唐沢岳幕岩「S字状ルート」

【唐沢岳幕岩】18.6.1(白井)
【2018年6月1日~3日】
【メンバー】L.白井、山形、中村(冴)

昨年のこの時期に登りに行ったこのルートですが、昨年は染み出しが多く、と言うか川の様に流れていましたので諦めました。
今年こそはとアルパインデビューの中村君を含め昨年のリベンジ組の山形君と3人で行きました。
金晩発で七倉ゲートに1時ごろ着、頑張って3時ごろまで宴会。なんか盛り上がっちゃいます。
頑張って6時ごろ起きて出発。

唐沢は昨年は多かった残雪はだいぶ無くなっていました、これが普通だと思いますが。以前使っていた左岸を大きく巻く道は昨年使用したところ大分荒廃したいたので、今回は金時の滝右岸のガレ場を登りました。
このガレ場も相変わらず悪いです。なんとか残置Fixがまだ生きているので登れます。
11時ごろ幕岩の下に到着。眺めると「S字状ルート」の染み出しはあるものの昨年比べれば断然ましです。
ひとまず大町の宿にチェックインしたあとルートの偵察に出かけました。

七倉ゲート駐車場
アプローチの唐沢を遡行します

3ピッチほどロープを出し、最初の草付き部分を偵察しました。「日本の岩場」の黒い垂壁まで120mとある部分だが3ピッチ伸ばしても届きませんでした。
本日はここまでとして偵察を終了して下降する。
あとは大町の宿で宴会、夕食となる。
大町の宿からは木々の緑の間から烏帽子岳が目の前に良く見え、稜線が美しい。今回も他のパーティーも来てなく貸し切りの幕岩だ。
携帯の電波も届かないの世俗から隔絶された自然の中で、仲間と飲む酒は格別であった。
幕岩の左岩壁を見るとそこそこ染み出しが…
B沢を詰めてルートの偵察に向かいます

大町の宿で宴会

3日(日)
本日はアタック日だ。4時に起床して5時半出発。
6時15分登攀開始。
1~5ピッチ 昨日登った様に中村リードで4ピッチ伸ばし黒い垂壁の下までたどり着く。ここまでは灌木交じりのブッシュ帯である。
下部より、垂壁沿いに右へトラバースしていく。垂壁の右端にあるリングボルトを使ってピッチを切る。
最初の草付き1ピッチ目

6ピッチ 白井リードで下りながら流水溝と思われるスラブ壁を下る。20mほど下ると終了点が作ってあったので一度ピッチを切る。
7ピッチ その後、スラブ壁を更に下り、バンドっぽい感じのところを右トラバースするか迷ったが、右上しながらブッシュ帯を登る。
予想以上にこのブッシュ帯も悪い。灌木や時々見つかるハーケンなどにランニングを取って右上して行く。二つ目の流水溝の手前でロープを40m以上出していたので、手前の灌木を使って終了点する。長年アルピンクライミングをしてきたがこんなに悪いブッシュ帯を登るの初めてだとおもう。先に確実な確保支点があるかどうか解らないブッシュ帯を登るのかなり怖い。今回はちゃんとジャンピングとリングボルトをもって来ているので最悪岩があれば確保支点はくれる用意はしてきた。
8ピッチ 次は流水溝を横切り直上して流水溝の中のハーケンを見つけたので、もう一枚打ち足して終了点とする。
今回は昨年ほどではないが流水溝と言われるとおりにちゃんと水が流れてました。
9ピッチ その後は40mスラブを左上。とちゅに残置支点は2か所しかありません。まぁまぁ快適なスラブ。
流水溝のスラブをを横切り草付きへ突入手前
貴重な草付きの無い9ピッチ目、このあと左上します

10ピッチ 次はリードを中村に替わりさらに左上して大岩テラスまで。テラズから明峰ルートのラダーが見えるので解りやすい。
11ピッチ 山形リードと変わる。結構染み出しが多く、この染み出しがなかったもうちょっと快適なスラブと凹角を登る。凹角はブッシュ交じり。小さなバンドよりスラブを5mほど登り灌木ビレー。
12~13ピッチ 次も山形リード4mほど岩登りして右の大きなスラブ壁にカンテ上を乗り越し移る。その後山形がオリジナルラインを登って行く。フリーのルートを行くのなら、スラブ壁へ乗り越したあと右の凹角状のスラブ壁を登って行くのだと思う。しかし、今回はこの凹角状も染み出しが多くあまり快適そうでなく、乾いているオリジナルラインは正解だったかもしれない。
山形リード。そのまま数メートル登るとリングボルト3個の終了点を見つける。ここまでくる間も予想外にオリジナルラインを登って来てしまったので、このままオリジナルどうりに振り子トラバースして行くか、左上しながらブッシュ交じりの岩壁を登るか迷う。この迷う時間が意外とタイムロスと繋がり結果的に今回の下山が遅くなる一員でもあったと思う。もう少し前にこの部分を同登るか徹底していなければいけなかったと反省。
結局振り子してすぐ下の灌木でビレー支点とする。
14ピッチ 白井リード 出だしは草付きを右にトラバース。濡れた岩場を右上しハングの切れ目を目指す。フレーク状のハング下で終了。20mほど。途中右側のスラブに終了点が見えた。たぶん明峰ルートのものと思われる。
15ピッチ 白井リード フレーク状ハングをA0で乗り越す。残置ハーケンが生きてて良かった。左のスラブ壁へ上がる。リングボルト二つの終了点を見つける。その後のルートを探すが判然しない。乾いていればそのまま直上して登って小ハングを乗り越えていけそうだが、いかんせん濡れていて登れそうもない。左にハーケンを見つけたのでハーケンのある濡れたスラブを死ぬ思いで登る。ここは本当に怖かった。スラブ壁は濡れていてスタンスとホールドも無く、おまけに自分が悪いのだが、ロープを交差してしまっていて流れが悪く非常に重たくなっていた。左の壁に張り付いている泥土に指を突き刺しホールドとして魂のクライミングで登る。小ハング下をさらに左にトラバースして灌木で終了。
フリークライミングのゲレンデだと悪ければ簡単に諦めれるんだけど、アルパインだとたまにこうやって「ここ登らないと帰れないよ!」というパートが出て来る。
16~17ピッチ 白井リード 灌木を使って小ハングを乗り越しスラブを数メートル登って岩登りは終了。あとは適当に灌木帯を登りトラバースバンドで終了。
出だしが嫌な10ピッチ目を登る中村
大岩テラス下を間違えて左から登る中村
11ピッチ目を登る山形、このあと草付き凹角
振り返ると不動岳や烏帽子岳などのアルプスの稜線

この登攀終了の時点ですでに15時は回っていた。今日中に帰れないかもしれないと少々あせるが、この様な時ほど焦りは禁物、泥沼にはまってしまいます。
無事に右稜のコル着きますようにと祈りながら、右稜の頭を目指して樹林帯をトラ―バス、すぐに左岸壁と中央壁を分けるルンゼを流れる川に着き当たる。
このままトラバースしていくと悪そうだったので一度登ることにする。登った後川を渡り下りながらトラバースして行く。
雪渓の残る川で水を補給

今度は下りすぎてしまい登り気味でトラバース。今までは落葉樹林であったがここ針葉樹林帯となり下草があまり生えて無く歩きやすい。
後から考えるとこの辺りより下れば右稜のコルだと思う。自分達ももうそろそろかと思い針葉樹林帯辺りより降ろうとしたがブッシュが濃くさらにトラバースする。
次にルンゼがあったのでここが「西壁ルンゼ」の上部ルンゼかと予想はしたが、過去の記憶よりブッシュが多くちょっとイメージが違ったので、大凹角先のルンゼかと思い通りすぎて次の稜を下る。少し下って右稜のコルは何処かと見晴らしのいいところで見渡すが全く見つからない。「オカシイ、迷った!」と思いだいぶ焦るが、たぶん行き過ぎたと言う事は解ったので、次の可能性として先ほど渡ったルンゼを西壁ルンゼだとして、ルンゼまで戻りこのルンゼを下りつつ右側の稜にあがってみるとビンゴ!であった。大凹角ルートを登り切った見覚えのある場所に出てホッとする。
17頃懸垂下降開始。後は右稜の頭より懸垂下降を繰り返して大町の宿へ。
右稜の頭より懸垂下降
大町の宿へはすでに19時頃となり辺りは薄暗くなり始めてくる。
急いで荷物をザックに詰めて唐沢を下山する。
ヘッドライトで確認しながら沢を下山するのはやはり疲れる。どうしても視野が狭くなる。記憶を頼りに巻き道を間違えないように降る。金時ノ滝のガレ場も無事懸垂下降で2回して降りる。
七倉の駐車場に着いたのは23時10分頃だった。かなりの行動時間となったが3人とも最後まで元気であった。
新城市の自宅に着いたのは早朝の4時半頃であった、豊川市と豊橋市在住の二人の帰宅時間はさらに遅くなっただろう。
今回の唐沢岳幕岩は携帯電話が入らないのでビバークなど下山遅れの場合連絡がつかず心配をかけてしまう。
今回は中村君がどうしても月曜日に出社したいと言うので暗い中、唐沢を下山した。メンバーの力量しだいだが、なるべく危険は避けたいところである。
しかしながら、今度の幕岩も他のパーティーは皆無で良かったが、逆にアルパイン離れが進んでいるのが実感できた。
快適なアプローチや快適なフリークライミングが出来るルートは当然人気がありクライマーが集中する。
幕岩の様にアプローチがめんどうくさかったり、ルートにA1などアブミを使うパートや草付きが多いルートは人気が無いどころか誰も登らなくなっている感じである。
今回のS字ルートも例外にもれず序盤の草付きはかなりマイナスである。ホントはA1でもいいので岩を登りたい、なのでかつては明峰ルートを最初に登っていたのだろう。
後半のハング越えも記録を見ると多くが明峰のボルトラダーを登っている。その方が迷は無くていいかもしれない。
かつてあった下降路の右稜の頭への目印の赤テープなどは全く見当たらなかった。
登るクライマーが少なければどんどんブッシュが濃くなり、踏み跡が不明瞭となるだろう。
寂しい気がするが、今持っている知識や経験を後世のクライマーに受け継いで行けたらと切に思う。

所感:山形
去年、登れなかったS字状ルートを無事に登ることが出来て心身共に大満足の1日となりました。唐幕はロケーションも素晴らしくお腹いっぱいのクライミングが出来る貴重な岩場だと思います。個人的にはまた脚光を浴びて欲しいです。
所間:中村
アルパインの厳しさ、難しさを痛感できました。デビュー戦とはいえ、連れてって頂くというつもりでなく、下調べをしっかりとしたつもりでしたが、取付き、ルート、下降路等全然わかりませんでした。
携帯電話の電波が入らなく、貸切りのゲレンデは怖さとワクワクが入り混じって刺激的でした。
次はスッキリしたとこへいきたいです。

 

この記事を書いた人

クライミング全般大好きです。
仲間と楽しいクライミングを重ねて行きたいです。
一応現在チーフリーダーをやらせてもらっています。
愛犬、愛妻、愛娘と新城市で暮らしてますが、私が愛されているかは、解りません...

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