地図マニアの講習会

  【「愛知県民登山教室2016」(読図)】2016.5.14(河合)
【年月日】2016年5月14日
【メンバー】河合、他6名

 

愛知県山岳連盟主催の「愛知県民登山教室2016」実践教室1(読図)が豊田市の猿投山で開催され講師で参加した。岳連からは、岩瀬さんが運営で参加され、一般の参加者は5名であった。地図は約9000分の1の拡大した地図を使用。やはり講習会はこれぐらい拡大しないとやりにくい。

また、今回新たに取り入れた受講内容は、スマホに地図アプリの「ジオグラフィカ」をインストールして、スマホを現在位置確認に使用した。私の考えは、「道を間違わないためには、何でも使えばいいじゃん。」という考え方である。

9時から挨拶と準備運動を行い、いつもの

【コンパスの使い方練習シート】

を使用し、コンパスの使い方を説明した。

使用地図はこちら

次に地図を見ながら、林道を歩き、特徴物の説明をおこなった。今回の参加者5名は初心者の方はいなかったのでスムーズな流れであった。

今回は、最初の1番からトップを交代し、次の番号まで行ってトップが止まることにした。地図読みは「予測」が大切で、この「予測」を体に染み込ませることが大切である。林道を歩いているので現在位置確認は容易であるが、そんなことより、地図マニアは林道を隣接して流れている川が右を流れたり、左を流れたり、少し離れたりしている実際の地形と国土地理院の地形図の精度の高さを熱く語り始める。国土地理院の地形図はいかに精度が高いか、こんな地図を描く職員は中々やりよるわい。と説明する。

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林道にいる段階でコンパスをできるだけ多く使用し、進行方向や道の脇に出てきた沢の走行性が正しいか検証をして歩く。このコンパス操作が下り道(道が無い尾根)で役立ってくるのだ。

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7番から8番の間で等高線の広い間隔と狭い間隔が傾斜の急や平を表現していることを説明する。8番から9番は道が国土地理院の地形図は間違っているので注意することを説明。時代はGPSの時代なので、一般の方が、道が違っていると国土地理院に投稿し、それが採用され正しい道が反映されることを願うが、残念な話し、膨大な道の情報を少ない国土地理院の職員するで対応できるとは思っていない。9番と10番の間の340標高点から南に派生している尾根の等高線に注目し、柔らかく膨らんでいるとここに隠れピークが発生し、隠れコルもあることが多い。この等高線の表現力が国土地理院のすばらしいところと熱く語る。10番もかなりマニアな場所で、等高線の曲がりが実際の地形ではやわらかい沢になっていることを説明。10番は分かりにくいのは仕方ないとして、それよりも大事なことは10番の手前は尾根が細いが10番の変ですこし太くなっていることを説明。単に「尾根」ではなく、「細い尾根」「太い尾根」という形容詞が大切になってくる。

10番辺りから、予測を声に出すことを受講生に求めた。今までは、コンパスの使い方、地形の見方、等高線の表現力に重点を置いていたが、当初の目的の「予測」を体に染み込ませることを声に出すことで、再度、「予測」の大切さを認識してもらった。

11番から14番までは、コンパスを使用したり、地形の特徴物を説明した。14番にはトイレがある。ここで12時近くになっていたので、お昼にした。頂上まではいけない。あくまでも地図講習会なので、これぐらいの距離が丁度よい。

昼ご飯を食べた後に、岩瀬さんの装備の話を聞いた。なんと60歳の還暦の記念に北岳を午前0時に出発し、36時間で光岳到着である。さすがに岩瀬師匠は永遠の師匠である。私の地図マニアなんて師匠に比べれば足元にも及ばない。その岩瀬さんがどんな装備を使っているか興味深々である。カッパも実に小さい、シュラフはレスキューシートが筒状になった既製品、テントもストックを使用する三角形で小さい。寒くてあまり寝れませんとか言われても、それだけ長い距離を歩くために、そもそもあんまり寝てないじゃん。と突っ込むのがせいぜいである。岩瀬師匠、勉強になりました。

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下りは、12番北西の小さな○まら南南西に伸びる武田道を下ることにした。この下りの尾根も等高線が微妙に曲がっている。この等高線の曲がりによって、隠れピークや小さな沢が形成されている。細かく、一つ一つ説明していく。受講生の皆さんも今日1日で等高線の表現力のすばらしさや国土地理院の地形図作製について理解されてことと思う。林道へ出てからも南に延びる武田道を下ることとした。

林道から1センチ南にある細長い小ピークまで歩測した。受講生の方には、朝一番でコンパスの使い方、中盤は地形の特徴物の見方、予測の仕方、下りで距離感を養うのが目的だった。東に大きく方向を変える蝶の形をしたピークまでは一つずつ主尾根から派生している尾根を確認し、尾根と尾根が交わったところには小ピークができやすいことも学んでいった。

いよいよこの蝶の形をした尾根からコンパスを頼りに道のない尾根を下る。受講生の方も「コンパスをセットしてください」というと、進行方向をコンパスで定めている。そして、コンパスを頼りに下ると道に迷わない安心感さえ受講生には芽生えているように感じた。

7番から西北西に入っている林道(この林道は廃道で車は通れない)の終点に出た。ここからも7番までは、沢を確認して歩くのだが、受講生の方は、先ほどの尾根を下れた安心感からか、集中力が低下してしまった。道迷いって、集中力が切れた時や、予測をしなくなった時に多く発生することが多い。ピラミッドの底辺に「体力」が必要で、体力の上に必要なものは「冷静さ」、その上に「技術力」。技術力って本当は少しだけあればいいんだよね。それよりも冷静さとか体力とかがとっても大切なんだよね。と説明した。7番にでたところで地図読みの講習会は終了。林道は雑談をしながらスタート地点まで帰った。閉会式では、アクティブラーニングが重要で、受講生の皆さんが今度は、講師になって横の展開を図ることで、受講生の皆さん自身のスキルアップにつながることを案内した。

今回の講習会は、距離もよかったし、時間もよかった。スマホのアプリ「ジオグラフィカ」も現在位置確認には役立つことが分かったし、もっと多くの方に使用することを呼び掛けていきたいと感じた。講習会の内容も始めは易しく段々難しくなる内容にでき、最終的には地図読みの魅力や楽しさが伝わったように思われた。

愛知県山岳連盟の読図講師を引き受けてから今年で5年目。やっと納得のいく講習ができるようになったと少し思えるようになった。さらに良い講習会にするためには、もっと自分自身の経験も積んでいかないといけない。

ー記・河合ー

20160514猿投山講習会

 

 

この記事を書いた人

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