韓国 北漢山 仁寿峰クライミング (シュイナードB、インスB、インスリッジ)

【韓国 北漢山 仁寿峰】2025年5月3〜7日(中田)
【2025年5月3〜7日】
【メンバー】中田 平野(豊橋山岳会)

5月に韓国へクライミングに行ってきました。書くのが遅くなってしまい8月になってしまいましたが報告します。

たまたま韓国にクライミングができる山を知った。
調べてみるとソウル近郊に円錐形の岩山があるではないか。
山の名前は仁寿峰(インスボン)。
日本から距離が近く、お手軽な韓国でクライミングか‥ありだな!
とりあえず情報を集めることにした。

「仁寿峰のトポ持ってる人いますか?」
昨年の東三きのこ狩り山行で聞いた一言である。
残念ながらトポを持っている人はおらず情報を得ることはできなかったが、山行に参加していた豊橋山岳会の平野さんが「行くの?いつ?」と乗り気な様子。
平野さんは岩から沢までオールマイティーにこなすクライマー。よし!参加者ゲット!

他にも参加者を募ったが、日程の都合等で集まらず平野さんと2人で計画スタート!
軽い気持ちで聞いた一言がきっかけで、韓国クライミングが決定した。
海外登山ってこんな簡単に決まっていいんだろうか…

決定してから鬼が牙や高木山、小川山でマルチの練習。瑞浪でスラブとクラックの練習をしてから臨んだ。
違う会に所属しているため、安全に登るための工夫が細かいところで異なり、事前練習ですり合わせをすることもでき良かった。

私は初海外!もちろん初海外登山!でクライミング… 一体どーなってしまうのか!?
安全第一で!わくわく9割、不安1割の気持ちで行ってきました!

 

5月3日(土) 1日目  天気:曇り

中部国際空港(10:40)→仁川国際空港(12:40)

久しぶりの飛行機に緊張ー

ドキドキの入国審査を終え、無事に入国
空港で現金を少し両替し、とりあえずコンビニで平野さんと入国祝い!
Tーmoneyカードを購入し、電車でソウル市内へ。券売機や駅の案内表示は日本語対応され、特に困ることはなかった。

お世話になる東大門のホテルへ。1人1部屋4泊で22,900円。
オーナーは少し日本語が話せる人で安心できた。

明日の下見を済ませ、東大門周辺の観光へ!曇空だからか外を歩くと想像より寒く、たまらずユニクロでダウンを買った。


昔はこの城壁がソウルを囲っていたそうな


謎の健康器具に興味深々な平野さん


第2回入国祝い

 

5月4日(日) 2日目 天気:晴  「シュイナードB」

アプローチ
6:00にホテルを出発。
地下鉄を乗り継ぎ、1時間ほどで最寄りの北漢山牛耳駅に着く。
駅を出ると仁寿峰が出迎えてくれる。デカい!

流しのタクシーに乗り7:35に登山口であるトソンサ広場に到着。
せっかちなのかアトラクションのような運転だった。
片道約₩5,000だが、韓国の紙幣に慣れておらず間違えて₩50,000払ってしまった!痛い勉強代である。

登山口は日曜日だからかハイカーが多い。よく整備されており、トイレは清潔である。


車のクラクションが飛び交う騒々しい登山口

整備された登山道を20分ほど登りハル峠へ。

広葉樹林の森で新緑が気持ちいい


なぜネコがいるのだろう?

峠から目の前に仁寿峰が現れる。物凄い存在感で気持ちが高まる。

頂上右下に特徴的な耳岩が見える

「あれ登るのか!」平野さんも登攀意欲マシマシなご様子。
峠にはベンチが設置され、ハイカーの休憩スポットになっているようだ。

ハル峠から5分ほど下るとトイレがある。

無料で使える清潔なトイレ

トイレから少し進むと右手に看板がある。そこから登山道を外れて細い沢を渡渉。

岩場入口の看板 この日は倒れていた

山火事注意の表示を目指して進む。ここまでは迷うことなく進むことができる。

山火事注意の表示を過ぎると二手に踏み跡が分かれる。
どちらが取り付きに着くかわからず、後ろからきた地元クライマーに「シュイナードBはどっち?」と聞くと左だと親切に教えてくれた。
左手に谷をはさんで大スラブ(仁寿峰ではない)が見える踏み跡を進む。
途中小さなスラブを越えるため濡れている時は注意が必要である。

左手に見える大スラブ

さらに進むと分岐があり右に進む。左に進むと東面下部スラブの取りつきに行ける。FIXロープの張られた岩をこえると、東面右側の基部に着く。(8:30)


F IXロープを越えるともうすぐ取り付き。遠くの岩山に雲がかかり水墨画のような景観

シュイナードBには、すでに1パーティ取り付いていた。
地元クライマー達は、シングルロープを繋げて数珠繋ぎに登っていく。
リードクライマーが変わらないので、フォローは面白くないのでは?
国によって登り方が違い、見ていて面白い。

クライマーが集まっているところがシュイナードB

デポする荷物に平野さんが持ってきたビニールシートを被せる。用意が良いな~(他のクライマーもシート被せている人が多かった。防犯のため?カラスにでも漁られるのだろうか?)

シュイナードB(5.9)5p  9:25~12:25
今日は超人気ルートであるシュイナードB(キパウィC)を登る。
ルート名のとおり、イボン・シュイナード氏が開拓したルート。
準備をして取り付きへ。10mほど登り、ボルトの打たれた小テラスからスタート!

1ピッチ目 (平野) 5.8 40m
左側のクラックを使いながらのスラブを登る。クラックは広めだが、徐々に狭くなる。
カムをきめながらロープを伸ばす。
途中からクラックが途切れて純粋なスラブ登りとなる。
難しくないが、ボルト間隔(ボルト3本ぐらいだったか?)が広くリードは緊張する。

1P目ビレイ点から クラックのおかげでプロテクションには困らない

岩質は小川山に近く、面スラ系。
また、スメアが効かない岩質(埋まっているダイクだろうか?)があるため、見極めが必要。
さすがは人気ルート。終了点が2箇所ある。

長いスラブで既に足が痛い

2ピッチ目 (中田) 5.9  40m
核心ピッチ。細かいアンダークリングを手で探しながらトラバース気味に右上する。
足はスラブだが、よく探すと置けるカチがある。
ボルト間隔(2本ぐらいだった気がする。)は相変わらず広いため、小さめのカムで補強しながら進む。染み出しがある箇所がいやらしい。
スラブの経験が少ないと難しく感じると思う。

2P終了点から 街が近い


2P目を登る平野さん もう少しで染み出しがある箇所

アンダークリングに錆びてブレードだけ残ったハーケンがあった。イボン・シュイナード氏が打ったハーケンだろうか?片手で打ち込んだ?先人達の苦労に思いに馳せる。

3ピッチ目 (平野) 5.8 25m
右へトラバースしてからフレークを目指す。
トラバースはボルトが1本あるが、そこからの1歩が遠くて怖い。

嫌なトラバースをこえる

ガシガシ登れる縦フレークを登ると、体が中に入る大きなフレークが表れる。
平野さんはカムをきめながらフレークの中へ。
後続の韓国人クライマー達はフレーク外のスラブを登っていた。(フレーク外のスラブはカムを決めれない。ボルトなし。安心を買うならフレークに突っ込んだ方が良さそう)

ここからスラブに出るか、フレーク内に入るか迷うところ

4ピッチ目 (中田) 5.8 40m
まずは左の大チムニーにそって豪快に登る。
ボルトが3本程度あり、迷うことはない。
湿り気のあるチムニーを抜けるとダブルクラックが表れる。
2本とも狭めのハンドクラック。(左の方が少し広い)

綺麗に伸びるダブルクラック

ダブルクラックの途中で登り方が変わり、腕を交差させて登る。
ポーズをきめながら登っているみたいだ。

高度を一気に稼げる気持ちの良いピッチであった。

5ピッチ目 (平野) 5.7 40m
出だしに5番のカムが入る。

重い5番がようやく役に立った

左のチムニーに入っていくが、下が抜けていて怖い。
安心感を得ることのできないチムニーであった。チムニー奥にカムがきまる箇所がある。
その後、簡単なスラブを登り、耳岩基部の終了点へ。

「ビレイ解除~」姿が見えないがアプローチで会ったシュイナードAを登る日本人クライマーの声が聞こえる。聞き慣れた日本語に安心感を感じる。

終了点で平野さんとガッチリ握手。
耳岩には鎖が張られており、終了点から鎖伝いにトラバースして、広いテラスまで移動。

鎖にセルフを取りながらテラスへ

頂上ではないが新緑の眩しい山々や遠くの岩峰群、ソウルの街並みを望める絶景である。
無事に1本目のマルチを終えることができ、ここで一息。

コンビニで買ったキンパをいただく。
日本のスーパーで売っている巻き寿司のように切られており、食べやすい。
しかも美味しい!ボリュームもあるので登山にピッタリな行動食であった。日本でも売って欲しいな~

滞在中、行動食の定番となったキンパ。種類は様々。

テラスには2つ終了点がある。懸垂点としてどちらを使えば良いかわからず、後続のクライマーに聞くと耳岩に向かって一番左の終了点(ウィデ(medical college)の終了点)だそう。

懸垂下降の準備をしていると「写真を撮ろうか?」と声をかけてくれた。
スマホを渡すと物凄い勢いで構図を変えながら何枚も撮ってくれる。
後々知ったが、男性のモテる条件に「私(女性)をどれだけ綺麗に撮ってくれるか?」が含まれるらしい。良い写真を撮るためには枚数を多く撮ることが大切だそう。

突然始まった撮影会に戸惑っている2人


映えるギアの写真も忘れない!!

撮影会が終わり、お礼を言って懸垂下降開始!
白く輝く大岩壁を思いっきり下降する。気持ちが良い!

50m降り、ウィデの2ピッチ目終了点へ。
登攀中のパーティーが終了点を使用していたため、よくわからない杭でセルフをとる。

コンクリで補強され丈夫そうである

下を見ると登ってくるパーティーがわんさか!


オアシステラス(木が少し生えているところ)から数珠繋ぎで登ってくる

平野さんも降りてきて「しばらく待ちですね」と話していると「斜め(インスA側)に懸垂していけば良いよ」と取り付いている地元クライマーが教えてくれた。
1回の懸垂でオアシステラスまで降りることができた。
テラスから見上げると人が多い!どうやら人気エリアのようだ。

こんなに複数人が登っている岩場ははじめて

さらに2回の懸垂でシュイナードBの取り付きに戻ることができた。
(ウィデは人気ルートのようで、人の多い休日は下降に使うのは避けたほうが良さそうである。シュイナードBを登っていた先行パーティーは、耳岩に向かって右側の支点を使い、ヤンジの終了点を目指して下降したようである。)

道具を片付けたのち、山岳救助隊の事務所とお寺を見学して下山した。

山岳救助隊の詰め所 お世話にならないように気をつけねば


詰め所近くのお寺 飼われている大型犬を見て癒される

登山口はタクシー待ちの行列ができていた。虎柵に沿って並ぶ。

混雑時は相乗りが当たり前で、我々も相乗りさせてもらった。割勘用に現金があると良いかな。

地下鉄駅周辺には登山道具店が並んでおり、時間もあったので寄り道。

ギアの値段は日本と変わらないが、あまり見ることのないギアがあり面白い。
グリべル製品が多く、人気なんかな?

 

5月5日(月) 3日目  天気:曇り一時雨  「インスB」
昨日と同じ時間にホテルを出発し、北漢山牛耳駅へ。
今日はカカオタクシーのアプリを使って配車した。地図上で細かく乗降車場所を指定することができるので便利である。(アプリで呼んだタクシーは割と安全運転だった)
駅から数10m進んだところでお祭りの通行規制で降りることに、初乗り運賃約4,000を払い下車。
10mで約400円… タクシーの運転手も笑っていた。昨日に引き続き、無駄にお金が消えていく。これが海外か…!

バスロータリーに行列ができていたので、案内係の方に聞くと日本語が話せる方で、シャトルバスに乗って良いとのこと。料金はいくらなのだろう?不安のまま乗車。

シートは革
で高級感がありそうなバス。運賃が高そうだ。余計不安になる。

周りの乗客が1,000を手に降りるため、我々も1,000を用意し下車。案内係がザルを持って立っているため、そこにお金を入れた。5月5日はお釈迦様の誕生日らしく、お祭りに合わせてお寺がシャトルバスを運行してくれているのだろう。安く移動できてありがたい。

昨日と同様にハル峠を越え、トイレから登山道を外れる。

昨日倒れていた看板が直っていた

今日はインスBを登る予定なので、下部スラブ基部を目指していく。
お寺の裏手にある散策路にお邪魔し、踏み跡を頼りに谷を登る。左手に仁寿峰ではない大スラブを見ながら、少し歩きにくい道を進む。足元の岩にアイゼン跡がついているため、この辺りでアイスクライミングができるのだろうか?

歩きにくく所々不明瞭な道だが迷うことはない

山火事防止の表示が見えると下部スラブはすぐそこ。登山道からここまで20分。


下部スラブ基部から見た仁寿峰 


基部には看板が設置されている

下山時に気がついたが、シュイナードBのアプローチからも下部スラブに行くことができる。こちらの方が道が安定しているため歩きやすい。

下部スラブの左側を巻き、スラブ中間の取り付きを目指す。

スラブ中間の取り付きより

インスB(5.8) 下部スラブ(アプローチ)2P+3P  9:20~12:30

下部スラブ
1ピッチ目 (中田) グレード不明 45m
取付から見上げると明らかにボルトが少ない。
途中、左右にルートが分岐する。傾斜のゆるそうな左を選択。
ルート上のいやらしい箇所にボルト3本あるだけ。
怖い!意味がわからない!いや、ボルトがあるだけマシと思うことにした。
グレード5.8~9ぐらいか?

下部スラブ1P目

2ピッチ目 (平野) グレード不明 50m
後半は傾斜がゆるいがボルトが2本しかない。インスボン名物の超ランナウトするスラブである。フォローはサクサク登れるが、リードの緊張感は凄まじいと思う。平野さんには申し訳ないが、リードじゃなくて本当に良かった
終了点でロープいっぱい。
こちらも5.8~9ぐらい?

下部スラブ2P目

2ピッチ目の終了点からインスBの取り付きまで10mほどのトラバース。

2P目終了点より インスBは大きく張り出した岩の左側

ビレイ点だと思っていた目指していたボルトが落石防止用のボルトだった。丈夫そうなので使わせてもらう。
本当のビレイ点は落石防止ボルトから10mほど下。
ここまでがインスBへのアプローチである。

落石防止アンカーを使う

インスB
1ピッチ目 (平野) 5.8   30m
正面のフェイスにボルトが1本あるので、ルートが分かりやすい。核心ピッチ。

1P目の出だし フェイスからはじまる

フェイスを超えるとワイドクラックが始まる。
枯れ木手前のクラックから体を抜け出すところが核心。核心を抜けるとすぐに終了点。

2ピッチ目 (中田) 5.8 40m
まっすぐ伸びるクラックを登る気持ちの良いピッチ。

オフィズスから綺麗なコーナークラック(ハンドサイズ)に変化する。

気持ちよくハンドジャムが決まる。
左手は逆手、右手は順手でガシガシ進める。楽しすぎてずっとニヤニヤが止まらない。

楽しくって登攀中に1枚パシャり 後続のクライマーから「はよ登れや」という視線が注がれる。(後続は左側の綺麗なクラックを登る別ルートだった)

落ちる気がしないので、カムはあまりとらずランナウト。
クラックは長く、幅(キャメ2~3番サイズ)が変化しないので少なめにカムとったのは正解だった。
終了点が近くなるとクラックに土が詰まりジャムが決まらなくなる。そこからボルトが1本ある簡単なスラブを登り、傾いたマツの木で終了。

立派なマツ 後続のパーティが登っているルートと共有しているため終了点は2つ

1ピッチ目の終了点から左側に綺麗なクラックが見えた。後続パーティーは岩に向かって左のクラックを登っており、終了点が一緒だった。こちらを登っても楽しいかもしれない。ビレイ中にグレードを聞いたら10aとのこと。


左のクラックがインスB  後続は木の影から登ってくる

3ピッチ目  (平野) 5.7 40m
ワイドクラックを登る。前半20mは特に難しくないが、後半になると進みづらく苦しい。クラックからスラブへ足を出して登るとよかった。

3p目 ワイド技術は特別必要ない

これでインスBは終了。
頂上までゆるめのスラブが続くので繋げて登れば行けそうだが、昼からは雨の予報。記念撮影を終えたら早々に降りることにした。準備をしているとパラパラと雨が降り始めたがすぐに止んだ。

頂上まであと少しだか…

終了点から左へ15mほど下の砂地テラスまで降りる。落石防止ネットや灌木を掴みながら降りれるが、万が一を考えて確保してもらった。

落石防止用のワイヤーネット


砂地テラスの懸垂点 

懸垂点からインスB取り付きまで2回の懸垂で戻ることができた。
同ルート下降よりロープスタックのリスクが低いと考える。

懸垂点より 回収時、足元のダイクにロープが引っかかりそうでこわい 


中間の懸垂点はハンキングビレイ?状態。事前にセルフを伸ばしやすいようにしておくと良い。

下部スラブは同ルートを2回懸垂して取り付きに戻る。
インスボンは人が多いので懸垂時にどうしても登攀中パーティのロープと交差することがある。地元クライマーは慣れているようで、特に気にする様子はないが、交差するときは一応一声掛けるようにした。また回収時はロープ同士の摩擦による融解に注意してゆっくり引き抜いた。

懸垂中に救助ヘリが飛んできた。自分は気が付かなかったが平野さん曰く、懸垂で降りてる時にインスBの2ピッチ目にいた人が足を負傷していたそう。


岩場にヘリが近づけないため、向かいの尾根に隊員を降ろしている。

海外クライミングで怪我は絶対にできない。気が引き締まる。

 

5月6日(火) 4日目  天気:晴  「インスリッジ」

今日も6:00にホテルを出発。3日連続で早朝出発のため流石に眠い。

3日目にして気がついたが、トソンサ広場に無料で使える虫除けスプレーが設置してあった。夏は虫が多いのだろうか?この時期は特に気になることはなかった。

昨日ハル峠を越えたトイレ近くに荷物をデポしたので軽快に登山道を進む。

青空と新緑。さわやかな空気を感じながら歩けばあっという間にトイレに到着。

トイレの手前から登山道をそれる

トイレ裏には水場があったので飲んでみた。生水なので心配だったが、腹を壊すことはなかった。
トポの情報だと「鳩の泉」という有名な水場らしい。近くのテン場に泊まっていたパーティはここで炊事をしていた。

冷たく美味しい水だった

アプローチ
テント場へ向かう。テン場にはクライマーしかいない。
案内板を見ると韓国の山岳会の承認を受け、予約をすると使用できそうだ。日本人だけでの利用は難しそうである。

クライマーばかりで小川山のような雰囲気

テン場を囲っているロープを越え、踏み跡を探しながら進む。

テン場をこえ、沢を渡渉する


沢を渡渉すると謎の看板 翻訳すると「軍事施設だから写真撮らないでね。施設を壊さないでね」

ところどころ古いテープがあり目印となっている。踏み跡らしきものがあるが所々不明瞭。ヤマレコの地形図を頼りに進む。


ボロボロのテープ 仁寿峰に対し、トラバースするように小尾根を超えていく

進む方向に大きめのスラブ状岩壁が見える。そこを目印に進む。


スラブ状岩壁から見た仁寿峰 右からインスリッジが伸びる

スラブ状岩壁下部から尾根に上がると山火事注意の幕がある。その尾根を進むとインスリッジ取り付きが見える。テン場からここまで30分

山火事注意の幕


インスリッジ取り付きの看板

インスリッジ(5.9) 8:20〜16:00  10ピッチ

0ピッチ目
看板の裏手に見えるクラックを登る。アプローチシューズで登ることができる。木にはスリングが巻かれており、登るのは容易。

長いインスリッジがスタート!

しばらく歩くと、饅頭のような形の岩が現れる。岩の右から木を使って飛び移るように登る。確保されていないので飛び移る一歩が怖い。


饅頭のような岩から アプローチシューズで登れる

また少し歩くと外斜したテラスに出る。樹林内で装備を整える。
ここから実質登攀開始となる。

1ピッチ目(中田) 5.8  8m
8mほどのクラック。中間から小型サイズのカムが使える。
簡単でアップにちょうど良い。
クラックを登るとしばらく歩きが続く。距離は体感100mほどあると感じた。履き替えるのがめんどくさくて、クライミングシューズで歩いたが絶対に履き替えた方が良い。ロープを一度解いても良いと感じた。

1P取り付き


終了点から少し歩いて、安定した場所でビレイした方が良かった

少し傾斜のあるスラブを歩いて登ると視界が開け、2ピッチ目の岩が見えてくる。


2p目の岩

2ピッチ目(平野) 5.8  15m
クラックからスラブ。
一見簡単そうに見えるクラックだが、触って見るとジャムが効きにくく、体勢も窮屈で厄介であった。
上部はジャムが効かないクラックからのランナウトするスラブ。結構厳しいスラブで心が削られる。
リードじゃなくてよかった!!トポだと5.8となっているが、9~10aに感じる。
インスリッジで一番難しいのでは?
岩の左から巻けるらしい。
2P目をリードする平野さん 下から見ると簡単そうに見える

3ピッチ目(中田) グレード不明
2ピッチ目終了点から目の前の大岩右側を巻く。S字状にロープが屈曲するためオフィズスクラック手前のビレイ点で一度切る。
目の前のオフィズスクラック(5m)はザックを持って登るとしんどい。4番のカムをズラしながら登る。

3P目のワイドクラック 意外と苦しい 

クラックから20mほど歩き、外傾したテラスでピッチを切る。ボルトはないため、2番と5番サイズのカムで終了点を作る。

4ピッチ目(平野) グレード不明
プロテクションが取れない恐ろしいピッチ。
初めに右側の岩に乗り込む。身長が低いと乗り込むのに苦労するが、岩角にスリングを引っ掛けると上がれる。

ここからが恐ろしい。
プロテクションがない状態で左の岩に乗り移る(ほぼ飛び移る)のである。失敗すると岩の隙間か切れ落ちた谷へ落ちる。

平野さんはザックを置いて戸惑いながらえいや!と渡る。度胸強すぎぃぃ!!
リードじゃなくてよかった!!(2回目)

大ガバを掴んでしまえば勝ちである。簡単なスラブをサクサク登り、岩の頂上へ。

岩の頂上から見た4P目 ボルトぐらい打っといてほしい

5ピッチ目(中田) A0
反対側の岩へ移り、スラブを登る。
頭を使うピッチで取り掛かる前にシステムの打ち合わせをすることが大切。

システムは某ブログを参考にさせてもらった。
①リードはロアーダウン。ボルトが連打されている所まで降ろしてもらう。
②リードはボルトでセルフをとり、フォローはボディビレイに切り替える。
③切り替え後、リードはアブミを掛けて登る。(この時にプロテクションにかけるロープは1本だけにする)簡単なスラブを10mほど登ると終了点がある。終了点でフォローのビレイ。
④フォローはプロテクションにかかっていないロープで懸垂下降し、アブミに乗り移る。(リードはプロテクションにかかったロープでフォローをビレイ)
⑤フォローが来たら、ロープを回収する。


4P目終了点から 反対側の岩にボルトが連打されているのがわかる


覗くと結構高さがある

 


慣れないロワーダウンに苦戦中


平野さん懸垂中 A0後のスラブは簡単


5P目終了点には日本のリングボルト打たれている。初登者は日本人?

終了点から10mの懸垂下降で大広場へ降りる。

大広場はとても快適。木と岩の配置が小さな庭園のようで落ち着く。シューズを脱いで大休止。
隣の白雲台スムンビョクリッジ(5.7)を登るクライマーを見ながらのんびりと過ごし、頭を働かせた分のエネルギーを摂る。
大広場から南側へエスケープできそうな下降点があった。

広場でダラダラ


スムンビョクリッジ 高度感がありそう


南側の下降点? 高度感がある

6ピッチ目(平野)5.9
核心ピッチ。左上する綺麗なフィンガークラック。
クラック沿いにボルトが2本打たれている。綺麗なクラックにボルトが打たれ残念。
クラックは浅くジャムが効く箇所は少なめ。
上部はクラックが途切れ、バランス勝負となる。5.9にしては少し辛め?


カムも入れながら登る

7ピッチ目(中田) 5.8(A0)
トポでは、ガバを掴んで登ると書いてあるが、オフィズスサイズのクラックが綺麗にのびるだけ。どこにガバがあるんだ!騙したな!と思いながらクラックに手を突っ込むと…なるほど!ガバ!思わず笑ってしまう。
中間部はハンガーボルトにアブミをかけて前進。
アブミに乗るが次の一手が遠く、浅いアンダークリングにカムをきめ、カムエイドでさらに前進した。


凶悪そうなオフィズスに見えるが…


7P目終了点から  

ガバと中間サイズのクラックが豊富でプロテクションに困らない。
40m一気にロープを伸ばし高度感抜群!最高に気持ちの良いピッチであった。
ここを登るためにインスリッジに来ても良いと感じるぐらいである。

8ピッチ目(平野・中田)
ルートが大きく屈曲するため、途中で切って対応。ルートが分かりづらく時間を使ってしまった。
ほぼ歩きだが一部嫌な感じでドキッとする箇所がある。
適当な場所で終了。

目の前の大岩を左から巻く


岩の間を抜けていく


少しいやらしい箇所 ロープがあると安心


適当な岩で終了

9ピッチ目(平野)
目の前の大きな岩の右を巻いていく。カムエイドで岩の右面に移る。フォローはカムを外し、張ってもらったロープにぶら下がって移る。スラブからクラックをこえ、ボロ壁を登ると明確な終了点がある。
8ピッチ目終了点から見える大きな岩から登れそうだが、終了点に合流できるか不明である。

ルートがわからず時間をつかってしまった

10ピッチ目(中田・平野)
歩くように登れるスラブ。プロテクションは2個しか取らなかった。仁寿峰に慣れてしまったのだろうか、慣れとは恐ろしい。ロープをめいいっぱい伸ばすが、頂上まで15mほど届かなかった。カムで終了点を作り、残りを平野さんにバトンタッチ。


簡単なスラブだが高度感がある


頂上まであと少し!

途中、迷ったりして時間が掛かってしまったが無事登頂することができた。
頂上は想像以上に広く、各ルートから上がってきたパーティが集まり賑わっていた。
一般登山道はないため、クライマーしかいない。
目に飛び込んでくるのはソウルの街並みとハイカーで賑わう白雲台、北西を見ると海だろうか?天気が良く、遠くの山並みが見渡せる。
頂上まで登れるクライミングは達成感を強く感じることができて本当に楽しい。

頂上は想像以上に広い クライマーがたくさんいるが窮屈さは感じない


眼下にソウルの街並みが広がる


存在感の強い白雲台(ペグンデ) トポを見るとクライミングルートあり


左手奥の岩山が道峰山だろうか


クラックをつかって頂上の大岩に登れる 


地元クライマーに勧められ白雲台をバックに撮ってもらった。ここでもアングルを変えて複数枚撮ってくれる。

 

景色を満喫したのでラペルポイントへ向かう。FIXロープを使い少し下降。
白雲台方面へ進むと鎖が横に長く張られた場所があり、そこが下降点である。

F IXロープは大スラブ側


白雲台方面へ頂上をトラバース


鎖から下降点
(一番左の人が立っている辺り)まで遠い

何パーティか準備をしていた。
下降点のボルトは複数あり、空いている場所もあるが鎖から遠い。
どこを使って良いか、どうやってボルトまで行けば良いかわからず困っていると、地元クライマーが声をかけてくれた。

言っていることがよくわからなかったが「ロープは何メートル?」「50mロープは一番手前のラペルポイント(ここだけハンガー、他はケミカル)を使う」「仁寿峰は初めてか?」とか…言っていたと思う…
私の困った顔を見かねてか、翻訳アプリを使い「ロープを使っていいよ。70mだから1回で降りれる」とありがたい提案!遠慮なく使わせてもらう。

ついてこいと地元クライマーが鎖から離れ、ラペルポイントまで確保せずに歩いて行くではないか!
こんな不安定な場所を確保なしで…仁寿峰に慣れたつもりだったがまだまだ甘かった。
落ちたらまず助からないだろう…ドキドキしながらついて行く。

混雑する下降点 セルフは取れない
。滑ったらと思うと足が震える

最初に地元クライマーが1人降り、続いて私の番。障害物のない70mの懸垂下降。
バックアップは取らず思いっきり降りる。
摩擦で手袋越しでも火傷するくらい下降器が熱を持つ。楽しすぎる!!!
遊園地にあったら何回も乗り直しちゃう!

※途中ハングを超えがあり、空中懸垂となる。ハング下に終了点があったので、50mロープでも降りれそうである。

パーティ全員が降りたら、ロープの回収を手伝いお礼を言って別れる。

尾根を越えて、旧白雲山荘へ向かう。尾根から山荘への下降点が分からず迷っていると、先ほどのパーティーが教えてくれた。

尾根より仁寿峰南面  こちらは高グレードのルートばかり


尾根からザレた道を降り、旧白雲山荘の裏手にでる


旧白雲山荘 昔は宿泊できたらしい トイレあり

山荘の中の様子

旧白雲山荘から一般登山道と合流する。よく整備された道でとても歩きやすい。
18:24にトソンサ広場に着。この時間だとタクシーの待機列にクライマーが多い。
日本のクライマーも遅くまで登る人が多いが、韓国のクライマーも同じであった。
仁寿峰にお礼を言って地下鉄の駅へ。


また来ます!

 

5月7日(水) 5日目  天気:晴

連日早朝出発が続いたのでゆっくり起床。
夕方の飛行機まで市内をぶらぶらすることにした。

東大門には登山道具店が集まっている場所があるので行ってみた。
日本ではお目にかからないカシンのラープとトランゴのペッカーが売られていたので購入。

その後、私のリクエストである古本屋巡りをさせてもらった。
数件ある古本屋はどれも小さく、本を探すことは難しい。
そのため翻訳アプリをフル活用して、店主に目当てのジャンルを聞く方法が有効であった。
おかげで数冊山岳関連の本を購入することができ満足!

韓国の古本屋街  昔は多かったそうだが、今は4・5軒しか残っていない。規模は神保町が圧倒している。


店内はウナギの寝床 日本の本も置いてあった

仁川国際空港へ移動。
空港内でのんびりしていたら搭乗時間が迫り、急いで保安検査場へ。
登山道具屋で買ったペッカーやラープがカバンに入ったままで、急いでいるのに検査で引っかかってしまった。

せっかく買ったのに没収されたくないぃ!
ペッカーの刃先を訝しげに見る検査員にクライミング道具であることを伝えると持ち込みを許してもらえた。ふぅ…
時間をロスしてしまい平野さんとゲートまでダッシュ!
なんとか間に合い乗ることができた。

仁川国際空港(19:15)→中部国際空港(21:06)

 

仁寿峰はよく整備され、ボルト等は問題なく使うことができた。また、言葉が通じないにも関わらず親切に教えてくれた地元クライマーのおかげで安心して登ることができた。しかし、前評判通りボルトは少なく、絶対に落ちることはできない緊張感がある。事前にスラブやクラック、カムセットの練習をすることが不可欠である。今回登った3つのルートのうち、シュイナードBとインスBはマルチピッチを経験していれば問題ないが、インスリッジはアプローチを含めルートファインディング能力や状況に応じた対応力が必要であると感じた。沢やアルパインに全く行かない人にとっては難しいと思う。
初の海外クライミングであったが、ご飯は美味しく、大きなトラブルや事故なく楽しく終えることができた。安心して任せることのできるパートナーの平野さんに感謝しかない。韓国国内には仁寿峰だけでなく、ソウルから地下鉄で行ける道峰山(ドボンサン)、雪岳山(ソラクサン)などクライミングが楽しめる岩場がまだまだある。沢登りもしてみたいな!また機会があれば訪韓し、登山を楽しみたい。

 

持参したクライミングギア
ダブルロープ50m×2、カム(トーテム黒~キャメロット4番×2セット、キャメロット5番)、ヌンチャク15本程度(アルヌン含む)、長めの捨て縄、アブミ×2 とかとか

 

韓国の岩場・山岳に関する書籍等
 仁寿峰は多くの日本人が登っているので、ネットで検索すると有益な情報を多く仕入れることができる。それ以外の岩場の情報はネット上に少ないため書籍が参考になると思う。以下、入手できた韓国の岩場に関する書籍等である。絶版になっている物がほとんどで探すのに苦労すると思う。簡単に検索できてしまう現代でわざわざ本を探すという楽しさをぜひ味わってほしいなぁと思う。探す時の参考になれば幸いである。

・日本語の書籍(書名(記事名等)、出版社等、著者、出版年等)
①仁寿峰と白雲山荘 廣瀬アルパインスクール 廣瀬憲文 2010年 絶版
仁寿峰のルートがわかりやすく載っている。ルートに星がついているので、おすすめがわかりやすい。某図書館に蔵書あり。全国の図書館蔵書検索サイトではヒットしないので足で探し出すしかない。館内のOPACで検索するとヒットする。探し出すまでが一番楽しく、一番苦労した一冊。国立国会図書館に蔵書なさげ。

②クライミングジャーナル1982年10月号p44~50「韓国 北漢山 仁寿峰の岩場」白山書房 箕浦登美雄 1982年 絶版
シュイナードB、ウジョンB、シュイナードAの情報が記載。情報としては古い。

③山と渓谷2000年9月号p218~224「仁寿峰の岩場・主要32ルートガイド①」 山と渓谷社 2000年 絶版
仁寿峰の主要32ルートが特集されている。わかりやすくておすすめ。

④山と渓谷2000年10月号p227~229「仁寿峰の岩場・主要32ルートガイド②」 山と渓谷社 2000年 絶版
③の特集記事の続き。

⑤岩と雪1994年4月号p80~87「仁寿峰への招待状」 山と渓谷社 1994年 絶版
大スラブ、インスA、インスB、ウジョンA、ウジョンB、シュイナードA、シュイナードB、ウィデイキル(医大ルート)、クンニョン・クラック(弓形クラック)の情報あり。

⑤岳人2009年8月号p68〜82「韓国・仁寿峰クライミング総合案内」 東京新聞出版局 2009年 絶版
仁寿峰のリッジルート(6本)、クラッシックルート(シュイナードA、シュイナードB、ウィデキル、インスA、インスB、クローニキル、ピデディルギーキル、ウジョンA、ウジョンB)、白雲台(ペグンデ)ハイキングの情報あり 詳細な情報多い。

⑥不明 p70~74「INSUBONG KOREA 隣の国のすごい岩峰インスボン」 不明
もらった物なので出所がわからない。写真は多いがルート図なし。レポ?

⑦写真集北朝鮮の山 国書刊行会 飯山達雄 1995年 絶版
昭和初期から終戦までの朝鮮半島山岳踏破の記録。主に北朝鮮の情報が多いが、ソウル近郊の道峰山と仁寿峰の記載もある。1926年に英国領事アーチャーと共に仁寿峰へ初登頂した林茂と著者の出会いや、著者と林茂による仁寿峰登頂の様子が記録されている。人工登攀を嫌い、ハーケンをできる限り使わず、岩の突起や木を支点にして登ることがクライマーの道理であるという、戦前の登山家とは思えない飯山氏の先鋭的なスタイルに驚かされる。また、朝鮮半島の山岳について詳しく知ることができる。写真集というより記録集。

・韓国語・英語の書籍(書名(記事名等)、出版社等、著者、出版年等)
①ROCK CLIMBING ROUTE GUIDE 韓国の岩壁(全5冊) 月刊山 キム・ヨンギ 2012年 絶版
雪岳山から済州島まで韓国国内の岩場情報が各地方ごとに分類され全5冊にまとめられている。もちろん仁寿峰や道峰山の情報もあり。江原道(雪岳山)にはアイスクライミングの情報も載っている。写真が多く見応えがある。ハングルで書かれているので翻訳アプリ必須。この5冊で多分なんとかなる優秀なトポ。

②Ridge Climbing韓国のリッジルートオールガイドと登山理論と技術 図書出版山岳文化? シヴン・イギュテ 2007年 絶版
韓国国内のリッジクライミングルート集。登山理論と技術はクライミングの基本が書かれているだけ。仁寿峰や白雲台のリッジルート情報あり。手に入れたものは2007年第2版である。改訂版がありそう。こちらもハングル。

①②の書籍 

③CLIMB ROCK CLIMBING IN KOREA  不明(クライミングジムが出版?) Dong-il Ryou   Jonn Jeanneret 2012年 不明
韓国国内の岩場情報が1冊にまとめられている。岩場の場所(詳細な地図)とアプローチ、ルート名等が載っている。詳細なルートガイドでないのであまり参考にならない。外国人向けのガイド本?英語。

④ ヨファンサン(龍華山?) セナンブウィロックとチャンスロッククライミングガイドブック 江原大学山岳会 江原大学山岳会 2023年
ネット上に公開されているトポ。ハングルで記載。

※韓国語の書籍は正しい翻訳ができているか自信ないです。

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