深田百名山コンプリート! 北ア水晶岳(黒部川源流周遊)

【北アルプス:雲ノ平~水晶岳~鷲羽岳~黒部五郎岳】
【年月日】2023年9月8日~10日(上田)
【メンバー】上田歳彦 夏目誠 小寺和代 他2(大学OB K君 W君)

◆今回の黒部川源流周遊の山旅
 百名山100座目の水晶岳を想定して、会のメンバーと大学OBで黒部川源流部を三日間で巡る山旅を計画しました。三日間ともコースタイム10時間というタフなコースで、メンバーの頑張りで水晶岳に登頂で100名山をコンプリートし、天候にも恵まれ黒部川源流の山々を一周する思い出に残る山旅となりました。

◆深田百名山コンプリートにあたり
 1977年東北大学に入学、ワンダーフォーゲル部に入部。仙台を起点に近隣の無雪期の山歩きが主で、後から思うと百名山は1年の秋の飯豊連峰縦走の1座目がスタートでした。1982年3月に豊川山岳会に入会、近隣の山岳や日本アルプスを中心に会の先輩や仲間と無雪期や積雪期の登山、沢登り、岩登りを楽しみました。2005年頃(50座)までは百名山を意識すること無く、同じ山にルートや季節を変えて何度も登るスタイルでした。それ以降は登頂数を確認しながら、機会があれば遠方の登山や旅行につなげて百名山に登ってくることにしました。家族の病気やコロナ禍など中断期間もありましたが、年に0~9座登頂し、今回のコンプリートとなりました。日本百高山は少し気になりますが、数を数える登山はこれが一区切りで、二百名山や三百名山などは目指さないと思います。

3月末の大学の任期終了退職(65歳年度末)、その直前に奈良の母が急逝し、7月初めには基礎疾患があった妻がその合併症により急逝するという激変の半年間でした。その中で計画していた百名山コンプリート計画を妻の忌み明けから再開し、何とかコンプリートできました。ワンゲルで登山を始めて46年、山岳会に入って41年、事故や怪我なく続けて来られて山仲間や家族に感謝です。
 今年度から会の代表を先輩からバトンタッチし、代表らしいことはまだできていませんが、これからしばらくは会の仲間と事故なく楽しく山を楽しめたらと思っています。沢登りなどのバリエーション登山や海外登山など、動ける内はチャレンジしたいと思っています。 

私の深田百名山登頂履歴
日本百名山登頂履歴(上田)1977~2023 完結版
クリックするとPDFの表が開き、山行ごとに詳細記録(無い山もあり)のハイパーリンクを記載。関心のおありの方はクリックしてご覧ください。

百名山 年別新規登頂数 

◆百名山 思い出の写真
 2017年 苗場山
 2017年 トムラウシ山 2017年 石鎚山

 1995年 鹿島槍ヶ岳東尾根

 2016年 剱岳 源次郎尾根   1991年 剱岳 北方稜線 池ノ谷ガリーとチンネ

 2016年 聖岳(赤石岳から縦走)

 2020年 瑞牆山

 2022年 八甲田山

 2022年 皇海山

 2021年 赤城山
【山の天気と私の海外登山】(上田)
2022年のお正月の高校の同級会でご紹介した資料(抜粋版)を、参考までに再掲します。お時間ありましたらご覧ください。
山の天気と私の海外登山(キリマンジャロ山行)(クリックするとpdfが開きます)抜粋版.pdf


◆今回の記録

・三日間の行程記録 

【9月7日】
愛知組は20時に音羽に集合、東名~東海環状~東海北陸道を北上、飛驒清見からは夜間工事通行止めのため下道で富山地方鉄道の有峰口に午前1時前に到着。適当な停車場所が無いため駅舎にステーションビバークさせて頂く。

【9月8日】
5時に起床、登山支度をして有峰林道の亀谷ゲートに向かう。5時半には既に数台待っていて、6時丁度にゲートが開いて(通行料2000円)折立キャンプ場(熊出没多くキャンプ場は閉鎖)に6:40に到着し、K君(新潟・小千谷)、W君(千葉市)と合流。
パラパラし出してカッパを着て6:39出発。樹林帯の中の登り1ピッチで幸い雨は止み、風も爽やかになり元気が出る。北側の薬師岳は山頂部が雲に覆われているが、周囲の山も見渡せ、太郎小屋(標高2330m)に10:35(出発11:00)到着。
台風13号が東海地方に接近し夕方までに上陸の予報も出される中で、この日の朝の太郎平は結構な風雨で大変だった様子。ありがたいことに我々が着く頃はさほどの崩れは無さそうである。

先ずは薬師沢まで400m下降していく。途中のゴーロで小寺さんが転倒。左目の上を打ってたんこぶができ皮膚が少し血でにじんでいる。水で拭い大きめのカット絆をはり応急処置。その他に異常なく大丈夫とのことで、下りを再開する。(その後も大事なし) カベッケ(河化:カッパに似た化け物)が原を過ぎるとまもなく薬師沢小屋(13:03到着 13:40出発)。
かつて、大東新道経由で高天原温泉~雲ノ平行きで通過、赤木沢遡行時には宿泊した。こじんまりしたいい小屋である。翌日赤木沢を遡行するという数名のパーティとも言葉を交わす。
黒部川本流は標準的な水量だった。
ここからがいよいよ本日の難関、雲ノ平までの標高差800mの登り。特に最初の450mが歩き難い大きな岩の急登。 
薬師沢の吊り橋を渡って10m左で、大東新道と雲ノ平直登の道を分ける。

気合いを入れてゆっくりと、小刻みに休みを入れて登っていく。溶岩台地の急斜面の道は石が大きく苔むした感じで滑りやすく登りにくい。途中の足下の花々(リンドウ、トウヤクリンドウ、イワギキョウ)や色づき始めたナナカマド、小動物(ナメクジさん)を見ながら頑張る。

ようやく傾斜が緩み雲ノ平の西の一角に飛び出し(アラスカ庭園 15:52)、緩やかな道や木道を山荘目指して歩く。
奥日本庭園からしばらくで山荘が見えるがぐるっと回って16:34にようやく雲ノ平山荘に到着。やれやれである。周りの水晶岳はほとんど姿が見えず、祖父岳と黒部五郎岳が霧の中にうっすらと見える。でもこれぐらいの天気で歩けて本当にありがたかった。雨の中の登行を覚悟していただけに本当に助かり、みんなよく頑張りました。

小屋の受付を済ませ、普段9人くらいのゆったりした部屋を6人(もうお一人女性の単独の方)で使わせて頂く。
17時からの夕飯が始まっており、少し遅れて我々も1Fの食堂で頂く。天気が悪い予報だった今日は満杯ではなく比較的ゆったり、夕食も当初の2部制が1部のみだった。

山荘の夕食がとてもおいしく、石狩鍋とご飯、佃煮がおかわり自由でしっかり頂いた。山荘はとてもおしゃれで、調度品や小物に趣がある。手ぬぐいや三俣山荘の伊藤正一さん撮影の山の写真の絵ハガキを求めた。
夕飯の後、「ヒマラヤの雪男 イエティ」という興味深いお話があるというので寝不足の中(前日4時間)ではあるが、聞かせて頂く。九州大学の文化人類学者の古川不可知先生のお話、とても興味深かった。イエティの探索、もっと進めば面白いと思う。その後はバタンキュー。


【9月9日】

5時に起床、5時半に朝食を頂き、いよいよ水晶岳に向けて6:26に出発。
周りの山はガスの中だが、天気予報にあるようにガスが晴れることを切に期待する。木道や岩の道を歩き、雲ノ平キャンプ場を斜面下に見てスイス庭園の脇を抜け、まず祖父岳(2825m)に登る(7:56着)。昨朝に折立であった若い女子2人パーティが元気で同じルートを先行して登っていく。

大日連峰、その手前に五色ヶ原も晴れて見えてきた
祖父岳を下ると黒部川の源流 岩苔乗越。もう一段登ると裏銀座の縦走路上のワリモ北分岐(標高2800m)。水晶岳はここからピストンになるので、不要な荷物をデポして水晶小屋をめざす。ゆるやかに登ると水晶小屋(9:43着)。
かつて裏銀座を歩いているが水晶岳は今回初めてである。いよいよ水晶岳をめざす。登山道は岩稜を避けて南面から西面を登っていく。 南峰(2986m)に10:22、水晶岳北峰(2978m)に10:26に登頂。
100名山のプレートと山岳会の旗、マスコットたちを出して、皆さんにお祝いしてもらう。山深い水晶岳まで同行してくれて山仲間はありがたい。
西側の正面にはどっしりと薬師岳が大きく3つのカールもよく見える。
茶色の砂礫の赤牛岳ははるかに遠い。
裏銀座、野口五郎岳の穏やかな稜線
今朝出てきた雲ノ平山荘と三日目に歩く北ノ俣岳は遠い
飛行中のホシガラス この山行ではよく見かけた。ハイマツの実の残骸もよく見かけた。
鷲羽岳と右手前がワリモ岳、その右の遠景は双六岳 手前茶色のザレ場が岩苔乗越
水晶の頂上からの水晶小屋(左上の小ピークの左肩)方面 登山道の北面は岩のフェース群がきれい
思い思いの写真を撮って下り、水晶小屋に11:20に戻る。

ワリモ北分岐に戻り荷物を持って裏銀座を南下する。

黒部川源流の山、祖父岳
少しの登りでワリモ岳(2888m 12:27)いったん下ると鷲羽岳の三角形がかっこいい。
標高差100m余りの登りでこの日2つめの百名山 鷲羽岳(2924m 13:09着 13:26発)
ここから見る水晶岳も立派で、裏銀座ルートも右へ伸びている。
水晶岳の黒、水晶小屋付近の赤、野口五郎の白(花崗岩)と岩の色に変化があって面白い。

裏銀座の起点の烏帽子岳とニセ烏帽子(右のコブ状のピーク)も望める。
鷲羽から少し下ると東側に鷲羽池の青とその向こうに峨々たる長大な岩尾根の硫黄尾根のコントラストが美しい。
鷲羽からは三俣山荘まで370mの大下り。コルまでの高度感、緑の絨毯と山荘の赤い屋根のコントラストがきれい。

三俣山荘まで着くと(14:11  2550m)ほっと一息。

今日のお宿は黒部五郎小舎。三俣蓮華岳のピークを踏まずに北面をトラバースするルートで小屋まで2時間の行程。三俣蓮華岳から北に延びる尾根をゆるやかに150m程高度を上げながら巻いていく。夏の早い時期には残雪が結構残るとのことだが、今は無くまずまず歩きやすい。尾根を巻き込んだハイマツのトンネルの道で、一瞬強い獣臭がした。まもなくハイマツが切れた所で単独行の男性がいて、たった今熊が目の前をかけて行ったとのこと。声を出しながら警戒して進む。
巻き道合流点でも熊の糞(前日位のものか)
ここから尾根伝いから斜面の300mの下りで五郎平の黒部五郎小舎にようやく到着。(16:27)
雲ノ平から黒部源流をぐるーっと回ってきての丁度10時間行動、今日もよく歩きました。

お宿の夕飯で完登のお祝いの乾杯(^o^)
豪華な小屋の夕食! ご飯とお味噌汁はしっかりおかわり。
前日は寝不足もあってあまり食べられなかった小寺さんも今日はしっかり頂いていて良かったです。(この日の朝ご飯は睡眠たっぷりでしっかり食べていて安心しました)
黒部五郎小舎は水も自由にいただけ、紙や紙コップも自由に使えてとても快適で便利。派手さはないけれどgoodです!
洗面台の素敵なメッセージ額
食後全員で食堂でいっぱいやって楽しい歓談タイム。早めに20時前には就寝。

【9月10日】
今日もロングトレール10時間行動。早めに折立に下りたいので、朝食ではなくお弁当を頂く。3:45に起床。支度をして4:33にヘッドランプで出発し、黒部五郎カールをめざす。

月齢24の月とその下4割位の高さの金星(かすかに)
茜色に染まってきた
薬師、水晶方面の空も
黒部五郎の東面の壁が赤く染まる
カールの中にも日が昇る
カールの北側の尾根の南斜面の登りからの本峰の壁
黒部五郎の肩
黒部五郎岳(2840m)に6:46に登頂   今回3つめの百名山。槍穂高も見え、ぐるりと北アルプスの名山が素晴らしい!

山頂からの大展望

今回のマスコット:W君のオコジョ君に加え、私の連れ合いのパンダちゃんとシェリーメイちゃんも参加

 

カールと槍、穂高
槍穂の全景も見えた昨日歩いた雲ノ平~水晶~鷲羽が見渡せ、感慨深い
左からでっかい薬師岳、中景の剱岳・立山、右の遠景が後立山連峰(旭岳、白馬岳、白馬鑓)
剱・立山、後立山は唐松まで
雲ノ平山荘と水晶岳
黒部五郎小舎のお弁当:豪華でとてもおいしかった。快晴の黒部五郎山頂でいただきました!
行く手の赤木岳~北ノ俣岳:なだらかな稜線漫歩だがひたすら遠い(^_^;)
太郎平と薬師岳 左遠景は独立峰の鍬崎山
黒部五郎の下り 緑のコントラストがとても美しい
下り終わって黒部五郎を振り返る 中俣乗越 8:46通過 赤木岳 9:27


薬師と赤牛の間、鹿島槍も見えてきた

北ノ俣岳への登りで「熊が出たぞ!」の呼び声、北側40m位の所を小熊が走って逃げていく

北ノ俣岳(10:11着 10:29発)から 黒部五郎も遠くなった

太郎平小屋に11:46に到着。大休止し 12:07出発 
薬師岳登山らしい大勢の登山グループをいくつか追い越しながらもゆっくりペースで下り折立に14:40到着。

3日間の10時間行動、大変お疲れ様でした! ゆっくりとピッチを刻み、粘り強く歩いて予定通りのトレースができました。皆さんの健闘に感謝です(^o^)     (記:上田)

 

 

◆山行中の天気図
9/8  9/9  9/10の12時の地上天気図を記載します。
・9/8 台風13号が東海沖を進み、夕方の上陸を見込まれていましたが、勢力が衰えて熱帯低気圧になりその後、不明瞭になりました。太郎平では朝には風雨で荒れ模様でしたが、まもなく収まり、日中は曇り~霧の天気でした。
・9/9 台風13号に代わって日本海の低気圧が北東に進み、東日本は気圧の谷でしたが、北陸地方は南寄りの風に変わり、朝から山では霧が取れていきました。
・9/10  北陸地方と長野では、沿海州に中心を持つ高気圧に緩やかに覆われて昼過ぎまで晴天となりました。

 

この記事を書いた人

愛知県山岳連盟 豊川山岳会事務局
山岳上級指導員 気象予報士
NPO法人 ウェザーフロンティア東海会員

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