三大道迷い地形とは?
道を間違えやすい地形があります。この地形を理解し、事前に注意することで道迷い遭難がぐっと少なくなります。どのような地形が道迷いしやすいのでしょうか?
- 下りの尾根分岐
- 急に道が曲がる
- ピークからの下り
【下りの尾根の分岐①】
YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『西丹沢の大界木山〜浦安峠(神奈川・山梨の県境)』尾根の分岐で間違えるパターンです。尾根の分岐では、注意していないと道なりに進んでしまう傾向があります。
【下りの尾根の分岐②】
YAMAPの「2022年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『岐阜 / 各務原 アルプス 権現山〜桐谷坂峠』は、とっても迷いやすいルート。尾根の分岐で、一旦、違う尾根の方向にルートがあり、そのまま進むと違う尾根に迷ってしまいます。正しいルートは、尾根と尾根の付け根の部分をトラバースして進む方向を変えます。「尾根分岐」と「道の曲がり」の合わせ技で道迷いをしてしまうパターンのため、最強パターンの一つです。
【下りの尾根の分岐③】
YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『埼玉/子ノ権現〜六ツ石ノ頭』は典型的な尾根分岐の道迷いパターン。尾根の分岐で道に迷う場合は、何も考えていない場合が多く、道なりに進んでしまうパターン。気が付けば道に迷っているのだ。このパターンも多くの道迷い事例が多い。
【下りの尾根分岐】
【道が急に曲がる①】
YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『太白山の山頂付近(宮城)』は、登りも、下りも道迷いしやすい地形です。下りの場合は90度以上道が曲がっていて、そのまま進んでしまいます。また、登りの場合は、トラバースで尾根にたどり着くのでそのまま直進して尾根を下ってしまいます。
【道が急に曲がる②】
YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『雨乞岳の沢谷ノ頭〜登山口(滋賀・三重の県境)』は道が急に曲がるパターンです。下記の事例は、①下り道、②尾根上を歩く、③道が急に曲がる、④そのまま直進し尾根上を下ってしまうので、このパターンは非常に多くみられます。特に急に曲がった尾根上が道に見えたり、落ち葉で道が分かりづらい場合は、道迷いの鉄板といってもよいでしょう。
【道が急に曲がる②】
YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた、『猿投山の東昌寺から南北方向(愛知)』は登りでの道迷いパターンです。東昌寺から歩いてきた方向をそのまま道なりに歩いてしまう人が多いので注意が必要です。道迷いは下りで多いのが特徴ですが。このケースは登りで道迷いが発生しています。登りでも注意したいですね。
【道が急に曲がる】を3D地図で見てみよう
【ピークからの下り】
意外と道迷いで多いパターンが、「ピークからの下り」です。特に進行方向がピークで曲がっている場合は間違えやすく注意が必要です。コンパスを使って進行方向を確かめる行動をしましょう。また、地図アプリを使用しピークから少し下ってから地図アプリで現在位置を確認してもよいでしょう。
【ピークからの下り】を3D地図で見てみよう
「下りの尾根分岐」は一番多い道迷いの地形といえます。何も考えていないと人は直進してしまう傾向にあるため、尾根分岐で違った尾根に迷い込んでしまいます。常に「尾根分岐は注意!」と思ってください。
次に、多いのは「急に道が曲がる」地形です。特に尾根上を歩いていて、尾根から斜面に道が急に曲がっている場合は、そのまま尾根上を進んでしまいます。YAMAPの「2021年 日本一迷いやすい登山道」で選ばれた地形もこのパターンでした。後ほど詳細を記載します。
最後は、「ピークからの下り」の地形です。この地形は意外と道迷いに多いパターンです。特にピークから進行方向と違った方向に道が曲がっている場合は特に注意が必要です。
YAMAPとヤマレコの地形図で「迷いやすい三大地形」を見てみましょう。
ナビゲーションとは
ナヴゲーションとは、目的の山まで迷わずに到達し、登山口まで戻ってくることですが、どうすればよいのでしょうか?まずは、ナヴゲーションサイクルについて国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
【ナヴィゲーションサイクル】(ナヴィゲーションの3つのステップ)
ナヴィゲーションでは、
①目的地とそこへのルートを地図から読み取る。
②地図から決めたルートを維持する。
③決めたとおりの場所に来たかを確認する。
必要があります。
①を「先読み(予測)」
②を「ルート維持」
③を「現在地の把握」
と呼びます。(最も重要なのは、「先読み(予測)」です。)
これら3つのステップは 下記の図 のようにナヴィゲーションしている間、循環して行われています。この循環を「ナヴィゲーションサイクル」と言います。ナヴィゲーションサイクルは、実は、一種のPDCAサイクルです。
「先読み」、「ルート維持」、「現在地の把握」のどれをしているかを意識することで、効率的かつ効果的に読図が行えます。
「先読み」は、ルート維持や確認すべき地点の情報を地図から読み取ります。
「ルート維持」は、進路の特徴を読み取り、それに対応した場所(進路)を現地の中に見つけ出す必要があります。
「現在地の把握」は、予め読み取った地形的特徴を現地の中に探す場合と、現地の中で見つけた特徴的なものを地図の中に見つける場合がありますが、いずれも周囲の風景をよく見て、風景と地形図を一致させることが欠かせません。
(以下スライドの解説です)
ナビゲーションの基本となる、ナビゲーションサイクルについて説明します。山行前には、プランニングをしっかり行います。プランニングでは、
・目的地へのルートの決定
・ルート上の特徴物や注意箇所、危険箇所の把握
・想定される危険への対応策の検討
などを行います。山に入ったら、実際に動き始める前に、プランニングに基づいて、ルートの先読みをします。先読みとは、地形図からルートの特徴や、チェックポイントとなる特徴的な地形を、あらかじめ読み取っておくことです。
行動を開始したら、「ルート維持」に努めます。先読みで読み取ったルートの特徴やチェックポイントを頭に入れながら、周囲の地形を観察し、常に「正しい道を進んでいるか?」を判断しながら進みます。
「現在地把握」は、事前に先読みした特徴物が出てきたか? 今どこにいるか? などを確認することです。地形図から読み取った情報と、周囲の地形や風景を観察して、一致しているかどうかを確認して、現在地を確定させます。現在地が確認できたら、さらにその先のルート状況を先読みし、進んでいきます。
正確なナビゲーションを行うには、「先読み」「ルート維持」「現在地把握」という3つのサイクルを理解し、繰り返し行うことがポイントになります。もし「ルート維持」ができなくなると、道を間違えることになり、「現在地把握」ができない場合は、自分がどこにいるのかわからなくなり、道迷い遭難につながっていきます。
【観る力、考える力、動く力】
ナヴィゲーション技術というと、地図から情報を読み取り判断する。という「考える」力。地図から重要な情報を素早く見抜いたり、風景の中で重要な特徴に気付く「観る力」。地図やコンパスをスムーズに使う「動く力」が必要です。
とりわけ景色を「観る力」は周囲のリスクに対する敏感さにもつながります。「登山中、何が観えているか」「そこから自分は何を考えているか」という観点で、自分の登山をふり返ってみるのもよいでしょう。
【小林亘(山岳ガイド)さんのお稽古帳】
岳兄の小林亘さんが国立登山研修所の講義で使用している練習帳です。地図と地形の成り立ちを分かりやすく解説する講義で、この「お稽古帳」に書きこみながら進めることでより理解を深められます。
プランニング(先読み)とは
私が若い時に、オリエンテーリングの大会で優勝者の方に「どうしてそんなに早いのですか?」と質問したことがあります。すると「オリエンテーリングは、プランニング(先読み)が大切です。」と教えてくれました。
プランニング(先読み)?私も一応はしているつもりだけど?何が違うのだろう?
オリエンテーリングはポイントオリエンテーリングの大会が主流です。どのルートを通っても次のポストに到達すればよいのですが、当時、体力のあった私は、真っすぐの道(実際には山の中なので道はないのですが・・・)を選び進むことが多くありました。しかし、真っすぐだと一旦、沢を下り、また尾根を登るといった起伏の激しいコースだったりすることもありました。大会後に反省の意味を込めて、もう一度、ルートの練り直しをします。すると、沢を下るよりも遠回りになるけど尾根を迂回した方が起伏が少なくスピードが上がるレッグ(レッグとはポストとポストの間のルートのことを言います。)が見つかることがありました。
オリエンテーリングは、最短ルートが速いのではなく、周り道でもスピードが上がる場合や度胸を決めコンパス頼りに直進した方が速かったり、自分の技術や体力に応じてルートを決める必要があります。
話しが少しそれましたが、一般登山道はルートが地形図に記載されています。(沢登り、冬山等を除く)このため地形図のルート通りに進めばよいのですが、実際は、道が不鮮明だったり、枝道があったり、地形図と実際のルートが違っていたり(昔は道があったが廃道になった等)と、道迷いの要素が色々あります。このため、目的地までの登山道の特徴物はどこだろう?とプランニング(先読み)する必要があります。このプランニング(先読み)は、先述した
・地形的特徴物
・特徴物を見つける時に大切なこと
・隠れ小ピーク、隠れ小コルとは
・ムカデ地図を作ろう
を参考にしてください。また、その特徴物までのおおよその距離や時間も大切な要素となるので、プランニング(先読み)をする時に頭の中に入れておくことも大切です。また、①大まかな特徴物を把握し、次に小さな特徴物を把握する順番も私は大切にしています。
【大きな特徴物から小さな特徴物へ】
劔沢から剱岳に登る場合を想定して例示します。
【例:大門沢を下る場合】
私は、こんな方法で先読みをしていますのでご紹介していきたいと思います。
①大きな特徴物を把握することがとても大切
②小屋が見えなくてもおおよその位置を確認することができる
【小林亘(山岳ガイド)さんの先読み・特徴物を見つけよう】
岳兄の小林亘さんが国立登山研修所の講義で使用した内容です。まずは、特徴物を大きくとらえ、次に細かな特徴物を見つけていきます。これが、先読みの第1歩です。(ムカデ地図で分かりやすくなっています。)
ルート維持
ルート維持とは、目的の登山道から外れることなく目的の山に到達し、登山口まで戻ってくることですが、どうすればよいのでしょうか?ナヴゲーションサイクルについて国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
(1)ルート維持とは
地図上でルートをたどることは容易ですが、実際の登山道には道標のない分岐があったり、藪や川の渡渉で道が分かりにくくなっていることがあります。これらの場所ではルート維持の努力が必要になります。更には、道の無い藪こぎや雪山では積極的にルート維持の技術を使わないと動くことができません。移動するときには、自分はどのようなルート維持のための情報を使っているかを意識することが肝心です。
ルート維持には基本的に二つの情報が使えます。一つは「方向」、もう一つは「地形」との関係です。
ア 方向によるルート維持
地形から読み取ったルートの方向を、コンパスを使うことで維持する方法です。日本のように地形が明瞭に発達している場所では、尾根・谷等の地形との関係と組み合わせることでベースプレートコンパスを有効に使えます。
方向を使ったルート維持には3つの方法があります。
(ア)地形図からルートの方向を読み取り、ルート維持する
道や尾根といったはっきりした線上の特徴に沿ってルートが進むときには、地図からその方向を8方位又は16方位で読み取り、コンパスでその方向であることを確認して進むことでルート維持ができます。
(イ)整置でルート維持する
(ア)の方法では、細か方向を読み取るのが難しく、また読み取った方向を頭に覚えておかなければなりません。線状の特徴物に沿って進むときには、整置を使うと地図上の方向と実際の方向が一致するので、簡単にルート維持ができます。
(ウ)ベースプレートコンパスを使う
線状特徴物がないなど、より精度が必要なルート維持の場合は、ベースプレートコンバスによる直進を使います。
イ 地形とルートの関係によるルート維持
登山道は闇雲についている訳ではなく、尾根道、谷道、巻き道(等高線に平行についている道・トラバース道)・尾根・谷を結んでいる等高線を横切る4パターンしかありません。しかも道と地形との関係(尾根筋、谷筋、等高線と平行、等高線を横切る)は、地形図と風景の両方から確実に読み取ることができます。これを読み取ることでルート維持が可能になります。
ウ その他のルート維持のテクニック
間近にはっきり分かる特徴がなくても、尾根のスカイラインを見ることで目指すべきコル(鞍部)やピークが分かれば、ルート維持に役立ちます。雪山や藪山では「高い方に登る」という単純な方法でもルート維持が可能になる場合があります。
(2)ルートファインディング
ルートファインディングはルート維持と同じ意味で使われることもありますが、ここでは「地形図から読み取れる情報を利用して正しいルートを進むことをルート維持」、「地形図からは読み取れない情報を利用して正しいルートを進むことをルートファインディング」と区分します。
沢を渡る部分や踏み跡のつきにくい高山帯、複線化してしまった登山道で地形が曖昧だと、地形図だけで進むべきルートを見つけることが難しいので、ルートファインディングが必要となります。どこを歩いたら効率よく進めるか、やぶの濃い場所でどこが通りやすいか、あるいはトレースが薄くなっている場所でどの方向に進めばいいか、その場その場の問題を解決しながら全体として進むべき方向や地形を外さないように注意しながら進みます。そのためには遠くを見ながら歩くことが有効です。
現在地の把握
私は最近、現在地の把握は、スマホの地図アプリをポチルことが多くなってきました。「それでいいのか?」と言われてもスマホの地図アプリは、とても正確で何か楽しいんです。先生がスマホの中にいる感じで、自分のイメージと一致した場合「にやり」としてしまいます。(地図アプリのGPSの精度については、後述します。)
しかし、雪山ではスマホの地図アプリはあまり役には立たない場合が多いのも現実です。八ヶ岳の硫黄岳に冬山登山した時は、強風+低温でスマホの地図アプリは動きませんでした。(雪山でも使える機種があるとHPでは記載されているものもありますが、どのような条件で使えるのか真相は分かりません。)やはり「紙地図とコンパス技術」を使いこなせる事が重要になってきます。現在地の把握について国立登山研修所「安全で楽しい登山を目指して(高等学校登山指導者用テキスト)」を引用して説明します。
(1)現在地を把握する方法
①近くの特徴物を使う
②離れた場所に見える特徴を使う
③移動の履歴を使う:推測航
④ベースプレートコンパスを使ったクロスベアリング
(2)風景を読む
現在地を把握するためには、地図と風景の対応が必要なので、地図に加えて風景を読み取る必要があります。読み取るべき風景の鍵は、①地図に記載されていること、②ユニーク(唯一)であること、です。もうひとつの留意点は、地図の内容は常に変化する可能性があるということです。林道は目印になりやすいが、地図に記載されているよりはるか先に林道が伸びていることはよくあります。植生状態も、畑や水田が放置されて森に変わってしまうことは珍しくありません。風景読みにあたってはより変化しにくいものに着目することが肝心です。
(3)実践的な現在地把握
ア 常に現在地に疑いを持つ
自然の中では現在地には常に疑いの余地があります。この際、漠然と「間違っているかもしれない」と疑うだけではなく、思った場所にいないとしたらどこにいる可能性があるのかを具体的に考えことも大切です。これにより、正しく現在地を把握する可能性が高まります。
イ 複数の情報を使う
一つ一つの情報が不確実な場合、確実性を高めるために複数の情報を利用します。たとえば道の分岐だけで現在地を確認したら、別の分岐と間違えている可能性があります。それに分岐する道の方位が加われば確実性はより高まります。さらに、たとえばコル(鞍部)といった地形を加えれば確実性はさらに高まります。
ウ 論理的に考える
論理的に考えることで、情報の不足を補うことができます。特に「仮想によるロジック」は情報の不足を補う最大の武器ともなります。「もし**にいるとしたら、北に進めば××が見えるはず」といった論理的考え方も、見える範囲では十分でない情報を補うことにつながります。
エ 精度を変える(点,線,面)
一般の登山では、はっきりした登山道を歩くことが多いです。間違えるような分岐がなく、登り続ければ確実に山頂に到達する場合には、現在地の把握は線状、つまりその登山道のどこかにいると分かります。
現在地の把握は、この線から点にシフトする必要があります。下りの登山道では、地図にない枝道や踏み跡があるケースもあります。この場合、どちらを選ぶべきかは、道標がなければ自分で判断しなければなりません。そのためには、現在地を点で把握する必要があります。
雪山や藪こぎ登山、あるいは自由に移動可能な荒野では、方向維持の努力をしていても、現在地の曖昧さが二次元的に広がります。しかし、「この領域の中にいるはず」と言えれば十分なケースもあるのです。これが面による現在地の把握と言います。面または線に広がってしまった現在地を、面から線、そして線から点へと絞り込んでいくことが現在地把握のポイントです。
(4)GPS 受信機を使う
GPS(グローバル・ポジショニング・システム)は、人工衛星からの電波を利用して自分の位置を知るシステムです。本来GPS はアメリカのシステムを指す固有名詞です。近年ロシアや中国、日本などでナヴィゲーションのための人工衛星が稼働していますが、これらを総称してGNSS(Global Navigation Satellite System)と呼ばれています。
GPS 受信機は、現在地を知りたいと思った瞬間に現在地を知ることができるので、もしもの場合の危機管理の道具として有用です。また,地点(ウェイポイント)を登録したり、これまで歩いてきた道筋の記録を残したり(ログ、またはトラックと呼ぶ)、ウェイポイントへ誘導する機能もあります。
ただし、カーナヴィゲーションのように分岐点で「こちらに進め」と言ってくれるわけではないので限界を踏まえた利用が必要です。
初歩的ですが、実用的なGPS 受信機の利用方法として、ログの活用があります。ほとんどの機種で、これまで歩いたルート(ログと呼ぶ)を地図上に表示する機能があります。登山と下山路が同じ場合、往路のログが下山すべきルートを表すことになるので、復路では常にログの上にいることになります。ログから大きくずれ始めたら、間違った道に入り込んだ可能性があります。これにより道間違いのダメージを最小限にできるのです。
(5) 高度計を使う
標高が高くなると気圧が低くなります。高度計はこれを利用して標高を知る道具です。標高の変化の大きい登山道では、現在地を知るための補助用具として利用価値が高くあります。単調に登り続ける尾根筋を進んでいるなら、高度を知ることで現在地を推定することができます。傾斜の急な斜面上の登山道上では、ほぼピンポイントで現在地が分かります。高度計は、天候による気圧の変化の影響や気温によっても誤差が生じるため、できるだけ頻繁に地図や標識などの情報を使って高度を補正する必要があります。
【現在位置確認のテクニック】
私が、普段行っている現在位置確認のテクニックを少しご紹介します。
【尾根の肩】
山座同定
あの山は何ていうの?
あれは「富士山」だよ。
あの山は?
ピークが尖っているから「槍ヶ岳」だよ。
じゃあ、あの山は?
笠の形に似ているから「笠ケ岳」って名前がついたんだよ。
実際の山と地形図の山を一致させることを山座同定といいます。特徴のある有名な山は、山座同定は簡単ですね。しかし、里山では山頂が似たような形をしているため、山座同定は難しくなります。今では、山頂で「あれは○○山!あれは○○山!」と人ではなくスマホのアプリが教えてくれる時代になりました。豊川山岳会の代表は、「Google浅田」と異名があるぐらいに物知りで、山座同定のプロファッショナルです。皆さんも山座同定ができるようになると山頂での会話も弾みますよ!山座同定の方法について説明します。
山座同定をするためには、
①現在位置が分かっていること
②地図の整置ができること
③コンパスが使えること
この3つの技術が必要です。
【山座同定の方法】
①コンパスだけを体の正面に対し、垂直に持ち進行線(精度を上げるためには、コンパスを目の高さまで移動し、コンパスの左辺(右辺)で一直線になるように対象の山を狙います。)を対象の山に向けます。
②コンパスのノースマークを磁石の針の北に合わせるため、リングを回します。(この時、進行線が対象の山からずれないように注意します。)
③地形図を取り出し、整置をします。
④整置をした地図の上に、コンパスを置きますが、この時、コンパスのリング側が手前になるようにします。コンパスの置く位置ですが、現在位置がコンパスの左辺(右辺)上になるように置きます。
⑤地形図の現在位置とコンパスのリング側の左辺(右辺)が一致するように固定し、この固定した部分を中心に進行線側のコンパスを回転させて、ノースマーがク磁北線と一致するようにします。
⑥これで、実際の地形と地形図とコンパスが一致し、進行線の方向に目指す山が見えます。地形図からどの山が対象か読み取ります。
【実際の地形と地図を一致させよう(本宮山)】
今、一番のお勧め!写真のピーク、尾根、沢と地図を一致させるトレーニングに最適!このトレーニングを繰り返すことで読図能力が飛躍的にアップします。
交会法(クロスベアリング)
交会法は、現在位置を求める場合に用いますが、実際に「交会法」を使用して現在位置の確認をしている方を私は見たことがありません。高校時代には、基礎的な方法として勉強し、実際に使用したこともありました。今では、スマホの地図アプリをポチると現在位置がわかってしまいます。知っていて損はないので、少し説明します。
交会法をするためには、
①地図の整置ができること
②山座同定を行うことができること
③コンパスが使えること
この3つの技術が必要です。
【交会法の仕方】
コンパスを使った基本的な交会法の仕方をスライドを使って説明します。スライドでは、2地点から現在位置を求めていますが、3地点以上から現在位置を求めると、より正確な現在地を把握することができます。
【交会法で現在位置を知る】
交会法は、比較的難しい技術ですが、ぜひ、知識の一つに加えて下さい。
【伊能忠敬と交会法】
江戸時代に伊能図を作成した、伊能忠敬 もこの交会法を使って現在位置を求めていました。伊能忠敬、恐るべし。
【伊能忠敬 雑学1】
忠敬の距離の計算方法は歩いた歩数をもとにしている。目印と目印の間の距離を実際に歩いて、その歩いた歩数をもとに距離を計算した。そんな忠敬は自分の歩幅が常に一定になるように気を付けていた。日頃の訓練により歩幅が同じになるようにしたのである。後の調査・研究により忠敬の歩幅は約69cmだったと導き出されている。その忠敬の正確な歩幅により作られた日本地図は誤差がほとんどなく、極めて正確なものとなった。ちなみに、忠敬の体格は、着物の丈が135cmであることから、身長は160cm前後、体重は55kg程度と推定されている。(以上「雑学ネタ帳」参照)
【伊能忠敬 雑学2】
忠敬は、測量において子午線1度は28.2里と導き出した。
(110.749km(1里は『広辞苑 第7版』では36町(3.9273キロメートル)に相当する」とある。))
忠敬が求めた緯度1度の距離は、現在の値と比較して誤差がおよそ1,000分の1と、当時としては極めて正確であったことには驚きしかない。
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