天の川が流れる川 黒部川上ノ廊下

【黒部川上ノ廊下】24.8.9(白井良岳)
【西暦年2024年8月9~13日】
【メンバー】L.白井、河合、比嘉、武野

昨年のお盆休みにも上ノ廊下の計画を建てていましたが、台風の接近に伴い、止む無く中止としました。
今年こそはと、もう一度計画を組みなおしました。
山形君がアメリカへ仕事の都合で転勤となりましたが、新たに河合さんをスカウトし、新たに5人編成で挑みました。
河合さんには渡渉などのアンカー役になってもらい、必ず必要な役割をこなしてくれると信じてました。
しかしながら、直前に中田君が仕事で足を打撲してしまい、残念ながら離脱となり4名で挑むこととなりました。
中田君とは一番一緒に沢登りへ出かけていたので、本当に残念ですが、中田君はまだ若いのでこれから自分で計画を練りこの上ノ廊下と言うクエストに挑んで欲しいと思います。
水量の多い、少ないで難易度が大きく変わる沢なので、以前より上ノ廊下天気は気にしていましたが、天気予報は夏特有の不安定な天気予報でした。しかし大きく崩れることは無いと判断して決行を決めました。

8月9日(金)
この日は3人有休を執って午前中から河合号と武野号の2台で折立を目指し、一台を折立へデポし、もう一台に乗り合わせて扇沢駅へ向かいます。
午後の8時ごろ扇沢に到着し無料の第一駐車場へ駐車しました。しかし、この時点で空きは5~6台分とやはり連休前と言う事で明日も混雑が予想されます。
テントを張って寝るスペースは駐車場ではとりずらい為、扇沢駅でステーションビバークとします。
奥の薄暗い一角を陣取り乾杯して22時ごろは就寝しましたが、予想どうり午前3時過ぎには登山客や観光客が駅周辺をうろつき、あまり寝ることができませんでした。

8月10日(土)扇沢駅6;30===黒四ダム7:00—11:00平の渡12:00—14:00奥黒部ヒュッテ14:20—15:20熊ノ沢出会い付近

朝の4時過ぎには起床し、出発の準備をする。5時50分からバスのチケット販売が始まるが5時半にはだいぶ行列ができていた。
河合さんに並んでもらっていると、遅れて来た比嘉君と合流。
始発の6時半のバスに乗って黒四ダムへ。どのみち10:00発の渡し船には間に合わないと思ってのんびり平の小屋目指して黒部川湖畔の登山道を行く。
この登山道は自分達のように奥黒部ヒュッテを目指すPTと平の小屋より五色が原を目指す登山者に分れる。
登山道はアップダウンがあるものの、樹林内で比較てき歩きやすいと思います。何度か黒部川へそそぐ沢を横切るのでそこで冷たい美味しい水をいただく事もできるのです。
平の小屋には11時ごろ到着。すでに東沢へ行くPTが順番待ちをしていてのでその後ろに着く。出発の12時にはまだ時間があるので、平らの小屋を見学。こじんまりしてながらも綺麗な小屋でした。

扇沢駅で乗車券を買うために並ぶ

黒四ダムで

湖畔の登山道ではいくつか沢を渡ります

渡し船を待つ

12時となり小舟に乗り込みましたが、ちょうど平の小屋にいた登山者が体調不良で、その救助で県警のヘリが飛んできてホイストでピックアップの場面と重なり、自分たちは炎天下で暑い中小舟に揺られ、ピックアップが済むまで見学となりました。
ここは富山県側になるのであの県警のヘリは数年前に小窓尾根を目指したときに事故ったメンバーを救助してくれたヘリなんだろうな~っと思い、複雑な気持ち。
渡し船を降りてからも湖畔を2時間ほど歩く。
奥黒部ヒュッテへ着く前には熊にも遭遇。熊さんは登山道の脇でのんびり野草かなんかをムシャムシャとのんびり食べてました。こちらに気づいて目も合いましたが、人間なんかなんのそのとリラッくま。
昨今熊被害が多く耳にしますが、豊かな自然の中で比較的登山客も少ない奥黒部では熊もストレスが少ないのでしょうのんびりしたものです。
奥黒部ヒュッテで黒部川の水位を聞くと昨年が少なかったが、それよりも多いとの事。
あと、ヒュッテにはビールなどお酒は置いてありましたがコーラなどは無かったです。コーラを楽しみにしていた武野君はガッカリ。
自分たちはこれより定番の熊ノ沢出会い付近を目指します。
身支度して黒部川へ踏み入ると、とても大きな河原がお出迎え。こんな山の奥なのに大きな河原がある事に今更ながら黒部川のスケールの大きさを感じます。
河原を歩き出すと「憧れの黒部川にやっと来れたんだ」と熱い思いが込み上げて来る。ほんとう嬉しかった。
入水して渡渉してみるも、腰近くまである所でも無事渡ることができる。なんとなくコレなら遡行成功できそうだと感じた。
対岸に熊ノ沢が現れると、右岸側に砂地の極上の一等地を発見。今日は暑い中6時間も歩いてきたし、一等地の誘惑には耐えられず本日の泊地と決めた。
その後は乾杯と焚火と夕食と楽しい時間が過ぎていきました。
本日の夕食は武野君の鍋。卵とか豆腐と牛乳とか、重さ無視の食材を使い美味しいお鍋を作ってくれました。武野君ありがとう。
その夜はあまり寒くないと思い、自分と河合さんは焚火の横でごろ寝。
月が早く沈んだ夜空には見事な天の川が流れていました。黒部川から天の川を眺める、いつか自分があの世に旅立ったら今度は天の川を遡行してみようか。

綺麗な平の小屋

県警のヘリがホバリング中

この船で渡ります

こんな梯子がいっぱいあります

黒部湖の末端

奥黒部ヒュッテ

河原がとにかくデカい

焚火の横に熊さんが!

 

8月11日(日) 熊ノ沢出会い付近5:40—7:20口元のタル9:00—12:00金作谷12:30—14:20赤牛沢—15:30立岩奇岩—16:00泊地

本日が核心の口元のタルとなるが、天気がいいので気持ち的にも明るく楽しみだ。
基本的に広い河原を何度も渡渉しながら進んでいく。下ノ黒ビンガを通り過ぎると口元のタルだ。
口元のタルに着くと先行PTが左岸をヘツリながら攻略中だった。
それならと自分たちは右岸より攻略してみる。比嘉君がロープを付け右岸を空身で泳いでいくが流水に押され戻されてしまう。
もう一度トライするもダメだった。沖縄のカッパがダメなら無理と諦め魚津の山岳会の人達の後に左岸より進むことにする。
その折、4人でスクラムを組んで右岸より左岸へ渡ろうとしたが、水深が深く流れもあって流されそうになってちょっとヒヤリとする。
そうこうして待っていると、3人組の後続PTもやってきた。
なんとか先行PTがロープを張り無事通過する。この待っているときが一番寒かった。みんな震えていた。
後続PTも来ていたので魚津のPTのラスト人に我々のロープを引っ張ってもらう。自分が先頭で行き3mほど上がったところにカムを使ってFixする。
あとは、3m程の高さより安全に降りられるように残置ハーケンとカムを使い懸垂用のロープを降ろして完了だ。
今回は小電力無線機を持ってきたので、比較的にPT内でのやり取りがスムーズにでき、無線機の良さが確認できた。
ここでヒヤリハット。3m程の高さにある懸垂点手前で比嘉君がFixロープに確保してなかった為バランスを崩しその下の水流落ちてしまった。
運よく岩の上に落ちず岩と岩の間に流心に落ちたので無事であった。
こんな所だったら自分は落ちないという根拠のない自信などがあるのかもしれないが、最大限危険な箇所では事故確保が基本である。
この日の夜に河合さんに何度も「確保しろ!飛び降り禁止!」言われていたので今後はもう少し慎重になるのだろうか?
その後は問題なく、絶景を楽しみながら進む。

このぐらいの河原を右へ左へと何度も渡渉します

へつったりもします

雪渓が残る沢もあります

口元のタルを右岸より責める比嘉

先行PTが左岸より攻略中

最後は少し懸垂をします

口元のタルをすぎると再び河原歩き

金作谷の出会いで魚津の人達が休憩していたので、自分たちも休憩する。彼らの一人が竿を出し釣りをしだし、ほどなくして1匹のイワナを釣り上げた。尺近くのまずまずの型である。
金作谷でまだ12:00であったので歩みを進める。その後は一度ロープを出して飛び込み対岸へ渡り、後続はマグロの一本釣りの如く引っ張り上げる箇所があったが、さほどの難所もなく遡行し続ける。
途中単独で下ってきた登山者に天気予報を聞くと、「明日の朝は小雨」との事。ならば本日中になるべく進めば、明日は折立まで下れると予測し、疲れてきたが頑張って立石奇岩を越えた先まで行く。
右岸にちょうど良さそうな場所を見つけ石ころを敷き詰め平らにし、そこそこの場所を確保。
薪も最初はあまりないかと思っていたが、皆で探し結局すべて燃やしつくせなかった。
本日はテントの中で寝たが、外は晴れていて今日も美しい天の川を堪能できた。夜中になってもさほど気温は下がらずせっかく持ってきたダウンも使わず終わった。

絶景の沢を進みます、たぶん下ノ黒ビンガあたり

同じく下ノ黒ビンガ

ここは先頭ロープを付けて泳いで渡った

川幅が狭くなると急流となります

基本的に花崗岩なのでラバーの沢靴がいいです

立石奇岩の前で

二日目のバイバーク地。とにかく天気もいいし明るく開放感があって最高でした

 

8月12日(月) 泊地5:15—E沢6:30—8:40薬師小屋9:10—11:45太郎小屋13:00—14:40折立===扇沢===新城市24:00

単独の人が言っていた天気予報とは違って、本日も朝から晴天であった。
今日はもう折立まで降りてしまう予定なので気が楽である。
その後もA沢までも何回か渡渉やヘツリを繰り返し、楽しませてくれる。
途中から右岸に大東新道が現れてくると、高天原へ向かう登山客を見かけるようになる。
薬師小屋でいろいろ裸になって着替えるのが嫌なので、途中の河原で着替え、沢装備をしまう。
太陽が昇ってきて日が差してくると当然ながら暑い。涼しい沢の遡行が名残惜しくなる。
薬師小屋に到着して天気予報を確認すると、本日以降は不安定な天気だが大きく崩れる感じではなかった。
しかしながら、オジサン的に体力も乏しくなり、お酒も飲んでしまったので下山するのみである。
その後が本当の核心で、薬師小屋から太郎平までの登りが暑く、もうヘロヘロでした。途中休憩した河原の涼しさが快適すぎて動きたくなくなってしまう。
太郎小屋まで登ると今度は下りである。その前に太郎小屋前で大休憩。武野君は念願のコーラをゴクリ。700円だったそうだ。自分は余ってたワインごゴクリ。
小屋前も登山客でにぎわっていました。
折立の下りは、登りで死んでいた武野君が復活。先頭切って下っていきます。下りはトレランをやっていて得意なのだそうだ。
トレーニング不足の自分は登りも、下りもひーひーです。
結局2時間半ほどで下り切り、ゴールの折立へ汗びっしょりとなり下る。
帰りの温泉は亀谷温泉。440円と安いがシャンプーリンスとボディーソープも自前持ちなので注意。持ってない人は現地で使い切りの物が買えます。
さっぱりして一路扇沢へ再び戻り、車を回収して帰宅しました。

まだまだ楽には登らせてくれません

D沢かな

 

まだまだ巨岩がゴロゴロ

 

薬師小屋が見えてきた

あともう少し、汗びっしょり

気持ちのいい木道なのですが、とにかく日差しが暑かった

奥に薬師岳が見えた

賑わう太郎小屋

 

最後の奥の廊下まで行けなかったのは残念ですが、天気や体力を考えるとこれがベストであったと思います。
自分の父親が亡くなり今年が初盆なので13日中には帰らなくてはいけなかった事もあります。
最後まで力を合わせ、楽しく山行を伴にした仲間に「ありがとう」と言いたい。またどこか一緒に行こうぜ!

所感:比嘉
去年から計画していた黒部川上ノ廊下遡行。
天候条件等が揃い遡行させてもらった黒部川と支えて下さった先輩方には感謝でしかありません🙏
2日目の口元タルでの滑落。たまたま水深の深いところに落ちて助かりましたが、水深の浅い岩に転落し行動不能となってそのまま濁流に流されていたかと思うとゾッとします。
危険箇所で自己確保をしていない今回のミスは、低体温症で思考が狭くなり判断力低下、早く遡行したいという焦りからくるように感じました。これからの山行でも同じ条件があると思うので自分が弱くなるタイミングを自己分析しリスクを潰していきたいと思います。

所感:河合
「黒部上ノ廊下」憧れというよりは、どんなところだろう?という興味が強く、声を掛けてもらった時には一つ返事で「行きます。」と答える。沢登の上下のウエアーやライフジャケット、沢靴等の装備をパソコンでポチりまくり揃える。沢登りも本番に備え、「栃木沢、神崎川、海ノ溝谷、根尾西谷川」で練習を重ねる。アルプスは体力勝負の所があるので、春先のジョギングも有効だった。
初日の歩きがこんなに長いとは思わず、暑さにも結構めげそうになったが、それでも沢に入ると涼しく段々やる気がわいてくる。技術的なところは、皆が突破してくれると信じているので、おじちゃんは、足を引っ張らないように自分の事をやっていればよいのでその点は楽である。
今回は思ったよりも水量が少なく渡渉ができてよかったが、水量が多いとどうするのだろう?という場所もあった。やはり、自然には勝てないので登らしていただく。という気持ちになる。
皆さんと一緒に、スケールの大きな山を満喫できた。楽しい時間をありがとう。

この記事を書いた人

クライミング全般大好きです。
仲間と楽しいクライミングを重ねて行きたいです。
一応現在チーフリーダーをやらせてもらっています。
愛犬、愛妻、愛娘と新城市で暮らしてますが、私が愛されているかは、解りません...

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