好奇心がとまらない 横手山 長笹沢川 ガラン沢

【長笹沢川ガラン沢】日時24.10月27日(中田)
【西暦2024年10月27日】
【メンバー】中田

真相は闇の中 戦前の怪事件 舞台となったガラン谷は遭難多発の”魔の谷”だった!?」(引用 書名:信州探検隊 著:日野東)

「魔の谷ガラン谷」と聞くと難しい沢なのだろうか?と想像できるが、遡行グレードは2級らしく。沢登り的には優しい沢。
不気味な名前で呼ばれる理由。それはガラン沢での遭難は沢登り中でなく登山や山菜取り、山スキーで谷に迷い込み行動不能となる件数が多いことや印象に残る事件・事故が複数あるためである。

ガラン沢でおきた印象に残る事件・事故
本多惣吉と猟犬の遭難         (1916年)
T・A・ピーコックの遭難     (1938年)
群馬県防災ヘリの墜落   (2018年)

この書の中で1938年(昭和13年)1月におきたピーコック氏の遭難について詳しく取り上げられており、著者の考察は好奇心を駆られる内容である。
遭難の概要をものすごく簡潔に説明すると、イギリス軍駐在武官であったピーコック氏は日本人案内人とともに山スキーを楽しんでいた。しかし、ガラン沢に迷い込み遭難してしまった。4月になり日本人案内人の遺体が発見されたが、遺体にはピーコック氏の所持品と6発中3発使用した拳銃、ダイナマイトの雷管と導火線が一緒に見つかった(ピーコック氏の遺体は見つかっていない)。著者はピーコック氏が日本の国益を損なう情報を知ってしまい消されたのではないかと考察している。

山岳ミステリーのような事件があったかもしれないガラン沢。どのような沢なのだろうか?
週末の天気はイマイチなため予定していた山行は中止に‥
草津は天気が良さげなので、事件の舞台となった魔のガラン沢へ行ってきました!

草津峠まで距離が長く、ヘッデン下山確定となるため黒ゼンまで遡行し、途中支流からしごふく池を見るコースを考えた。

沢靴:ラバー(水の中は滑るのでフェルトでもよかった)
林道ゲート6:50〜取水堰堤(入渓)7:50〜ピーコック碑9:10〜黒ゼン9:40〜ごふく池11:10〜惣吉地蔵12:15〜林道ゲート13:25

 

白根開善学園奥の林道ゲートに車を停め入山。ゲート側に1台駐車スペースがある。
林道は整備されて歩きやすい。
しばらく歩くとガラン沢入口と書かれた看板が出てくるが、取水口から入渓するため林道を進む。

看板よりさらに奥へ進む


林道終点から取水口までは歩きやすい道が続く

取水口付近から沢装備を整え入渓。側壁から滝がお出迎えしてくれる。
少し進むと地形図に載っている親子ゼンがあらわれる。
記録を見ると巻道があるようだが、左壁から登ることができた。
滝上部は苔むしており、トラバースが緊張した。

側壁からの滝

釜をもつ親子ゼン(5m)


滝の上部には小滝がある。だから親子?

親子ゼンをすぎると単調な河原歩きと巨石帯が交互に表れる。
だんだん飽きてくるので、時々立ち止まって紅葉に癒されながら歩き続ける。
温泉成分が含まれているためか河原は硫黄臭く、岩も赤茶けている。

紅葉のピークには少し早かった



クマ!

湯の沢出合を過ぎると右岸に崩壊地が表れ、目的地の一つであるピーコック碑が埋め込まれた巨石が表れる。
休憩がてら薬莢でも落ちていないか探してみたが何も見つからなかった。

ピーコック碑を過ぎると日向ガランが見える。
名前の通り日が当たり、白く輝いているためとても目立つ。

日向ガラン、日陰ガランの間には10m以上はある巨石がゴロゴロしており、ラバーが気持ちよく決まりボルダーを楽しむ要領で進む。ここの巨石帯は左岸よりに進む。

巨石の間から流れる滝が何本かあるが、水流沿いの登るのは難しそうである。
日本人案内人の遺体はこの日陰ガランで発見された。事件当時は1月、スキーを履いていたとしても積雪があるときに巨石帯から抜けるのは相当苦労するだろうと想像できる。

右が日向ガラン、左が日陰ガラン



巨石帯の最後は超えるのが難しいため、左岸側から樹林帯に突っ込み巻いていく。
巻道の途中には立派な岩小屋がある。突然ブルーシートが出てくるため心臓に悪い。
巻きを終え、本流を進むと黒ゼンが表れる。親子ゼンに比べると傾斜は寝ており簡単そうに見えるが、猟師の惣吉が滑落し致命傷を負った場所である。


巻き道にはボロボロフィックスロープが張られている


立派な岩小屋 突然出てくるブルーシートは本当にやめてほしい


温泉だぁ!と期待したが冷たかった‥

黒ゼン

黒ゼンを後に沢を下り、山中に佇むごふく池を目指す。
きっと清らかな水に満たされた静かな池だろうと期待していたが、笹藪に覆われたあまり綺麗ではない池で残念。

本流に戻り、小倉口から脱渓。
クマのフンがたくさん落ちている遊歩道を歩き、惣吉地蔵を見てから下山した。

ガラン沢は難しい沢ではないが、ハイカーやスキーヤーが迷い込んでしまうと谷が深く、巨石帯がところどころ表れるため脱出が難しいことがわかった。
ピーコック事件の手がかりはないか探してみたが、何も見つからなかった。
謎多き事件なので様々な考察ができるが、それもまた楽しみなので謎のままであってほしいと思う。
少し変わった山行だったが、好奇心が満たされ楽しかった。

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