屋久島登山 2013/10/28~10/31

屋久島のハイライトコース縦走
日時 2013年10月29日~31日
メンバー 上田
◎永田岳から宮之浦岳
永田岳から宮之浦岳
◎開聞岳に沈む夕日:指宿港手前のフェリーから
開聞岳に沈む夕日
娘の大学祭(11/2~3 熊本・阿蘇)に引っかけて屋久島と開聞岳に行くことにした。
鹿児島県自体、今回初めてお邪魔する。
◇10月28日 
夕方までに大阪に移動し、大阪駅から20:25の鹿児島行の夜行バスに乗る(近鉄バス 12000円)
◇10月29日 晴れ時々曇り
予定通り鹿児島港の高速船乗り場に8:42に到着。近くのコンビニでおにぎり等生ものを購入し、10時に高速船(トッピー&ロケット 8500円)に乗船。目の前の桜島が最初は水蒸気の白いガスだったのが、乗船直後見る見る黒い噴煙を上げ、20分位でおよそ3000m位まで吹きあがる。地元の方は降灰で大変だが、初めての私は自然のダイナミックな姿に驚く。
桜島 目の前で噴煙
右手には薩摩半島の南端の開聞岳、次に左手には九州島南端の大隅半島の佐多岬を望みながら船は進む。途中フラットな種子島・西之表港に寄港し、屋久島東の玄関口の安房(あんぼう)に12:40に到着。
下船前に1つ事件発生。フェリーの指定座席の真後ろにいた青年が私に英語で話しかけて来て、登山をしたいがルートが決まっていないことと、持っている鹿児島⇔安房の往復チケットを帰りは宮之浦港(北面)からに変更したいとのこと。チケットの交換は添乗員の女性に私から話して実現したが問題は登山をどうするか。
彼は中国系カナダ人で観光に来ており、先日立山(若干の積雪あり)に登ったが装備は寝袋、炊事用具、カッパも無く防寒着と食料だけとのこと。最初は無理だから日帰りハイキングにするよう、インフォメーション(観光協会)での相談を勧めたが、登山道が書かれた日本語のイラストマップを片手に泊まりのトレッキングをどうしてもしたい勢い。やたらと人の少ない所に入って騒ぎになっても困るし、インフォメーションは安房港から1kmあまり離れていて放おっておくと相談しそうにないし、登山期間中天気も良さそうなので私に同行してもらうことにした。彼1人の計画書を所定の用紙に書き込み出発。
港からの前山 奥深さが伺える
港からも山深い感じ
予定通り港から今日の入山口 標高1200m紀元杉へのバス(屋久島交通バス 910円)に13:31に乗り込む。港を眼下に眺めながらぐんぐんと高度を上げ、どんどんと屋久島の「前山」に分け入っていく。途中ヤクサルなども見られた。14時半に紀元杉に到着し、2人でのトレッキングが始まる。
カナダ東部のトロント在住のK君(27歳)は、お兄さんが日本人女性と結婚、熊本市に1年半前から在住し、そこへK君が今回11月初めまでの予定で2ヶ月間日本に初めて来たとのこと。
紀元杉は推定の樹齢3000年とのこと。いきなりの巨木で見事である。
樹齢約3000年の紀元杉
40分程車道を歩くと淀川口でトイレや道標がある。人の少ない尾之間歩道を東に分け、入山協力として500円を投函し淀川小屋(無人避難小屋)をめざす。約40分で淀川小屋着(標高1380m)。混雑を考え私はテント泊。(小屋の前に他に2張)K君は小屋泊りとする。幸いなことに予備か忘れ物か寝袋が1個あり、早速K君はこれをキープ。安らかな眠りが約束されうれしそうである。夕飯はめいめいだがスープ代わりにささやかながらチキンラーメンを御馳走する。
淀川小屋
◇10月30日 快晴
夜中起きたら満点の星空。木星や冬の星座が素晴らしかった。5時起床、気温6℃。自分の朝食後、モーニングコーヒーでK君を起こす。結局小屋には外人さん3名含め8人ほどの宿泊だったようだ。6時30分、日の出と同時に出発。このあたりは暖帯性雲帯林帯ということで、紅葉するような照葉樹林は無く、モミ、ツガなどの深い森で時折杉の巨木が現れる。
巨樹が林立
1時間程で右から浅い沢が入り湿地帯となる。小花之江河(こはなのえごう)である。次に間もなく今度は左から花之江河沢が入っており、木道の湿地帯となっている。今は花の季節ではないが、正面に「奥岳」の「御岳」(みたけ:宮之浦、永田、栗生、黒味岳)の1つ、黒味岳、湿原のまわりにはツガやモミなどが庭園のように美しい。ヤクシカも苔などを食んでいる。
花之江河と黒味岳
投石平と背景は黒味岳
投石平を振り返る
巨岩が横たわる投石平を過ぎると樹林の背も低くなり、ヤクシマシャクナゲなどが多くなり、翁岳の双耳の岩峰を望む頃にはヤクシマダケ(背の低い葉の細かい笹)が多くなる。
栗生岳の登りから翁岳を振り返る
栗生岳の登りから翁岳を振り返る
栗生岳(くりおだけ)1867mあたりは花崗岩の巨岩がにょきにょきと立ち、面白い。さすが雨の多い屋久島で、しばらく晴天が続く稜線でもちょろちょろと水が流れており、水場には事欠かない。
宮之浦岳への登り
いよいよ宮之浦岳への気持良い登りで大展望の頂上に飛び出す。10時10分着、快晴、気温13℃。
それぞれがまたとない好天の展望を楽しんでいる。新婚旅行中というフランス人カップルは皆に祝福され、頂上で濃厚なキッス。大いに盛り上がる。K君も興奮気味で他の外人さんとしばし交流。
宮之浦岳でカナダ人のK君と
宮之浦岳から永田岳
宮之浦岳から永田岳
頂上の南側では地元の「岳詣で」の愛好者の方が揃いの法被を来て岩の祠で安全祈願をしてくださっている。
地元の方が安全祈願
大方の登山者はここから同ルートをバック(淀川入り口からは宮之浦岳への最短往復ルート:登り5時間、下り4時間強)だが、何人かは先へ進む。10時45分出発。
頂上からの永田岳やその右に岩峰が連なる障子尾根は圧巻で、登高意欲をそそられる。
K君も同行するとのことで、永田岳往復する。結構な下りを経てコルからの急登、最後は花崗岩の斜面をロープ伝いに永田岳頂上へ、11時半着。今度は宮之浦岳や今日歩いた縦走路、西面の永田港、南シナ海の大展望を楽しむ。
永田岳から宮之浦岳
永田岳から宮之浦岳
永田岳から永田港(北西面)
永田岳から永田港(北西面)
宮之浦岳から縄文杉方面の稜線
宮之浦岳から縄文杉方面の稜線
北面の障子岳は結構な岩壁が広がって圧巻である。
障子岳の岩壁群:永田岳から
12時20分、縦走路に戻り、今日のねぐらの新高塚小屋(標高1470m)めがけ、宮之浦歩道を進む。「奥岳」の展望を惜しみながら再び針葉樹林帯に下って行く。
永田岳(左)とネマチ(中央)の岩峰
永田岳(左)とネマチ(中央)の岩峰
このあたりヒメシャラの木が多く森が茶色く見える。
ヒメシャラの木
第1展望台から宮之浦岳(右)と翁岳
新高塚小屋手前から宮之浦岳(右)と翁岳
14時30分 新高塚小屋到着。小一時間で新装なった高塚小屋だがそちらは収容人数も少なく縄文杉が近いことから混雑も予想されること、水場も離れていることから、少し時間は早いが新高塚小屋(無人定員60名)泊りとする。残念ながら昨晩のように小屋寝袋の予備は無くマットの予備があるのみである。私も小屋泊りとし、K君には私のテントをかぶって寝るということにする。小屋の前で食事しているとヤクシカの家族(角のあるオスと無いメス、小さい子供)が随分長い間たむろしている。本州の日本鹿よりかなり小型でかわいいが、誰かエサをあげてしまったのか目の前から離れない。
屋久鹿
持参したなけなしの日本酒や同席した若者からのおすそ分けの地元の芋焼酎で祝杯を上げる。19時半就寝。
◇10月31日 曇り時々晴れ
4時半起床。かなり雲が出て星はちらほら。例によってモーニングコーヒーで朝食。
バスの時刻もあるし、今日は縄文杉や白谷雲水峡など見どころも多いので日の出少し前の6時15分に出発。
樹林の中の朝焼け
朝焼け
小1時間で高塚小屋を通過し、少し下り7時5分にお目当ての縄文杉に到着。かつては囲いは無く、近寄れたとのことだが世界遺産になり訪れる人が増えてからは囲われているとのこと。
縄文杉
この後も夫婦杉、大王杉、ウィルソン株(秀吉の時代、島津氏の命で伐採)を見ながらかつての伐採軌道跡の終点に 9時に到着。このあたりからは安房起点で荒川口からのガイドツアーが多数入山してくる。軌道跡だけあって概ね平坦で時間的にも早いようである。
 我々は白谷雲水峡を楽しむため楠川分れ(727m)から辻峠(979m)までの登り返しである。峠からは空身で展望台の太鼓岩(周遊で30分)まで登るが既に稜線はガスがかかる。晴れていれば奥岳が一望にできそうだ。白谷雲水峡からも多くのハイカーが登ってきており、我々も苔の森(12時)や豪快な斜瀑をのんびりと下りながら白谷雲水峡を楽しむ。
至る所に巨樹の切り株
至る所に巨樹の切り株
 
「もののけ姫」のモチーフになった苔の森(900m付近)
「もののけ姫」のモチーフになった苔の森
飛流落しの滝(670m付近 13時15分)
白谷雲水峡の飛流落しの滝
 
豊富な水量と苔蒸した岩や切り株など屋久島はまさに水の王国といった感じである。
管理棟に13時半に到着し、K君や途中前後して歩いてきた愛知県知立から来られた年配のKaさんと無事を喜び合う。K君も天候に恵まれたこと、素晴らしい屋久島の自然に触れられたこと、私と同行できたことを感謝してくれ、握手を交わす。
無事縦走終了
14時40分の屋久島交通バスで宮之浦港まで下り(530円)、16時の鹿児島行きの高速フェリーに乗り込む。K君は鹿児島まで乗船し、今日中にハロウィンパーティの待つ熊本へ、私は明日の開聞岳めざし、指宿(いぶすき)まで(フェリー7200円)である。
乗務員のおねえさんが、行きと同じ方で無事登頂を喜んでくれる。
K君とチケット切り替えでお世話になった乗務員のおねえさん
途中、開聞岳が近づき、丁度日の入時刻となった。赤い夕陽と開聞岳のシルエットが素晴らしかった。(開聞岳編に続く)
夕陽と開聞岳
<感想>
・後半の旅行とつなげてという勝手な計画であったこと、台風が毎週襲来するという不安定な天候であったため会員みなさんに声を掛けられずまたまた単独となったが、思わぬ出会いで若者と同行することとなった。
 今回は良い天候が予想されたことで同行することにしたが、今後は全体の状況を考えて慎重を期したい。悪天にも耐えられる十分な装備(テント、食料)で臨んだため、2人も安心感はあって良かった。
・登山のみの計画で滝めぐりなどもう1日ゆっくりしたいところであったが、縦走の日はまたとない好天に恵まれ、屋久島の豪快な稜線や原生林、豊富な降水量故の苔や植物を楽しむことができた。
・今回は夜行バスだったが名古屋⇔鹿児島の航空便は早割なら夜行バスより安そうである。
・また、別の季節、別のルート、別のメンバーで再訪できればと思った。
記:上田

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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