【岩手・姫神山】19.2.23(上田)
【2019年 2月23日】
【メンバー】上田
2月23日 姫神山(ひめかみさん 一本杉コース~こわ坂コース周遊)
2月22日(金)に岩手大学に出張になり、週末も時間が取れたので23日は盛岡市郊外の姫神山(ひめかみさん)に登ることにした。学生時代の最後の年の1980年8月に秋田の乳頭山から滝ノ上温泉~裏岩手~岩手山~馬返しと2泊3日で縦走した。その懐かしさから岩手山にしようか大分迷ったが、冬季の単独でもあるので少し我慢で姫神山に登ることとした。
姫神山は東北地方の大河 北上川をはさんで岩手山と対峙する山で、1123mと岩手山に比べ標高は低いが非火山性の円錐形の美しい形と「ひめかみ」という響きが印象的である。姫神山と岩手山は夫婦であったが早池峰山に心変わりした夫の岩手山という逸話や、この地に生まれ姫神山と岩手山を愛した石川啄木のふるさとなど、訪れてみたい山の一つだった。
2月23日(土)晴れ
前夜宿泊した岩手県青少年会館ユースホステルから徒歩20分の「いわて銀河鉄道」厨川駅まで快晴の中を歩く。丁度日が昇り岩手山が赤く染まる。盛岡市街から見ると左に裏岩手のごつごつした稜線を連ねる姿は南部片富士と呼ぶにふさわしく、大きく神々しい。冷え込んだ空気も心地よくしばらくその姿に見入った。
6:52に厨川駅から乗車、7:08に啄木も良く利用した好摩駅で下車。
前日に依頼した(有)好摩タクシーにお願いして一本杉キャンプ場に向かう。片道7km 約15分。1800円。今年は雪が少ないとのことで、着くまで路面に積雪無し。
広い駐車場に数台車が止まっていて、身支度を整える間にも地元と思しき慣れた登山者がスタートしていく。7:55スタート。
針葉樹の中踏み固められた雪面を歩き出す。振り返ると岩手山が素晴らしい。
ほどなく啄木鳥(キツツキ)の鳴き声が静かな森に広がる。歩きながら一つ作ってみた。
姫神に 啄木鳥の聲 雪を踏む ( 姫神に 啄木鳥啼きて 雪を踏む )
啄木もこの森で鳴き声(ドラミング)を聞いたのだろうか?
少し急になるとざんげ坂。アイゼンを着けて登り出す。地元の方は靴底に鋲が付いたゴム長の方もみえる。五合目に着くとあと1360mの札。
尾根が南向きになり頂上も木の間に見える。
西を見ると雪をかぶった岩手山の円錐。ほぼ真東からの眺めは円錐形でケーキのように美しい。最後は岩が露出していて程なく姫神山の頂上。 9:40着。
手前には北上川の平野と田畑の格子模様が美しい。
南東を眺めるとうっすらと早池峰山。頂上では今日、一筆書き登山(3方向の登山道から降りては登って3回登頂する)をするという単独の地元の女性や何人かの方と世間話。次から次へと地元のリピータらしき方が登って来られ、お互いが近況を語り合う。ご当地のなぜか懐かしい言葉で歓談されている。ふと啄木の歌を思い出した。 ふるさとの訛なつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きにゆく 『一握の砂』
頂上の祠に向かい般若心経を唱える登山者
西和賀町から来られた佐々木さん82才は単独で登山道の無い尾根をかんじきを着け、結構大きな荷物で登って来られた。聞いてみるとかんじきも狸の尻皮も自家製とのことで、かっこいい!
単独女性の勧めで北面のこわ坂コースを下山する。(11:00)一本杉コースは登山者が多く踏み固められ過ぎだが、こちらは軟雪のままで心地よく踏み込み、静かに樹林の中を下っていく。途中すれ違った単独の方もこちらの方が静かで好きという。
樹林の前に最後に岩手山の勇姿を見て林道に出ると除雪された舗装路。 12:05着。
姫神山を振り返る
周回コースの一本杉をめざすと、一台の車が止まってくれた。何と先ほどの佐々木さん。送って下さるということで啄木記念館までお願いする。タクシーを呼ぼうと思っていただけに本当にありがたかった。佐々木さんは奥羽山脈 真昼山地の盟主 和賀岳の東山麓の西和賀町山岳会の長老でいらっしゃるとのことで、佐々木さんが監修された和賀岳のルートマップを頂く。和賀岳は奥羽主脈の山では珍しく非火山性隆起山塊で飯豊・朝日にも似た深さを持つ山。昔から行きたいと思っているが未だ果たせていない。機会があれば佐々木さんを訪ねたいと思う。啄木記念館前で自撮りをさせて頂き、お別れをした。
それからは啄木記念館をゆっくりと見学させて頂いた。
啄木がかつて教鞭をとった旧渋民小学校校舎(左)と啄木が住んだ親戚の家
啄木が教鞭をとった教室
その後は美しい姫神山や岩手山、北上川や二羽三羽と飛び行くハクチョウを見ながら、渋民駅まで歩く。
◆登山当日の地上天気図 南岸低気圧が日本の東に遠ざかり北日本から移動性高気圧に覆われていく。この日は一時的な冬型で日本海側から脊梁山脈までは少し雲に覆われるが翌日24日はすっぽりと高気圧に覆われて全国的に晴れ。
青少年会館ユースホステルにもう一泊し、翌日は賢治のふるさと花巻に立ち寄り帰宅した。昨日にも増して青い空の下で、賢治記念館の丘からは早池峰山の白い姿が美しかった。
記:上田歳彦