極寒の沢登り
2023/02/15
【厳冬期竜ヶ岳蛇谷遡行記録】記載→比嘉
【2023年1月29日】
【メンバー】
会員外の松尾(左)比嘉正岳(右)

【概要】
厳冬期の沢は一体どんな姿になるのだろう。
アイスクライミングとは違った形の冬の沢へ。
未知を既知にしていく過程としてはまだまだ序の口。
今日をきっかけに冬の沢の全貌に近づきたいと思う。
【コース】
登山道→魚止滝
→二股(左は燕滝、右は名称不明)の右を行く
と蛇谷なのでそちらを行く。
→勝手に命名、バエル滝(由来は後述)
→五階滝
→引き返して登山道から下山
【蛇谷の冬の姿をみて】
まず第一に「蛇谷って簡単じゃん。」とは言えなくなった。打ちのめされた。
これは単に難しかったとかそういう話ではない。
イメージと実際に登攀して学んで体験したこととの乖離の大きさである。
1番簡単だと思っていた壁にはボルトが設置されており、ナチュプロをとらずとも登れる。
足もたくさんおける。
全くもって、松尾も比嘉もこの壁は軽視していた。
滝の左岸に位置するこの壁は水が流れていないため、大して凍らないと予測し、無雪期と難しさはそこまで変わらないと予測していた。
しかし取り付いてびっくり。
こんなにも水が流れない壁が凍り雪がつくのかといった印象。
特に強いて言うならココが核心か?と思っていたところは、ホールドを氷が覆い、どこを頼りにすればいいかわからない姿に変貌していた。
このような予測の甘さ、山への無知。
これを痛感すると同時に、山はまだまだとんでもない面白さが待っている。
そう感じさせる内容だった。
当然、今回相当に冷たく寒かったが、これに懲りずまた行きたいと思う。
【魚止滝】

(凍った右岸を松尾が登る↑)
(猛烈にシャワーを浴びる↓)

左岸は水を浴びないが、上部で滝の落口までトラバースする必要があり、これがかなり悪そう。比嘉はここから突破。実際かなり悪かった。
右岸は水流の最もきつい部分。
しかしガバが多くクライミングは容易。ただし、岩が脆いのでホールドの崩落に注意。
松尾はこちらからシャワークライミング。上部では雪に隠れたホールドを探す必要があったり、たとえガバでも少しでも傾斜があり凍っていると掴めなかったり、非常にスリリング。
しかしホールドは豊富なので、使えるものを探して突破。
フリーで抜けたが、本来は冷たさを我慢してでもロープ使うのが正解だろう…。
【燕滝との出合いまで】
ゴーロは雪で平坦化し、歩きやすくもあるが、時々薄い部分で落とし穴となり踏み抜いて足を痛めることも。
見えないので厄介だ。


森の養分が岩にこびりついたのか?
無雪期の蛇谷よりも、滑るように感じた
【燕滝との出合い、右側の蛇谷方面の名称不明の滝】
大岩が積み重なった滝で細かく流れの筋が分散するため、ここは凍るのでは?と予測していたが、やはり凍っていた。いや想像以上に凍っていた。

アイスとシャワーのミックスクライミング。
蹴り込む、あるいはハンマーで殴ればアイスは砕けそうなので足場は作れるだろう。
沢靴のまま突破を試みる。

(松尾がリードでいく↑)
滝の上部の大岩の左側を水が流れており、こちら側は悪く夏でも突破したことがないので、やはり凍ったとしても左岸から突破だろう。夏と同じルートで攻略する。
使えるホールドがかなり減っていて難しかった。
しかし更に難しいのはフォローの比嘉をビレイするための支点探し。
雪に埋もれている良好なクラックを探す。
ショベルはないが、掘る掘る。掘るしかない。
「遅いぞ」と滝の下部で比嘉の声が聞こえ、後ろめたくなりながらも、安全な支点を見つけるのが第一。待たせてしまったが安心できる支点を2ヶ所見つけた。
比嘉はこの時かなり体を冷やす。
【バエル滝(勝手に命名)】
バエル滝とはご覧の写真の通りかなりインスタ映えしている。


だからバエル滝。
ちなみに無雪期はこんな感じ↓

無雪期の話をすると
バエル滝には3つの突破方法がある。
パターン1
右岸のルンゼから巻く方法。
パターン2
滝を中央突破。ガバは意外と多いが、核心は上部のヌメッたガバ。しかも崩落しやすい。
そして猛烈なシャワーを浴びる。
パターン3
左岸の流れのない壁を登る。ボルトが打ってあり開拓されている。簡単である。
今回は簡単なパターン3からいく。
ルンゼは凍りつき逆に危なそうで巻くのは難しそうだからだ。
さて、簡単だと言ったパターン3だが、今回1番難しかった。
松尾がまずはリード。
松尾は登れなかった。
3ピン目をかけた後、やや左にトラバースした後、トップアウトへの細い隙間に体を捩じ込み乗り上げていきたい。
そこがとんでもなく難しく、フォール。
無雪期に使用するホールドが凍りつき、全く使えないのだ。
松尾が登れないので、クライマー交代。
比嘉が行く。
ビレイしていた比嘉は、無雪期のノリでいけるように下部からは見えてしまい、ピッケルはザックにくくりつけたままリードでいく。

(リードする比嘉↑)
2ピン目以降、比嘉も松尾と同じところで苦戦するが、松尾が信用しなかった引っ張ると動く木の根を頼りに体を上げる。
アルパインっぽさを感じる。
4ピン目以降、ホールドも全くなく以前あったボルトも外されていてかなり怖い。
ステップが無いので、スリングをセットしてエイドであがる。
その後、凍ったチムニー状の地形に体をねじ込みなんとか登る。ここがかなり怖かった。
トップアウトし、以前あった贅沢な終了点を探す。積雪により、雪の下に隠れていた。
フォローで上がってくる松尾をビレイする。
やはりクライミングが苦手なのか、またフォールする。
下部からは、松尾の弱音がたくさん聞こえてくる。
比嘉は「ガンバっ」と叫んでなんとか登らせる。

写真は、フォローでまるで荷物のごとく核心を引き上げられる松尾。
かっこ悪い先輩もたまにはいいね。
松尾と比嘉は合流して語り合う。
これがあぁだとか、冬の沢はこんなにもあぁだとか語り合う。

バエル滝を登攀後、積雪量が増える

腕は相当よれていたが、やはりクライミングはすごい。こんなにも寒いのに、腕と手だけはすごく温かかった。立ち止まるとすぐに冷えるが。
五階滝を手前にして、時刻は13時。
山頂を目指せる時間ではないので、今日はこの辺で撤退する。
一般登山道に合流して下山開始。
帰り道、一般登山客にスターのような目で見られる、冬に沢登りをするバカ2人組。
少し気分が良い。
下山後の駐車場での着替えが核心だった。
今回のような山行は学びこそ多いが、怪我のリスクも相当に高いと感じた。
だが、決して後悔や自責の念はない。
これは僕たちが挑戦したからこそ学んだこと。そして運も含めて、今日までの経験が僕たちを下山に導いたのだから、そこは挑戦したことに自信を持ちたい。
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