北海道・利尻岳

★山行名 【北海道・利尻岳】
★年月日 【1998・8・8~8・16】
★メンバー【上田ファミリー】

利尻山の夏山登山は稜線の崩壊によりルートが限定されてきていて、事実上鴛泊(おし
どまり)からの北稜ルートのみとなっている。鬼脇からのルートは9合目までで登山禁止
西面の沓形(くつがた)からの沓形稜も上部の落石により一般的では無くなっている。
当然我々ファミリーは北稜からの往復を選択。普通は日帰りの往復がほとんどであるが、
小1のおちびと体力の無い上さんを含め全員登頂をめざすため、避難小屋を使っての2日
にわたるプランにした。

8月8日:小樽行のフェリーに乗るため敦賀港へ車で移動、23:30出港

8月9日:20:30小樽港着、ターミナル横でビバーグする。(舞鶴~小樽航路だと更に翌日の
未明4時着でビバーグの必要が無かったが予約取れず。)

8月10日:午前3時半発で稚内に向け出発。高速で5時半旭川通過。後は40号線をひたすら
走り9時40分稚内着。早速、島での登山と観光の装備だけを持って利尻行きのフェリーに
乗る。利尻島の北の玄関口、鴛泊(おしどまり)に着き、駅に荷物を置いてサイクリング。
北部の展望台めぐりとサイクリングロードを楽しみ、2日間の食料を調達する。タクシー
で3合目手前にある利尻北麓野営場に向かう。ライダーや家族連れでにぎわっており水洗
トイレや水道もある気分のいいキャンプ場、しかも無料ときている。明日からの登山を前
にのんびりとキャンプを楽しむ。

8月11日:利尻登山の日。朝4時起床。下の子はあまり早くは起きられずにゆっくりの 6時
出発となる。小屋は水が無いため8Lの水を持つ。上の息子は5kg程度のザックを担い
でくれるが上さんは全く担げず、下の子もフリー。私だけが70Lのザックに目いっぱい
荷を担いでいく。(シュラフ3つ。食料、炊事用具、着換え、水など)キャンプ場が標高
240mで1500mの登行差となる。
利尻山は火山礫の山で麓に湧水が出る。キャンプ場の先500mにも甘露泉水があり、
皆、水の補給をしている。その先がポン山への分岐(ポンはアイヌ語で小さいの意味で、
ポン山は利尻島に幾つかある)。4合目を過ぎると早くも下の子が飽きて「帰りたいコー
ル」。なだめすかして何とか歩くが先が思いやられる。この先8合目の小屋までは危険な
所もなく天気も上々なので、上さんと協議の結果私だけ先発で小屋に荷物を置いて再度バ
ックしてくることにする。
ということで飛ばせるだけ飛ばす。5合目までは樹林帯のなだらかな斜面を登っていく。
白樺が消えると岳樺の林が美しい。昨日もそうだったようだが5合目から6合目はガスが
かかり、7合目から上はきれいに晴れ上がる。8合目長官山へ飛び出すと一気に視界が開
け、利尻の北面の頂稜が広がる。雪渓は今年は寡雪で雪解けも早かったと見えて、一個所
小さく見えるだけ。汗だくになって9時半に小屋に着く。子供を背負うスリングとマット
だけ持ってバックする。3人は案ずるより産むが易しで3人元気に7合目少し上の顕著な
尾根上の露岩(標高1050m付近)まで来ていた。私がいなかったので却って甘えなく
て頑張って歩いたようだ。でも顔を見るとすぐおんぶ。あっという間に熟睡モードに入っ
てしまう。小屋に10時40分に全員到着。水分と食べ物を補給し大休止から完全に昼寝
体制に入る。
結局1時ごろまで昼寝。おちびもようやく目が覚め、1時半に出発、復活してくれたよ
うだ。ここからは傾斜もきつくなるので、おちびをテープスリングと7mmのロープスリ
ング(10m)でアンザイレンしていく。猿回し状態で本人も喜んで歩く。9合5酌の沓
形稜との合流点からは火山礫のザクで歩きにくい。FIXロープを使いながら4人、カタ
ツムリのように進む。他の登山者がどんどん下りてきてやり過ごす。3時30分ようやく
祠のある北峰1719mに着く。最高点は南峰の1721mだが痩せ尾根で一般的ではな
く、北峰をピークとしている。南西50m位の所に有名なろうそく岩、6合目から上の西
面、南面の凄まじいまでの山容が目に入る。子供達もちょろちょろすると危ないのでアン
ザイレンしたまま休む。みんな満足げだが、この高度感にちょっと腰が引けた感じ。展望
を楽しんでまたまたカタツムリのように下山して5時に小屋着。小屋には水場、トイレと
もなく結構汚れている。基本的には日帰りで計画を立て、小屋は緊急避難としてのみ使う
こと、という書き置きがある。それでも学生さん8名くらいおじさんおばさん8名くらい
で小屋が賑わっている。ちょっと水が不足で慣れない上さんには苦労をさせたがお腹一杯
食べて床に就く。

8月12日:快晴で夜明け前に1人で長官山まで日の出を撮りに行く。すばらしい眺め、
千両役者の貫禄十分である。今日も雲海でしかも西側の雲海上に影利尻が見えた。小屋に
戻るとみんな元気に起きていた。ゆっくりと、簡単な朝ご飯をすませ、6時に山小屋を後
にする。長官山からの少々急な部分はまたアンザイレンしていく。のんびりと下りて10
時前にキャンプ場に着く。大休止の後、麓にある利尻富士町の町営温泉に入って汗を流す。
昼食は漁協の購買部でうに丼に舌鼓。一杯2000円也。その後はワゴン車のハイヤーの
相乗り(大人1人3時間で3000円)で島一周をする。利尻山のめまぐるしく変わる山
容にずっと見とれてしまう。夏は観光で華やかな反面、冬の厳しさや離島での生活の厳し
さをユーモアたっぷりの語り口から聞くことができ良かった。再度キャンプ場に戻り、
利尻最後の夜。

8月13日:朝10時10分の便で利尻から礼文南部の香深(かふか)へ移動。生憎の悪
天で霧雨。レンタカーを借りて島巡りをする。北部の久種湖まで行き、高山植物園を見学。
レブン・ウスユキソウなど主だった花は既に終了。バックして香深井から奥の礼文林道
(未舗装)に入る。ぽつぽつとハイカーが歩いていく。礼文滝に下りていく遊歩道付近で
霧も晴れ箱庭のような景色が広がる。島中、高い木はほとんどなく緑のジュウタンで以前
に行ったイギリスの湖水地方を思い出す。花もちょっと遅いが御花畑がそこかしこに広が
っている。南西の海岸の集落、元地では後3人は「めのう」探しならぬお土産探し。巨大
な桃岩の景観を見て香深へ戻り、稚内行のフェリーに乗る。
奮発して名物のたこシャブやいくら、かになど上さんや子供の御好みの夕食を済ませ、
市内高台にある稚内森林公園キャンプ場で最後のテント泊。

8月14日:お決まりコースで最北端の地、宗谷岬へ。取って返して西海岸のサロベツ原
生花園でのんびり過ごし、一路札幌へ。今回唯一のホテル。すすきので子供達希望のサッ
ポロラーメンを食べ、平和にバタンキュー。

8月15日:朝から小樽に戻り、最後の心配事項、フェリーのキャンセル待ち。20:30
発の新潟行きと23:30発の敦賀行き。(こちらは1人と車だけ取れていた)整理券を
11時にもらってあとは天に任せるのみで、小樽観光に走る。運河とごつい感じの洋館が
似合う古くて新しい町、小樽。ちょっとミーハーっぽいがなかなか気に入った。結局、
取れた新潟便に乗る。

8月16日:朝食と朝風呂を済ませた頃からかなり海がしけてくる。大揺れが2時ごろま
で続き、トイレには青い顔をした人の列。下の子は1回戻してしまうがそれからは元気で
後でおにぎりにぱくついていた。何とかやり過ごして午後の4時前に下船。下りたら中越、
上越地方まで大雨で高速も速度規制。上信越道、R18,長野道、中央道経由で帰豊する。
午前零時、豊川着。

<感想>
洋上アルプス、利尻山は噂に違わぬ魅力的な山だった。今度は機会があればGWにでも
訪れて南面や西面の残雪の尾根ルートでも登ってみたいと思った。
また、利尻登山にはうちのような小さい子を抱える家族では少々厳しかったが、小屋を
使わせてもらったのと、十分なお昼寝で元気に登ることができ良かった。甘えん坊の
小1のおちびも頑張って登り下りをし、上の子も含めこんな山まで登れるまで成長して
くれたことに逆に感激した山行だった。上さんもよく不自由さに耐えて歩けて良かった
と思う。
-記・上田-

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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