冬山を少し味わえた雪上訓練:中央アルプス千畳敷

【冬山を少し味わえた雪上訓練:中央アルプス千畳敷】21.12.12 (上田)
【2021年12月12日】
【メンバー】浅田俊夫 河合芳尚 白井良岳 遠山泰広 梅田るみ 樋口洋平(入会予定) 上田歳彦

冬山シーズンのスタートにあたり、基本技術の確認と冬山の状況(寒さ、風、雪)への馴れを目的に、今年の雪上訓練は常連メンバーに加え初参加の梅田さん(旧姓原田さん)、今回お試し山行の樋口さんのフレッシュなメンバーの参加となった。

12月11日(土)
市役所に20時に集合し、河合君宅集合者3名を加えて、治部坂峠越えのいつものルートで、23時に駒ヶ根の菅の台に到着。今回参加の樋口さんへのエールで、賑やかな一杯会となった。
12月12日(日)
7時に起床。いいお天気で例年並みの冷え込み。8:15始発のしらび平雪のバスは、丁度1台分のお客さんで例年のような混雑ではなかった。

ロープウェーからは雲海に浮かぶ南アルプスも望めた。

左から、北岳、間ノ岳、農鳥岳、富士山、塩見岳左から鋸、甲斐駒、仙丈

9時過ぎに千畳敷駅に到着。冬山装備一式、ハーネスなどを装着し、ロープウェー頂上駅前で白井リーダーの本日の行動説明。風もなく暖かい。サギダルの頭の左の斜面から極楽平の稜線を目指すことになった。素晴らしい晴天で宝剣岳をはじめとした千畳敷カールを囲む山々が素晴らしいが、稜線には雪煙が舞い風が強いことを告げている。

先ずはトレースの無い場所で雪質のチェック。

スコップで垂直に雪を切り出して、軟らかい雪の層、堅い層をチェック雪の断面の弱層のチェックとブロックの切り出しから雪崩リスクの観察。東斜面の今回は吹き溜まりで積雪60cm程度。積雪深30~40cmの所に弱層を確認できた。脅威となるような不安定な弱層では無いことから予定通りの行動とした。

結構の力で円柱のブロックを引っ張るとスライドして平らできれいな雪面が現れる トレースが無い沢状の斜面を選び、ラッセルを交代しながら高度を上げる。まだ青空!稜線にガスが近づいてきたなあ(*_*;
梅田さん、樋口君もラッセルに果敢にチャレンジ!

今回はひざ下までのラッセルで、足だけを使って踏み固めながらの登行だった。雪の深さや傾斜によってはピッケルを持った腕、膝で雪を足元に書き落としそれを踏み固めながらステップを作りながら前進。チームで効率良い登行にトライすることになる。地形や直近の日射や風により雪質は大きく変化する。何よりも降雪直後の雪崩リスクのある斜面に踏み込まないこと。自分達の技量に合わせ、なるべく踏みこまないルートどりをすることもスピードを上げるには大事だ。

稜線近くなると稜線にガスがかかり、天候の変化を告げている。

皆で島田娘の稜線に上がると既に展望は無く、12~15m/秒の強風が吹いており、耐風姿勢のトレーニング。みるみる視界が悪くなり風が強まったため、リーダーの判断でロープを出して、来た道を慎重に下降する。

1ピッチ目は稜線の鉄棒を支点に懸垂下降

2ピッチ目は河合君の確保でバックステップで下降する樋口君。他のメンバーもバックステップで慎重に下降する。

プチ冬山を味わえて楽しい(^^)/

無事に急斜面を下降し、満足そうな樋口君(*^-^*)完全にホワイトアウトとなり足元の雪面の状態、トレースもわかりにくくなり、白井リーダー先頭でロープウェー頂上駅まで下降する。 しばらく休憩していると駅周辺も強風の大荒れの天気となる。外での行動は無理と判断し喫茶でビーコンの使い方の解説。

強風によるロープウェー停止の恐れもあるため13:55の便で降りることにした。
滑落停止など予定したメニューは天候急変でまたの機会となりましたが、稜線からの強風とホワイトアウトの中での下降はいいトレーニングになりました。これからどんどん冬山に行く人もベテランも、山を甘く見ることなく安全に楽しく登りたいものです。
個人的にもコロナなどで会のメンバーとの山行が少ない1年でしたが、今回は楽しくトレーニングできて良かったです。

<お天気の状況>
◇登山前日の12/11は本州南の移動性高気圧に緩やかに覆われたため、中央アルプスでも安定した晴天がだった。
12/12は日本海北部に発生した低気圧と寒気を伴う気圧の谷の影響で、中央アルプスでも昼前から影響が出始め、急激に稜線がガスに巻かれ、低気圧の接近で南寄りの強風が入ったことで、昼頃からは東側斜面の千畳敷でも強風となった。
天気図は、12/11 18時、12/12 9時、12時、15時、山行の翌日12/13 9時の北日本中心の冬型の地上天気図。

(記:上田)

 

この記事を書いた人

愛知県山岳連盟 豊川山岳会事務局
山岳上級指導員 気象予報士
NPO法人 ウェザーフロンティア東海会員

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