米国・ヨセミテ国立公園

10/8
9:00 名古屋より成田へ。サンフランシスコ行きJALが18時発なので空港で
散髪・食事・買い物で暇つぶしする。夕方は空港職員の休憩室に潜り込み、柔道の世
界選手権をみていた。井上康生と篠原の試合が途中まで見れた。(後日わかったが
100Kg級と100Kg超級でともに優勝した)。

同日 11時10分サンフラシスコについた。30分後にシカゴからの飛行機が到着
と言うことだったのでレンタカー会社の受付窓口でも見に行こうと思いうろつくが見
つからず。戻ってきたところで、土橋君と合流した。
レンタカー屋まではシャトルバスに乗る必要があり、窓口は結構並んでいた。手続き
と現地までの運転は土橋君に任せることにした。右側通行に加えて、時差の性で、も
のすごく眠く運転できる状態ではなかった。
途中、Oak dale という町で缶詰,パン,肉・野菜類,調味料を購入する。

2時間ほどで公園の入り口へ。すぐにHodgdon Meadowというキャンプ
地に到着する。真っ暗になっていたが土橋君予約の場所が良くすぐ見つかった。

10/9 晴れ
5時起き。サンドウイッチを自前で作って、6時発。Sunny sideの予約を
取るため、早い目の始動をする。国道120号を下っていくと、いよいよ渓谷の中に
入ってくる。日本の大岩壁に匹敵するくらいの壁が対岸に広がっている。すごい!!
しばらくするとMercedからの国道140号と合流しいよいよ中心部に入る。





El Capitan すばらしい


すぐに、El Capitanが姿を現す。なんとでかい!!土橋君が車を飛ばすの
で感動している間もなく通過。普通は止まって見るんだけどなー と思いつつなんか
焦っているのを察知する。でも、キャンプ場の予約から、車の運転まで全部やっても
らっていたので文句を言わずそのまま運転を続けてもらった。Sunny side
(Camp4)に着き、キャンプ地の予約のためすぐ並ぶ。渓谷なので結構寒い。
でも若いお姉ちゃんには半ズボンで平気な顔しているのもいるし...どうなっとん
のん。クライマーらしきは、まあ大体みんな厚着している。8時間半に受付開始でキ
ャンプ地はとれた。我々の滞在は8日、一回の申し込みで7日までだったが空いてい
る時期になっていたので1日分は再申し込みなしでいけるよう配慮してくれた。
テントを張ってすぐ装備,食料の買い出しにカリービレッジに出かける。クライミン
グのギアは手に入ったが、プリムスのガスが見つからず。そのまま、大急ぎでイーグ
ルクリークエリアに出かける。キャンプ地に一番近く取り付きやすいグレードが揃っ
ている。すぐ近くの駐車場も見つかり、順番待ちもなく取り付く。

* ナットクラッカー(5.6,5ピッチ★★★)
1P:5.6だが久しぶりなので難しく感じる。
2P:やさしかったが、50~55m。長い。
3P:快適なフレークをつかんで直上。
4P:左右2つルートがあるが右へ行く。トラバースの後、ハングを越える。トラバ
ースは、甘いナッツプロテクションの後だったので恐かった。ハングはクラッ
クへハンドジャムで乗っ越す。上部のクラックが浅くなっていたのでゆっくり
慎重に上がる。
5P:マントリングでハングを越えるのだが、ナッツをはずせなかったので仕方なく
掴むとはずれてそのままロープにぶら下がってしまった。
人気ルートであり、各ピッチ先行パーティー待ちが多かったのでボルトが使えずカム
ビレイになる。昨夜は寝不足でビレイの途中で意識を失う瞬間が何回もあった。

夜は、ガス缶がないのでヨセミテロッジのカフェテリアに行った。時差の性で横にな
っても半分くらいしか眠っていない。

10/10 晴れ
すばらしい晴天が続いている。グレイシャーポイントにスラブを登りに行こうと言う
ことになった。アッパーパインのキャンプ場の奥の駐車場から約15分壁の基部まで
トレイルがある。マージナル(5.9★★★)に取り付くがルーフを越えた後ボルト
がまったく見つからず5.5~5.6のクラックルートへトラバースし変更する。






グレイシャーポイント エプロンで遊ぶ


快適なフィンガークラックをたどり2~3ピッチでアンカー。日が照りつけて暑いの
でこれでやめ、またガス缶探しにギアショップに行く。やっとMSRのガス缶がプリ
ムスのヘッドに合うことがわかった。ガソリンを入れに行った後、夕方、翌日予定の
ミドルカテドラル・イーストバットレスの取り付きを見に行く。
夜はまた半分くらいしか眠れない。

10/11 晴れ
4:50起きで、出発の準備。食事中に、キツネぐらいの灰色の動物が現れ、いきな
り開け放しの食料庫のクッキー袋をひきずって持っていこうとした。土橋君が大慌て
で追いかけ何とか奪い返したがその後また現れ食料庫の下に隠していた食料をくわえ
て持っていってしまった。明るくなってから見てみるとその辺に横穴が沢山あり、こ
の動物の巣穴かもしれない。
6:10車を出発。取り付きでゆっくりしていたので結局7:45スイス人パーティ
ーの後を登り始める。






ミドルカテドラル


* ミドルカテドラル/イーストバットレス(5.9A1,12P★★★)
1P(土):直上。やさしい。
2P(宮):ハングの乗越しに苦労したのでザックを置いて対処する。
3P(土):快適なフレーク。長い。
4P(宮):出始めジェードル。フィンガーで耐え、エイリアン#1をセットする。
きめすぎてクラックに深く入ってしまったため、フォローの土橋君が悲
鳴をあげてはずしている。後は快適なジェードル。
5P(土):A1.ボルトはしっかりしている。ハング乗越しでザックが邪魔になっ
たので2つとも引き上げてもらうことにしたが、引き上げできず自分の
分だけ背負って上がる。
6P(宮):右上。意外と悪い。
7~9P :ほぼ垂直。ジェードルあるいは周辺のフェースを使いながら快適に登れる。
10P(宮):滑りやすいジェードルを登って数mのフィンガー。荷物があるとフォ
ールしそうなので、壁に固定してレイバックで木まで達する。
11P(土):ルンゼ状。チムニーで滑りやすく悪い。土橋君、凹角の中心になんと
かエイリアンを極めていたがフォローしてみると簡単に外れる。
12P(宮):すぐに樹林帯に突入。終了16時ちょうど。

正面にエルキャップが大きい。燦燦と日が照りつけている。軽食後Kat walk
経由(ケルンがある)でHigher cathedralとの谷間に出、3回の懸
垂で安全地帯へ。あとは、20分程の歩きで車道へ出る(18時頃)。飯は面倒なの
でヨセミテロッジのカフェテリアへバイキングを食べに行く。はじめて9時間ぐっす
り眠る。

10/12 晴れ
時差ぼけはしっかり取れたようだ。朝食後、ハーフドームで想定されるカムでの荷揚
げと人の確保が同一点で行われる場合の支点の設置方法について確認する。あと、ト
ラバースピッチでのホールバックの扱いに付いても検討する。ただし、机上検討なの
で本番では想定し得ないことが発生するかもしれない。壁が大きいだけに、それには
不安を感じる。食料の献立表作成,ギアの不足リスト作成。午後カリービレッジのギ
アショップとフードショップに買い出し。その後ヨセミテビレッジ・ビジターセンタ
ーへ登攀の登録に行くが登録システムなるものは存在せず、各自の責任で勝手に登れ
とのこと。しかも、山火事で帰路となる一般登山道は閉鎖中。どうしようかと言うこ
とになったがさらなる情報収集のため、wilderness centerに行く
と消防隊に電話確認してくれ、明日出発で2泊3日なら消せるはずなのでOKとのこ
と。まだ心配だったがとりあえず安心してキャンプ場に戻る。夕方まで水筒作り、ギ
ア必要数のチェックをするがすぐ日没となり打ち切った。準備状況から明日出発は間
に合わないので1日延期することにした。

夕食はヨセミテロッジのカフェテリアへ。駐車場が満杯だったのでエリア内の端のほ
うに駐車したら、翌朝駐禁をやられていた。なんと変な国だ..と二人ともあきれた
ようにぼやく。罰金$35だったが、宮尾さんの住所で連絡すると日本なので連絡が
来ないのでは、と土橋君の作戦を使うことにした。貼り付けてあったはがきにクレジ
ットカードナンバーと住所,名前を書いてポストに放り込んだ。
追記:後日、日本に帰ってからも連絡はきていない。しめしめ。

10/13 晴れ
朝食後、ギアを全部広げ数量と重量の確認。土橋君の提案で缶詰1日目の分だけ開け
て袋にパックする。あとホールバックの縫い目にしっかりとダクトテープを張る。
さらに、水,行動食の分割パック。これらをスタッフバックに分類して詰める。ホー
ルバックは、購入時大きいかと思っていたが、ぎりぎりのサイズだった。3時頃用意
完了。
山火事が心配なので再びwilderness centerへ行く。今日の窓口係
は不安定な返事しかしなかったので、TELでFiresにチェックを入れる。山火
事は大丈夫だが頂上からの下降路は補修工事中で気をつけろとのこと。これで気持ち
の整理が付いた。すぐ帰って夕食のチャーハンとスープを作る。夕食途中で、北海道
の植田さんと言う人がきてエルキャップのノースアメリカンルートを登った話を聞か
せてもらった。

夜中、テントの横を何かが走りぬける音がするや否や、テントの前のホールバックの
シートを剥がす音がする。何事かと思って慌てて見てみると、熊が出現していた。
土橋君の声ですぐ逃げていったが、危うくやられるところだった。車のドアを剥がし
て車中の食料を盗むぐらいだから、ホールバックなどいちころだろう。食料を急いで
食料庫にしまう。熊に狙いをつけられたのは、夕食の玉ねぎの匂いが原因かと思われ
る。テーブルとテントが近いので日本のように派手に料理できないということに気づ
いた。それと、近くに人がいて火を焚いたり、音を立てていても、お構いなく出現す
ることもわかった。
何はともあれ、すぐ寝てしまい朝までぐっすりだった。朝まで、現れることはなかっ
た。

10/14 晴れ
4:50起。また、キツネみたいなやつが現れないか心配しながら食事する。ミラー
レイクまでの車の乗り入れは禁止されているが、早朝なので誰も通行しておらず問題
ないだろうと判断した。私が運転し、パトに尋問されればルールを知らなかったと言
う作戦でミラーレイクまで突っ込む。各自約25~30kgの荷物をデポし、すぐ引
き返しアッパーパイン奥の駐車場まで車を止めに行く。予想どうり、パトも人も出く
わさなかった。






ハーフドーム 北西壁へのアプローチ


2人とも重い荷物をじわじわスラブルート目指して上げていく。トポどうり、フィッ
クスロープを発見し、やばいところも助かる。途中荷揚げの必要がありロスしたが、
5時間半で取り付きへ。大量の蜂が壁に群がって無気味な音を立てている。登れる状
態になったのが2時半。多分4ピッチしか登れないだろう。
* ハーフドーム/レギュラー 5.9,A1 23P ★★★
1P(土):5.8~5.10C/55m。5.10Cはリッジにルートをとれるが
プロテクションはクラックになるので安全のため人工で行っている。ユマールでフォ
ローするが、荷揚げが大変そうだ。ハングで引っかかるバッグをはずしながらユマー
リングする。
2P(宮):出始め悪く人工、あとはフェースの後、スロット状をチムニー登り。
左へ抜けてボルトのある支点へ。荷揚げは、とてもキックでは上がらないので両足で
壁を蹴って体重ごと駆け下りる(ボディーホーリングと呼ばれる方法,ホーリングは
荷揚げのこと)。
3P(土):直上。難しくない。
4P(宮):ハングをエイリアンで人工。越えるとボルトラダー。終わるところでフ
レーク状のクラックが始まるのだが、ここで日没。ロープをかけたまま3Pのアンカ
ーまで降りる。

食事中、明日どうしようかと言う話になったが、このままのペースでは1ピッチ1時
間ちょっとかかっているので、疲労でペースが更に落ちることも考え合わせると、下
山も含めてあと3日かかる。18日の早朝に空港へ出発しても間に合わないかもしれ
ないので、あと3日は難しい。といったことを前提に話し合いとなった。土橋君は、
4日かかっても登りたい。私は、荷揚げがあるので2泊3日ならまだしも、フリーで
はワンデイ(1day ascent)のなされる壁で4日かかるのは実力不足であ
る。と互いの主張があるなかで、荷揚げの荷物が重すぎることや、他のチームが我々
のスタイルで登っているのかといった疑問点がでてきた。結局、ペース配分の狂いや
クリアにできていない技術的な問題など、課題が多いので出直そうと言うことになっ
た。

ビバークは、狭いが安全なスペースがあり、私は横になり、土橋君はひざを抱えて一
夜を明かす。かなり疲れていたので10時間は寝ただろうか。

10/15 晴れ
昨日のロープを回収し、下ろうかと準備していると2パーティー続けて上がってきた。
第1パーティーは、トップが非常に少ないギアで、セカンドがユマーリングしている
間にノービレイで行けるところまで登って待ている。追いついてきたら、ビレイをし
てもらうと言う形式で、早いと言えば早いが、フォローは楽しいのか?(楽しくない
はず)と言う気がする。自信があるのかもしれないが安全性もどうかと言う気がする。
フォローの荷物は40Lぐらいのザック一つで極端に少ない。しかも、トップの奴が
我々に水はないかとせがんできた。ホールバックの中にあるだろうとか言っている。
あきれた奴だ。土橋君は、アメリカはやった者勝ちの国だと言っていたがまさにその
通りだ。しかも、水があまったら基部に置いていってほしいとか言っている。どの道
捨てるつもりなので置いていくことにするが。早く行ってしまえ、この岩猿め!!。
第2パーティーは、トップ(ドイツ人)が自作のスタッフバックを外側だけ強化した
ものを上げている。おそらく、衣類とシュラフぐらいが入っているように見える。
セカンドのザックからあふれた分なのかもしれない。ともかく小さい。土橋君もこれ
なら真似していけそうだと言っている。セカンド(チリ人)は、ユマーリングオンリ
ーの様子。40Lくらいのザックを背負い、2Lのポリタンを腰から下げている。
15PのBig Sandy Ledge まで行くとか言っているがどうだろう?
もし我々が、このルートでスタイルを立て直すならこのパーティーのやり方がいいよ
うに思えた。すなわち当初のホールバック形式にこだわりすぎたのかもしれない。

2組が行ったので下降開始。土橋君がホールバックを腹の下に吊るして懸垂した。
行しに使ったスラブの下降は危険なのでやめて、壁の基部を北側へ回り、登ってみる。
50分くらいで一般道と合流する。時間がまだ充分あるので荷物を置いて頂上を往復
する。噂に聞いていたが、帰りはかなり急な下りで一般登山者に開放しているところ
はいかにもアメリカらしい。あとは、山火事で焦げ臭い登山道をひたすら5時間、暗
くなってからアッパーパイン奥の駐車場へ戻った。

10/16 晴れ
1日キャンプ場でぶらぶらしていても時間ももったいないし、敗退後のいやな思いも
吹ききれないので、リーズピナクルへ行くことにする。

* レギュラー 5.8,4P★★★
1P(土):5.7~5.8クラック
2P(宮):5.8フェース
3P(土):洞穴をトラバース。胸が挟まるくらい狭く、難しい。支点がないので落
ちたら終わり。ヘルメットをはずし、ギアラックも股下に下げて通過。
4P(宮):5.9ジェードル,クラック。上部でフォールし、巻いてピナクルの上
に立つ。

* ダイレクト 5.9,2P ★★★
1P(土):ハンド~フィンガー。リードは意外と手強い気がする。
2P(土):ハンド~フィスト。50m近い垂直のクラック。長く、持久力がいる。
土橋君、途中でうまく休みながらがんばって登り切った。フォローするがすばらしい
ルートだ。
2人とも登り切ると道路の観衆から拍手。こちらも手を振って答える。

カリービレッジに行き、ヨセミテ入り後初めてシャワーを浴びる(過酷な日程だった)。
あとシャワールーム裏のカフェテリアで食事。バイキングだがどの料理も味付けが単
調。ジュースもなんか薬臭い。土橋君曰く、典型的なアメリカの味付けだそうだ。
アメリカ生活大変だろうな。

10/17 晴れ
朝食が終わる頃、植田さんに残り物を差し上げるので来てほしいと言っていたら、彼
の師匠の小野寺さんと言う人が一緒にやってきた。エルキャップのゾディアックをソ
ロで昨日やってきたらしい。昨年は、センチネルロックで荷揚げ、ワシントンコラム
で人工の練習、今年は、本格的にエルキャップでビッグウォールの実践。とステップ
を踏んで確実にレベルアップしているみたいだ。話は、淡々としているが人柄も落ち
着いた感じで内容的にも参考になった。話が長引いたので、テント撤収と荷造りで
11時になった。
ヨセミテをさらばし、Oak daleの町中で中華料理店に入ってみた。一皿に、
チャーハン、焼き蕎麦、その他が盛ってあり、大変おいしかった。地元の白人にも人
気のある店みたいだ。
約4時間で、サンフランシスコへ。フィシャーマンズ・ワーフで1時間クルーズに乗
船し、シーフードレストランで生牡蠣,クラムチャウダー,グリル・ド・フィッシュ
と豪奢な夕食で締めとする。空港へ向かう101号線沿いのモーテルを見つけ入る。
2人で、$106と安いが、3星くらいの快適な部屋だった。

10/18
洗車して返却しないと料金が上がるかもしれないと言うことで、洗車場を探し回り、
空港近くの、ガソリンスタンドで洗車する。11時、空港入り口で解散する。

- 記:宮尾 -

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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