★山行名 【剣岳(春合宿)】
★年月日 【2000年4月29日~5月2日】
★メンバー【山本・上田・宮尾・鷲見・河合・福地・田中】
早月小屋からの小窓尾根
《4月28日》
市役所8時集合。東海北陸自動車道で郡上八幡を通り高山経由にて馬場島へ移動。
2時30分到着。《4月29日》
6時起床。登山届を提出し、「ヤマタン」を借りる。8時20分出発。日差しも強
く、天気も良い。例のごとく福地君が登りで遅れだす。今までにない不調とのこと。
途中で荷物を少し引き受け動けることに期待する。途中、東京大学の山岳部3人に抜
かれる。
午後3時過ぎ2,121mのテント場に到着。少し視界が悪いが、天気は明日まで
もつとのことで安心する。《4月30日》
3時30分起床。天気予報が明日は天気が悪くなるとのことで、明るいうちに出発
し、剣岳を越えて早月小屋までを目指す。いきなりの急登、田中君も朝一番でザイル
がないと心配だろうとのことで出す。7人パーティーの私達は、宮尾・河合・鷲見の3人がフィックスし、上田さんがラ
ストで回収し、なるべく時間がかからないようにする。(しかし、時間がかかってい
る。)小窓尾根は豊川の7人、名古屋の6~7人、東大学生3人、岐阜の3人、横浜
の2人が入山しているようだ。今のところトップは豊川がやっている。小窓尾根はな
かなかザイルを出すところが多く、時間が思ったよりもかかる。特に人数が多いと余
計に時間がかかってしまう。ナイフリッジの次のピッチが雪が岩にいやらしく付いていてトップの鷲見さんから
私に交代。何とかバランスを保ち、乗り越える。宮尾さんとトップを入れ替え徐々に
高度を稼ぐ。小窓の王までに、横浜の2人と東大3人に抜かれる。特に2人組みは早
い。アンザイレンしたまま登っているので格段に時間が違う。小窓の王からの下りで
東大3人が懸垂しているのを時間待ち、聞くと支点が悪く100%の懸垂は怖くて出
来ないので時間がかかっているとのこと。私たちは、7人もいるのでアイスバーを3
本離れたところに打ち込み、すでにある支点と分散加重し、支点を強化する。すで
に、ここには小窓尾根入山者全員(横浜の2人はすでに三ノ窓でテントを張ってい
る)が集合した形となる。私が豊川最後に懸垂するころには一番最後の岐阜の方は諦
めテントを張る準備をしていた。懸垂が終わり、トラバースに移るところも雪の状態
が例年になく悪いようだ。今年は特に雪が多いとのことである。トラバースは東大の
方のザイルを使っていいと言われ、甘える。実に今時には珍しい爽やかな青年達であ
る。三ノ窓に私がついたころには宮尾さん達がすでにテントを張り終えるところで時刻
は6時を過ぎていた。私がテントに入る頃、名古屋のパーティーはラテをつけ行動し
ていた。《5月1日》
朝4時起床するも、雪が降っていた。しょうがないので6時起床に変更。8時前出
発し、ホワイトアウト状態の中、前の横浜2人パーティーのかすかに残っている足跡
を辿りながら池の谷ガリーを登る。前回の北方稜線の時は、アイゼンが気持ち良く効
き、楽しかった思い出がある。今は汗だくのラッセルである。幸いにも雪の状態が安
定しており、雪崩の心配は非常に少ない。太平洋側を通過している低気圧のせいだろ
うか?雪がサラサラしていて非常に登りにくい。上部まであと少しの所で鷲見さんにトップを代わってもらう。ガスは依然として晴
れず、周りが良く見えない。ガリーも終わり、コル付近で休憩。その間に昨日と同じ
ように東大パーティーと名古屋パーティーに抜かれる。地図で見ると標高2,880
mのところが左に曲がっているが、視界が悪く良くわからないらしい。名古屋パー
ティーはザイルを出し、順番待ちでクリヤーしていく。我々も宮尾さんがトップで進
む。前回はザイルを出した記憶がないが、今日は約10mの間が細く悪い状態だ。し
かも、気温も上昇し始めており、アイゼンに雪が付く状態でスリップしやすい。ここ
を過ぎれば、しばらく平らが続く、依然視界は悪い。サングラスがないと何がなんだ
かわからない状態だろう。剣岳手前300mのコルへの下りで、また4つのパーティーが重なる。どうやら名
古屋パーティーが夏道をたどっているため、懸垂をしているようである。てっきり順
番待ち家と思い、ザックを下ろして休憩していると、宮尾さんが、「横浜の2人は夏
道ではなく、進行方向に向かって左側の沢へ下っているらしい」とのこと。ザイルを
つけ、宮尾さんと2人で道を探しに沢を下る。80mも下るとはっきりと分かる剣岳
手前のコルに着いた。雪が付いていると、こちらが断然安全で、早い。覚えておこ
う。もう一度登り返し、ザイルをフィックスし、下ることとする。やはり、田中、福
地もザイル操作がなれていないのかプルージックでセルフ確保する動作が遅い。練習
してもらいたい。ザイルを我々だけが出し、他のパーティは出していないのでまた、抜かれる。今日
はこの繰り返しだ。コルから剣岳への登りは道を間違えようがない。ザイル回収で私
と宮尾さんが最後尾になる。最後の登りが急登で、バイルが役立つ。新人の田中君は
ザイルが欲しいところだろうと思ったが、以外にも楽しかったと言う。
頂上への到着が1時前。頂上から携帯電話で彦坂さんのところに電話する。山本さ
んの「やい、彦さんかん!」の声も弾んでいる。しばらく、頂上でゆっくりする。しばらく下ると、別山尾根分岐の看板がはっきり見える。80mも下ると10mの
懸垂となり、時間待ち。その後、分岐から200m進んだところの小ピークで全パー
ティーが集結している。懸垂の順番待ちかと思ったら、視界が悪く下降路が分からな
いらしい。トップのパーティーは小ピークからやや左側方向へザイルを出して探して
いるみたいだ。私達も地図で現在位置を探す。小ピークと剣岳とのコルが顕著に分
かったので現在位置を推定することができた。ここから磁石で方向を確かめ、進行方
向やや右側に方向を定める。ザイルを出し、宮尾さん確保の私がトップで下降するこ
とにする。この頃視界が途切れ途切れで回復しだし、自分達の進む方向が正しいこと
が分かる。斜面はきつくないので、ザイルで下降したのは私だけとなった。100m
も進むと横浜の2人が下からザックなしで登ってきた。どうやら、方向が分からず、
ザックを下ろし探していたとのこと。ここからの下りは、他のパーティーに抜きつ抜かれつとなった。この頃からヘリコ
プターの音がしていた。別山尾根の方で2~3人が一瞬みえた。ヘリコプターがしき
りと沢を探しているようだ。何もなければよいが・・。シシ頭の上部の平らに名古屋
パーティーはテントを張るようだ。我々は東大パーティーがシシ頭を巻き沢を下った
のを見て、雪が安定しているのを確認し、懸垂するのを止め(横浜2人パーティーが
下っていた)、巻いた。シシ頭の下から上部を見ると、シシ頭もそれほど危険個所で
はないようだ。2,614mを過ぎ5分も歩くと絶好のテント場が現れる。すかさずテントを張
る。いつの間にか天気は晴れになり、今回登ってきた小窓尾根がはっきり見える。意
外と時間がかかった尾根を下からじっくり見つめる。天気もいいし、テント場も快適
だし、春山の醍醐味といったところだろう。《5月2日》
今日は下山のみである。急ぐことはないが、7時前には出発する。早月小屋では芸
術てきなトイレの入り口(穴の高さが7m以上か?)に感心する。ここから一気に馬
場島まで下降することになる。
早月尾根下部で 危険地帯を抜けて安堵の表情
セーフティーゾーンでの福地君の速度は落ちる。日ごろのトレーニングのせいだろ
う。馬場島へ到着し、下山報告をすませ、ヤマタンを返却する。帰りに湯神温泉に入る。やはり風呂は気分がいい。しかし、ここで見た新聞にトヨ
タ自動車山岳部の遭難記事が大きく載っていて「はっ」とした。あのヘリがまさかこ
んな出来事だったとは…。残念というか、トヨタ自動車山岳部の方とは仲がいいだけ
に人事ではない。自分自身に置き換えていろいろなことを反省していきたい。―記・河合―