初講義の立山研修所

【安全登山普及指導者研修会】2016.11.4(河合)
【年月日】2016年11月4日~6日
【メンバー】河合

 

投稿が遅れましたが、国立登山研修所の報告をいたします。

平成28年11月4~6日に平成28年度第2回 安全登山普及指導者研修会が講師16名、受講生32名で行われた。今年で研修所へ講師で立山を訪れてから3年目になるが、初めて講義を行った。

初日、「地図とナビゲーション」と題した私の講義は、地図の等高線の表現力の素晴らしさを伝えたいと考えた。講義を初めたが、10分もしないうちに目を閉じる受講生。これは、私の話が面白くないのだ・・・。せめて、目の前のストーブを消して室内を寒くして目を覚まそう!ストーブの温度を下げると目が開く。ホッとし話しを続けた。

地図の等高線の表現力を伝えたいという思いは、なかなかうまく伝わらない。講習の内容がマニアックになりすぎていたのではないかと「反省」した。しかし、等高線の表現力を伝えたい気持ちがついつい勝ってしまう。地図マニアの講義の戦いは、60分続いた。与えられた時間は90分。あと30分、間が持たない。しょうがない、「道迷いしやすい地形」と題した作り置きしておいた資料を説明する。トータル講義時間75分。しょうがない・・・。講義は15分早く終わった。

講義内容はこちら

地図迷いを減らすためには、地図を見てもらいたい。地図の情報量っていかに多いか、気づいてもらいたい。地図の表現力に気づいてもらいたい。結果、「受講生が気づく」ではなく「受講生に教えている自分」に私がきづく。講義の難しさを体感した。

2日目、いよいよ読図の実技。昨日作成したムカデ地図を使い特徴物を確認しながら歩く。私の班は経験もあり、地図読みに関しては問題ない。受講生が特徴物に気づかず、ムカデ地図に書いていない地点だけ説明する。

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「ここは、斜面の途中でここだけ約15mぐらい傾斜が平らに(緩く)なっています。地形図を見ると、ほんの少し等高線の間隔が広くなっています。これは、国土地理院の方が平らがあるよ!っていっているんです。国土地理院やりよるわい!」

地図マニアの説明は、国土地理院に勤務しているかのごとく、講談師的な話になってしまう。

大辻山では、3年目にして初めて立山連邦を見ることができ、素晴らしい景色にしばし見とれてしまう。20161105_101406

大辻山から剣岳を見る

読図の実技が終わり、研修所で2日目の振り返りを行う。その後、3日目の読図内容、長尾山をスタートとし、ライオンズの森をゴールとする「藪こぎ実技」の作戦を練った。その中の受講生の言葉の中に、

「ここの小さな等高線の曲がりが小さな沢なので・・・」

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「えっつ。この一般人には気づいてもらえない、等高線のこの小さな曲がりが分かったの?昨日までは、大きな尾根と沢しか分からなかったのに・・。」マニアの心が震えた。

昨日の講義では、受講生から全く手ごたえがなく、あの相槌のない反応からは想像できない言葉。しかも、地図を見始めてそんなに年数がたっていない受講生だったのに・・・

この何気ない言葉に救われた。

「地図マニアは、マニアックな等高線の表現力を熱く語ってもいいんだ。」と今後もこの思い(勘違い)を続けていくのかも知れない。

-記・河合-

 

この記事を書いた人

 読図コーナーを担当し「初心者からの読図,過去の遭難事例」では、ナビゲーション技術や知識、道迷いの心理、道迷い遭難事例を解説しています。ぜひ、読図コーナーのご一読を・・・。

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