竜頭山の巻】
小尾根の一つ一つが分かりやすく、楽しくなります。

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上記のものは、2020年9月号「山と渓谷」に掲載していただいたものを載せてあります。

【3D地形図の作り方】
国土地理院のHPでは、3D地形図が簡単に作成できます。作成手順をご紹介します。

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 いかがでしたか。オリエンテーリングの上級者や地図を読みなれている方は、地図が立体的にイメージできるようになります。しかしながら、初心者の方には立体的にイメージするのは難しい感覚ですよね。正直、私がこの3D地形図に出会ったときは衝撃を受けました。だって、イメージではなく立体的に見えるんですよ。楽しくなりませんか?

スマホの地図アプリ    

 私は、スマホの地図アプリを活用しています。先ほども述べましたが、「現在位置は、今この辺だろう?」と思ってから地図アプリを見ると純粋に楽しいのです。スマホ先生が「ここです。」って教えてくれます。
地図アプリはどれがいいの?と言われても、好みがあります。皆さんは何をお使いですか?
(以下説明は、「山と渓谷」2020年9月号を引用し、個人の意見も入れてあります。(値段等はネットから検索し引用。変更もあるので、必ず最新のものを確認してください。))

【山と高原地図】
『山と高原地図』 →『シンプルで見やすい。スマホ地図初心者向け』
月額400円で無料版はなし。広域の範囲を見たいときには、非常に役に立ちます。59エリアの「地図」が使い放題。登山で定番の昭文社「山と高原地図」をスマホアプリにしたもの。表示されるのは紙地図と同じものなので、定評のある見やすさと正確な情報がスマホでも利用できます。現在地表示やナビゲーションもできるが、機能は最小限なのでむしろシンプルで分かりやすい。最大の難点は有料であることだが、月額使い放題もあり、お得感もある。なお、iphoneからAndroid(その逆も)に変えた場合は購入した地図データが使えなくなるので注意。

【YAMAP】
『YAMAP』    →『無料だけど機能は十分。とりあえず使ってみたい人向け』
無料の場合は、1か月にダウンロードできる地図は2つまで。(アプリからの支払いの場合:¥580/月、¥4,600/年 /ウェブサイトからの支払いの場合:¥480/月、¥3,480/年)で、無制限。(メジャーな一般登山道のコースタイム記載。)コースタイム地図の対象範囲が広く、「山と高原地図」にはないエリアでも使えるところが多い。表示される地図は国土地理院地図だが、独自に編集した登山道とコースタイムも表示される。「山と高原地図」に比べれば、情報量は少ないが、一般的な登山には十分といえる。利用コストと地図のクオリティ、機能の分かりやすさなどバランスに優れているので、とりあえずスマホ地図を使ってみたいという人には一番にお勧めできる。

【ヤマレコ】
『ヤマレコ』   →『唯一無二の「足あと」機能。山地図好きや登山中~上級者向け』
 無料の場合は、同時に保存できる地図が2つまで。ただし、保存した地図を削除すれば、何度でもダウンロードが可能。(今後変更の可能性も否定できないが?)料金は、550円/月(クレジットカード払い)。3,400円/年(クレジットカード払い・銀行振込)で、無制限。無料で使える機能がYAMAPより狭いので、初心者にはYAMAPより取っつきづらいと感じられる。ただし「みんなの足あと」という、これにしかない素晴らしい機能がある。これは、過去にヤマレコを利用した他の登山者の行動軌跡が表示されるというもので、意外なところに誰かが通ったルートが発見できたりして、地図好き・探検好きにはたまらない。これはどんなガイドブックや地図でも得られなかった情報でもある。(一般登山道のコースタイム記載。登山コースの計画も作成可能。)
(注意)最近、ヤマレコの足あと軌跡機能を使ったために、道迷い遭難の事例が発生しています。
①足あとがついているから、その足跡を頼りに山を歩いた。
②その足跡は、誰かが道に迷って付けたものだった。
③知らず知らずに道に迷った。
④気づいたら遭難していた。
というものです。やはり、スマホ地図だけに頼るのではなく、自分の読図知識を充実させてほしいと思います。

【ジオグラフィカ】
『ジオグラフィカ』 →『プレーンな地形図を表示。マイナールートを歩く人向け』
無料で使用もできますが、一度「960円」を課金すれば、月額料金は発生せず、どれだけでも地図をダウンロードできます。表示されるのは地理院地図。登山道やコースタイムなどのオリジナルな表示がないことが他のアプリとの決定的な違いで、地形図の見方に慣れている人でないと使いづらいと思う。事前のルートセットなどもある程度手動でやらなくてはならないので、その点からも上級者向けといえる。一方で、登山地図にないマイナーな山やバリエーションルートを中心に歩いている人には使いやすい。ほとんどの機能が無料で使えるのもうれしい。

【講習会を開いた時の質問】
(質問)
 どんな地図アプリが良いですか?

(回答)
 初心者の方には、YAMAPかヤマレコをオススメします。 両方とも非常に優れたソフトです。両方とも登山計画ルートから外れた場合、忠告してくれます。またYAMAPは現在位置を随時家族に知らせる見守り機能があります。
 さて、私は、個人的にヤマレコとYAMAPの両方を使っています。 理由は、無料の場合、地図のダウンロードが2件まで可能であることは、2社とも変わらないですが、YAMAPは月に2件まで可能。それ以上は有料になります。 ヤマレコは2件以上の地図のダウンロードについて、スマホ内のダウンロードした地図を削除すれば、更にダウンロードが可能です。(今後制限がかかる可能性も否定できませんが、、、) また、同じ山岳会の仲間で行くときは、誰かがヤマレコアプリで計画書を作ると、友達申請がしてあればその計画書を使うことも出来ます。 YAMAPも講習会で内容を聞かれることを想定して、月に2回までの無料版で体験しています。ヤマレコとYAMAP両方とも優れたソフトです。
(補足)
 昨年(2020年)に三重県鈴鹿山系御池岳での遭難では、ヤマレコソフトに起因する新しいタイプの道迷いがあり、結局は遺体で見つかった例です。 当時遭難者はアプリに表示される道だけを頼りに移動していたようです。 この山はカルスト地形でなだらかな山容で、どこでも歩けるくらいであるため、無数の道がアプリの画面上で表示され、 それらをたどっているうちに、自分の行きたい道や方向が分からなくなって、体力を消耗して動けなくなったようで、結局はテントの近くで見つかっています。 アプリも上手に活用して、それだけに頼りすぎないように、基本を大事に行動したいものですね。
 下記の画像は、ヤマレコで御池岳を見たものです。ルートがどうなっているのか分かりづらいですね。地図とコンパスは必需品でコンパスは使えるように練習しましょう。


御池岳周辺の様子(ヤマレコ)

【スマホの地図アプリの有効活用】
 私は、スマホの地図アプリを愛用しています。今では、多くの方が地図アプリを使用し、安全登山に心がけています。しかしながら、地図アプリは、現在位置が分からなくなった時や、ルートが不安になったときに見る方がほとんどではないでしょうか。それでは、道迷いになっていても気づかなかったり、読図の練習にはならない気がします。
 そこで、私の地図アプリ活用方法をご紹介します。
 私は、まず歩きだす前に、大きな特徴物を地図上で探します。〇〇山、〇〇mピーク、道の分岐、大きな道の曲がり・・・。なるべくわかりやすい特徴物がいいでしょう。
 次に、大きな特徴物までの間にある小さな特徴物を見つけ頭に入れます。歩いていると頭の中(地形図上)の特徴物と実際の地形が一致したところで、スマホを「ポチ」ります。答え合わせをするのです。この繰り返しで山行中は自問自答を繰り返し、スキルアップに繋がるのです。
 また、歩いていて急に緩やかな斜面から急な斜面に変化があったときなどは、すぐにスマホを「ポチ」ります。「この傾斜は、地形図ではこれぐらいの表現力になっているのか・・・」とか「この尾根の細さは、地形図上ではこの表現力になっているのか」とか・・・・。
 実際に目から入った情報から、スマホを「ポチ」る場合もあります。こちらの場合は、「なるほど」と感心する場合が多くあります。
皆さんも一度お試しください。スキルアップになります。

【スマホの地図アプリ使用上の注意】
 ところで、スマホの地図アプリですが、どのような点に注意して使用すればよいのでしょうか?また、そもそもとは「GPS」はどのような仕組みになっているのでしょうか?ウィキペディアから引用して説明します。GPSは、アメリカ合衆国が軍事用に打ち上げた約30個のGPS衛星のうち、上空にある数個の衛星からの信号をGPS受信機で受け取り、受信者が自身の現在位置を知るシステムです。 元来は米軍の軍用システムであり、米国政府の支配下にあります。そのため、精度や可用性その他について、また他国や民間における利用に対して、種々の制限を受ける事が過去にもあり、また将来的にも有り得ます。そのため、米国のシステム依存からの独立や、自身の利益に適合させる目的で、各国でも独自のシステムを保有、運用しようとする動きがみられます。
 各国でもGPSと同様、類似したシステムを運用開始している事から、従来GPSが独占してきた分野および用語は、「全地球衛星測位システム、全地球衛星航法システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)」として一般化されました。
 また、全地球にかぎらず日本の準天頂衛星システム(QZSS)などの地球的地域限定のシステムも構築されており、これらは全地球型システムと組み合わせて使用されます。現在準天頂衛星システム(みちびき)1~4号機の4機が打ち上げられており、2023年度をめどに7機体制とする計画です。その特徴は、測位できる位置の精度の高が使い方によっては、わずか数cmの誤差で位置を特定できるようです。
(2018年11月から、みちびきは4機体制で運用を開始しており、このうち3機はアジア・オセアニア地域の各地点では常時見ることができます。)

【準天頂衛星システム】
 準天頂衛星システム(QZSS)は、とってもユニークな軌道をしています。それは、日本上空とオーストラリア上空を8の字を描くような軌道をしています。どうやったらこんな軌道が取れるのかとても不思議です。

【スマホ地図アプリの電源について】
 次の注意点は、消費電力の問題です。機内モードに設定し、消費電力を抑えて使用しましょう。実は、機内モードだけでは、十分な消費対策ではありません。私は、万歩計のアプリもスマホにインストールしていて、常にこの万歩計が動き続け、電源消費をしててたため、1日、地図アプリがもたなかったことがあります。また、スマホの設定で、バッテリーセーブ(画面の明るさ等)も有効だと思います。スマホの地図アプリは100%ではありません。紙地図は必ず持つようにしましょう。
 他にも、必ずバックアップの充電池(1泊2日は10000mAh程度のものを推奨します。)とケーブルを持参するようにしてください。実際の道迷い遭難で、「バックアップの充電池は持ったけど、ケーブルを忘れてしまった。電池が無くなって現在位置が分からなくなった。」という記事を見たことがあります。注意しましょう。

【YAMAP vs ヤマレコ 解説】
 講習会を開催すると「地図アプリは何がいいですか?」と質問を受けます。『地図アプリを選ぶときは、「IT知識が低くても大丈夫」「機能が充実」「無料」といったものが良いですね。』と回答しています。今回は、YAMAPとヤマレコを徹底的に解説したいと思います。個人的な感情も入り混じっていますが、参考にしてください。

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目指せ読図名人!地図アプリも上手に活用して賢く安全登山    

 先述した地図アプリですが、初心者の方からの質問で、『地図アプリは何がいいですか?』と聞かれることがあります。
 ここではそんな地図アプリは何がよいのか?どんな特徴があるのか?登山計画書の提出はされていたが、道迷い遭難で亡くなられた方の事例から地図アプリで必要な設定方法とは・・・。色々な側面から検証してみました。
 特に、『ヤマレコ』と『YAMAP』を徹底的に深堀してどちらの機能が優れているのか?どんな特徴があるのか調べてみました。
 そして、最後の結びとして・・・地図アプリをどのように使用すればよいのか?みなさんにも考えていただきたいと思います。

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この記事を書いた人

 読図コーナーを担当し「初心者からの読図,過去の遭難事例」では、ナビゲーション技術や知識、道迷いの心理、道迷い遭難事例を解説しています。ぜひ、読図コーナーのご一読を・・・。

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