初めての沢歩き体験記:金木戸~蓮華谷~九郎衛門谷~黒部五郎小屋

★山行名 【初めての沢歩き体験記:金木戸~蓮華谷~九郎衛門谷~黒部五郎小屋】
★年月日 【2000年8月16日~20日】
★メンバー【上田、河合、宮尾、福地、田中、鈴木恵、小野】

8月16日(水)の夕方5:30市役所の駐車場に5人集合、新城で2人合流上田さん
のCRVと河合さんのハイラックスで一路高山経由神岡へ向かう。今までに一度も沢登り
をしたことのない私にとって未知への心配と期待とで頭の中は思いがアレコレ飛び交って
いる。
双六川と高原川の出合いより約20分でゲートあり、ここで車止め、テント泊。明日の
初日を迎えることにする。もう12時近い。

8月17日(木)4時WakeUp、前日会長より差し入れのメロンを皆でほうばる、
冷たくて旨い。双六川がどこから金木戸川と名称を変えるのか分からないが、ずっと右岸
を辿り車道が終わる所まで3時間も歩いた長い林道でした。そこには取水堰があり、少し
広場になっている、禁漁の案内板があり、違反するとうなぎ一匹3000円の罰金なんて
書いてある。
ここから歩きは細い踏み跡がありそして枕木みたいのが所々に残っている。以前鉱石で
も運び出した軌道跡かなと思われる。約1時間踏み跡を辿り金木戸川に降り立った。小倉
谷の少し下流辺りかな、さあ生まれて初めての沢登りの始まりだ。沢靴の中にはすぐ冷た
い水が入ってきた。おお冷たい。しかししばらくすると暖かくなってくるのが判る。沢靴
を履いていても濡れた石の上は滑るのではないかとそうと足を運んでみる。滑らないOK
だ。リーダーたちの動きは軽やかでダイナミックだ、真似してみるがなかなかついてゆけ
ない。それはそうだ、足の長さが違う。皆私より30cm以上も大きい人ばかり、大人の
中に小さな子供がチョコチョコ付いて行く様に見えるだろうナ。
深い淵の所に来た、右岸の壁沿いに水の中の岩を探りながら伝い歩く、ヘツリ歩きと云
うそうだ。福地君が先頭を行く、深さは腿ぐらい、しかし私にとってはヘソの上まで浸っ
てしまう。手が外れると後ろにひっくり返りそうで緊張する。上田さんがすぐ後ろに付い
ていてくれ、落ちついてゆっくり行けばいいとアドバイスしてくれる。腰の上まで浸って
なんとなく実感が湧いてきた、これは面白いぞ、水に浸っている間は冷たいが出ると暖か
い。わくわくしてきた。
間もなく、高さ2m余りの岩が迎えてくれる。どのようにして登るのかなと見ていたら、
河合さんが、福地君の肩に足をかけ、いとも簡単に這い上がってしまった。ショルダーと
云うそうだ。後は河合さんが出してくれたザイルを頼りに登ることができた。なるほどネ
今度は深いカマが出迎えてくれる。宮尾さんがあちらこちら試しているが登れないよう
だ。左岸を高巻きすることになった。福地君がザイルをぶら下げ登って行く、一ヶ所、二
ヶ所ランニングビレイを取りながらOKサインが出た。初めてユマールうを使う場面、緊
張している自分に気がつく。支点の所でユマールの通過方法を間違えてしまった。上田さ
んが下で何か言っているがよく聞き取れなかった。高巻きを終えてから上田さんに教えて
貰う、ヒヤッとしたとのこと。
たのしいことばかりの連続で、第1日目の泊り予定の広河原に到着。午後4:00いい
時間だ。到着してから要領がわからずに自分のことばかりしている。
沢靴を脱いでしまった私は手伝うことができず申し訳ありませんでした。
勿論増水したときの逃げ場を互いに確認してからのことです。しかしちょっ
と変です。 熾の出来た廻りには普通イワナとかヤマメの串刺しが並ぶのに、ここではな
んと、パンツ、くつ下、下着、タオル等、湯気がもうもうとあがる。これらを眺めながら
いっぱいなんです。ここだけの風景なんですね。いつしか一人、二人と横になり、全員テ
ントの中にもぐりこむ頃には星が一段と輝きを増し、明日の我々の楽しみを約束してくれ
ているようです。

8月18日(金)今日も快晴。蓮華谷目指して遡行開始。しばらくは、楽しい沢歩きを体
いっぱい感じながらの遡行を続ける。金木戸川の傾斜はきつくなく、高度はかせげていな
い。左側(北側)より落ちてくる沢にきれいなFallが見られる。上田さんが滝をバッ
クに写真を撮ってくれている。8:30頃左側より水量の多い沢が現れた。これが蓮華谷
か、又はひとつ下の沢か判断がつかない。しばらく地形図とにらめっこ。出合い付近の川
幅と尾根の張り出し及び本流の曲がり具合等で、私は蓮華谷と判断、リーダー3人は確認
のためもう少し上流まで下見にいくことになった。15分程で戻って来てこの沢が蓮華谷
であることを確定。地形図の読みの正確さを要求される実証となった。
さあいよいよ核心部の蓮華谷の遡行だ、なかなかいい谷だ、今までの金木戸川と違って
からり急な登りだ。高い段差が次々に出てきて背の低い
私にとって手応え十分だ。足を横の岩にかけ身体を横にしながら足の方から、先に上へ登
るようなテクニックも自然に身に付いてくる。そんな様子を後から見ている上田さんがお
もしろおかしくどんな形でも登れば勝ちよと笑っている。
ようやく九朗右衛門谷が見えだした。FALLが待ちかまえている。30mから40mはあり
そうだ。今9:30だ。以外と早くここの出合いまでこられたものだ。10:00まで
Rest time。滝の直登はあきらめて高巻きの為、蓮華谷を少し登り小ルンゼを登
ることにする。1本目の小ルンゼを見送り2本目の小ルンゼに取り付く。
宮尾さんがザイルを出してくれた後、笹をつかんでよじ登る。足を掛ける角がなくスタン
スがうまくとれない。足がすべてひやっとする。肩や腕周りの筋肉が痛くなってくる。
1ピッチでようやく楽な姿勢でいられる場所にたどり着く。
河合さんは口笛を吹きながら余裕綽々。時間が経つのなんか全然気にしていないみたい。
リーダーたちは冗談を言い合っている。そんな姿が私をリラックスさせてくれる。2ピッ
チ目トラバース気味に笹をかき分け九朗右衛門谷左岸の上の方に向かう。太い木のあると
ころでビレイをとり、いよいよ九朗右衛門谷目がけて懸垂下降することになった。この懸
垂下降のなんと楽しいことか。思わずヤッホーと声が出てしまう。午後3時全員が九朗右
衛門谷滝の上部に降り立った。高巻きを始めてから5時間が経っていた。
高度差400m登れば黒部五郎小屋テン場に着くということで登り始める。また楽しい沢
登りの始まりだ。小さな斜め滝あり、深みあり、沢登りがこんなにも楽しいものとは思い
もよらなかった。
15cmぐらいのサンショウ魚を見つける。宮尾さんに渡すと手に載せて上から河合さん
が写真を撮っている。ヌルヌルして気持ち悪い。誰かが精力剤だから飲めョと言っている。
この沢水は上流にテン場があるから飲まないようにとリーダー達から注意がある。午後5
時ジャスト、テン場到着。水が豊富に流れ出ている。冷たく旨い。黒部五郎岳の東斜面よ
り湧き出ている水をホースで導いているようだ。宮尾さんこの冷たい水の中石鹸で頭を洗
っている。河合さんも続いて。テン場は空いていた。私たち以外に10張くらいかな。今
夜は辺りに気を遣い早々にテントの人となる。

8月19日(土)
廻りのテントの人たちは出発していて残っているのは我々だけ。寒くも暑くもなく快適だ。
ここからは沢靴から運動靴に履き替えてカール経由で登ってゆく。未だ花がいっぱいの
カールの沢で顔を洗い小休止。いい場所だ。ほかの登山者の人たちも三々五々登っている。
分岐でザックをデポし五郎のピークへ。天気はいい。ゆったりとしたひとときを過ごす。

noguti

五郎のピークで

もっと長くいたい気分だ。北の俣岳方面から太郎山そして薬師岳方面がよく見渡せる。
あの北の俣岳より左折して寺地山方面に下るのだ。
寺地山避難小屋前の水場は豊富だ。ペットボトルにいっぱい補給し11時頃小屋前の広場
を発つ。寺地山を過ぎると登山道は湿地帯の中を行くようになり運動靴では歩きつらい。
水芭蕉の大きな葉がいっぱいある。ここら辺一帯を水の平と呼んでいるそうだ。
標高1842mの分岐で右に飛越新道を見送り左の神岡新道を下る。笹は刈り払われている。
約30分で小さな沢にでる。北の俣川の支流の一つだ。午後3時ジャスト今日の幕営はこ
こときめる。
雨が少し降り出した。大したことはない。
残しておいたウイスキー少々と梅酒を寺地山の水で割って飲んでみる。旨い。もう少し多
く持ってくればよかった。
恵ちゃんが毎晩毎朝食事の世話をしてくれている。いろいろ考えて用意していてありがたい。
恵ちゃん、ありがとう。

8月20日(日)
今日は車のところまで戻るのみ。地形図の破線の登山道を探すが見つからない廃道になっ
て久しいようだ。河合さんより現在地のポイントの確認の仕方などを教わり曲がり沢に降
り始める。3段滝が現れ高巻きを右岸にとる。廃道が確認できるが歩きづらい。沢下りの
方が楽しい。今度は小さな滝だ。福地君が先頭で下る。手を滑らせ胸までドボン。これは
やばい私では頭の上だ。河合さん上手いもんだ。私ははじめからドボン。2~3mの泳ぎ
だがザックを背負っていると泳げない。
河合さんの手をつかんで脱出。全身水に浸かっぞ。泳いだぞ。満足感でいっぱいだ。上田
さん笑ってみてないで写真撮ってくれればいいのに。楽しい沢ももう終わりに近い。北の
俣川との出合いまであと500mそしたら林道歩き3時間が待っている。12時に車に到着。
栃尾温泉で汗を流してゆっくり帰ろうね。楽しい楽しい4日間でした。連れていってくれ
た山岳会の皆さん本当にありがとうございました。次回はいつですか?

―記・小野―

この記事を書いた人

愛知県豊川市に拠点をおき、奥三河の山々をホームゲレンデに、四季のアルプスのピークハント、縦走、ロッククライミングから沢登りとオールラウンドな山登りをしています。
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