北海道・知床連峰・阿寒

山行名【北海道・知床連峰・阿寒】
年月日【2005年4月29日~5月5日】
メンバー【山本・上田・福地・宮尾】
出発前は、上田さんと情報収集する予定だったが、現地
地図や宿資料の準備から計画書作成までほとんど上田さん
に御世話になった。現地に入ってそれらの資料が役立ち、
いつもながら感謝しお礼を申し上げます。
4/29 釧路:晴れ 知床:雨
9:23国府発、食当係り福地君の荷物が異様に多い。中
部国際空港行き直行電車に乗る。空港は国際線・国内線
が同じフロア。連休開始日だが特に人は多くない。
釧路では、レンタカーの手続きなどで15 時過ぎに行動開
始。まず、ホーマック中園店に向かいホワイトガソリン2L とブ
タンガスと熊避けの鈴を購入。ついでに個人行動食と漬物
や酒などを購入。
一路、羅臼に向かうが、買出し結構時間がかかり17 時半
ごろ釧路を出たので、19 時半ごろに民宿『熊の入った家』に
到着。
急いで荷物を取り込み食卓へ。でかいホッケからタラバカ
ニ、トド肉の刺身(鯨の赤身とほぼ同じ味)、ホタテの味噌汁
等がどんどん出てきて北海道と海を感じさせる。
食後、生きているクリオネを見せていただいた。梅酒用の
でかい瓶に2 匹保存されていた。1 年前からずっと生きてい
るらしい。写真で見た通り、胸と頭が赤く、透明のボディーで
飄々と泳いでいる。上田さんが写真を撮ろうとしていたがピ
ントが瓶のガラスに合ってしまうため難しいようだ。
明日から縦走の予定で荷物を詰めて就寝する。天気が
心配だ。宿の女将は天気予報が当たらないことをほのめか
していた。
4/30 海岸町:雨のち曇り 羅臼岳:風雪
5 時に起きて天気を確認するが、なんと雨!!縦走は難
しいかも、と思う。出かけても雨降りの中、登るのは気が進ま
ない。天気予報も当たってないので予測不能か?おまけに
寝不足なので10 時まで様子見のつもりで再度寝る。
出発前に宿の女将と国後島を見ながら話す。『何km ぐら
いあるんですか?』『27km』
『近いですね』『そうさ、毎日外国を見て暮らしているんだ
べ~、ハッハッハ』
と何とも明るい。女将というよりお母さんのような人だった。
知床横断道路は3 月から順調に除雪が進み連休前には
開通する予定だったが4 月下旬の道東を中心とする大幅な
降雪(平野部でも50cm)のため閉鎖中。
知床峠ではなく羅臼温泉登山口まで行くが、みぞれ交じ
りの雨。べたべたになると山本さんも嫌がっている。他の3人
も同じ。知床羅臼ビジターセンターに戻り、情報取りと今後
どうするか思案するが、窓越しに見える山並みは猛吹雪に
変化し出かける気が益々失せる。
結局昼まで迷っていたが雪の状態次第で縦走は難しい
のでもう少し最近の状況を調べたかった。よって今日は中止
にする。
時間が空いてしまったので相泊(あいどまり)まで海岸線
を走る。瀬石温泉やカモメの大群、相泊温泉を見ながら移
動。
相泊で食堂兼民宿『熊の穴』に立ち寄り、知床のラーメン
を頂く。昆布ラーメンは麺に昆布が混ぜて練ってあり、塩味
スープが薄めで旨い。主人も話しやすく有名人の色紙もす
ごく多い。寂れた場所にも関わらず、ここもなかなか明るくい
い感じがした。
泊まり先を山本さん選択の民宿『石橋』に移動し、露天温
泉・熊の湯に行く。近年、湯湧量が少なくなってきているよう
だが熱めの湯で、5℃以下の気温の中冷えた体に気持ちが
いい。
『石橋』では、毛カニ、アスパラと山菜の和え物、トドの刺
身(脂身)、ホッケ、刺身、お茶漬けがウニ丼で昨日より豪勢
だった。こんなに食事が良くて儲けがあるのか心配なぐらい
だ。
食後宿の主人と知床ファクトリーなる地元のガイトとお話
する機会を女将が設けてくれた。主人は酒が大好物らしく、
コップでグイグイやりながら山菜取りに出かける話とかうれし
そうにやっている。ガイドに状況を聞くと以下の回答を戴い
た。
・ 4月20頃の大雪と最近は湿雪続きで結構踏み込んで
しまうので山はお薦めではない。
・ 縦走するつもりだったのなら半島の先端まで海岸線を
所々へつりながら行くも面白いし、天候が荒れても山ほ
どではなく気楽だろう。4日あれば往復できる。この時期
なら番屋(漁師の夏期宿泊小屋)も空いているし、黙っ
て使わしてもらうのもいいかと思う。ウニも一杯拝借でき
るよ。
・ 相泊~知床岳はなかなかいいコースだが雪はきっと悪
い。1日で往復可能(1泊2日でのルートを地図で書い
てくれた)。
地図を取りに戻って、へつりの場所も教えてもらった。地
図も貸してくれた。
女将は、英霊山という羅臼が正面に見える山を薦めてい
た。雪の状況はやはり悪いとのこと。
部屋に戻って4人で話したが、まずプラブーツや大きいド
タ靴では海岸線の歩きやへつりは難しい。3泊4日では軽量
化が難しい。計画の大幅変更になるので事故が発生した時、
説明がつかない。と言う理由から、明日は計画を変えず羅
臼温泉口~羅臼岳ピストン。雪が悪いなら登れるところまで
行くことにした。
寝る前、福地君は部屋に持ち帰ったアスパラと山菜のお
ひたしを貪り食っていた。
5/1 晴れ
3時45分起床。女将のおにぎりを戴き出立する。熊の湯
の駐車場に停め5時スタート。初めのピッチは尾根に抜ける
までの沢筋で時々腰ぐらいまではまるので少し不安だった
が、稜線に完全に上がると足首から脛位までとなり何とかい
けそうな気がしてきた。
一服峠からは第一の壁、第二の壁東側の尾根に上がり
尾根通しで965mピークへ、さらに這松の藪に踏み込んで
台地まで下る。台地は、野球場が数個程度入りそうな面積
で北海道の山らしい。
福地君、休み毎に15~20分遅れて到着。空荷のはずの
ザックが異様に膨らんでいる。『水がなくなりそうだ』と言うの
で『何が入っているのか』と尋ねると昨日の吹雪で判断を誤
ったのか服ばっかり持ってきて、本来なら2~3リッター飲む
はずらしき水を1リッターしか持ってきていない。でも、登るペ
ースが遅すぎるのは明らかにトレーニング不足。
本人曰く『もう引退かな』と呆れた発言も出た。年が倍も違
ってもがんばっておられる山本さんの前でそれは絶対口に
していけない。
山本さん、上田さんも『何を言っとるだぁ』とやさしい表情
で一喝。新人じゃないのだから登山に必要なトレーニング方
法とかクラブの中でのポジションとかもっと考えるべきことは
あるはず。ただ、福地君は今回食当に運転手と頑張ってく
れていることも確か。行動が遅れがちでもあるし、言いたいこ
とは胸にしまい出発する。
肩に上がる斜面はまたまた長くトボトボの登りである。肩に
3人で着くが13時を少し回っていたのですぐ頂上に向けて
出発。肩から上は氷結しているためアイゼンを忘れてきた山
本さんがすぐにリタイアした。
約40分かかりやっと頂上に出た。知西別岳、海別岳方
面がよく見えており、上田さんと頂上で写真を撮る。そして1
4時ちょうど頃下山開始。
下山で雪質が重く軟らかいのがよく分かった。踵のキック
ステップが気持ち良く、あっと言う間に斜面を駆け下る。下
山は、さっきの965mピークに登り返すのが面倒なので沢筋
をルートとするが下山口は入山口と同じなので同じ尾根に
いずれ引き返す必要がある。
問題は、沢筋の雪と入山時に踏んだ465mピーク(里見
台の少し上)への登り返しだが雪にはまったり雪崩の心配は
なさそうだった。読図によって沢筋を標高470m付近から離
れて465mピークへの向かうことを想定して進む。
尾根を2本横断すると谷が現れ、谷に入らず地図どおり
等高線上を回りこむと入山時のルートに出た。完璧だった。
地図をしっかり見ていないと谷に降りて登り返す労力が発生
する。ぱっと見、谷に降りる方が近そうに見えるからである。
里見台まで行くと18時を少し回った、雨も少し降ってきた
ので、福地君は上田さんに任せて山本さんとさっさと下る。
薄暗くなった頃車に到着。真っ暗の登山口まで車を廻すと
2人がちょうど降りてきた。
民宿石橋に戻ると、ジンギスカンと海産物の鍋物が用意
されていた。女将さんもよく登ってきたとお褒めの言葉で迎
えてくれた。
鹿やその他何の内臓か分からないがホルモン焼き風味に
行者ニンニクや野菜類。
女将はトドや鯨、ヒグマの解体もするそうで、ヒグマが一番
解体し易いそうである。
しかし、それにしても女将さんはこのゴッツイ体で登山を
するというのが信じられない。
ともかく今夜も食事はよかった。まだ帰るタイミングでもな
いのに土産に昆布の干し物4 人分を戴いたのにはみんな
感激!
5/2 曇りのち晴れ
休憩日につき車で出かけることとする。福地君発案で野
付半島にでかける。野付半島は全長28km の砂しで、もとも
と陸続きのミズナラ、トド松などの原生林だったところが地盤
沈下し海水が流れ込んだことにより立ち枯れした木々や湿
地帯が広がっている。
湿地帯には、北海シマ海老や貝などのえさが豊富なので
シギやタンチョウがやってくるのだろう。今見えている鳥の種
類はそれほど多くないがよくわからない。
ネイチャーセンターにはゴマフアザラシやオジロワシも書
いてあり時期によって珍しい動物を観察できるようである。鳥
の種類も通年では結構種類が多いようだ。
昼になるにつれて、遠望できていた知床半島の雲がとれ
ていき、快晴になった。海をはさんだ雪の知床連峰が何とも
美しい。
午後、これまた福地君発案で中標津に近い開陽台に行
く。360度地平線が見渡せるそうで確かに見渡す限り平原
が続いている。
羅臼に戻ると国後展望塔に立ち寄り昨日登った羅臼岳
の斜面や国後島を眺め、北方領土の歴史や資料を見た。
その後、水産物の売店に寄り、みやげ物を物色したが皆
さんまだ買わない様である。カニや昆布、生タコ、生ウニ、ホ
ッケなどの冷凍魚があった。
民宿『石橋』に帰ると、今夜は春の山菜のてんぷらがしっ
かりあった。毛カニ、ホッケ、刺身は毎夜のように登場してい
る。また、『タラの干物を登山中に食べろ』と大きい干物を4
人分戴いた。
今夜は酒を控えめにしていたが、山本さん、上田さんは
主人に呼ばれて帰ってこない。明日は知床岳、早く休んだ
方が良い。結構飲まされてるんじゃないかと心配したが程々
で切り上げてきた。23 時までには全員就寝。
5/3 晴れ
4時半起。女将が用意してくれていた朝食を持ち出しさっ
さと支度して海岸線へ車を出す。相泊5時45分発。海岸の
丸い石を踏みながら取り付きまで20分。橋を渡ってすぐに
取り付きがあると聞いていたので確認すると地図の尾根筋と
合致する。踏み跡もあり間違いない。
鹿の糞が大量に落ちており、台地に上がるとスキーのトレ
ースの上にヒグマの足跡がかなり長い距離に亘ってしっかり
と残っている。それは1匹ばかりではない感じがした。
カモイウンベ川の音が聞こえるルートであるが1時間はほ
とんど高度が上がらない。傾斜が出てくると所々で這松が出
てきて上に乗るか少し離れたところにトレールをつける。先
行パーティーのトレールはない。
標高570m付近で岩がさえぎるが巻けば時間がかかるこ
とは間違いない。正面の雪壁をルートに選ぶ。ただ、取り付
きにクレバスがあるので避けて正面右の木に乗っかり突破し
た。
今日は力のある限りどんどん先頭でラッセルしトレールを
付けていった。標高650~900mも傾斜50度ぐらいできつ
い。這松がむき出しになっている区間はたいがい苦労する。
1,000m付近からは頂上に続く長いダラダラとしたルート
に辟易する。口々に『けったいな山だ』とか『冴えん山だ』と
か言っているうちにオホーツク海側の海岸線が見えてきて感
激する。
頂上に付くとコーヒーを沸かし、初めて全員でゆっくりす
る。
今日も14時から下山開始だった。しばらくは正面に広大
な国後島を見ながらで疲れは感じなかった。正面から±30
度程度顔を動かさないと全体が見渡せない。最高峰のチャ
チャ岳は焼津あたりから見た富士山のようだ。
下りも半ばになると肩のだるさも気にしながらともかく皆に
遅れ過ぎないようにする。台地ではもう夕方だったので山本
さんと一緒に行動する。
鹿の背骨と肋骨がむき出しの死骸がトレールの近くに発
見したが登りの時は気が付かなかった。木の幹にも爪で剥
いだ跡が多くあるのに入山時はやはり気が付かなかった。ヒ
グマが多いのだろう。
クタクタになっていやになった頃海岸に近くなった。海岸
を歩いているとまた鹿の死骸があった。カモメの番いを見る
頃、相泊に到着。長い2峰目が完了した。
すぐに着替えて今夜の宿『本間』に向かう。海岸町なので
アクセスはよい。
本間は、食事は多くなかったが毛カニは昨日までより上
等だった。部屋は12畳で暖房機もしっかりしていたので部
屋で濡れ物を乾かす。福地君、山本さんは湿雪でグチャグ
チャになった革靴をしきりと乾燥させていた。
5/4 羅臼:曇り 阿寒:晴れ、夕方より雨、雪
朝、玄関で女将と全員で写真を撮る。斜里岳は、4 月の
雪の状況などよくわからないことや前半もたついた分、日程
的に厳しくなってしまった。百名山・雌阿寒岳に変更するこ
とにした。行くからには早く登り始めたいので早々に阿寒に
向かう。
野中温泉には国民宿舎など2 軒の宿があるが空き部屋
はなかったので、オンネトーの先にあるテント場に決めて登
山にかかる。
登りは、出始めに残雪があり足場が悪かったが、すぐに夏
道となった。美しい硫黄の平原を眺めながら頂上へ。頂上
近くは凄まじいガスの吹き出し口を正面に見る。天気はよ
い。
頂上まで3 時間、下山は1 時間半ぐらいであっと言う間だ
った。
国民宿舎で温泉に入って体をしっかり温めた。しかし、出
てくると雨混じりの激しい吹雪なっていた。テンションは下が
ってしまったがやむを得ずキャンプ場に移動。
半分凍ったオンネトー、みぞれ状の雪、人気のないキャン
プ場。まだこの時期の北海道のアウトドアは寂しい。テントで
はガスも余っているし、食料も全部残っておりガンガンに食
べまくった。しばらくすると快適になった。
最後の夜を静かな山の中で過ごせて気持ちがいい。20
時頃には雨が止んでその後は星空となっていた。
横になってすぐに、ホーホッホーというフクロウらしき鳴き
声が聞こえる。
北海道らしき雰囲気を感じる。テントでよかった。そう思い
ながら意識を失った。
かなり遅くなって何かの気配を感じたが気のせいかまた
寝てしまった。
5/5 釧路湿原:晴れ、午後:釧路空港より名古屋へ
朝起きてテントを出ると、山本さんの靴が片方だけどこか
に行ってしまっているようだが、少し離れたところにあったら
しい。キタキツネが少し引きずって持って行ったが餌でない
ので置いていったのだろう。
朝食を早々に済ませてテントを畳み釧路へ向かう。途中、
阿寒湖畔でコタン村を観光する。木彫りなど土産物で有名
だ。
暇つぶしに釧路湿原で遊歩道をしばらく散策するがタン
チョウ鶴は時期外れなのか全くいない。景色も枯れた平原
で単調(タンチョウ)そのもの。あまり面白くない。ここは北海
道なのにやたら暖かい。
16 時、釧路から直接名古屋に向かう飛行機に搭乗。贅
沢な北海道山行は、ついに終了となった。
名古屋では、電車とバス組に別れて解散した。皆さん、ご
苦労様でした。
-記・宮尾-

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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